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「カイン様。差し出がましいとは存じますが、相手の負担をお考えになってはいかがでしょうか」
「なぜだ。彼女は謝礼で食べ物を買って、皆に分け与える事ができたと喜んでいたぞ」
壮年のアレッツォ執事の言葉に、カインは食って掛かるように言った。
イレリアに礼をしに行った夜の事だった。
騎士隊から出された謝礼の全てを食べ物に変えて配ってしまったと聞いて、カインは内心でとても驚いた。
あれだけの金があれば、貧民街など出て普通の平民として暮らすこともできただろうに。
だが、彼女はそれよりも、飢えた人たちを放っておけなかったのだ。
だから、カインはアレッツォにもっと金銭を用意するよう命じた。
しかし、アレッツォは否定したのだ。
「――負担だと?」
「はい。彼の方は既に騎士隊から十分な報奨を与えられています。カイン様から更に与えられたら、施しを受けたと傷つき、負担に思われるのではないでしょうか」
アレッツォの言葉にカインは思いとどまった。
確かにそうかもしれない。
「だが、それでは何のための謝礼なのか」
「それは受け取った方が、選択すべき問題です。彼の方はご自身が納得する形を選択されたのですよ。――それに」
アレッツォは一息つくと、カインの目を真正面から見つめた。
「カイン様は彼の方が貧民街から出られたとして、その後もご支援なさるおつもりですか?」
アレッツォの言うことは正しかった。
一時的に貧民街を脱して平民としての暮らしを手に入れたとして、あの薬師の仕事でそれを維持する事は難しいだろう。
一度会っただけだが、彼女の人柄は素晴らしいと思った。しかし、それだけでは一生彼女を支援する理由にはならない。
「だが、礼を言って終わりというのも気が引ける。私は彼女を見極めたいんだ」
カインが一度言い出したら引かない性格な事は、長年傍で見ていたアレッツォはよく知っている。
「でしたら――」
アレッツォは食料を差し入れする事を提案した。
実用的で、受け取っても困らず、イレリアの負担も軽減させられると、カインも納得した。
もっとも、さすがのアレッツォも、カインが3日と空けずに彼女の元に通うようになるとは予想すらできなかったのだが。
ジルダの言葉はその出来事を思い出させ、カインは少し恥ずかしくなった。
と、同時にジルダに腹立たしい気持ちも湧き上がってきた。
――まただ。またこの物言いだ。……あの人と……母上と同じ物言い……。
カインの苛立ちには気付いていないのか、ジルダは相変わらず美しい所作で立ち上がり、カインに一礼した。
「魔力もかなり戻ってきておられます。3日後にはまた吸収を再開する必要がございますね」
そう言うとジルダは、振り返りもせずにさっさとサロンを出て行った。
本来ならカインが獣車までエスコートすべきなのに、そんなものはハナから期待していないのがわかる、潔い足取りだ。
その後ろ姿をカインはじっと見つめていた。
子供の頃の彼女は、今と同じ感情をあまり顔に出さない子供だった。
いや、ちがう。感情を表現するのが非常に下手だった。
しかし、その魔力は透明でキラキラと美しく輝いていて、幼いカインはその魔力が大好きだった。
ずっと自分の不器量さを恥じて下を向いていたジルダは、カインの目には不器量には見えなかった。
一人の、寂しく、優しい暖かさと美しい魔力を持つ女の子――ただそれだけだった。
それは今も変わっていない。
だが、あの冬の日――母が亡くなるその時に傍に呼んだのは自分ではなくジルダだった。
それまで、ジルダと母が今際の際に呼ぶ関係だったなど知らなかったカインは、ひどく裏切られた気持ちになり、母の死後もカインの前で平然と悲しむ素振りを見せるジルダが許せなかった。
そして、年を重ねるごとに、かつての母のように話し振舞うジルダを嫌悪するようになっていた。
「今日も貧民街に行くのかい」
翌日、草竜に積めるだけの食料を袋いっぱいに積んで、いざ騎乗しようという時、アバルト侯爵家の獣車が屋敷の敷地内に入ってきた。
中から顔を出したのは、従兄弟であり親友のロメオだ。
「7日ぶりに君の顔を見られたのに、わざわざ見舞いに来た僕を置いて行くなんて」
「なら何故先触れを出さない」
ロメオに視線を向けず、草竜に袋を積む手を休めずにカインが言う。
「随分と他人行儀を強いることだ。君は一体親友を何だと思っているんだろうね」
子供の頃と変わらない、知的な光が輝くブルーグレーの瞳で、草竜に積まれた袋を見たロメオは、大袈裟にため息をついてみせた。
「明日から仕事に復帰するからな。そうすると次の休みまで会いに行けない。今のうちに渡せるだけ渡しておかないと」
「そうだね。そして君が忙しさにかまけて彼らを忘れると、途端に彼らは飢えてひもじい生活に逆戻りってわけだ」
「彼女を侮辱する言い方はよせ!」
ロメオの軽口に、カインは声を荒げて彼を睨んだ。
「君がしている事はその場しのぎの施しだよ。わかっているだろ」
怒鳴られてもロメオは平然とカインに言い返した。
「施しでは……ない」
カインは歯切れ悪く反発したが、ロメオは意に留めない。
「ジルダが心配していた。――君が貧民街に入れ込みすぎていると」
その言葉に、カインの中から親友へのばつの悪さなど消え去り、明らかな嫌悪の色をロメオに向けた。
「君はジルダの犬か」
忌々し気にカインは吐き捨てると、わざとらしい動作で草竜に騎乗した。
「君は僕の愛すべき従兄弟殿であり親友だ。今の言葉は忘れよう。――但し、次はない」
そう言い残すと、カインは草竜の手綱を振り屋敷を後にした。
「――愛すべき従兄弟……ねぇ。君が愛しているのは果たして誰なんだろうね」
従兄弟の後ろ姿を眺めて、ロメオはため息と共に呟いた。
あの魔力暴走の後、カインの意識が戻り容体が安定したと聞いて漸く、ロメオとティン=クエンはカインとの面会を許可された。
しかし、面会前にエスクード侯爵はロメオに言って聞かせた。
「カインは魔力暴走の原因を覚えていない。君の父上とアルティシアから聞いた話から、君がアルティシアに会っていて、甥として可愛がられていた事を知ったのが原因らしい。――君が悪いのではない。私が、もっとちゃんと早くに言っておけばよかったんだ――だが、君を見てその話を思い出すかもしれない。そうなったら……すまないが二度とカインには会わせる事ができない」
今回はカインが会いたがっているからと、万が一に備えてジルダを控えさせての面会だった。
ロメオはカインに謝りたかった。しかし、カインが忘れている以上、辛い記憶を呼び起こしてしまう恐れがあると言われると、それはできなかった。
――あの魔力暴走……
思い出すだけでも恐ろしかった。息ができず、体が圧し潰されそうに重く、体中の骨が軋み目の前が真っ暗になっていくあの苦しさ――あれが、カインの魔力。
父が、自分とティン=クエンを抱いて咄嗟に魔力で保護してくれなかったら、小さくて弱い自分たちの命は真っ先に潰えていただろう事は、幼いロメオにも容易に想像ができた。
しかしロメオは、自分が殺されかけた恐怖よりも、母に愛されていないと思っていた従兄弟の心の傷を知り、それを更に深く抉ってしまった事を悲しんでいた。
「ごめんね、ティン=クエン。君は何も悪くないのに巻き込んでしまって」
「僕の家はアバルト家に仕える家だ。ロメオがした事は僕がした事と同じ事だよ」
ティン=クエンは、その気の弱そうな外見とは真逆に、力強く微笑むと、ロメオの手を握り締めた。
「君は僕が守るよ。生まれた時からおじいさまにそう言われてきたんだ。大丈夫。僕はずっと君の味方だ」
ティン=クエンの手の暖かさに、これまで張り詰めていたものが決壊し、ロメオは涙が止まらなかった。
数日前に初めて会ったこの血縁は、自分と出会うずっと前から自分を守ると誓ってくれていた。その事実が嬉しかった。そして、ある人物の言葉が胸に思い出された。
――カインは一人なの。だからロメオ。あなたがカインの友達になってくれると嬉しいわ。
そうだ。あの方の言葉の通りだ。ティン=クエンが僕を支えてくれるのなら、僕はカインを支えよう。
幼いロメオは、そう決めた。
何があってもカインの親友であるのだと。
「なぜだ。彼女は謝礼で食べ物を買って、皆に分け与える事ができたと喜んでいたぞ」
壮年のアレッツォ執事の言葉に、カインは食って掛かるように言った。
イレリアに礼をしに行った夜の事だった。
騎士隊から出された謝礼の全てを食べ物に変えて配ってしまったと聞いて、カインは内心でとても驚いた。
あれだけの金があれば、貧民街など出て普通の平民として暮らすこともできただろうに。
だが、彼女はそれよりも、飢えた人たちを放っておけなかったのだ。
だから、カインはアレッツォにもっと金銭を用意するよう命じた。
しかし、アレッツォは否定したのだ。
「――負担だと?」
「はい。彼の方は既に騎士隊から十分な報奨を与えられています。カイン様から更に与えられたら、施しを受けたと傷つき、負担に思われるのではないでしょうか」
アレッツォの言葉にカインは思いとどまった。
確かにそうかもしれない。
「だが、それでは何のための謝礼なのか」
「それは受け取った方が、選択すべき問題です。彼の方はご自身が納得する形を選択されたのですよ。――それに」
アレッツォは一息つくと、カインの目を真正面から見つめた。
「カイン様は彼の方が貧民街から出られたとして、その後もご支援なさるおつもりですか?」
アレッツォの言うことは正しかった。
一時的に貧民街を脱して平民としての暮らしを手に入れたとして、あの薬師の仕事でそれを維持する事は難しいだろう。
一度会っただけだが、彼女の人柄は素晴らしいと思った。しかし、それだけでは一生彼女を支援する理由にはならない。
「だが、礼を言って終わりというのも気が引ける。私は彼女を見極めたいんだ」
カインが一度言い出したら引かない性格な事は、長年傍で見ていたアレッツォはよく知っている。
「でしたら――」
アレッツォは食料を差し入れする事を提案した。
実用的で、受け取っても困らず、イレリアの負担も軽減させられると、カインも納得した。
もっとも、さすがのアレッツォも、カインが3日と空けずに彼女の元に通うようになるとは予想すらできなかったのだが。
ジルダの言葉はその出来事を思い出させ、カインは少し恥ずかしくなった。
と、同時にジルダに腹立たしい気持ちも湧き上がってきた。
――まただ。またこの物言いだ。……あの人と……母上と同じ物言い……。
カインの苛立ちには気付いていないのか、ジルダは相変わらず美しい所作で立ち上がり、カインに一礼した。
「魔力もかなり戻ってきておられます。3日後にはまた吸収を再開する必要がございますね」
そう言うとジルダは、振り返りもせずにさっさとサロンを出て行った。
本来ならカインが獣車までエスコートすべきなのに、そんなものはハナから期待していないのがわかる、潔い足取りだ。
その後ろ姿をカインはじっと見つめていた。
子供の頃の彼女は、今と同じ感情をあまり顔に出さない子供だった。
いや、ちがう。感情を表現するのが非常に下手だった。
しかし、その魔力は透明でキラキラと美しく輝いていて、幼いカインはその魔力が大好きだった。
ずっと自分の不器量さを恥じて下を向いていたジルダは、カインの目には不器量には見えなかった。
一人の、寂しく、優しい暖かさと美しい魔力を持つ女の子――ただそれだけだった。
それは今も変わっていない。
だが、あの冬の日――母が亡くなるその時に傍に呼んだのは自分ではなくジルダだった。
それまで、ジルダと母が今際の際に呼ぶ関係だったなど知らなかったカインは、ひどく裏切られた気持ちになり、母の死後もカインの前で平然と悲しむ素振りを見せるジルダが許せなかった。
そして、年を重ねるごとに、かつての母のように話し振舞うジルダを嫌悪するようになっていた。
「今日も貧民街に行くのかい」
翌日、草竜に積めるだけの食料を袋いっぱいに積んで、いざ騎乗しようという時、アバルト侯爵家の獣車が屋敷の敷地内に入ってきた。
中から顔を出したのは、従兄弟であり親友のロメオだ。
「7日ぶりに君の顔を見られたのに、わざわざ見舞いに来た僕を置いて行くなんて」
「なら何故先触れを出さない」
ロメオに視線を向けず、草竜に袋を積む手を休めずにカインが言う。
「随分と他人行儀を強いることだ。君は一体親友を何だと思っているんだろうね」
子供の頃と変わらない、知的な光が輝くブルーグレーの瞳で、草竜に積まれた袋を見たロメオは、大袈裟にため息をついてみせた。
「明日から仕事に復帰するからな。そうすると次の休みまで会いに行けない。今のうちに渡せるだけ渡しておかないと」
「そうだね。そして君が忙しさにかまけて彼らを忘れると、途端に彼らは飢えてひもじい生活に逆戻りってわけだ」
「彼女を侮辱する言い方はよせ!」
ロメオの軽口に、カインは声を荒げて彼を睨んだ。
「君がしている事はその場しのぎの施しだよ。わかっているだろ」
怒鳴られてもロメオは平然とカインに言い返した。
「施しでは……ない」
カインは歯切れ悪く反発したが、ロメオは意に留めない。
「ジルダが心配していた。――君が貧民街に入れ込みすぎていると」
その言葉に、カインの中から親友へのばつの悪さなど消え去り、明らかな嫌悪の色をロメオに向けた。
「君はジルダの犬か」
忌々し気にカインは吐き捨てると、わざとらしい動作で草竜に騎乗した。
「君は僕の愛すべき従兄弟殿であり親友だ。今の言葉は忘れよう。――但し、次はない」
そう言い残すと、カインは草竜の手綱を振り屋敷を後にした。
「――愛すべき従兄弟……ねぇ。君が愛しているのは果たして誰なんだろうね」
従兄弟の後ろ姿を眺めて、ロメオはため息と共に呟いた。
あの魔力暴走の後、カインの意識が戻り容体が安定したと聞いて漸く、ロメオとティン=クエンはカインとの面会を許可された。
しかし、面会前にエスクード侯爵はロメオに言って聞かせた。
「カインは魔力暴走の原因を覚えていない。君の父上とアルティシアから聞いた話から、君がアルティシアに会っていて、甥として可愛がられていた事を知ったのが原因らしい。――君が悪いのではない。私が、もっとちゃんと早くに言っておけばよかったんだ――だが、君を見てその話を思い出すかもしれない。そうなったら……すまないが二度とカインには会わせる事ができない」
今回はカインが会いたがっているからと、万が一に備えてジルダを控えさせての面会だった。
ロメオはカインに謝りたかった。しかし、カインが忘れている以上、辛い記憶を呼び起こしてしまう恐れがあると言われると、それはできなかった。
――あの魔力暴走……
思い出すだけでも恐ろしかった。息ができず、体が圧し潰されそうに重く、体中の骨が軋み目の前が真っ暗になっていくあの苦しさ――あれが、カインの魔力。
父が、自分とティン=クエンを抱いて咄嗟に魔力で保護してくれなかったら、小さくて弱い自分たちの命は真っ先に潰えていただろう事は、幼いロメオにも容易に想像ができた。
しかしロメオは、自分が殺されかけた恐怖よりも、母に愛されていないと思っていた従兄弟の心の傷を知り、それを更に深く抉ってしまった事を悲しんでいた。
「ごめんね、ティン=クエン。君は何も悪くないのに巻き込んでしまって」
「僕の家はアバルト家に仕える家だ。ロメオがした事は僕がした事と同じ事だよ」
ティン=クエンは、その気の弱そうな外見とは真逆に、力強く微笑むと、ロメオの手を握り締めた。
「君は僕が守るよ。生まれた時からおじいさまにそう言われてきたんだ。大丈夫。僕はずっと君の味方だ」
ティン=クエンの手の暖かさに、これまで張り詰めていたものが決壊し、ロメオは涙が止まらなかった。
数日前に初めて会ったこの血縁は、自分と出会うずっと前から自分を守ると誓ってくれていた。その事実が嬉しかった。そして、ある人物の言葉が胸に思い出された。
――カインは一人なの。だからロメオ。あなたがカインの友達になってくれると嬉しいわ。
そうだ。あの方の言葉の通りだ。ティン=クエンが僕を支えてくれるのなら、僕はカインを支えよう。
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