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第一章 幼少期編
第四十三話 復讐開始1 (とある使用人達視点)
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ヒタ、ヒタ、とナニカが迫る音がする。それは、職務中に必ず聞こえてきて、すぐに振り返るものの、いつだってそこには誰も居ない。そう、そのはずだったのに……。
「ひっ」
いつものように振り返った一瞬、私は確かに見た。青白い肌の男の子が……ニタリと笑みを浮かべる姿を。
ガッシャーンと持っていた皿を落とした私に、メイド長がすぐさまやってきて叱責してくるものの、何だかそのメイド長の様子もおかしい。
「まったく、何だと言うのです。今日は……」
どこか参ったように頭に手を当てるメイド長に、私はもしかして、という思いを振り切れず、尋ねる。
「あ、あの……もしかして、メイド長も、何かおかしなモノを見ていたりします、か?」
その言葉に、メイド長はハッと頭に当てていた手を取り、私の方を見て……すぐに青ざめた。
「あ……あっ……」
「メイド、長?」
……違う。メイド長が見ているのは私の後ろだ。
それに気づいた瞬間、ブワリと悪寒が走る。
(後ろ……何、が……)
確認するのは怖い。しかし、確認しないのも怖い。だから、恐る恐る、ゆっくりと私は振り返って……。
「な、なぁんだ、脅かさないでくださいよ、メイド長ー」
何も、居なかった。メイド長が恐れるモノは、何も……。しかし……。
「ひ、ぃ……」
バタンと音がして、私は何事かと、メイド長の方を振り返る。そして……見てしまった。
「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁあっ」
爛れた顔の、男の子を。
「きゃあぁぁぁぁぁぁあっ!」
そして、私の視界は闇に閉ざされた。
ところ変わって、使用人達の休憩室。今日は変なモノばかり見ると、使用人達全体が沈んでいた。
先ほどだって、メイド長ともう一人のメイドが倒れているところを発見して、彼女達を休憩室に運び込んだところだった。
「はぁ……この屋敷、呪われてるのかなぁ?」
「なぁに、今さら。あのオジョーサマが居る時点で、呪われててもおかしくないでしょう?」
食事を目の前のテーブルに置いて、私は対面に座るメイドに弱音を吐く。
『あのオジョーサマ』というのは、奥様が産んだ黒の獣つきだ。何か名前はあったような気はするものの、それを覚えている使用人なんて居ないだろう。そして、当然、そんな不吉の象徴が居る屋敷に仕える私達は、何かしら訳ありの使用人だ。私の弱音に答えた彼女だって、どこかのお屋敷の子息に色目を使ったとか何とかだったはずだ。
「呪いがなんだっていうのっ。本当に怖いのは、人間だっての」
同じ席に、やはり食事を持ってやって来た彼女は、どこかのお屋敷で金品をくすねたとかだっただろうか?
「まぁ、それはそうだけどさー」
実際、このお屋敷に勤める者達全員を対象にした呪いなんて、発動できるわけがないのは分かっていた。そもそも、呪い系統の魔法を使える者は極少数だし、一人を呪うだけでも莫大な魔力が必要なのだ。確か、奥様が呪い系統の魔法を持っているなんて噂もあったが、それで呪うとすれば、相手はあのオジョーサマくらいのものだろう。
「まっ、何はともあれ食べるわよ」
そう言われて、私達はほぼ同時に皿に盛られたお肉やらパンやらへと、思い思いに手を伸ばして口をつける。と、その瞬間。
「お、おぇ」
「うげぇ」
「なに、これぇ……」
とてもではないが、見た目にそぐわない強烈な味が舌を焼いた。見た目は、美味しそうなローストチキンとサラダ、そして、フカフカのパンなのに、何か、生臭いような味ばかりが広がる。だから、私達は慌てて水を飲む、のだが……今度は、野菜が腐った汁のような激臭と、生温く酸っぱい味が口に満たされる。
「おげぇ」
「うぇ」
「おぇぇ」
とてもではないが、食べられない。何で、こんなことに、と思っていると、誰も居ないはずの背後から声が聞こえる。
「愛し子虐めた。仕返し、仕返し、ふふふふふっ」
愛し子、なんて呼ばれる者を虐めた覚えなどない。いや、唯一、あのオジョーサマには色々と嫌がらせはしたものの、あんな子供に理解ができるはずもない。
「虐めた、虐めた、虐めた、虐めた、虐めた――――」
繰り返される言葉に、私達は必死にその発生源を探すものの、それはどこにも見つからなかった。そして、その言葉は、私達がどこに居ても、何をしていても聞こえ続け……二日目で、私は屋敷から逃げ出すのだった。
「ひっ」
いつものように振り返った一瞬、私は確かに見た。青白い肌の男の子が……ニタリと笑みを浮かべる姿を。
ガッシャーンと持っていた皿を落とした私に、メイド長がすぐさまやってきて叱責してくるものの、何だかそのメイド長の様子もおかしい。
「まったく、何だと言うのです。今日は……」
どこか参ったように頭に手を当てるメイド長に、私はもしかして、という思いを振り切れず、尋ねる。
「あ、あの……もしかして、メイド長も、何かおかしなモノを見ていたりします、か?」
その言葉に、メイド長はハッと頭に当てていた手を取り、私の方を見て……すぐに青ざめた。
「あ……あっ……」
「メイド、長?」
……違う。メイド長が見ているのは私の後ろだ。
それに気づいた瞬間、ブワリと悪寒が走る。
(後ろ……何、が……)
確認するのは怖い。しかし、確認しないのも怖い。だから、恐る恐る、ゆっくりと私は振り返って……。
「な、なぁんだ、脅かさないでくださいよ、メイド長ー」
何も、居なかった。メイド長が恐れるモノは、何も……。しかし……。
「ひ、ぃ……」
バタンと音がして、私は何事かと、メイド長の方を振り返る。そして……見てしまった。
「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁあっ」
爛れた顔の、男の子を。
「きゃあぁぁぁぁぁぁあっ!」
そして、私の視界は闇に閉ざされた。
ところ変わって、使用人達の休憩室。今日は変なモノばかり見ると、使用人達全体が沈んでいた。
先ほどだって、メイド長ともう一人のメイドが倒れているところを発見して、彼女達を休憩室に運び込んだところだった。
「はぁ……この屋敷、呪われてるのかなぁ?」
「なぁに、今さら。あのオジョーサマが居る時点で、呪われててもおかしくないでしょう?」
食事を目の前のテーブルに置いて、私は対面に座るメイドに弱音を吐く。
『あのオジョーサマ』というのは、奥様が産んだ黒の獣つきだ。何か名前はあったような気はするものの、それを覚えている使用人なんて居ないだろう。そして、当然、そんな不吉の象徴が居る屋敷に仕える私達は、何かしら訳ありの使用人だ。私の弱音に答えた彼女だって、どこかのお屋敷の子息に色目を使ったとか何とかだったはずだ。
「呪いがなんだっていうのっ。本当に怖いのは、人間だっての」
同じ席に、やはり食事を持ってやって来た彼女は、どこかのお屋敷で金品をくすねたとかだっただろうか?
「まぁ、それはそうだけどさー」
実際、このお屋敷に勤める者達全員を対象にした呪いなんて、発動できるわけがないのは分かっていた。そもそも、呪い系統の魔法を使える者は極少数だし、一人を呪うだけでも莫大な魔力が必要なのだ。確か、奥様が呪い系統の魔法を持っているなんて噂もあったが、それで呪うとすれば、相手はあのオジョーサマくらいのものだろう。
「まっ、何はともあれ食べるわよ」
そう言われて、私達はほぼ同時に皿に盛られたお肉やらパンやらへと、思い思いに手を伸ばして口をつける。と、その瞬間。
「お、おぇ」
「うげぇ」
「なに、これぇ……」
とてもではないが、見た目にそぐわない強烈な味が舌を焼いた。見た目は、美味しそうなローストチキンとサラダ、そして、フカフカのパンなのに、何か、生臭いような味ばかりが広がる。だから、私達は慌てて水を飲む、のだが……今度は、野菜が腐った汁のような激臭と、生温く酸っぱい味が口に満たされる。
「おげぇ」
「うぇ」
「おぇぇ」
とてもではないが、食べられない。何で、こんなことに、と思っていると、誰も居ないはずの背後から声が聞こえる。
「愛し子虐めた。仕返し、仕返し、ふふふふふっ」
愛し子、なんて呼ばれる者を虐めた覚えなどない。いや、唯一、あのオジョーサマには色々と嫌がらせはしたものの、あんな子供に理解ができるはずもない。
「虐めた、虐めた、虐めた、虐めた、虐めた――――」
繰り返される言葉に、私達は必死にその発生源を探すものの、それはどこにも見つからなかった。そして、その言葉は、私達がどこに居ても、何をしていても聞こえ続け……二日目で、私は屋敷から逃げ出すのだった。
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