悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

文字の大きさ
45 / 412
第一章 幼少期編

第四十四話 復讐開始2 (三人称視点)

しおりを挟む
「あぁっ、忌々しいっ」


 最近、使用人が次々と辞めては、精神を病んでいるという状況下、彼女だけはまだ、何も被害を受けていなかった。ブロンドの長い髪に、赤茶色の瞳を持つキツイ印象を抱かれるタイプの女性は、親指の爪を噛んで扉の向こうを睨み付ける。
 彼女の名は、リリアナ・リ・アルテナ。ユミリアを産んだ母親だ。


「あの人は、最近仕事仕事って……こんなことなら、仕事にすら目を向けないように……いえ、それはダメね。生活ができないんじゃ意味がないもの」


 リリアナの天職とも言える魔法の才は、人を呪うことに特化したものだ。それを用いて、リリアナは今の夫である、ガイアス・リ・アルテナの意思を奪い、自分と仕事しか見れないように仕立て上げ、ガイアスが当時片想いしていた女性は病弱になるように仕向けた。そして、子供が産まれれば、リリアナは晴れて、ガイアスと結ばれたという事実ができるはずだったのだが……産まれたのは、ユミリアくろだった。


「あれが黒でさえなければ、私はガイアス様との子供として愛せたのにっ。なぜっ、あんなおぞましいものがっ」


 そんな身勝手なことを言いながら、ユミリアに対して呪詛をぶつけるが、現段階でガイアスともう一人の女性に対して呪いをぶつけているため、大した威力にはならない。せいぜい、ちょっと転びやすくなるくらいの効果しかでないだろう威力だ。


「ふふふっ、あんなに痛い思いをしたんだもの……簡単には死なせないわ。ずっと、ずぅっと、苦しめば良い」


 およそ、娘に向ける感情とはかけ離れたものを抱くリリアナは気づいていない。その顔が、誰もが眉をひそめるほど醜悪に歪んでいることを。
 と、その時、睨んだ先の扉がノックされる。


「失礼します、奥様。メリーでございます」

「っ、何しに来たのかしら? あぁ、また小言なら、聞かないわよ? さっさと職務に戻ったらどうなの?」


 扉の外に立つのは、メリーという名のメイド。彼女は、ガイアスが信頼するメイドであり、どんなに嫌がらせをしてもこの屋敷から出ていかなかった人間だ。そんなメリーは、自らユミリアの世話係を買って出て、目が見えないにもかかわらずせっせと働いていた。
 最近は、特に何も言ってこなかったメリーだが、今日は何かを言うつもりらしいと悟り、リリアナは強い口調で反論する。


「いえ、旦那様がお呼びなのですが、いかがなさいますか?」

「あの人が……? っ、すぐに準備を「必要ない」えっ?」


 ガイアスが呼んでいると分かり、慌てて準備の指示を出そうとしたところ、勝手に扉が開けられる。そして、そこから出てきたのは、輝かんばかりの金髪に、青い瞳を持つ険しい表情のナイスミドル。


「っ、ガイアス様っ!?」


 その男の登場に、リリアナは大いに驚く。


「さて、一応聞こう。申し開きはあるか?」


 眉間に深くシワを刻み込み、重々しく尋ねる彼は、とても意思を奪われた人間だとは思えない。


「も、申し開き? 何のことです?」


 様子のおかしい……いや、まるで正気に戻ったかのようなガイアスの眼光に、リリアナはたじろぎながらも言葉を返す。


「……そうか。まぁ、もとより期待はしていなかった。連れていけ」

「「はっ!」」


 そんなガイアスの言葉で、リリアナの部屋には騎士達がなだれ込む。


「なっ、何を! 離しなさいっ、私を誰だと思っているのっ!?」

「もう、お前はただのリリアナだ。実家の方も、お前のことは知らないそうだ。公爵家への乗っ取り行為及び、伯爵家令嬢への傷害によって、お前は犯罪奴隷として売られることになった」

「なっ……」


 汚いものを見るような目に晒され、信じられない言葉を投げつけられ、リリアナは絶句する。しかし、その決定に狂いはないようで、騎士達はリリアナをキツク縛り上げ、後ろから押して歩かせる。


「な、何かの間違いですっ! こんな、こんなのって……」

「証拠は、全てメリー達が集めてくれた。言い逃れはできない」


 連れていけ、と騎士達に合図をしたガイアスを見て、リリアナは悲鳴をあげる。


「いやっ、いやっ、いやぁぁぁぁぁあっ!!!」


 そして、うるさく悲鳴をあげ続けていたリリアナの声が聞こえなくなったところで、ガイアスが立つ扉の端に、ヒョコっと黒い猫耳が現れる。


「おわっちゃにょ? (終わったの?)」

「あぁ、すまなかったな。ユミリア。私が不甲斐ないばかりに、ツラい思いをさせた」

「みゅっ、いいにょっ。じぇんぶおわっちゃにゃりゃ、しょれでだいじょーぶ(みゅっ、良いのっ。全部終わったなら、それで大丈夫)」


 ニコニコと笑うユミリアに、ガイアスは戸惑いながらも、そぅっとその頭に手を乗せて撫でる。……撫でる。


「おほんっ。それでは、ガイアス様? ユミリアお嬢様の撫で心地が良いのは分かりましたから、さっさと後始末をしましょうね?」

「……もう少し」

「みゅうぅ」


 メリーの言葉に、どこか絶望したような表情を浮かべたガイアスは、一応粘るべく、そんな言葉を絞り出す。
 ちなみに、ユミリアはとても気持ち良さそうに目を細めて鳴いていた。


「ダメです。さぁ、さっさと終わらせないと、ユミリアお嬢様に料理を提供する料理人すら居ないなんてことになりかねませんよ?」

「すぐ、取りかかる」


 そして、ガイアスはすぐに新たな使用人や料理人を雇うべく、仕事に戻っていった。
しおりを挟む
感想 344

あなたにおすすめの小説

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...