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第一章 幼少期編
第五十一話 イルト・ラ・リーリス
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アルト王子に連れてこられたのは、庭の端の方で、全く人気のない場所だった。私とおなじ年の令嬢ならば、転んでもおかしくない勢いでどんどん進んでいくアルト王子は、前方で木々の隙間にひょこっと顔を出す。
「いるとっ」
「……なに? にいさん?」
憮然とした声で応える誰か。いや、誰かではなく、イルト王子。その姿はまだ見えないものの、幼く透き通るような声に興味を引かれる。
「いるととともだちになるひとをつれてきたっ」
(いやいやいや、まだ友達になるとは一言も言ってないんだけど!?)
「っ、つれてきたのっ? すぐにおいかえしてっ」
アルト王子以外の存在が近くに居ると知ったイルト王子は、途端にその声に怯えを混じらせる。
「いやだっ。かのじょは、ぜったいいるととなかよくなってくれる」
「さっさともとのばしょにもどしてこなきゃだめっ」
(……なんか、私は捨て犬みたいな扱いじゃない?)
そんな扱いを受けて私がどう動くかと言えば……簡単だ。そっと気配を消し、イルト王子の背中があるであろう場所へと忍び寄る。
(ふむふむ、今はフードを外しているみたいだし、素顔が見れそうだね)
懐かしの黒い髪の他人が、今、アルト王子と必死に言い争っている。私の位置は、ちょうどアルト王子からも見えないため、ドッキリ作戦は順調に成功しそうだ。
「だいたい、ぼくはこんなところにきたくなんてなかった! こうしゃくれいじょうのたんじょうびだかなんだかしらないけど、そんなのどうでもいいっ」
「へー、私のことはどうでも良い、と?」
そう私が告げた途端、空気が凍った。
「えっ? あれ? えっ?」
アルト王子は、いつの間にか姿を消していた私に困惑する。そして、イルト王子はというと……。
(うん、固まってる)
あまりに衝撃的過ぎたのか、ビクゥッと背筋を伸ばした後は、一ミリたりとも動かない。
(でも、これじゃあ顔が見られないなぁ……)
振り向いてさえくれれば、顔が見れるのだが、どうにもその気配がない。
(うん、回りこんじゃおうっ)
そして、わざと音を立てずに、すすすすすっとイルト王子の前に回りこめば、イルト王子は突然視界に映った私の姿にまたしてもビクゥッとして私と視線を合わせる。しかし……。
(な、何、これ……)
回りこんだ私も、無事ではすまなかった。
心臓が、早鐘を打つ。頬に熱が集まる。心が……歓喜に満たされる。
黒髪黒目の男の子。イルト・ラ・リーリスは、少したれ目の優しそうな少年で、随分と儚げなイメージを持たせられる子供だった。そんな彼と目が合った瞬間、私は私の心の制御を盛大に失う。
(えっ? うそ? これが、一目惚れ……?)
自分の心の変化を正しく理解した私は……。
「結婚してくださいっ!」
気づいた時にはそう叫んでいた。
「いるとっ」
「……なに? にいさん?」
憮然とした声で応える誰か。いや、誰かではなく、イルト王子。その姿はまだ見えないものの、幼く透き通るような声に興味を引かれる。
「いるととともだちになるひとをつれてきたっ」
(いやいやいや、まだ友達になるとは一言も言ってないんだけど!?)
「っ、つれてきたのっ? すぐにおいかえしてっ」
アルト王子以外の存在が近くに居ると知ったイルト王子は、途端にその声に怯えを混じらせる。
「いやだっ。かのじょは、ぜったいいるととなかよくなってくれる」
「さっさともとのばしょにもどしてこなきゃだめっ」
(……なんか、私は捨て犬みたいな扱いじゃない?)
そんな扱いを受けて私がどう動くかと言えば……簡単だ。そっと気配を消し、イルト王子の背中があるであろう場所へと忍び寄る。
(ふむふむ、今はフードを外しているみたいだし、素顔が見れそうだね)
懐かしの黒い髪の他人が、今、アルト王子と必死に言い争っている。私の位置は、ちょうどアルト王子からも見えないため、ドッキリ作戦は順調に成功しそうだ。
「だいたい、ぼくはこんなところにきたくなんてなかった! こうしゃくれいじょうのたんじょうびだかなんだかしらないけど、そんなのどうでもいいっ」
「へー、私のことはどうでも良い、と?」
そう私が告げた途端、空気が凍った。
「えっ? あれ? えっ?」
アルト王子は、いつの間にか姿を消していた私に困惑する。そして、イルト王子はというと……。
(うん、固まってる)
あまりに衝撃的過ぎたのか、ビクゥッと背筋を伸ばした後は、一ミリたりとも動かない。
(でも、これじゃあ顔が見られないなぁ……)
振り向いてさえくれれば、顔が見れるのだが、どうにもその気配がない。
(うん、回りこんじゃおうっ)
そして、わざと音を立てずに、すすすすすっとイルト王子の前に回りこめば、イルト王子は突然視界に映った私の姿にまたしてもビクゥッとして私と視線を合わせる。しかし……。
(な、何、これ……)
回りこんだ私も、無事ではすまなかった。
心臓が、早鐘を打つ。頬に熱が集まる。心が……歓喜に満たされる。
黒髪黒目の男の子。イルト・ラ・リーリスは、少したれ目の優しそうな少年で、随分と儚げなイメージを持たせられる子供だった。そんな彼と目が合った瞬間、私は私の心の制御を盛大に失う。
(えっ? うそ? これが、一目惚れ……?)
自分の心の変化を正しく理解した私は……。
「結婚してくださいっ!」
気づいた時にはそう叫んでいた。
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