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第一章 幼少期編
第八十三話 王妃様とお茶
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急いでイルト王子の元へと戻る私は、そこで初めて、声をかけられる。
「ユミリア嬢」
柔らかく、優しい声。そして、少しだけ聞き覚えのある声に振り向けば、そこには、王妃様が居た。
「っ」
「緊張なさらないで? 良かったら、こちらで一緒に話をしませんか?」
思わず固まる私に、王妃様は優しく言葉を紡ぐ。
「は、い」
王族の、しかも、王妃様の提案を断れるはずもない。すぐにでもイルト王子の元に戻りたかったところではあるものの、もう少しの間、我慢しなくてはならないようだった。
ローズガーデンの一角で、私は王妃様に招かれ、席に着く。そこには、私以外のご令嬢も居て、記憶が正しければ、彼女達はそれなりに身分の高いご令嬢だったはずだ。
「いきなり呼び止めてごめんなさいね? 今日のお茶会の目的のために、少しだけ話をする機会を設けているのよ」
『目的』と聞いて、私は違和感を感じる。
(今回のお茶会の目的は、恐らく、アルト様の婚約者を見つけること……だと思ってたんだけど?)
そうであるなら、すでにイルト王子の婚約者となった私に話しかける必要はない。しかし、ふと、ご令嬢達へと視線を移した瞬間、私は、どんな意味で呼ばれたのかを理解した。
(なるほど、ふるいにかけるため、か……)
私の姿に、明らかに嫌悪の表情を浮かべる者、何とも思ってないように装いながらも怯える者、なぜか、興味を示してくる者。チラリと王妃様を見れば、王妃様も、ご令嬢達の反応を見ていた。そして……。
「リリアナ嬢、レイア嬢、ナターシャ嬢以外は、退席してもらえるかしら?」
柔らかな微笑みとともに、王妃様は、私に負の感情を向けた者達全員の退席を促す。
(うん、あの笑顔に惑わされちゃダメだね)
けっして、相手に非があったことを悟らせないその笑みに、退席を促されたご令嬢達は戸惑いながらも従う。さすがに、ここで文句を言うほど躾の行き届いていないご令嬢はいなかったらしい。
「さて、それでは、お話を始めましょうか」
相変わらずの微笑みを浮かべながら、王妃様は残った私達四人の顔を順に見ていく。
(役目が終わったからといって、すぐには解放してもらえないよなぁ……)
「ユミリア嬢は、とても不思議なドレスを着ていますね? どこのお針子に仕立ててもらったのかしら?」
しかも、最初の会話の矛先は、なぜか私の方へと向かう。
(さて、正直に答えるか、否か)
正直に答えるならば、私自身が手作りした、ということになるのだが、さすがに五歳児がドレスを自分で縫うなど、あり得ない話だ。かといって、王妃様相手に嘘を吐くのも不味い。
「そう、ですね……こちらの衣装は、異国のドレスとなります。と、申しましても、私がその知識を得ただけではありますが……」
「まぁっ! アルテナ嬢は、教養も豊かでいらっしゃるのねっ!」
「ちょっ、リリ!? 王妃様の前よ!?」
私の言葉に反応したのは、薄桃色の髪をした可愛らしいご令嬢で、恐らくは、十歳くらいなのだろう。そして、そのご令嬢を止めるべく声をあげたのは、レモン色の髪をしたちょっと勝ち気そうなご令嬢。愛称で呼んでいる辺り、仲の良い相手なのだろう。
「いえ、構いませんよ? ここはお茶会の場。楽しくお話できなければ意味がありません」
王妃様の言葉で、レモン色のご令嬢は少し青ざめながらも小さく『はい』と応える。
「レイ、ここはアルテナ嬢とお近づきになるチャンスなのよ? 前から話してたじゃない。アルテナ嬢とお友達になりたいって」
そして、リリと呼ばれた薄桃色のご令嬢の言葉に、レモン色のご令嬢は口をパクパクさせて顔を真っ赤にする。
「私と、お友達に、ですか?」
黒の獣つきである私に、友達になりたいなどという奇特な人が居るとは思わなかった。
「そ、それより、王妃様のお話の方が優先よっ。王妃様、どうぞ、お話くださいっ」
私の質問に答えることなく、レイと呼ばれたご令嬢は話を逸らす。
「そうですね……まず、今から話すことは命令ではありませんので、個人の意思で判断してもらいたいのですが……」
そうして、王妃様は、フワリと微笑んで、衝撃の一言を放った。
「ユミリア嬢」
柔らかく、優しい声。そして、少しだけ聞き覚えのある声に振り向けば、そこには、王妃様が居た。
「っ」
「緊張なさらないで? 良かったら、こちらで一緒に話をしませんか?」
思わず固まる私に、王妃様は優しく言葉を紡ぐ。
「は、い」
王族の、しかも、王妃様の提案を断れるはずもない。すぐにでもイルト王子の元に戻りたかったところではあるものの、もう少しの間、我慢しなくてはならないようだった。
ローズガーデンの一角で、私は王妃様に招かれ、席に着く。そこには、私以外のご令嬢も居て、記憶が正しければ、彼女達はそれなりに身分の高いご令嬢だったはずだ。
「いきなり呼び止めてごめんなさいね? 今日のお茶会の目的のために、少しだけ話をする機会を設けているのよ」
『目的』と聞いて、私は違和感を感じる。
(今回のお茶会の目的は、恐らく、アルト様の婚約者を見つけること……だと思ってたんだけど?)
そうであるなら、すでにイルト王子の婚約者となった私に話しかける必要はない。しかし、ふと、ご令嬢達へと視線を移した瞬間、私は、どんな意味で呼ばれたのかを理解した。
(なるほど、ふるいにかけるため、か……)
私の姿に、明らかに嫌悪の表情を浮かべる者、何とも思ってないように装いながらも怯える者、なぜか、興味を示してくる者。チラリと王妃様を見れば、王妃様も、ご令嬢達の反応を見ていた。そして……。
「リリアナ嬢、レイア嬢、ナターシャ嬢以外は、退席してもらえるかしら?」
柔らかな微笑みとともに、王妃様は、私に負の感情を向けた者達全員の退席を促す。
(うん、あの笑顔に惑わされちゃダメだね)
けっして、相手に非があったことを悟らせないその笑みに、退席を促されたご令嬢達は戸惑いながらも従う。さすがに、ここで文句を言うほど躾の行き届いていないご令嬢はいなかったらしい。
「さて、それでは、お話を始めましょうか」
相変わらずの微笑みを浮かべながら、王妃様は残った私達四人の顔を順に見ていく。
(役目が終わったからといって、すぐには解放してもらえないよなぁ……)
「ユミリア嬢は、とても不思議なドレスを着ていますね? どこのお針子に仕立ててもらったのかしら?」
しかも、最初の会話の矛先は、なぜか私の方へと向かう。
(さて、正直に答えるか、否か)
正直に答えるならば、私自身が手作りした、ということになるのだが、さすがに五歳児がドレスを自分で縫うなど、あり得ない話だ。かといって、王妃様相手に嘘を吐くのも不味い。
「そう、ですね……こちらの衣装は、異国のドレスとなります。と、申しましても、私がその知識を得ただけではありますが……」
「まぁっ! アルテナ嬢は、教養も豊かでいらっしゃるのねっ!」
「ちょっ、リリ!? 王妃様の前よ!?」
私の言葉に反応したのは、薄桃色の髪をした可愛らしいご令嬢で、恐らくは、十歳くらいなのだろう。そして、そのご令嬢を止めるべく声をあげたのは、レモン色の髪をしたちょっと勝ち気そうなご令嬢。愛称で呼んでいる辺り、仲の良い相手なのだろう。
「いえ、構いませんよ? ここはお茶会の場。楽しくお話できなければ意味がありません」
王妃様の言葉で、レモン色のご令嬢は少し青ざめながらも小さく『はい』と応える。
「レイ、ここはアルテナ嬢とお近づきになるチャンスなのよ? 前から話してたじゃない。アルテナ嬢とお友達になりたいって」
そして、リリと呼ばれた薄桃色のご令嬢の言葉に、レモン色のご令嬢は口をパクパクさせて顔を真っ赤にする。
「私と、お友達に、ですか?」
黒の獣つきである私に、友達になりたいなどという奇特な人が居るとは思わなかった。
「そ、それより、王妃様のお話の方が優先よっ。王妃様、どうぞ、お話くださいっ」
私の質問に答えることなく、レイと呼ばれたご令嬢は話を逸らす。
「そうですね……まず、今から話すことは命令ではありませんので、個人の意思で判断してもらいたいのですが……」
そうして、王妃様は、フワリと微笑んで、衝撃の一言を放った。
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