98 / 412
第一章 幼少期編
第九十七話 迫る時
しおりを挟む
影の耳は、移動時はネズミの姿。そして、対象を定めれば、その者の影に潜み、けっして姿を現すことはない。彼らには個々に知能が存在し、適度に離れた人間を対象に選び、集めた情報をまとめて主へと提出する。だからこそ……。
「みゅう、これは、結構深刻かもしれない……」
集められた情報は、やはり錬金術や生体科学、魔導の力で造り上げた、『影の口』と命名した手のひらいっぱいにデブッと乗る白ネズミの口から語られる。ほしい情報の条件を伝えていれば、その情報だけ得ることも可能だ。
「イルト様の敵が、思ってた以上に多い……」
結果、分かったことといえば、イルト王子を貶めようとする輩が予想以上に多いということだった。そして、そいつらの一部が、動き始めるということも分かっている。
「イルト様に怪我を負わせようだなんて、絶対に阻止しなきゃっ」
もちろん、私がイルト王子に渡した道具は優秀だ。だから、攻撃されたところで、イルト王子の体には傷一つつかないだろう。しかし、それでも、襲われた恐怖は残ってしまう。
「セイには、たっぷりと協力してもらうよ?」
「分かってる、けど、本当にその作戦でいくの? もっと安全な策もありそうだけど……」
「それはダメ。ちょうど、襲撃の前日が、正式に私を『王家の守り人』として任命する場があるんだから、それを利用しない手はないのっ」
「いや、うん……でも、やっぱり、僕はユミリアが危険な目に遭うのは嫌だ」
最初に出会った頃と比べれば、格段にツンの量が減って、むしろデレばかりという状態になっているセイは、ジーッと私を見つめる。
「……セイ、私は強いよ?」
「でも、まだ子供だ」
「中身は大人だよ?」
「中身も十分子供に見える」
「私が負けるとでも?」
「……」
子供だから、という主張は分からなくもない。しかし、それとは別に、私の実力という面で見れば、セイも否定の言葉が思い浮かばないようだった。
(まぁ、前世は大人になりきってはいなかったから、前世と今世を合わせて大人の年齢っていう状態だし、セイの『中身も子供』って言い分はあながち外れでもないけど……今は、大人ってことにしておいてもらおう)
黙り込み、悩む様子のセイに、私は一つの条件を出す。
「大丈夫。私は、敵には容赦なんて一切しないから」
「あぁ……うん、確かに、そうだったね」
「むしろ人間相手なら、煽ってはめて、どん底に突き落とすことだってできるんだから、やりがいはとってもあるよ?」
「いや、それはそれでどうかと……」
「責任は全部、お父様持ち。もしくは、陛下持ちだから、思う存分動けるっ」
「えっ? い、いやいやいや? あれ? いつそんなことになったの!?」
「お父様は私が間違ったことをしなければ味方になってくれるし、陛下は、私を『王家の守り人』にしたことから、その責任が発生する。つまりは、責任ぶん投げて蹂躙可能っ」
「誰もそこまで言ってないよ!?」
「でも、王族であるイルト様を守るために必要なら、認めざるを得ないと思うの」
「そ、それは確かに……」
「だから、目指せっ、最悪の王家の守り人!」
「それは絶対、目指しちゃダメっ!」
セイからは、お父様や陛下の胃や髪の毛を心配してくれと告げられるものの、そんなもの、私が胃薬でも育毛剤でも作れば解決するのだ。だから、何の問題もない。そうして、その時は、着々と迫るのだった。
「みゅう、これは、結構深刻かもしれない……」
集められた情報は、やはり錬金術や生体科学、魔導の力で造り上げた、『影の口』と命名した手のひらいっぱいにデブッと乗る白ネズミの口から語られる。ほしい情報の条件を伝えていれば、その情報だけ得ることも可能だ。
「イルト様の敵が、思ってた以上に多い……」
結果、分かったことといえば、イルト王子を貶めようとする輩が予想以上に多いということだった。そして、そいつらの一部が、動き始めるということも分かっている。
「イルト様に怪我を負わせようだなんて、絶対に阻止しなきゃっ」
もちろん、私がイルト王子に渡した道具は優秀だ。だから、攻撃されたところで、イルト王子の体には傷一つつかないだろう。しかし、それでも、襲われた恐怖は残ってしまう。
「セイには、たっぷりと協力してもらうよ?」
「分かってる、けど、本当にその作戦でいくの? もっと安全な策もありそうだけど……」
「それはダメ。ちょうど、襲撃の前日が、正式に私を『王家の守り人』として任命する場があるんだから、それを利用しない手はないのっ」
「いや、うん……でも、やっぱり、僕はユミリアが危険な目に遭うのは嫌だ」
最初に出会った頃と比べれば、格段にツンの量が減って、むしろデレばかりという状態になっているセイは、ジーッと私を見つめる。
「……セイ、私は強いよ?」
「でも、まだ子供だ」
「中身は大人だよ?」
「中身も十分子供に見える」
「私が負けるとでも?」
「……」
子供だから、という主張は分からなくもない。しかし、それとは別に、私の実力という面で見れば、セイも否定の言葉が思い浮かばないようだった。
(まぁ、前世は大人になりきってはいなかったから、前世と今世を合わせて大人の年齢っていう状態だし、セイの『中身も子供』って言い分はあながち外れでもないけど……今は、大人ってことにしておいてもらおう)
黙り込み、悩む様子のセイに、私は一つの条件を出す。
「大丈夫。私は、敵には容赦なんて一切しないから」
「あぁ……うん、確かに、そうだったね」
「むしろ人間相手なら、煽ってはめて、どん底に突き落とすことだってできるんだから、やりがいはとってもあるよ?」
「いや、それはそれでどうかと……」
「責任は全部、お父様持ち。もしくは、陛下持ちだから、思う存分動けるっ」
「えっ? い、いやいやいや? あれ? いつそんなことになったの!?」
「お父様は私が間違ったことをしなければ味方になってくれるし、陛下は、私を『王家の守り人』にしたことから、その責任が発生する。つまりは、責任ぶん投げて蹂躙可能っ」
「誰もそこまで言ってないよ!?」
「でも、王族であるイルト様を守るために必要なら、認めざるを得ないと思うの」
「そ、それは確かに……」
「だから、目指せっ、最悪の王家の守り人!」
「それは絶対、目指しちゃダメっ!」
セイからは、お父様や陛下の胃や髪の毛を心配してくれと告げられるものの、そんなもの、私が胃薬でも育毛剤でも作れば解決するのだ。だから、何の問題もない。そうして、その時は、着々と迫るのだった。
282
あなたにおすすめの小説
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
幽霊じゃありません!足だってありますから‼
かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。
断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど
※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ
※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる