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第二章 少女期 瘴気編
第百七十一話 何がなんだか(ミーシャ視点)
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天気が良くて、温かくて、平和で楽しい今日を過ごせることを、私は欠片も疑うことなく魔法学園の教室へと向かう途中……。
「ミーシャ・リグナー男爵令嬢はあなた様でしょうか?」
この学園の校内に居るはずのない銀髪に青い瞳を持つ長身の騎士と出くわし、出会い頭にそう問いかけられる。
「そう、ですが、あなたは?」
本来、相手の名前を尋ねるならばまずは自分から名乗るのが礼儀というもの。しかし、職務中の騎士に関してはその限りではない。そんな、お姉様から授けてもらった知識を思い出しながら問いかけると、騎士は、スッとその冷たそうな瞳を細めて口を開く。
「私は、王国騎士団所属のケイン・リ・セイトリーと申します。どうか、ご同行を願います」
セイトリーと言えば、いや、それ以前に『リ』を関する家なんて、三つしか存在しない。王族に最も近いとされるお姉様の家、アルテナ家。才女とされる女傑、ゾーラが嫁いだどこか闇を抱えているとされる家、ランダス家。そして最後に、代々神官になる者が多い家系、セイトリー家。それらの三家は、三大公爵家と呼ばれ、貴族社会で一線を画する存在だ。
「はい……」
そんな、遥かに上の存在に請われて、一介の男爵令嬢が断れるはずもなく、お姉様に会うはずだった教室を前に、先ほど来た道を、かの騎士に先導されて引き返す。
そんな私達を、周囲の者は好奇の目で見ていたが、そんなものを気にしていては、お姉様の側には居られない。とにかく、私は目の前の白い騎士服を眺めながら、懸命に思考を巡らせる。
(王国騎士団ということは、王族の誰かが命を下した? でも、そんなことをしなくても、私は毎日殿下達と顔を合わせることになるのに……)
全くもって、状況が読めない。そもそも、こういった腹の探り合いだの、状況の分析だのといったことは、あまり得意ではないのだ。本来のヒロインだって苦手とすることを、紛い物である私は得意であるなんてこともなかった。
(せめて、お姉様達にこの情報が伝わってくれたら良いけど……箝口令とか敷かれてないよね?)
もしそうならば、私は本当に何もできなくなる。お姉様や側近候補の面々、そして、殿下方が居なければ、私はどこにでも……居るわけではないかもしれないが、ただのしがない男爵令嬢なのだ。振りかざせる権力なんて、たかが知れている。
「こちらへ」
王家の紋章付きの馬車。それに乗るよう、手を差し出され、思わず息を呑む。内心は、不安でいっぱいだ。しかし、目の前には公爵家の人間、そして、その背後には王族が控えていると分かる以上、足を踏み出さないわけにはいかない。震えそうになる手をそっと差し出したその時だった。
「待て」
聞き覚えのある声。しかし、いつもとは違って、威厳に満ち溢れた声が、響き渡った。
「ミーシャ・リグナー男爵令嬢はあなた様でしょうか?」
この学園の校内に居るはずのない銀髪に青い瞳を持つ長身の騎士と出くわし、出会い頭にそう問いかけられる。
「そう、ですが、あなたは?」
本来、相手の名前を尋ねるならばまずは自分から名乗るのが礼儀というもの。しかし、職務中の騎士に関してはその限りではない。そんな、お姉様から授けてもらった知識を思い出しながら問いかけると、騎士は、スッとその冷たそうな瞳を細めて口を開く。
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そんな、遥かに上の存在に請われて、一介の男爵令嬢が断れるはずもなく、お姉様に会うはずだった教室を前に、先ほど来た道を、かの騎士に先導されて引き返す。
そんな私達を、周囲の者は好奇の目で見ていたが、そんなものを気にしていては、お姉様の側には居られない。とにかく、私は目の前の白い騎士服を眺めながら、懸命に思考を巡らせる。
(王国騎士団ということは、王族の誰かが命を下した? でも、そんなことをしなくても、私は毎日殿下達と顔を合わせることになるのに……)
全くもって、状況が読めない。そもそも、こういった腹の探り合いだの、状況の分析だのといったことは、あまり得意ではないのだ。本来のヒロインだって苦手とすることを、紛い物である私は得意であるなんてこともなかった。
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「待て」
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