悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第百八十話 サバイバル1

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「みゅう……イルト様……」


 時は遡り、イルト様の元から転移で逃げ出した直後、私はさすがに落ち込んでいた。


「みゅうぅぅ」


 今、私が居る場所は、とある孤島。そこは、神々の領域とされる場所であり、人は一人も存在せず、強力な魔物がはびこる恐ろしく危険な場所でもある。波打ち際で蹲った私は、背後から飛んできた無数の針を結界で弾いて、振り返ることもなく、攻撃を仕掛けてきた存在へ雷を落としておく。
 それなりの衝撃と音、そして、焦げた臭いが鼻に届く。しかし、これら一連の作業は、ほとんど無意識のものだ。


「みゅうぅっ、どうして、私なの?」


 あの日、今にも崩れそうな小屋を探索した結果、私は、目的の人物に会うことができなかった。だから、さっさと帰ろうときびすを返したのだが……その瞬間、視界の端で光るものを見た気がして、それの正体を確認すべく、地面へと近づいた。そうして、土の間から見えたのは、古いペンダントトップ。どうにも、小さな絵が入れられるようになっていたのだが、そこには、ただただ黒いだけで、何も入っていないように見えた。そう、そう見えただけで……それには、恐ろしいものが入っていた。
 何気なく、その黒い部分に触れた瞬間、私は凄まじい悪寒と吐き気に襲われ、たまらず、その場でえづく。そして次の瞬間には……私は、瘴気を撒き散らす災厄となっていた。


(とりあえず、イルト様達から離れたは良いけど……分からないことも色々あるんだよね)


 何かの魔物が蔦を伸ばして、私を絡めとろうとしてきたため、その蔦を逆に掴んで、背負い投げの要領で海へと投げた私は、お屋敷でのことを思い返す。


(イルト様達は、確実に瘴気に蝕まれていた。でも、ギリアだけは、無事だった)


 私はあの瞬間、確かに瘴気を撒き散らす存在となった。そして、そのことで取り乱しもしたし、実際、イルト様達からすれば変な態度だっただろう。しかし、ただでさえ黒は嫌われているというのに、さらに、私が災厄となってしまったなどという情報が漏れれば、我が家も、イルト様も、どうなるか分からなかった。だから、何も言うことができず、イルト様達に強い瘴気の症状が表れたと判断した時、ミーシャに全てを託す形で姿を消したのだ。
 ただ、そんな中でも異質だったのは、ギリアの存在。ギリアは、普通ならば瘴気の影響を受けるはずが、全くその様子が見られなかった。むしろ、瘴気の方が、ギリアを嫌っているようにすら感じられて、何とかその真相に辿り着きたいとは思ったものの、ギリアだけを連れていくわけにもいかず、一人でこの孤島へとやってきたのだ。


(まぁ、でも、今はそれよりも……)


 狼型の魔物に取り囲まれた私は、うっそりと微笑む。


魔物しょくりょう確保だよね?」


 その日、とある孤島でのヒエラルキーに大きな変動が起こったのは、誰も知らない。
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