226 / 412
第二章 少女期 瘴気編
第二百二十五話 可愛いは罪(イルト視点)
しおりを挟む
(どうしよう。ユミリアが可愛過ぎて、愛し過ぎて……心臓が、もたないっ)
いや、実際は心臓以上に深刻なモノが存在しているものの、極力、ソレからは目を逸らし、思考を逸らす。そうでなければ、ユミリアを襲ってしまいそうで怖いからだ。
(一緒に休むと言ったけど……ここは、退散するしかない)
そう、ユミリアのためにも、僕はそこから抜け出さなければならない。もちろん、強力な結界は張るし、ここに僕以外の何者も近づけないようにはする。普段、自分を守るために張る結界よりも、緻密に、念入りに魔石へ魔力を込めて闇魔法による結界を形作る。
(よしっ、これなら。後は、ユミリアの腕から抜け出すだけ)
片腕を抱き込まれた状態でベッドに横になっていた僕は、極力ユミリアを刺激しないよう、そっと、そーっと腕を抜き取ろうとするのだが……。
(……ユミリアが、僕の袖を掴んで……ま、不味い不味いっ、早く抜け出さなきゃっ)
少し引っ掛かりがあって見てみれば、ユミリアが僕の袖をキュッと掴んでいて、そのあまりにも可愛らしい光景に僕の中の何かが暴走しそうになったが、とにかく『平常心、平常心』と呟いて、無事、ユミリアから腕を抜き取る。
「みゅ……」
抜き取った瞬間、ユミリアが小さく眉を潜め、ぐずるように鳴く。
(!?!!? ……くっ、眠っていても、可愛さで殺されそうになるなんてっ)
すぐにでも抱き締めたいところではあるが、それをすると色々もたない気がするため、そっとユミリアの触り心地の良い髪を梳いてから離れる。
こういう時、王子ならばお姫様に口づけくらいするのかもしれないが、残念ながら、今の僕にはハードルが高すぎる。
音を立てないように扉を開け、外に出ると、僕はユミリアの耳で声が拾えないであろう範囲にまで行き、そこで見つけた執事に告げる。
「ユミリアが起きてから始める。漏れがないかの確認をしておくように」
「承知いたしました」
ユミリアは忘れているようだが、今日は、ユミリアの誕生日であり、僕達が初めて出会った記念日だ。プレゼントはもちろん用意しているし、ユミリアの家族だってちゃんと呼んでいる。ユミリアがいつ帰ってくるか分からなかったため、大きなパーティーにはできないが、ユミリアならば大きなパーティーよりも、身内でのささやかなパーティーの方を喜んでくれることくらいちゃんと知っている。
「イルト、ユミリア嬢の様子は?」
廊下を歩いていた僕は、先ほど別れた兄さんが前から歩いてくるのを見て、ユミリアが居る部屋の方向を眺める。
「やっぱり、疲れてたみたいで、今はぐっすりだよ」
「そっか。まだ詳しくは聞いてないけど、色々あったんだろうな。でも、イルトはユミリア嬢の側に居なくて良いのか?」
「うん、まぁ、その……一応、準備状況を確認しようと思って」
まさか、ユミリアの可愛さにノックアウトして、襲いそうになったなどとは、例え仲の良い兄であろうとも言えるはずもない。
「そうなのか? なら、それは私に任せてくれ! イルトは、心置きなくユミリア嬢の側に居るといいぞ!」
ただし、善意でそう告げる兄さんに勝てるわけもなく……僕は、結局自室に戻って、ユミリアの可愛い寝顔に生殺しの時間を過ごすはめになるのだった。
いや、実際は心臓以上に深刻なモノが存在しているものの、極力、ソレからは目を逸らし、思考を逸らす。そうでなければ、ユミリアを襲ってしまいそうで怖いからだ。
(一緒に休むと言ったけど……ここは、退散するしかない)
そう、ユミリアのためにも、僕はそこから抜け出さなければならない。もちろん、強力な結界は張るし、ここに僕以外の何者も近づけないようにはする。普段、自分を守るために張る結界よりも、緻密に、念入りに魔石へ魔力を込めて闇魔法による結界を形作る。
(よしっ、これなら。後は、ユミリアの腕から抜け出すだけ)
片腕を抱き込まれた状態でベッドに横になっていた僕は、極力ユミリアを刺激しないよう、そっと、そーっと腕を抜き取ろうとするのだが……。
(……ユミリアが、僕の袖を掴んで……ま、不味い不味いっ、早く抜け出さなきゃっ)
少し引っ掛かりがあって見てみれば、ユミリアが僕の袖をキュッと掴んでいて、そのあまりにも可愛らしい光景に僕の中の何かが暴走しそうになったが、とにかく『平常心、平常心』と呟いて、無事、ユミリアから腕を抜き取る。
「みゅ……」
抜き取った瞬間、ユミリアが小さく眉を潜め、ぐずるように鳴く。
(!?!!? ……くっ、眠っていても、可愛さで殺されそうになるなんてっ)
すぐにでも抱き締めたいところではあるが、それをすると色々もたない気がするため、そっとユミリアの触り心地の良い髪を梳いてから離れる。
こういう時、王子ならばお姫様に口づけくらいするのかもしれないが、残念ながら、今の僕にはハードルが高すぎる。
音を立てないように扉を開け、外に出ると、僕はユミリアの耳で声が拾えないであろう範囲にまで行き、そこで見つけた執事に告げる。
「ユミリアが起きてから始める。漏れがないかの確認をしておくように」
「承知いたしました」
ユミリアは忘れているようだが、今日は、ユミリアの誕生日であり、僕達が初めて出会った記念日だ。プレゼントはもちろん用意しているし、ユミリアの家族だってちゃんと呼んでいる。ユミリアがいつ帰ってくるか分からなかったため、大きなパーティーにはできないが、ユミリアならば大きなパーティーよりも、身内でのささやかなパーティーの方を喜んでくれることくらいちゃんと知っている。
「イルト、ユミリア嬢の様子は?」
廊下を歩いていた僕は、先ほど別れた兄さんが前から歩いてくるのを見て、ユミリアが居る部屋の方向を眺める。
「やっぱり、疲れてたみたいで、今はぐっすりだよ」
「そっか。まだ詳しくは聞いてないけど、色々あったんだろうな。でも、イルトはユミリア嬢の側に居なくて良いのか?」
「うん、まぁ、その……一応、準備状況を確認しようと思って」
まさか、ユミリアの可愛さにノックアウトして、襲いそうになったなどとは、例え仲の良い兄であろうとも言えるはずもない。
「そうなのか? なら、それは私に任せてくれ! イルトは、心置きなくユミリア嬢の側に居るといいぞ!」
ただし、善意でそう告げる兄さんに勝てるわけもなく……僕は、結局自室に戻って、ユミリアの可愛い寝顔に生殺しの時間を過ごすはめになるのだった。
108
あなたにおすすめの小説
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
幽霊じゃありません!足だってありますから‼
かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。
断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど
※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ
※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる