悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百九十四話 囚われのド変態

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 地下への扉を探す時間も惜しかった私は、地面をぶち抜いて、自然落下に任せてそこに降り立つ。


「きゃあぁぁあっ!!」


 磔にされたままのド変態も落下してきたものの、それを受け止めてやるつもりはない。『ぶべっ』という声とともに、地面にキスするそれを視界の端で確認した私は、ようやく、正常に反応したGPS的道具でイルト様がこの真っ暗な通路の先に居ることを察知して、駆ける。

 暗い、暗い、狭い通路。そして、その先に見えたのは、大きな扉で、その部屋にイルト様が居ると理解している私は、イルト様が怪我をしないよう、扉を普通に手で押し開ける。


「イルト様っ!!」


 そこは、真っ暗で、とても広い空間。とりあえず、暗視メガネをかけて確認すれば、誰かが……いや、イルト様が、部屋の中央に倒れていることに気づいた。


「イルト様っ」


 怪我をしたのか、それとも、もう、遅かったのか。とにかく、不安をかかえながらも、イルト様の元へ駆け寄った私は、すぐに、イルト様の状態を確認する魔法を込めた魔石を取り出し、発動させる。


「よ、良かった……」


 結果は、多少疲れているようではあれど、ただ眠っているだけ。変な力が入り込んだ形跡も、怪我の様子もない。


「だから言ったでしょ? ちゃんと止めてるって」


 イルト様が無事だと分かり、安堵した私の背後から、誰かの……いや、あのド変態の声がかけられる。


「ド変態さん……」

「ちょっ、確かに、ワタシ、まだ名乗ってはいないけどっ! その呼び方はどうかと思うわよ!?」

「イルト様に、何をしたんデスカ?」

「聞いてないしっ! しかもっ、怖いからっ!?」


 まだ磔にされたまま怯えるド変態から聞き出したところ、イルト様が魔王になる直前、このド変態が介入して、イルト様の意識を奪ったらしい。今は、ただ気絶しているだけで、何の問題もないとのこと。


「私のイルト様に、触った……?」

「ひぃっ! ふ、不可抗力よっ! だ、だって、あの馬鹿竜がやることを黙って見過ごしてたら、ローランちゃんが困るでしょうっ!!」

「ローラン? ローランの知り合いですか?」


 思わぬ名前が出てきて、私は、イルト様を特製拘束ベッドに拘束しておいてから、問いかける。


「あら? あなたも知ってるの? 可愛いわよね? ローランちゃんっ! ワタシは……そうね、ローランちゃんの愛の下僕よっ」


 特大のハートが付きそうな語尾の感覚に、ローランも変なものに好かれたなと思いながら、イルト様をこの場所から運び出す準備を始める。


「あ、あの、ところで、ね? この十字架、どうやっても取れないのだけどっ、外してはもらえないかしら?」

「ここまで来れたんだから、問題ないと思うけど?」

「問題大有りよっ! 手も足も使えないしっ、魔法でしか動けないしっ、しかも、時々ビリッてするしっ!!」

「? 出力が弱かったかな? 分かった。また今度、改善しておく」

「ちょっ、嫌な予感しかしないわよ!? ほ、ほら、あなたの愛しいイルトさ「イルト様の名前を気安く呼ぶなんて……やっぱり、もっと色々した方が」ごめんなさいぃぃっ!! と、とにかくっ、あなたの愛しい人を助けたワタシに、ご褒美があっても良いと思うのよ? ねっ?」


 汗をダラダラ流しながら懇願するド変態に、それもそうかと納得する。どういう経緯かは知らないが、助けられたのは本当だ。


「なら、選ばせてあげる。とっても幸せな夢を見ながら狂人になれる薬と、とっても幸せな夢を見ながら眠り続ける薬、どっちが良い?」

「どっちもいやぁぁあっ!!」


 目の毒としか言えないこの存在を、イルト様のトラウマになる前に消したいのに、どうにも、ド変態は抵抗を止めてはくれない。そうして、駄々をこねるド変態……エイ何とかと名乗っていたそれを、とりあえず、箱詰めにして運び出すことにしたのだった。
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