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裏前編
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それはカークとリィナの結婚式から約一年前のことだった。
「お前の悪行は全て分かっているんだ! ナタリー・アルビニア! お前のような性悪とは、婚約破棄だ!!」
そう宣言したのは、カーク・ド・トトッコ。後にリィナと結婚することとなる愚鈍で有名な第二王子殿下だ。
ただ、宣言の場に居合わせたのは、少人数でもあった。
一人は、宣言の中に名前が挙がっていたナタリー・アルビニア。彼女は、アルビニア公爵家の長女であり黒髪に深紅の瞳を持つスタイル抜群の美女だ。
「婚約破棄は私の心情としては構いませんが、今は保留といたしましょう。それに、悪行と申されましても、心当たりはございませんが?」
そうはっきりと言ったナタリーは、カークの隣に居る令嬢をチラリと見た後、たまたま王城に用事があった両親に付き添っていたばかりに、側を通りがかってしまったリィナや周囲で控えていた侍女、侍従達へも視線を向ける。
「マーシャル嬢。申し訳ないのだけど、込み入った話になりそうなの。だから「あぁっ! ちょうどいい! マーシャル嬢に証人になってもらおう!」……本気ですか? 殿下?」
きっと、カークかナタリーに対して挨拶に行くよう言われただけだっただろうリィナを巻き込むまいと、ナタリーは声をかけたのだが、その気遣いはカークの謎の宣言によってかき消される。
実際のところ、公爵家の令嬢といえども、このような王命の婚約を覆そうとする話し合いの証人などという役割は荷が重いというものだ。これがリィナの親であるマーシャル公爵であれば問題は無いのかと問われると、それも微妙なラインでもある。
「何をしている、早く来い!」
そう命じられてしまえば、ただの公爵令嬢であるリィナは従わざるを得ない。
「承知いたしました」
内心が見えない微笑みで、リィナはその話し合いの場に着く。
「さて、それでは、ナタリーの断罪を始める!」
そして、カークはわけの分からないことを宣った。
「ナタリー、お前は、ここに居るシェリアを虐げた罪がある!」
そう言いながら、カークは傍らに居た少女を抱き寄せる。
彼女の名前は、シェリア・リース。リース男爵家の庶子であり、五年ほど前にリース男爵に引き取られた少女だ。フワフワとした茶髪にクリっとした茶色の瞳。正直、可愛い部類の少女ではあるものの、そこまで特別な美少女というほどではない。しかも、当のシェリアは青ざめながら口パクで『申し訳ありません』と何度も何度も口にしている。
明らかに、シェリアは巻き込まれただけなのだろうが、相手は第二王子。たかだか男爵家の娘程度が逆らえる相手ではない。
見ている方が気の毒になってくるほどブルブルと震えるシェリアは、不敬にならないようにするためなのか、逃げ出したい様子なのに身動ぎすら躊躇っているようだった。
「リース嬢を虐げた罪、ですか? それは、いつ、どこで、どのようなことが行われたのでしょうか?」
「お前の悪行は全て分かっているんだ! ナタリー・アルビニア! お前のような性悪とは、婚約破棄だ!!」
そう宣言したのは、カーク・ド・トトッコ。後にリィナと結婚することとなる愚鈍で有名な第二王子殿下だ。
ただ、宣言の場に居合わせたのは、少人数でもあった。
一人は、宣言の中に名前が挙がっていたナタリー・アルビニア。彼女は、アルビニア公爵家の長女であり黒髪に深紅の瞳を持つスタイル抜群の美女だ。
「婚約破棄は私の心情としては構いませんが、今は保留といたしましょう。それに、悪行と申されましても、心当たりはございませんが?」
そうはっきりと言ったナタリーは、カークの隣に居る令嬢をチラリと見た後、たまたま王城に用事があった両親に付き添っていたばかりに、側を通りがかってしまったリィナや周囲で控えていた侍女、侍従達へも視線を向ける。
「マーシャル嬢。申し訳ないのだけど、込み入った話になりそうなの。だから「あぁっ! ちょうどいい! マーシャル嬢に証人になってもらおう!」……本気ですか? 殿下?」
きっと、カークかナタリーに対して挨拶に行くよう言われただけだっただろうリィナを巻き込むまいと、ナタリーは声をかけたのだが、その気遣いはカークの謎の宣言によってかき消される。
実際のところ、公爵家の令嬢といえども、このような王命の婚約を覆そうとする話し合いの証人などという役割は荷が重いというものだ。これがリィナの親であるマーシャル公爵であれば問題は無いのかと問われると、それも微妙なラインでもある。
「何をしている、早く来い!」
そう命じられてしまえば、ただの公爵令嬢であるリィナは従わざるを得ない。
「承知いたしました」
内心が見えない微笑みで、リィナはその話し合いの場に着く。
「さて、それでは、ナタリーの断罪を始める!」
そして、カークはわけの分からないことを宣った。
「ナタリー、お前は、ここに居るシェリアを虐げた罪がある!」
そう言いながら、カークは傍らに居た少女を抱き寄せる。
彼女の名前は、シェリア・リース。リース男爵家の庶子であり、五年ほど前にリース男爵に引き取られた少女だ。フワフワとした茶髪にクリっとした茶色の瞳。正直、可愛い部類の少女ではあるものの、そこまで特別な美少女というほどではない。しかも、当のシェリアは青ざめながら口パクで『申し訳ありません』と何度も何度も口にしている。
明らかに、シェリアは巻き込まれただけなのだろうが、相手は第二王子。たかだか男爵家の娘程度が逆らえる相手ではない。
見ている方が気の毒になってくるほどブルブルと震えるシェリアは、不敬にならないようにするためなのか、逃げ出したい様子なのに身動ぎすら躊躇っているようだった。
「リース嬢を虐げた罪、ですか? それは、いつ、どこで、どのようなことが行われたのでしょうか?」
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