私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます

・めぐめぐ・

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最終話

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 その後、ルシアの行動は、彼女がもっていた魔法の宝飾品によって、無自覚になされたものだと発表された。殿下のご慈悲、さらに皆の面前でルシアが私に対し、詫びを申し出たことで、全てが許された。
 もちろん、色んな声があった。

 しかし私が彼女と親しくすることで、皆は口をつぐみ、そのうち忘れ去られていった。
 
 あれから数年後――

「あ、お母さま」
「レガシー、またその本を読んでいるの?」
「うん! すっごく好きだから!」

 娘の頭を撫でながら、彼女の読む本を覗き込んだ。

 タイトルは《全ての愛を君に》
 私がルシアと殿下――いえ陛下の話を聞きながら書き綴った、この世界の物語だ。

 しかし内容は書き換えている。
 私の書き綴ったこの物語に《悪役令嬢》はいない。

 私はエリオット様と結婚し、女の子を出産した。子もすくすく育ち、私たちが書いた本を読めるまでになるほど、大きく成長している。

 跡継ぎである第二子を抱きながら、私は微笑んだ。

 レガシーを見つめる視線は、私一つだけではなかった。

「ほんと、レガシーはその本好きね? どんなところが好きなの?」

 ともにお茶をしていたルシアが微笑みながら尋ねると、レガシーの無垢な瞳がぱっと明るくなった。

「だって、皆優しいから! 悪い人、誰もいないんだもん!」
「そっかー、そうだよね?」

 レガシーの言葉に、ルシアが嬉しそうに瞳を細めると、大きくなった自分のお腹を愛おしそうに撫でた。

 物語の主人公である私と、《悪役令嬢》であったルシアの関係は良好だ。
 ルシアも結婚し、もう少ししたら第一子が生まれる予定で幸せの絶頂にいる。

 その時、エリオット様がやってこられた。休憩に来られたらしい。
 私に近づくと、そっと頬に口づけをされた。

「ルシア、来ていたのか。体調の方はどうだ?」
「ありがとうございます、陛下。母子ともに順調でございます」
「そうか、それなら良かった」

 ルシアと彼女のお腹に視線を向けると、エリオット様は微笑まれた。そしてレガシーを抱き上げると、高く抱っこする。

 娘の笑い声が、部屋に明るく響き渡った。
 
 私は、窓から空を見上げた。

(今でも、私たちの物語を《読者》が見ているのかしら?)

 不意にもたげて来た不安を振り落とした。

 あの日から、私たちは《悪役令嬢》らしい行動をしていないし、そういう物語の流れにもなっていない。
 それが《読者》がこの世界に《悪役令嬢》を求めていない何よりの証拠だ。

(《読者》も、この世界を気に入ってくださっているはず。だから……大丈夫)

 そう。
 気に入って見守っているはずだ。

 《悪役令嬢》のいない、
 いや誰一人悪役のいない、この優しい物語を――


  <完>
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