追放された最弱村人、実は世界最強でした 〜神々に愛された無自覚チート、気づいたら聖女も魔王も嫁希望だった件〜

uzura

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第6話 聖女リアとの出会い

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焚き火の赤い灯が夜の森を照らし、木漏れ日のようにゆらゆらと揺れていた。  
黒狼との戦いのあと、リオたちは森を抜けた小さな湖のほとりに野営地を構えていた。  
湖面には月が静かに映り、周囲には虫の音だけが響いている。  
傷ついたリアは少しずつ快復し、焚き火のそばで柔らかに微笑んでいた。  

「本当に……助かりました。私一人では、あの森を抜けられなかったでしょう。」  
「礼はいらない。困ってる人を見たら放っておけないだけさ。」  
「ふふ。それはまるで、昔の勇者様のような言い方ですね。」  
リアが冗談めかして言うと、リオは少しだけ苦笑した。  

「……勇者か。」  
その言葉に、胸の奥の古い痛みがわずかに疼いた。  
彼を追放したあの男、アルトの顔が一瞬浮かぶ。だがそれを振り払うように、リオは薪をくべた。  

シリスが膝の上でしっぽを振りながら言う。  
「リオは勇者より勇者にゃ。あいつらみたいに偽物じゃなくて、本物にゃ。」  
「……そうか?」  
「そうにゃ。わたしが保証するにゃ。神も、あなたを選んだにゃ。」  
シリスの言葉はいつになく真剣だった。  
リアがその会話に耳を傾けながら、焚き火越しに穏やかな声で言葉を続けた。  

「あなたの力……“創世の加護”のこと、少し話してもいいですか?」  
リオは小さく頷く。  
「正直、俺自身よくわかってないんだ。ただ気づいたら、自然が応えてくれるようになった。」  
「それこそが“根源と繋がる者”の証です。神々の時代の伝承によれば、この世界は“命の糸”で繋がっており、それを結び直せるのが唯一“創世の加護”なのです。」  
リアの視線には崇敬にも似た光があった。  
「つまり俺は……この世界の命そのものと、会話してるってことか?」  
「はい。けれどそれだけではありません。あなたが望むなら、世界の理を変えることもできる。」  

リオは手を見つめた。  
自分の掌が、あの戦いのとき何かを創り出した。  
生命を癒やし、瘴気を浄化し、草木を再生させた――それが理を動かしているというなら、確かに異常な力だ。  
「……そんなものを、人間が持っていいのか?」  
「神々でさえ“恐れた”力です。けれど今、あなたに宿ったのは偶然ではありません。神々が世界に再び均衡を取り戻そうとしているのかも。」  

風が静かに流れ、湖面を撫でた。  
リオは焚き火を見つめ、しばらく黙り込んでいた。  

「俺はな、リア。かつて勇者の仲間だった。村人の身で、必死に食らいついた。でも弱かった。邪魔だと罵られて、追放された。」  
「……そんな。」  
リアの顔色が変わる。  
「皮肉なことに、追放された今になって、神の加護を持ってるって気づいた。」  
「人の善意や努力が報われないなんて……神に仕える者として、悔しいです。」  
「そういう顔をするな。もう慣れた。だけど、あいつらにだけは負けたくない。」  

焚き火の火がぱちりと爆ぜた。  
その音に混ざって、リオの中で何かが固まっていく。  
同情や悲しみではない。――決意だった。  

リアはその横顔を見つめ、そっと手を重ねた。  
「それでもあなたは、人を憎んでいない。だからこそ、神はあなたに力を与えたのかもしれません。」  
柔らかな声が胸の奥に染みる。  
リオは何も言わず、その手の温もりを感じていた。  

夜が更け、星の光が湖面に無数の宝石のように散りばめられる。  
リアは焚き火の明かりで祈りを捧げ始めた。  
その唇が紡ぐ祈りの言葉は静かで、どこか懐かしい響きを持っていた。  

「どうか、この方の道に試練を。けれど、決して折れぬように。  
 神の子らの導きが、彼の魂を照らしますように。」  

祈りが終わると、空からわずかに光の粒が舞い降りた。  
それはまるで神が応えた証のようだった。  

「……お前の祈りは届くんだな。」  
「いえ、今のはただの願いです。でも……神様は、あなたを見ています。」  
リアの微笑みは、どこか寂しげでもあった。  

そのとき、シリスが耳をぴくりと動かした。  
「にゃ? 誰か来るにゃ。」  
リオは瞬時に立ち上がり、周囲を警戒した。  
草の揺れる音。足音は軽く、人間のものだ。  
月明かりの中、二つの影が現れた。  

鎧をまとい、槍を構える男たち。  
その装飾には見覚えがあった。勇者アルトの従者が身につけていた紋章だ。  

「ようやく見つけたぞ……リオ。」  
低く冷たい声が夜に響いた。  
「……やっぱり、来たか。」  
リオの目に一瞬だけ炎が宿る。  

「命令だ。お前を拘束する。“神の加護”を持つ者を王国に召し出す。それが陛下の勅命だ。」  
「陛下の勅命、ね。“追放”した王が今さら何のつもりだ。」  
「貴様の力を国のために利用する。それに逆らうなら――」  
男は槍を構えた。  
だがその瞬間、彼の足元から蔓が伸び、動きを封じた。  

リオが静かに言う。  
「俺を縛っておいて、今度は“国のために”か。……笑わせるな。」  
蔓が弾け、槍ごと吹き飛ばした。  
衝撃で男たちは転がり、呻き声を上げた。  

リアが立ち上がり、叫ぶ。  
「やめてください! 血を流しても何も解決しません!」  
「リア、下がってろ。」  
「いいえ、彼らの背後にいるのは……王ではない。」  

彼女の瞳が真剣に光る。  
「魔の気配がします。この命令は、“誰か”に操られている。」  
リオは眉をひそめた。  
男たちの体をよく見ると、背中に黒い紋が浮かび上がっていた。  
それは確かに、魔族の呪印。  

「まさか。王国の兵が魔族に……?」  
「にゃ、もう放っておけないにゃ。」  
シリスが爪を光らせ、空気に金の紋様を描く。  
風が泣き、地が震え、兵士たちの背中から黒い煙が噴き出した。  
それが霧のように消えると、彼らは糸が切れたように倒れた。  

「今のは……」  
「魂を操られてたにゃ。完全に人間の意識じゃなかったにゃ。」  
リアが胸に手を当てた。  
「これほどの呪いを扱える存在……ただの魔族ではありません。もしかすると、“黒き王”が動いている……」  
「黒き王?」  
「千年前に封じられた大魔王です。神代の戦いの最後に封印されたはずですが……」  

リオはしばらく沈黙した。  
世界が、再び大きく動き始めている。  
勇者を、王国を、神殿を巻き込む運命の渦。その中心に、なぜか自分がいる。  

「面倒なことになったな。」  
「けど、あなたなら抗えるにゃ。」  
「……ああ。もう怯えるのは終わりだ。」  

月光が三人の影を長く伸ばし、夜風が湖面を揺らした。  
リオは静かに拳を握る。力が掌で熱く鼓動していた。  

この夜の出会いは、やがて世界の命運を変える起点となる。  
追放された最弱の男と、天から堕ちた聖女。その物語が、確かに動き始めた。  

続く
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