悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu

文字の大きさ
114 / 149

114.日記〇〇年××月〇3日

しおりを挟む
―フィリップスの日記より―

〇〇年〇×月〇3日

昨日、兄さんは今年入学したジンノ王太子殿下の取り巻きになったという。だけど、何か胸騒ぎがした。特に気になるのは、王太子殿下の婚約者の取り巻きが平民の学生を苛めていたことだ。取り巻きの立場とはいえ辺境伯の令嬢が
立場を悪くするようなことを実行するだろうか?

「今年は、例年と違うのかな?」

我が国は貴族と平民の身分社会が成り立っているが、他国に比べて選民意識が薄いと言われている。だからこそ学園でも貴族と平民の子供による軋轢が薄い。ましてや王族関係者ならなおさらだ。なのに何でだろう?

「兄さんに聞いてみるか」

学園に通っているのは兄さんだ。それにある意味当事者のはずだし、ある程度なら知っているだろうと思った。だけど、後で知らなければよかったと後悔した。

「ああ、そのことなんだけどな。こんな噂があるんだ」

「噂?」

「実は誰かが遠回しにたきつけたらしいのさ。あの王太子は結構癖のある性格なんだけどさ、女子に割と人気あんだよ。貴族令嬢にしろ平民の女子にしろな。王太子殿下自身も女の子にモテてまんざらでもないから貴族も平民も分け隔てなく接してるんだ。その中に婚約者のほうの取り巻きが相当入れ込んでてな、様子を見てるとわかりやすいんだよ。性格も嫉妬深くて行動的みたいだったんだ。だからこそ付け込みやすかったってわけさ。運が悪い令嬢だな」

なんということだろうか。そんな話が本当だったら平民の子が苛められたのはその第三者のせいでもあったんだ。目を丸くして言葉を失った兄さんは続けてこんなことを口にした。

「……お前が言いたいことは分かる。そんな奴がいたらなんて卑怯とかずる賢いとか言いたいんだろ? だが、こんなことは貴族社会じゃ日常茶飯事なんだ。いいか? 俺達だって他人事じゃないぜ。両親のせいで落ち目になってしまったソノーザ家の名声を上げるためにも俺が、俺達が頑張っていかなきゃいけないんだからな。たとえ、他者を蹴落としてその手を少し汚してでもな」

「なっ!? だからって、そんな……!」

「俺だって本当は嫌さ。……こんなことになったのも父上と母上のせいさ。その子供の俺達がそのツケを払わなければならない。貴族とはそういう者なんだよ。覚えときな」

「…………」

兄さんは父と母を悪く言う。そしてその尻拭いを子供である私達がしなければならないとも。そんな言葉に私は更に何も言えなくなった。貴族とはそんなに残酷なものだったのか? そんなのおかしいと言いたかったが、長男ですでに学園に通う兄さんに対して私は何を言っても説得力がない。だから、納得はできなかったけど、これ以上は何も聞かなかった。いや、何も聞きたくなかった。
しおりを挟む
感想 309

あなたにおすすめの小説

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

縁の鎖

T T
恋愛
姉と妹 切れる事のない鎖 縁と言うには悲しく残酷な、姉妹の物語 公爵家の敷地内に佇む小さな離れの屋敷で母と私は捨て置かれるように、公爵家の母屋には義妹と義母が優雅に暮らす。 正妻の母は寂しそうに毎夜、父の肖像画を見つめ 「私の罪は私まで。」 と私が眠りに着くと語りかける。 妾の義母も義妹も気にする事なく暮らしていたが、母の死で一変。 父は義母に心酔し、義母は義妹を溺愛し、義妹は私の婚約者を懸想している家に私の居場所など無い。 全てを奪われる。 宝石もドレスもお人形も婚約者も地位も母の命も、何もかも・・・。 全てをあげるから、私の心だけは奪わないで!!

ハーレムエンドを迎えましたが、ヒロインは誰を選ぶんでしょうね?

榎夜
恋愛
乙女ゲーム『青の貴族達』はハーレムエンドを迎えました。 じゃあ、その後のヒロイン達はどうなるんでしょうね?

我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。 そこで目撃してしまったのだ。 婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。 よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!  長くなって来たので長編に変更しました。

邪魔者はどちらでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。 私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。 ある日、そんな私に婚約者ができる。 相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。 初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。 そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。 その日から、私の生活は一変して―― ※過去作の改稿版になります。 ※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。 ※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

【完結】その溺愛は聞いてない! ~やり直しの二度目の人生は悪役令嬢なんてごめんです~

Rohdea
恋愛
私が最期に聞いた言葉、それは……「お前のような奴はまさに悪役令嬢だ!」でした。 第1王子、スチュアート殿下の婚約者として過ごしていた、 公爵令嬢のリーツェはある日、スチュアートから突然婚約破棄を告げられる。 その傍らには、最近スチュアートとの距離を縮めて彼と噂になっていた平民、ミリアンヌの姿が…… そして身に覚えのあるような無いような罪で投獄されたリーツェに待っていたのは、まさかの処刑処分で── そうして死んだはずのリーツェが目を覚ますと1年前に時が戻っていた! 理由は分からないけれど、やり直せるというのなら…… 同じ道を歩まず“悪役令嬢”と呼ばれる存在にならなければいい! そう決意し、過去の記憶を頼りに以前とは違う行動を取ろうとするリーツェ。 だけど、何故か過去と違う行動をする人が他にもいて─── あれ? 知らないわよ、こんなの……聞いてない!

心の中にあなたはいない

ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。 一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...