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113.趣味?
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◇
宰相に読み上げられた日記の冒頭。そんなものを耳にして、意地の悪い笑みを浮かべるのは国王ジンノ、隣にいる王妃エリザベスはやや顔を引き攣らせている。その息子たち三人は気のせいか少し呆れた顔を見せている。
「くくく……!」
「……」
「「「…………」」」
傍聴席の者たちはどう反応すればいいか戸惑う者の方が多い。無言で顔を見合わせたり、意味が分からなくて首を傾げたり、また理解を示した貴族の中には驚愕して目を見開く者が少数でいる。
「くくく、どうだ? ベーリュよ、思い出したか?」
「あ……あ、ああ……!(こ、こんなことが起こりうるというのか!? あれは弟の日記だったのか!)」
一方、真っ白な顔で目を見開くベーリュは、読み上げられた日記が誰の物だったのか理解した。若い頃の自分が弟のフィリップスに譲った日記だ。面倒くさくなって途中でやめたから弟に譲ったはずの日記、それが今王家のもとにあるなど誰が予想できるというのだ。
「くくく、その顔を見ると思い出してくれたようではないか。その通り、これはサエナリア嬢の部屋から見つかったフィリップス・ヴァン・ソノーザの日記だ。我が愚息が元婚約者の部屋から誰にも許可されたわけでもないのに勝手に持ち出した掘り出し物だ」
「そ、それは……(な、なんだってあいつの日記がサエナリアの部屋に! 元々物置だったから会ったのか!? ま、マズイ! マズすぎる! あの弟のことだから割としっかり書いてるはずだ。それでばれたのか!)」
ベーリュの弟のフィリップスは几帳面な男でもあった。そんな男だから、日記を毎日欠かさず書いているのは間違いない。それが、その事実が、今のベーリュにとって不利に働く日が来るとは皮肉な話だ。
「(ち、畜生! あいつめ、なんて物を物置に置いているんだ! 出て行くくらいなら日記なんぞ置いていくな! 気まぐれでくれてやった日記に何を書いたんだ! くそったれめ!)」
「いい顔だなベーリュ。この先が面白そうじゃないか? この場にいる全ての者たちが理解しやすいように読み聞かせてみようではないか。なあ?」
「そ、そんなことは……!(や、やめてくれ!)」
「何を言っても止めてやらない。宰相よ、読み上げろ」
「はい(全部読ませるとか……仕事だから仕方ないか……)」
国王の反応は明らかに楽しんでいるようだった。ベーリュの慌てぶりや絶句具合などを見て楽しんでるようにしか見えない。それは家族である王妃に息子三人ともが同じことを思った。
「「「「(絶対楽しんでるなあ)」」」」
その通りだった。国王ジンノ・フォン・ウィンドウは若い頃から悪人を慌てさせたり精神的に苦しめることが好きな男だったのだ。一か月前に、ベーリュが大罪人だと分かってから怒りが込み上げてきたと同時に、ちょうどいいから自分の手で追い詰めて苦しめてやろうと決心していた。
「(サエナリア嬢のことは分かるけど、楽しそうに苦しめるのはちょっと……)」
「(父上……いや、俺は何も言えないな……)」
「(親父の気持ちは分かる。俺がやってやりたかったんだけどな)」
「(父上、ここはポーカーフェイスでって言ったのに……ちょっと引くよ)」
こういうことを楽しむのは流石に趣味が悪い。国王の妻と息子たちはそう思ったのだ。
宰相に読み上げられた日記の冒頭。そんなものを耳にして、意地の悪い笑みを浮かべるのは国王ジンノ、隣にいる王妃エリザベスはやや顔を引き攣らせている。その息子たち三人は気のせいか少し呆れた顔を見せている。
「くくく……!」
「……」
「「「…………」」」
傍聴席の者たちはどう反応すればいいか戸惑う者の方が多い。無言で顔を見合わせたり、意味が分からなくて首を傾げたり、また理解を示した貴族の中には驚愕して目を見開く者が少数でいる。
「くくく、どうだ? ベーリュよ、思い出したか?」
「あ……あ、ああ……!(こ、こんなことが起こりうるというのか!? あれは弟の日記だったのか!)」
一方、真っ白な顔で目を見開くベーリュは、読み上げられた日記が誰の物だったのか理解した。若い頃の自分が弟のフィリップスに譲った日記だ。面倒くさくなって途中でやめたから弟に譲ったはずの日記、それが今王家のもとにあるなど誰が予想できるというのだ。
「くくく、その顔を見ると思い出してくれたようではないか。その通り、これはサエナリア嬢の部屋から見つかったフィリップス・ヴァン・ソノーザの日記だ。我が愚息が元婚約者の部屋から誰にも許可されたわけでもないのに勝手に持ち出した掘り出し物だ」
「そ、それは……(な、なんだってあいつの日記がサエナリアの部屋に! 元々物置だったから会ったのか!? ま、マズイ! マズすぎる! あの弟のことだから割としっかり書いてるはずだ。それでばれたのか!)」
ベーリュの弟のフィリップスは几帳面な男でもあった。そんな男だから、日記を毎日欠かさず書いているのは間違いない。それが、その事実が、今のベーリュにとって不利に働く日が来るとは皮肉な話だ。
「(ち、畜生! あいつめ、なんて物を物置に置いているんだ! 出て行くくらいなら日記なんぞ置いていくな! 気まぐれでくれてやった日記に何を書いたんだ! くそったれめ!)」
「いい顔だなベーリュ。この先が面白そうじゃないか? この場にいる全ての者たちが理解しやすいように読み聞かせてみようではないか。なあ?」
「そ、そんなことは……!(や、やめてくれ!)」
「何を言っても止めてやらない。宰相よ、読み上げろ」
「はい(全部読ませるとか……仕事だから仕方ないか……)」
国王の反応は明らかに楽しんでいるようだった。ベーリュの慌てぶりや絶句具合などを見て楽しんでるようにしか見えない。それは家族である王妃に息子三人ともが同じことを思った。
「「「「(絶対楽しんでるなあ)」」」」
その通りだった。国王ジンノ・フォン・ウィンドウは若い頃から悪人を慌てさせたり精神的に苦しめることが好きな男だったのだ。一か月前に、ベーリュが大罪人だと分かってから怒りが込み上げてきたと同時に、ちょうどいいから自分の手で追い詰めて苦しめてやろうと決心していた。
「(サエナリア嬢のことは分かるけど、楽しそうに苦しめるのはちょっと……)」
「(父上……いや、俺は何も言えないな……)」
「(親父の気持ちは分かる。俺がやってやりたかったんだけどな)」
「(父上、ここはポーカーフェイスでって言ったのに……ちょっと引くよ)」
こういうことを楽しむのは流石に趣味が悪い。国王の妻と息子たちはそう思ったのだ。
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