200 / 252
第5章 外国編
謝罪
しおりを挟む
「兄上、大丈夫か!?」
「……リオル」
寄生生物が離れて、解放されたアゼルはその場に倒れてしまった。リオルはそんな兄の傍に寄り添う。逃げた寄生生物は後回しと言った感じだ。
「やっぱりすごいよ、お前は……。僕は何一つ敵いそうにないや」
「こんな時に何を……。今は自分の心配をしてくれ」
「そんなことできないさ。分からないか?」
「…………」
倒れているアゼルを心配するリオルは、彼の言葉の意味を理解して俯く。今のリオルにも分かってしまうのだ。
「こんなことになるぐらいだったら、僕はもっと素直になるべきだった。自分のことも、母上のことも、お前たちのことも。本当にバカだったよ僕は。愚かにも傲慢になって威張り散らして他の人を傷つけるばかりで、どうしようもない奴だったな」
「兄上だけじゃない、私もある意味同罪だ。兄上を、周りを見返すと決めたのに、兄上に向き合うことをいつしかしなくなっていた。見向きもしなくなった。血のつながった家族なのに、無自覚に見下してしまっていた。私だって傲慢だった」
「それは――」
「……ごめんなさい」
――リオルは、アゼルに謝った。
第三者からみれば、アゼルこそがリオルを含む多くの人々に謝罪すべきはずだと思うだろう。冷静に考えれば、当事者のリオルとアゼルもそう考えるはずだった。それにもかかわらず、リオルのほうから謝ってしまった。……それほどまでに、彼女は打ちのめされた証拠でもあり、彼女が根はやさしい女性であることを示していた。
それが分かってしまう者は少ない。tだ、その一人は、皮肉にも他国の人間なのだ。
「リオル、お前が先に謝ってどうする……。僕のほうが、その、先に謝るほうだろ……」
「兄上……」
「……お前には、今まで多くの迷惑をかけてきた。兄らしいことを何一つしたこともないのに、つらい思いをさせてきた。今更許されるとは思わない。だけど、言葉にしたい」
アゼルは、何とか起き上がろうとする。だが、寄生された副作用と体を酷使され続けたせいでうまく起き上がることができない。
「くっ……」
「兄上! ……無理をしないでくれ、こんな体なんだぞ」
「自分の体のことは分かってるさ。立ち上がれないなら、這いつくばってでも……」
「え?」
アゼルは立ち上がるのを止めて、腰を下ろしたまま両手を地につけて、リオルに向き直る姿勢になった。
「……リオル、許してくれなくていい、それでも心から詫びたい。今まで本当にすまなかった。こんなどうしようもない兄で申し訳ない……ごめんな」
「…………」
アゼルは頭を下げて謝った。おそらく貴族としては、もっとも惨めな姿勢での謝罪の仕方だったと思われる。アゼルのことを知るものからすれば、無駄にプライドが高くて傲慢な男だった彼がこんな謝罪を行うとは思えないことだっただろう。……アゼルもそこまで追い詰められたのだ。
(……こうなったか)
リオルとアゼルのやり取りを見て、ローグは一安心――とはしなかった。まだ、やることが山のようにあるように思えたのだ。
(後はアゼルの体を回復して詳しい話を聞き出す。クロズクの拠点を徹底的に調査して裏付けを取る。それで、真相を解明したら国民に伝える。最後は断罪だな)
アゼルのこの先の未来は決していいものではないだろう。クロズクに利用され続けただけだろうが、それにしてもしでかしたことが大きすぎる。良くて一生城に軟禁、最悪で死刑だ。
(せっかく生きてもらったんだ。残りの人生は短いかもしれないが、大事なことはしゃべってもらおう)
「アゼル、その体では何かと不自由だろう。今、回復してやるよ」
「魔法使いか。お前にも礼を言おう。よくぞ俺を救ってくれた」
「ローグ……ありがとう」
リオルとアゼルはそろって礼を言ってくれる。全くだ――と言う前に、二人の少女がこちらに駆け寄ってきた。
「お姉さま、お兄様、大丈夫ですか!?」
「ローグ、無事!?」
ミーラとサーラだ。この二人は非戦闘員のため、遠巻きに見ていたが今なら大丈夫だと判断して駆け寄ってきたのだ。
「サーラか……」
「二人とも、もう大丈夫だ。兄上は生きてる。ローグのおかげだ」
二人は、リオルの説明を聞いて、ローグ達が健在なのを確認して安心した。この後、ローグの魔法でアゼルが歩けるまで回復したため、この5人と兵士たちで、そろってクロズクの拠点を後にして今後の方針を決めた。
「……リオル」
寄生生物が離れて、解放されたアゼルはその場に倒れてしまった。リオルはそんな兄の傍に寄り添う。逃げた寄生生物は後回しと言った感じだ。
「やっぱりすごいよ、お前は……。僕は何一つ敵いそうにないや」
「こんな時に何を……。今は自分の心配をしてくれ」
「そんなことできないさ。分からないか?」
「…………」
倒れているアゼルを心配するリオルは、彼の言葉の意味を理解して俯く。今のリオルにも分かってしまうのだ。
「こんなことになるぐらいだったら、僕はもっと素直になるべきだった。自分のことも、母上のことも、お前たちのことも。本当にバカだったよ僕は。愚かにも傲慢になって威張り散らして他の人を傷つけるばかりで、どうしようもない奴だったな」
「兄上だけじゃない、私もある意味同罪だ。兄上を、周りを見返すと決めたのに、兄上に向き合うことをいつしかしなくなっていた。見向きもしなくなった。血のつながった家族なのに、無自覚に見下してしまっていた。私だって傲慢だった」
「それは――」
「……ごめんなさい」
――リオルは、アゼルに謝った。
第三者からみれば、アゼルこそがリオルを含む多くの人々に謝罪すべきはずだと思うだろう。冷静に考えれば、当事者のリオルとアゼルもそう考えるはずだった。それにもかかわらず、リオルのほうから謝ってしまった。……それほどまでに、彼女は打ちのめされた証拠でもあり、彼女が根はやさしい女性であることを示していた。
それが分かってしまう者は少ない。tだ、その一人は、皮肉にも他国の人間なのだ。
「リオル、お前が先に謝ってどうする……。僕のほうが、その、先に謝るほうだろ……」
「兄上……」
「……お前には、今まで多くの迷惑をかけてきた。兄らしいことを何一つしたこともないのに、つらい思いをさせてきた。今更許されるとは思わない。だけど、言葉にしたい」
アゼルは、何とか起き上がろうとする。だが、寄生された副作用と体を酷使され続けたせいでうまく起き上がることができない。
「くっ……」
「兄上! ……無理をしないでくれ、こんな体なんだぞ」
「自分の体のことは分かってるさ。立ち上がれないなら、這いつくばってでも……」
「え?」
アゼルは立ち上がるのを止めて、腰を下ろしたまま両手を地につけて、リオルに向き直る姿勢になった。
「……リオル、許してくれなくていい、それでも心から詫びたい。今まで本当にすまなかった。こんなどうしようもない兄で申し訳ない……ごめんな」
「…………」
アゼルは頭を下げて謝った。おそらく貴族としては、もっとも惨めな姿勢での謝罪の仕方だったと思われる。アゼルのことを知るものからすれば、無駄にプライドが高くて傲慢な男だった彼がこんな謝罪を行うとは思えないことだっただろう。……アゼルもそこまで追い詰められたのだ。
(……こうなったか)
リオルとアゼルのやり取りを見て、ローグは一安心――とはしなかった。まだ、やることが山のようにあるように思えたのだ。
(後はアゼルの体を回復して詳しい話を聞き出す。クロズクの拠点を徹底的に調査して裏付けを取る。それで、真相を解明したら国民に伝える。最後は断罪だな)
アゼルのこの先の未来は決していいものではないだろう。クロズクに利用され続けただけだろうが、それにしてもしでかしたことが大きすぎる。良くて一生城に軟禁、最悪で死刑だ。
(せっかく生きてもらったんだ。残りの人生は短いかもしれないが、大事なことはしゃべってもらおう)
「アゼル、その体では何かと不自由だろう。今、回復してやるよ」
「魔法使いか。お前にも礼を言おう。よくぞ俺を救ってくれた」
「ローグ……ありがとう」
リオルとアゼルはそろって礼を言ってくれる。全くだ――と言う前に、二人の少女がこちらに駆け寄ってきた。
「お姉さま、お兄様、大丈夫ですか!?」
「ローグ、無事!?」
ミーラとサーラだ。この二人は非戦闘員のため、遠巻きに見ていたが今なら大丈夫だと判断して駆け寄ってきたのだ。
「サーラか……」
「二人とも、もう大丈夫だ。兄上は生きてる。ローグのおかげだ」
二人は、リオルの説明を聞いて、ローグ達が健在なのを確認して安心した。この後、ローグの魔法でアゼルが歩けるまで回復したため、この5人と兵士たちで、そろってクロズクの拠点を後にして今後の方針を決めた。
0
あなたにおすすめの小説
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!
たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。
途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。
鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒!
素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。
裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる