「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

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【第二部 異世界転移奇譚 RENJI 2 】「気づいたらまた異世界にいた。異世界転移、通算一万人目と10001人目の冒険者。」

第136話 リヴァイアサン

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 ステラを取り込んだエテメンアンキの管理システム「リヴァイアサン」は語った。

「君たちが何者であるかということを私はよく知っている。
 君たちがここに何をしに来たのかということも。
 はじまりの男の記憶を消し、君たちをここに招いたのは私だからだ」

 声はステラのものだったが、その口調はコンピュータというよりブライ・アジ・ダハーカだった。

 彼の言葉を信じるなら、国王は何も知らず、結果的にレンジたちは罠にまんまとひっかかってしまったが、国王がしかけた罠ではなかったということだった。

「ステラの声でブライのように喋らせるっていうのは、ちょっと悪ふざけがすぎるな」

 ショウゴは合体銃剣をリヴァイアサンに向けた。

「ステラを返してもらうよ」

 レンジもふたふりの剣を構えた。

 ピノアもイルルも臨戦態勢を取っていた。

「あんたはしちゃいけないことをした。
 ペッパー君やロビをあんな存在にしたことを、ぼくは許してはおけない」

「秋月レンジ、君の妹は確か、回転寿司が好きだったね。行くのは必ずはま寿司だった。
 君の家は皆格安スマホだが、ショッピングモールにいくたびに、君の妹はソフトバンクの店先にいるペッパーによく話しかけていた。
 そして、彼女を溺愛する祖父母は、ロビを毎号買い組み立てることはできなかったが、一万円ほどで買える機能が制限された玩具のロビを三年前の今日クリスマスプレゼントとして与えた。
 だから、君が最も怒るだろう看守ロボットを用意させてもらった」

 なぜこの管理システムは、妹のことを知っているのだろう。

「私は、いや、我々は、と言うべきか、リバーステラの神であり、テラの最初の神でもあった君をずっと監視していたからだよ」

 心を読まれていた。

「レンジがふたつの世界の神? どういうことだ?」

「大和ショウゴ、そういえば君は、自分に与えられた役割を忘れさせられているんだったね。
 思い出させてあげよう。
 君は私と同じ、秋月レンジを監視する存在だ」

「なんだと……?」

 ピノアによれば、レンジの父・富嶽サトシは大厄災を起こした後、彼女の目の前ではじまりの男とはじまりの女を作ったという。
 そして、レンジがリバーステラを2回作り変え、2回目の作り直しの際にテラが生まれたのだと彼女に話したということだった。

 だから、レンジは現在のリバーステラの神であると同時に、テラの最初の神なのだろう。

 なぜ父は大厄災を起こしたのか。
 それは、レンジが犯した過ちを正すためだったという。

 ショウゴが目の前の管理システムが言う「我々」のひとりであるのなら、そのうちのひとりだということだろうか?


「だが君は生まれの不幸から秋月レンジと親しくなりすぎた。
 そして、愚直なまでに実直な人間であったために、君は11歳のときに秋月レンジに自分が何のために存在するのかカミングアウトしようとした。
 だから、我々は君の記憶を消し、秋月レンジから君を引き離すことにした」

「まさか、俺とレンジが通う中学校が別々になったことを言ってるんじゃないだろうな?」

「君の学力で、今通う有名私立のエスカレーター校の中学受験に合格できたことに疑問を抱いたことはなかったのか?」


 ショウゴは何も言い返さなかった。
 疑問を抱いたことがあったのだろう。

「俺が本来どんな存在だろうが、そんなことはどうでもいい。
 レンジは俺の親友だ。
 そして、お前が今、エテメンアンキの管理システムの一部として取り込んでいる女の子は、レンジにとっても俺たちにとっても大事な子だ」

「私を破壊することは考えないほうがいい、大和ショウゴ。
 ステラ・リヴァイアサンだけでなく、彼女の中にいる秋月レンジの子どもも死んでしまう。
 私としては、彼女か君の子どもか、どちらかさえいてくれれば構わないのだが。
子どもはまだ受精してから1ヶ月程度だから、引きずり出すのも簡単だろうからね」

 皆の心に、抑えきれないほどの怒りが芽生えた。
 だが、誰も何もできなかった。

 リヴァイアサンなら、本当にやりかねない、誰もがそれを悟っていたからだった。

 ショウゴが記憶を消されているなら、リヴァイアサンは心を消されていた。



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