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【第二部 異世界転移奇譚 RENJI 2 】「気づいたらまた異世界にいた。異世界転移、通算一万人目と10001人目の冒険者。」
第137話 消滅 ①
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どうすればステラを助けることができるのか。
レンジがリバーステラの神であり、テラの最初の神であったとはどういう意味か。
彼が犯した過ちとは何なのか。
リヴァイアサンと名乗る、ステラを取り込んだ管理システムが言う、レンジを監視する存在「我々」とは何なのか。
「我々」のひとりがショウゴというのはどういう意味か。
リヴァイアサンに手を出せないまま、皆が黙り考えていた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
最初に口を開いたのは、ピノアだった。
「わたしじゃ、ステラの代わりにはならないかな?
わたし一応、ステラから切り離された力を持ってるんだけど」
ピノアには、他にステラを救い出す方法が見つけられなかった。
「それはできない。
ピノア・カーバンクル、我々は君こそが、テラとリバーステラをあるべき形に戻し、新たな神になるべき存在だと考えている」
「レンジのお父さんが、レンジが犯した過ちを正そうとしてるんだよね?
4000年前、大厄災の後に聞いたよ。
ふたつの世界の神は、レンジのお父さんでいいんじゃないの?」
「富嶽サトシもまた、我々の同胞だ。
彼は偽りの神に過ぎない。
世界をあるべき形に戻すことはできない」
「あっそ。
じゃあ、大厄災の魔法を今ここで、ふたつの世界にぶちかませばいい?」
「大厄災の魔法はすでに失われている。不可能だ」
「わたしは、大厄災の前から4000年も生きてきた。
だから、わたしには使えるんだよ。
その気になればレンジでもね。前の世界でブライを倒すために使った魔法剣は、大厄災の魔法剣だったから」
「たとえできたとしても、次元の精霊がその身を隠している。
ゲートは開けない」
「じゃあ、あんたはどうやってここに来たの?
GO TO 異世界とかっていうバカなキャンペーンもゲートがなきゃできないでしょ。
わたしは、次元の精霊の居場所も、時の精霊も居場所も知ってる」
ピノアは、ゆらぎを作って見せた。
ゲートだった。
「なぜ魔法が使える?」
「あんたの言葉を借りるなら、わたしが神になるべき存在だから。
わたしの言葉で言うなら、わたしがピノア・カーバンクルだから。
ステラとレンジのためなら、わたしはどんな不可能だって可能にできるの。
ふたりだけを生き残らせることだってね」
だが、ショウゴはピノアに合体銃剣を向けた。
「悪いが、リバーステラで大厄災を起こさせるわけにはいかない」
その目は本気だった。
ピノアが大厄災の魔法を放つのをやめなければ、ショウゴは彼女を殺すつもりだとわかった。
「何? さっきまでレンジは俺の親友だとか言ってたくせに。
レンジの監視者とかっていう自分の役割を思い出したの?」
「違う。リバーステラには、俺の命よりも大切な妹がいるからだ」
「ショウゴが言ってるのは本当だよ、ピノア。
ぼくにとってのピノアやステラと同じくらい、ショウゴの大切な子なんだ」
ふたりの真剣な表情と口調に、ピノアはゲートを閉じた。
そして、彼女は気を失うようにその場に崩れ落ちた。
「ピノア!!」
レンジはピノアに駆け寄った。
ピノアの体は消滅しかけていた。
「レンジ……ごめんね……ごめんなさい……」
だが、まだ意識があった。
「大厄災の魔法をふたつの世界に向けて放つなんていうのは、はったり。
体を維持できるかできないかって量の体内のエーテルを使っても、ゲートをひとつ作るのがやっとだった……」
「どうして、そこまで……」
「言ったでしょ……
ステラとレンジのためなら、わたしはどんな不可能だって可能にできるの……」
「じゃあ、生きてくれよ!
ステラを取り戻せたとしても、ピノアがいなくなっちゃったら、意味がないんだよ!!」
「そうだよね……でも、ごめんね……」
レンジは、ピノアを抱きしめようとしたが、腕はその体をすり抜けてしまった。
「もう抱きしめてももらえないや……
でも、またレンジに会えた。
頭を撫でてもらえた。
キスもできたから……だから……もういいかな……」
「イルル! 前の世界でエブリスタ兄弟がゲルマーニで学んだ魔法は使えるか?
オラシオンの先の、魔人の体さえも治す……」
使えるわけがなかった。
魔法は封じられているのだ。
そして、レンジの目の前で、ピノアは消滅した。
レンジがリバーステラの神であり、テラの最初の神であったとはどういう意味か。
彼が犯した過ちとは何なのか。
リヴァイアサンと名乗る、ステラを取り込んだ管理システムが言う、レンジを監視する存在「我々」とは何なのか。
「我々」のひとりがショウゴというのはどういう意味か。
リヴァイアサンに手を出せないまま、皆が黙り考えていた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
最初に口を開いたのは、ピノアだった。
「わたしじゃ、ステラの代わりにはならないかな?
わたし一応、ステラから切り離された力を持ってるんだけど」
ピノアには、他にステラを救い出す方法が見つけられなかった。
「それはできない。
ピノア・カーバンクル、我々は君こそが、テラとリバーステラをあるべき形に戻し、新たな神になるべき存在だと考えている」
「レンジのお父さんが、レンジが犯した過ちを正そうとしてるんだよね?
4000年前、大厄災の後に聞いたよ。
ふたつの世界の神は、レンジのお父さんでいいんじゃないの?」
「富嶽サトシもまた、我々の同胞だ。
彼は偽りの神に過ぎない。
世界をあるべき形に戻すことはできない」
「あっそ。
じゃあ、大厄災の魔法を今ここで、ふたつの世界にぶちかませばいい?」
「大厄災の魔法はすでに失われている。不可能だ」
「わたしは、大厄災の前から4000年も生きてきた。
だから、わたしには使えるんだよ。
その気になればレンジでもね。前の世界でブライを倒すために使った魔法剣は、大厄災の魔法剣だったから」
「たとえできたとしても、次元の精霊がその身を隠している。
ゲートは開けない」
「じゃあ、あんたはどうやってここに来たの?
GO TO 異世界とかっていうバカなキャンペーンもゲートがなきゃできないでしょ。
わたしは、次元の精霊の居場所も、時の精霊も居場所も知ってる」
ピノアは、ゆらぎを作って見せた。
ゲートだった。
「なぜ魔法が使える?」
「あんたの言葉を借りるなら、わたしが神になるべき存在だから。
わたしの言葉で言うなら、わたしがピノア・カーバンクルだから。
ステラとレンジのためなら、わたしはどんな不可能だって可能にできるの。
ふたりだけを生き残らせることだってね」
だが、ショウゴはピノアに合体銃剣を向けた。
「悪いが、リバーステラで大厄災を起こさせるわけにはいかない」
その目は本気だった。
ピノアが大厄災の魔法を放つのをやめなければ、ショウゴは彼女を殺すつもりだとわかった。
「何? さっきまでレンジは俺の親友だとか言ってたくせに。
レンジの監視者とかっていう自分の役割を思い出したの?」
「違う。リバーステラには、俺の命よりも大切な妹がいるからだ」
「ショウゴが言ってるのは本当だよ、ピノア。
ぼくにとってのピノアやステラと同じくらい、ショウゴの大切な子なんだ」
ふたりの真剣な表情と口調に、ピノアはゲートを閉じた。
そして、彼女は気を失うようにその場に崩れ落ちた。
「ピノア!!」
レンジはピノアに駆け寄った。
ピノアの体は消滅しかけていた。
「レンジ……ごめんね……ごめんなさい……」
だが、まだ意識があった。
「大厄災の魔法をふたつの世界に向けて放つなんていうのは、はったり。
体を維持できるかできないかって量の体内のエーテルを使っても、ゲートをひとつ作るのがやっとだった……」
「どうして、そこまで……」
「言ったでしょ……
ステラとレンジのためなら、わたしはどんな不可能だって可能にできるの……」
「じゃあ、生きてくれよ!
ステラを取り戻せたとしても、ピノアがいなくなっちゃったら、意味がないんだよ!!」
「そうだよね……でも、ごめんね……」
レンジは、ピノアを抱きしめようとしたが、腕はその体をすり抜けてしまった。
「もう抱きしめてももらえないや……
でも、またレンジに会えた。
頭を撫でてもらえた。
キスもできたから……だから……もういいかな……」
「イルル! 前の世界でエブリスタ兄弟がゲルマーニで学んだ魔法は使えるか?
オラシオンの先の、魔人の体さえも治す……」
使えるわけがなかった。
魔法は封じられているのだ。
そして、レンジの目の前で、ピノアは消滅した。
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