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【第二部 異世界転移奇譚 RENJI 2 】「気づいたらまた異世界にいた。異世界転移、通算一万人目と10001人目の冒険者。」
第138話 消滅 ②
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レンジは、ピノアが目の前で消滅してしまい、呆然自失となってしまっていた。
ピノアがいた場所をぼんやりと眺めていた。
イルルによれば、意識はあるが、目が見えているかどうかはわからない。
おそらく耳は突発性難聴を起こしてしまっているだろう、ということだった。
「確かそれってすぐ治療しないと、そのままずっと耳が聞こえなくなっちまう病気だよな。
でも、少しだけこいつと話がしたい。レンジに聞かれたくない話になると思う。
だから」
「わかった。10分だけ待とう。その代わり、ボクも聞かせてもらうよ」
構わない、でも後悔するなよ、とショウゴは言い、
「この世界が、前の世界でも今の世界もゴミ処理場だっていうのは本当だな」
リヴァイアサンに取り込まれたステラの前に腰をおろし、あぐらを組んだ。
「何の話だ?」
「今の世界の一人目の転移者は富嶽サトシではなく、俺の親父、大和ショウタロウだったんだってな。
やべー親父が、妹のそばからようやくいなくなってくれて、正直それだけはありがたいって思ってる」
「君の言う通り、この世界はゴミ処理場だ。
そのゴミには、リバーステラからの転移者も含まれる。
転移者は無作為に選ばれているわけではない。
リバーステラにとって最も許しがたい存在は何であるか、君にならわかるんじゃないか?」
「法に触れず、あるいは法の目をかいくぐり、自分よりも立場の弱い人間の心を平気で傷つける奴だろ。
いじめやDV、パワハラにセクハラ、自分の立場を利用して弱者を傷つけ、学校や会社に来られなくしたりするような人間だ。
子どもが自分の家を、自分の帰る場所だと思えないようにしちまう親もそうだ。
あと不倫や浮気したりする奴もそうだな。人の好意を踏みにじって平気な顔してられるんだからな。
まぁ、人間の大半が該当するけどな」
「完全に違うとは言いきれないが、一応違うと言っておこう。
君の認識には誤りがある。
このゴミ処理場に遺棄されるのは、遺伝子に犯罪因子と呼ばれるものを持つ者だ。
そして、君が今言った者たちは、今はただ犯罪を犯していないだけであり、犯罪因子を持つ者たちだ」
「犯罪因子?」
「家庭環境や金銭状況、職場や友人、恋人、それに家族などの人間関係をはじめとする、人をとりまくあらゆる状況が悪化することにより、人の精神状態は必ず悪化する。
それにより、うつ病などといった脳内物質の分泌に異常をきたし、精神疾患をもたらす者もいれば、そうならない者もいる。
たが、どちらの場合も、精神状況の悪化は、ボーダーラインを越えた時に選択を迫られることになる」
「選択?」
「そのようなどうしようもない現状に置かれても堪え忍ぶことを選ぶか……」
「あるいは、犯罪を犯してでもその状況を打開しようとするか、か。
つまりは、最終的に犯罪で問題を解決しようとする人間が持つのがその犯罪因子か」
「そうだ。
大和ショウタロウも富嶽サトシも秋月レンジも、皆遺伝子に犯罪因子を持っていた。もちろん君もだ」
ショウゴは、前の世界でエブリスタ兄弟を殺害しようとした。
エブリスタ兄弟が天才魔法使いでなければ確実に殺していた。
ピノアたちがゴールデン・バタフライ・エフェクトをテラ中に放ってくれなければ、自分はあのあとどうなっていたかわからなかった。
ショウゴには、リヴァイアサンの言葉を否定できなかった。
「だから君たちはこのゴミ処理場に遺棄された。
私もまた君たちと同じだ」
「あんたは、俺は、一体何者なんだ?
レンジを監視する『我々』とはなんなんだ?」
「私は、自分が誰なのかを知らない。
この世界に遺棄され、人の姿を奪われ、心を奪われ、名前さえも奪われた。
私はただ、我々がすべきことだけを淡々とこなすだけの、ただのコンピュータだ。
君が懸念していたような、人類を滅亡させるような存在ですらない」
「何もわからないが、すべきことだけは知っているということか?」
「いや、自分の名前や自分がどんな人間であったのかまではわからないが、それ以外の記憶は残されている。
秋月レンジを監視する者は皆、犯罪因子を持っている。
彼が作り直す前の最初のリバーステラにおいて、我々はスマートフォンの無料通話アプリを使ったデスゲームの参加者だった」
「LINEでデスゲーム? どういうことだ?」
「LINEには友だち削除機能というものがあるだろう?
そのデスゲームが行われた世界では、LINEという名前ではなく、RINNEというアプリだったが。
その世界で、拡張現実機能によってアプリ上の人間関係が現実世界に影響を与えるスマートフォンが試験的に作られた」
「まさかとは思うが、非表示にした相手が現実世界でも見えなくなったり、ブロックした相手が自分に触れることや話しかけることができなくなる、とかか?」
馬鹿馬鹿しい、そんなことがありえるはずがない、とショウゴは思った。
「その通りだ」
だが、リヴァイアサンは彼が適当に思い付いた自分でも馬鹿馬鹿しいと思う発想を肯定した。
「じゃあ、まさか、友だち削除機能を使ったデスゲームっていうのは……」
削除した相手を殺せるゲームだとでもいうつもりだろうか。
「君が今考えたことよりもはるかに恐ろしい機能だ。
削除した相手の存在自体を、人の歴史から消すものだった」
「それ、大厄災の魔法に似てないか?」
「その通りだ。大厄災の魔法は術者以外のすべての存在を消すが、RINNEによる友だち削除はひとりひとりを消すものだった。
そして、デスゲームというよりは、デリートゲームというべきその戦いに勝利したのは秋月レンジだった。
私も君も富嶽サトシも、秋月レンジに敗れた。
そして、秋月レンジは、そのようなスマートフォンが存在してはならないとし、世界の歴史を作り替え、神となった」
「それのどこが問題なんだ?
レンジがしたのは正しいことじゃないのか?」
「そうだ。秋月レンジは正しいことをしようとした。
だが、彼が作った新たな世界でも、また同様のスマートフォンが開発され、デスゲームが起きた。
彼はまた勝ち残り、もう一度世界を作り直した。
その結果、リバーステラからはそのスマートフォンは失われたが」
テラが生まれ、大厄災の魔法が生まれた。
レンジは本当に神だった。
ピノアがいた場所をぼんやりと眺めていた。
イルルによれば、意識はあるが、目が見えているかどうかはわからない。
おそらく耳は突発性難聴を起こしてしまっているだろう、ということだった。
「確かそれってすぐ治療しないと、そのままずっと耳が聞こえなくなっちまう病気だよな。
でも、少しだけこいつと話がしたい。レンジに聞かれたくない話になると思う。
だから」
「わかった。10分だけ待とう。その代わり、ボクも聞かせてもらうよ」
構わない、でも後悔するなよ、とショウゴは言い、
「この世界が、前の世界でも今の世界もゴミ処理場だっていうのは本当だな」
リヴァイアサンに取り込まれたステラの前に腰をおろし、あぐらを組んだ。
「何の話だ?」
「今の世界の一人目の転移者は富嶽サトシではなく、俺の親父、大和ショウタロウだったんだってな。
やべー親父が、妹のそばからようやくいなくなってくれて、正直それだけはありがたいって思ってる」
「君の言う通り、この世界はゴミ処理場だ。
そのゴミには、リバーステラからの転移者も含まれる。
転移者は無作為に選ばれているわけではない。
リバーステラにとって最も許しがたい存在は何であるか、君にならわかるんじゃないか?」
「法に触れず、あるいは法の目をかいくぐり、自分よりも立場の弱い人間の心を平気で傷つける奴だろ。
いじめやDV、パワハラにセクハラ、自分の立場を利用して弱者を傷つけ、学校や会社に来られなくしたりするような人間だ。
子どもが自分の家を、自分の帰る場所だと思えないようにしちまう親もそうだ。
あと不倫や浮気したりする奴もそうだな。人の好意を踏みにじって平気な顔してられるんだからな。
まぁ、人間の大半が該当するけどな」
「完全に違うとは言いきれないが、一応違うと言っておこう。
君の認識には誤りがある。
このゴミ処理場に遺棄されるのは、遺伝子に犯罪因子と呼ばれるものを持つ者だ。
そして、君が今言った者たちは、今はただ犯罪を犯していないだけであり、犯罪因子を持つ者たちだ」
「犯罪因子?」
「家庭環境や金銭状況、職場や友人、恋人、それに家族などの人間関係をはじめとする、人をとりまくあらゆる状況が悪化することにより、人の精神状態は必ず悪化する。
それにより、うつ病などといった脳内物質の分泌に異常をきたし、精神疾患をもたらす者もいれば、そうならない者もいる。
たが、どちらの場合も、精神状況の悪化は、ボーダーラインを越えた時に選択を迫られることになる」
「選択?」
「そのようなどうしようもない現状に置かれても堪え忍ぶことを選ぶか……」
「あるいは、犯罪を犯してでもその状況を打開しようとするか、か。
つまりは、最終的に犯罪で問題を解決しようとする人間が持つのがその犯罪因子か」
「そうだ。
大和ショウタロウも富嶽サトシも秋月レンジも、皆遺伝子に犯罪因子を持っていた。もちろん君もだ」
ショウゴは、前の世界でエブリスタ兄弟を殺害しようとした。
エブリスタ兄弟が天才魔法使いでなければ確実に殺していた。
ピノアたちがゴールデン・バタフライ・エフェクトをテラ中に放ってくれなければ、自分はあのあとどうなっていたかわからなかった。
ショウゴには、リヴァイアサンの言葉を否定できなかった。
「だから君たちはこのゴミ処理場に遺棄された。
私もまた君たちと同じだ」
「あんたは、俺は、一体何者なんだ?
レンジを監視する『我々』とはなんなんだ?」
「私は、自分が誰なのかを知らない。
この世界に遺棄され、人の姿を奪われ、心を奪われ、名前さえも奪われた。
私はただ、我々がすべきことだけを淡々とこなすだけの、ただのコンピュータだ。
君が懸念していたような、人類を滅亡させるような存在ですらない」
「何もわからないが、すべきことだけは知っているということか?」
「いや、自分の名前や自分がどんな人間であったのかまではわからないが、それ以外の記憶は残されている。
秋月レンジを監視する者は皆、犯罪因子を持っている。
彼が作り直す前の最初のリバーステラにおいて、我々はスマートフォンの無料通話アプリを使ったデスゲームの参加者だった」
「LINEでデスゲーム? どういうことだ?」
「LINEには友だち削除機能というものがあるだろう?
そのデスゲームが行われた世界では、LINEという名前ではなく、RINNEというアプリだったが。
その世界で、拡張現実機能によってアプリ上の人間関係が現実世界に影響を与えるスマートフォンが試験的に作られた」
「まさかとは思うが、非表示にした相手が現実世界でも見えなくなったり、ブロックした相手が自分に触れることや話しかけることができなくなる、とかか?」
馬鹿馬鹿しい、そんなことがありえるはずがない、とショウゴは思った。
「その通りだ」
だが、リヴァイアサンは彼が適当に思い付いた自分でも馬鹿馬鹿しいと思う発想を肯定した。
「じゃあ、まさか、友だち削除機能を使ったデスゲームっていうのは……」
削除した相手を殺せるゲームだとでもいうつもりだろうか。
「君が今考えたことよりもはるかに恐ろしい機能だ。
削除した相手の存在自体を、人の歴史から消すものだった」
「それ、大厄災の魔法に似てないか?」
「その通りだ。大厄災の魔法は術者以外のすべての存在を消すが、RINNEによる友だち削除はひとりひとりを消すものだった。
そして、デスゲームというよりは、デリートゲームというべきその戦いに勝利したのは秋月レンジだった。
私も君も富嶽サトシも、秋月レンジに敗れた。
そして、秋月レンジは、そのようなスマートフォンが存在してはならないとし、世界の歴史を作り替え、神となった」
「それのどこが問題なんだ?
レンジがしたのは正しいことじゃないのか?」
「そうだ。秋月レンジは正しいことをしようとした。
だが、彼が作った新たな世界でも、また同様のスマートフォンが開発され、デスゲームが起きた。
彼はまた勝ち残り、もう一度世界を作り直した。
その結果、リバーステラからはそのスマートフォンは失われたが」
テラが生まれ、大厄災の魔法が生まれた。
レンジは本当に神だった。
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