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第7章 第3話
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一条によく似た男が見つけたヘリは自衛隊や警察のものでも、ドクターヘリの類いでもなかった。
公園内に設置された監視カメラはどれもヘリから遠く、画素数も低かったため、非常に小さく見にくかったが、そのボディーにはタカミがよく知るシンボルマークが描かれていた。
逆十字の右上にギリシア文字の「β(ベータ)」が片羽根のようについたそれは、千のコスモの会のシンボルマークだった。
劣悪で傲慢な神とその子どもであるメシアを崇める宗教のシンボルが十字架であるならばと、至高神の化身にして現人神である教祖・朝倉現人は逆十字をそのシンボルに選び、その教えが第二段階に達した際に、教団のさらなる飛躍を宣言し、羽根のように見える「β」をつけたという。
教祖が逮捕されることなく、その教えが最終段階に達していれば、今ごろは「Ω(オメガ)」が逆十字と重なっていたことだろう。
何故アナスタシアとアンナが外出しようとしていたのか、タカミはずっと気になっていた。
たまたまエレベーターでショウゴといっしょになってしまったために、ふたりはショウゴと話をすることになり、その後アンナは何故かアナスタシアの命を狙う遣田ハオトによって命を落としてしまったが、本来ならふたりはこのヘリに乗る予定だったのだ。
ふたりがどこへ向かうつもりだったのかまではわからない。
だがもしこのヘリを自分たちが手に入れられていたら、そう思うと苦々しい思いだった。
アナスタシアとアンナに事情を説明すれば、ヘリのパイロットを説得してもらい、二人が同行する形でヤルダバに向かうことができたかもしれなかった。
だが、もう遅かった。
男はヘリに乗り込んでしまった。
この男はおそらくこのヘリを奪うつもりだろう。
「誰だ? あんた」
「降りてくれないか。自衛隊の救助とは違うんだ。我々はあるお方をお待ちしている」
ヘリの中の様子まではわからなかったが、パソコンのスピーカーからはヘリの乗組員と思われるふたりの人物の声が聞こえてきた。
「警察手帳? そんなものを見せて、何の意味がある?」
一条に似た男が、警察手帳を見せたのだろう。
だとしたら、この男もまた一条と同じく元警察官ということになる。
それとも、この男がたまたま一条の死体を見つけ、たまたま自分に顔がそっくりな彼の警察手帳を奪ったということだろうか。
そんな偶然があるだろうか。
「やはり、このご時世ではこんなものじゃご納得頂けませんか」
その声は一条の声だった。タカミが彼の声を聞き間違えるはずがない。
「やれやれ、聞き耳を立てている人がいるので、あまり声は出したくなかったのですが、仕方がありませんね」
聞き耳を立てている人とは、タカミのことを言っているのだろう。
一条の声ではあるが、その口調は彼のものではなかった。
アンナがその命をかけて、共に命を絶たせたはずの遣田ハオトのものだった。
まさかあの男が、死の間際にアンナによる憑依能力の相殺を免れ、60メートル上空の最上階にいた一条に憑依していたとでもいうのだろうか。
アンナがマシンガンで頭を撃ち抜いた瞬間、アンナの精神が先に死亡した? 自身の精神の死の直前にそんな荒業を行った?
それにしても、なぜ一条の体の手足の怪我が治っているのだ。短時間であれだけの怪我を治せる治癒能力まで持っていたということなのだろうか。
「あんた、一体何の話をしているんだ? さっさと降りてくれないか」
「あなた方には関係のない話です。
そんなことより、このヘリを私に頂けませんか?」
やはりヘリを奪う気だった。
この男が遣田であるなら、目的は自分たちと同じヤルダバだ。
目的地こそ同じだが、その目的はまるで違う。
この男は、アリステラの女王や末裔を滅ぼすつもりなのだ。
「無理だ。あるお方をお待ちしていると言っただろう?」
「あなた方がお待ちのアナスタシア様ならお越しになりませんよ」
「何だと?」
「貴様、アナスタシア様に何をした?」
「殺すつもりだったのですが、失敗してしまいました。
あれだけのエーテルの使い手は、アリステラの女王候補になりえますからね。
しかも、それが生まれつきだったというのですから、女王の血が分かれていたと考えてまず間違いないでしょう。
あなた方の信じる教祖様は、今度こそ本物の教祖様になりえますよ。
ですが、侍女の鳳アンナさんでしたか。あの方はお亡くなりになりました。御愁傷様です」
「なんだと!? あの鳳さんが? まさか」
「あなた方に私が嘘をつくメリットが一体どこにあるというんでしょうか?
やはり野蛮なホモサピエンスの思考回路というものは理解に苦しみますね。
アナスタシア様はしばらくはお目覚めにならないでしょう。
あなた方も、お越しにならないお姫様をいつまでも待っていてもしかたがないでしょう?
つまり、あなた方はもう用済みというわけです」
銃声が2発聞こえ、ヘリの中の音声は聞こえなくなった。
公園内に設置された監視カメラはどれもヘリから遠く、画素数も低かったため、非常に小さく見にくかったが、そのボディーにはタカミがよく知るシンボルマークが描かれていた。
逆十字の右上にギリシア文字の「β(ベータ)」が片羽根のようについたそれは、千のコスモの会のシンボルマークだった。
劣悪で傲慢な神とその子どもであるメシアを崇める宗教のシンボルが十字架であるならばと、至高神の化身にして現人神である教祖・朝倉現人は逆十字をそのシンボルに選び、その教えが第二段階に達した際に、教団のさらなる飛躍を宣言し、羽根のように見える「β」をつけたという。
教祖が逮捕されることなく、その教えが最終段階に達していれば、今ごろは「Ω(オメガ)」が逆十字と重なっていたことだろう。
何故アナスタシアとアンナが外出しようとしていたのか、タカミはずっと気になっていた。
たまたまエレベーターでショウゴといっしょになってしまったために、ふたりはショウゴと話をすることになり、その後アンナは何故かアナスタシアの命を狙う遣田ハオトによって命を落としてしまったが、本来ならふたりはこのヘリに乗る予定だったのだ。
ふたりがどこへ向かうつもりだったのかまではわからない。
だがもしこのヘリを自分たちが手に入れられていたら、そう思うと苦々しい思いだった。
アナスタシアとアンナに事情を説明すれば、ヘリのパイロットを説得してもらい、二人が同行する形でヤルダバに向かうことができたかもしれなかった。
だが、もう遅かった。
男はヘリに乗り込んでしまった。
この男はおそらくこのヘリを奪うつもりだろう。
「誰だ? あんた」
「降りてくれないか。自衛隊の救助とは違うんだ。我々はあるお方をお待ちしている」
ヘリの中の様子まではわからなかったが、パソコンのスピーカーからはヘリの乗組員と思われるふたりの人物の声が聞こえてきた。
「警察手帳? そんなものを見せて、何の意味がある?」
一条に似た男が、警察手帳を見せたのだろう。
だとしたら、この男もまた一条と同じく元警察官ということになる。
それとも、この男がたまたま一条の死体を見つけ、たまたま自分に顔がそっくりな彼の警察手帳を奪ったということだろうか。
そんな偶然があるだろうか。
「やはり、このご時世ではこんなものじゃご納得頂けませんか」
その声は一条の声だった。タカミが彼の声を聞き間違えるはずがない。
「やれやれ、聞き耳を立てている人がいるので、あまり声は出したくなかったのですが、仕方がありませんね」
聞き耳を立てている人とは、タカミのことを言っているのだろう。
一条の声ではあるが、その口調は彼のものではなかった。
アンナがその命をかけて、共に命を絶たせたはずの遣田ハオトのものだった。
まさかあの男が、死の間際にアンナによる憑依能力の相殺を免れ、60メートル上空の最上階にいた一条に憑依していたとでもいうのだろうか。
アンナがマシンガンで頭を撃ち抜いた瞬間、アンナの精神が先に死亡した? 自身の精神の死の直前にそんな荒業を行った?
それにしても、なぜ一条の体の手足の怪我が治っているのだ。短時間であれだけの怪我を治せる治癒能力まで持っていたということなのだろうか。
「あんた、一体何の話をしているんだ? さっさと降りてくれないか」
「あなた方には関係のない話です。
そんなことより、このヘリを私に頂けませんか?」
やはりヘリを奪う気だった。
この男が遣田であるなら、目的は自分たちと同じヤルダバだ。
目的地こそ同じだが、その目的はまるで違う。
この男は、アリステラの女王や末裔を滅ぼすつもりなのだ。
「無理だ。あるお方をお待ちしていると言っただろう?」
「あなた方がお待ちのアナスタシア様ならお越しになりませんよ」
「何だと?」
「貴様、アナスタシア様に何をした?」
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しかも、それが生まれつきだったというのですから、女王の血が分かれていたと考えてまず間違いないでしょう。
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「あなた方に私が嘘をつくメリットが一体どこにあるというんでしょうか?
やはり野蛮なホモサピエンスの思考回路というものは理解に苦しみますね。
アナスタシア様はしばらくはお目覚めにならないでしょう。
あなた方も、お越しにならないお姫様をいつまでも待っていてもしかたがないでしょう?
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