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97話 エレノアとカインの結婚式②
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「こんなことになるなんて……」
一方、カインもまた、散々な結婚式になった式場で、呆然と立ち尽くしていた。
僕達の結婚式には、僕の両親と、エレノアの母親。数人の仕事の関係者。そして、僕の友人1人しか、参列者がいなかった。
広い式場に寂しい人数……エレノアは、途中、怒って式場を飛び出して、そのまま結婚式は中止になった。
ルエルへの慰謝料の支払いに、魔物の襲撃。それに伴う領地の返還ーーー正直、うちの財政は厳しくなってるーーーのに、エレノアは豪華な結婚式を挙げたがった。
勿論、僕はそれに賛成した。お嫁さんの希望を叶えるのは、夫の役目だから。
それに、足りないお金は、クリプト伯爵から援助があると期待していたーーーのに、エレノアは、お義父様からの援助は無いと言った。
『マルクス伯爵家なら、お父様からの援助が無くても余裕ですよね?』
家の経済状況を全く知らず、笑顔でそう尋ねるエレノアに、僕は駄目とは言えなかった。
「よーカイン。元気かー?」
「!《マックス》…!」
マックスは唯一、今日の結婚式に来てくれた僕の友人だ。
「今日は結婚式に来てくれてありがとう」
「あーまー、大分迷ったんだけどなー……様子をフィーリン様に伝えなきゃいけないし」
「フィーリン様?」
「いや、こっちの話。てか、よく略奪婚なのに結婚式なんて挙げたな」
マックスは男爵子息だが、僕の家が貧乏だった時から僕を気にかけてくれていた、良い奴だ。
「?どうしてだ?」
「どうしてだ、って……普通、略奪婚なんて良い目で見られねーだろ」
「大丈夫だよ。僕とエレノアは純粋に愛し合っただけで、何も悪いことはしていない。ルエルも、僕達の幸せを願ってくれてるんだ」
僕の言葉に、マックスは何とも言えない、苦虫を噛み潰したよう顔を浮かべた。なんでだ?僕、何かおかしな事を言ったかな?
「……じゃあなんでルエル様は出席してねーんだよ」
「残念だけど、僕達の結婚式と、ルエル達の新婚旅行の日がかぶってしまって、来れなかったんだ」
本当なら、新婚旅行より、血の繋がりのある妹の結婚式を優先するものだろうけど……ルエルはあれで非常識な所があるから、新婚旅行を優先してしまったんだろうね。
「……じゃあなんで他の友達は来てねーんだよ」
「招待状の返信には、皆、用事があって来れないって書いてあったよ。皆、忙しいんだね」
今度は、こめかみを押さえるマックス。頭痛か?大丈夫なのか?
「あんなぁ……皆、お前に呆れてんだよ。略奪しといて、その事実を隠し、ルエル様を悪者に仕立て上げといて、よく結婚式なんて挙げられるなって!だから欠席してんの!用事なんて嘘だよ!嘘!」
「そうなのか!?」
なんて酷いんだ……!
ルエルの悪い噂を流そうって言い出したのは、僕じゃない!あれは、エレノアや母様が、僕が悪者にならないようにと、僕のために考えてくれたんだ!悪気があったワケじゃない!それなのに、嘘をついて僕の結婚式を欠席するなんてーー!
「それに、今回の魔物騒動で、皆、ルーフェス公爵家に逆らったらヤバいって再認識してるし、下手にお前等の結婚式に参列して、ルーフェス様に目をつけられたらたまったもんじゃねーよ」
「なんだって?!やっぱり、ルーフェス様は冷たいお方なんだな……恐怖で人を従わせようとするなんてーー!」
「話聞いてたか?大前提はお前への呆れなの!お前ともう関わりたくねーの!だから、皆、欠席してんだよ!」
「そ、そんなはずは無い!」
だって、皆、僕の大切な友人だ!
マルクス伯爵家の経営が回復した時に、『凄いですね』って、『友人になって下さい』って、向こうから声をかけてくれたんだ!『マルクス伯爵家と仕事がしたいです』って、仕事をくれた友人もいたーーー!
「俺はね、カインのそーゆー馬鹿なとこが好きだったんだよね。男爵子息の俺にも気楽に話してくれるし……意図はどうあれな」
「僕は……」
マルクス領民と話す時と同じだ。たかが男爵令息と話をしてあげるなんて、なんて僕は優しいんだろう。って思ってる……でも、それは本当のことだ。僕は伯爵令息で、君より立場が上なんだから。
「まぁでも、今回の、この結婚式の出席が、お前との最後の友情だよ」
「え?なんでーー」
「色々あるけど、一番は、お前がルエル様を裏切ったからだ。あんなに、ルエル様はお前の為に尽くしていたのに……」
「僕ーーはーー」
ルエルを裏切ってない。そう言おうとしたけど、言っても無駄なのが、マックスの表情で伝わった。
「あんな良い嫁さん捨てるなんて、お前、馬鹿だなー」
最後に、笑顔でそれだけを言って、マックスは僕の元から離れたーーー。
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