王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね

文字の大きさ
55 / 70

40

しおりを挟む
「お兄様が帰って来たの?」

寝支度を終えた私は、サーシャから報告を受けたのだ。

「はい。たった今お帰りになられました。アルマさんもご一緒です」
「そうなのね。これから話すような事は言っていた?」

「いいえ。もう遅いので明日になるそうです。
ですので、お嬢様も、お休みになられて大丈夫ですよ」

「分かったわ。報告ありがとう」

アルマが戻ったと言う事は、お祖父様は、そう言う事だったのだろう。

アルマは大丈夫かしら・・・。
心配になるが、兄の事だから、きっと、大丈夫だろう。

それに、今日見つかった日記もだけど、相手が寺院だと、どうすれば良いのかしら・・・。

この国で生きて行くのならば、人として認めてもらわなくてはならない。
アルマには、自分を卑下ひげする事なく自由に生きて欲しい。

もし、ティアラシアを探すのなら、一度、母の出身国へ行くのもありよね。

そんな事を考えながら、眠りについたのだった。


【次の日】

すでに朝食を終えて談話室へと向かっている。

兄は昨日遅かった為、自室で朝食を取った様だ。

そして談話室へ着くと、アルマがいたのだ。
けれど、服装が使用人の物を着ている。

「おはようアルマ。その服はどうしたの?」

「おはようございます。フェアリエルお嬢様。ボク・・・。
私はアディエル様の従者兼護衛となるべく修行中なのです。どうぞ改めまして、よろしくお願いします」

そうかしこまって言うアルマに『そう、なの?少しビックリしちゃって。こちらこそよろしくね』と答えたのだった。

そうして、話しをしていたら、両親と兄がやって来たのだ。

兄は両親に話している様で、アルマの姿を見ても何の反応もない。

そして皆んなが席につき、父が口を開いた。

「では、時間もないので早速話そう。改めて、アディ、アルマお帰り。
アディから聞いたがアルマ、お祖父様の件は、残念だった」

「・・・いいえ。私が無知だったのです」

「・・・そうか。
アディの従者になりたいと聞いたが?」

「はい、私はアディエル様に救われました。一生涯お仕えしたいと考えています」

何の迷いもなく言い放つアルマを見て、父が真摯に向き合い、話し始めた。

「アルマ、君はまだ若い。その内、考えが変わる事もある。だからそう決め急ぐな。
だが、従者になりたいと言う気持ちは尊重するよ。もし他に、君がやりたい事を見つけたら、変えても良いんだ」

父がそう伝えると、アルマは頷き『ありがとうございます』と述べたが、その瞳には従者になる事への迷いは、全く感じられ無かったのであった。

「それと、獣人達の楽園へは帰りたいか?」
「いいえ。今は考えられません。それよりも、一人前の従者になりたいです」

アルマの気持ちを尊重すると言っていた父だ。
そう言われて、頷き、再度、口を開いた。

「アルマの考えは分かった。
だが、この国で生きる事は、決して生易なまやさしいものではない。
君を知らない人達から、偏見の目で見られる事もあるだろう。
その覚悟はあるか?」

父はアルマを真剣な目で見つめている。
従者となれば、人目を避ける事は出来ない。
ジッと、アルマの答えを待っていた。
すると、『はい。承知の上です』と意思の強い目で応えたのだった。

「そうか。
私達も、君が生き易いよう様に、最大限の努力をしよう。何かあれば必ず報告しなさい」

「はい。ありがとうございます」

そう言って、アルマはサミュエルに連れられ、退出して行った。

私達、家族だけとなった談話室で、父が兄に伝えたのだ。

「アディ。昨日エルと殿下が、獣人の事が書いてある書物を見つけたんだ」
「本当ですか!?」

「ああ。200年以上前、この国は獣人を認めなかった。
さて、今回はどうなるかな」

父は顎に手を当てながら、思案顔をしている。
そんな父を見た兄が問いかけた。

「父様が掛け合ってくれるのですか?」

「そうしたいところだが、資料が陛下の手元にある。今日は領主としての仕事がある為、王宮へは行けないが、明日は登城するので、陛下へ伺ってみるよ」

「よろしくお願いします。
彼には、幸せになってもらいたい」

兄の切実な思いが伝わってくる。

「そうだな。どう見ても善良な少年だ。私も、心からそう思うよ。
後は、私に任せなさい」

その後、両親は仕事の為、退出して行ったのだった。

私が兄を、ジッと見ていると、『エル?学園は大丈夫かい?』と聞かれたので、思った事を伝えたのだ。

「大丈夫よ。それより、お兄様は、なんだか寂しそうね?」

思っても見ない事を、聞かれたかの様な反応で『ん?そうかい?』と、笑顔で返して来た。
だから私は、少し掘り下げて『ええ。何かあったの?』と、問いかけたのだ。

「うーん。アルマとの旅が、楽しかったんだよ。弟の様に思ってしまったんだ。
だから、変わるアルマを嬉しくもあり、また寂しくも思ってしまった。
それにしても、よく気が付いたね?」

それはそうよ。だって、たった2人の兄妹だもの。
だから、私は、兄を励ます事にしたのだ。

「お兄様のアルマを見る視線がね、寂しそうだったの。
それに、アルマの態度が変わっても、アルマは、アルマだわ。だから大丈夫よ」

すると、兄は、笑みが溢れた様に返してくれたのだ。

「ははっ。そうだね。ありがとうエル。君が妹で、本当に良かったよ」

「私もよ。お兄様がお兄様で嬉しいわ。今日はゆっくり休んでね。
では、学園へ行って参ります」

「ああ。そうするよ。気を付けて行っておいで」

笑顔で送り出してくれた兄に、私は手を振り、学園へと向かったのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

神様、恋をすれば世界は救われるのですか? 〜余命二年の侯爵令嬢が、選ばれなかった未来の先で最愛を見つける物語〜

お月見ましろ
恋愛
余命は、十八歳の卒業式まで。 彼女の死は、そのまま世界の終わりを意味していた。 世界を救う条件は――「恋をすること」。 入学式の朝、神様は笑って言った。 「生きたいなら、全力で恋をしなさい」 けれど誰かを選べば、誰かの未来が壊れる。 魔法学園で出会った三人の少年は、それぞれの形でアイリスを必要としていた。 守ることに人生を捧げ、やがて“忠誠”を失っていく従者。 正しさを失わないため、恋を選択として差し出す王族。 未来を視る力ゆえに、関わることを拒み続けた天才魔術師。 「恋は、選択なのか」 「世界より、大切なものはあるのか」 これは、「正解のない選択」を何度も突きつけられながら、最後に“自分の意志”で未来を選び取る少女の物語。 ――世界よりも、運命よりも、 ひとりにしないと決めた、その選択の先へ。 【毎日更新・完結保証作品(全62話)🪄】 ※運命選択×恋愛、セカイ系ファンタジー ※シリアス寄り・溺愛控えめ・執着・葛藤・感情重視 ※ハッピーエンド

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

【完結】8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。

大森 樹
恋愛
「君だけを愛している」 「サム、もちろん私も愛しているわ」  伯爵令嬢のリリー・スティアートは八年前からずっと恋焦がれていた騎士サムの甘い言葉を聞いていた。そう……『私でない女性』に対して言っているのを。  告白もしていないのに振られた私は、ショックで泣いていると喧嘩ばかりしている大嫌いな幼馴染の魔法使いアイザックに見つかってしまう。  泣いていることを揶揄われると思いきや、なんだか急に優しくなって気持ち悪い。  リリーとアイザックの関係はどう変わっていくのか?そしてなにやら、リリーは誰かに狙われているようで……一体それは誰なのか?なぜ狙われなければならないのか。 どんな形であれハッピーエンド+完結保証します。

『身代わりに差し出された令嬢ですが、呪われた公爵に溺愛されて本当の幸せを掴みました』

鷹 綾
恋愛
孤児院で「九番」と呼ばれ、価値のない存在として育った少女ノイン。 伯爵家に引き取られても待っていたのは救いではなく、実の娘エミリアの身代わりとして、“呪われた化け物公爵”フェルディナンドの婚約者に差し出される運命だった。 恐怖と嘲笑の中で送り出された先で出会ったのは―― 噂とは裏腹に、誰よりも誠実で、誰よりも孤独な公爵。 角と鱗に覆われたその姿は、血筋ではなく、長年にわたる呪いと心の傷によるものだった。 そしてノインは気づく。 幼い頃から自分が持っていた、人の痛みを和らげる不思議な力が、彼の呪いに届いていることに。 「身代わり」だったはずの婚約は、やがて 呪いと過去に向き合う“ふたりだけの戦い”へと変わっていく。 孤独を知る公爵と、居場所を求めてきた少女。 互いを想い、手を取り合ったとき―― 止まっていた運命が、静かに動き出す。 そして迎える、公の場での真実の発表。 かつてノインを蔑み、捨てた者たちに訪れるのは、痛快で静かな“ざまぁ”。 これは、 身代わりの少女が本当の愛と居場所を手に入れるまでの物語。 呪いが解けた先に待っていたのは、溺愛と、何気ない幸せな日常だった。

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。

処理中です...