王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね

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アディエル視点

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そろそろ、アルマの暮らす山が見える頃だろう。

本日中には着くはずだ。
アルマと約束をした肉を買い、すでに馬車へと積んである。
そして、アルマはとてもご機嫌だった。

「アディ見て!あの山だよ。家はね、山をずっと登った所なんだ」
「では、途中で馬車を降りて歩いて行こうか」
「うん。分かった」

そうして、山のふもとに着き、荷物を出す。

肉はアルマがかついで行くと言うので、任せる事にした。
従者のサミュエルも、付いていくと言ったが高齢の為、御者と一緒に待機させる事にしたのだ。

「ではアルマ、行こうか」
「うん。アディのリュック、重そうだね。持つ?」

「大丈夫だよ。アルマは肉を落とさずに、運んでくれるかい?」
「分かった!じゃあ、アディ付いて来てね」

そう言って二人で山を登って行く。

3時間程歩いただろうか・・・。

時間にして昼過ぎだ。
アルマが言うには、もうすぐとの事なので、休憩を挟まずに歩き続ける事にしたのだ。
すると、しばらくして小屋が見えて来た。

「あれが家だよ!ちょっと待っててね。じいちゃん呼んでくる」

そう言い残し、あっという間に走って行ってしまった。

その時。

「アディ!!?」

アルマの叫びにも近い声が聞こえた。
急いで家へ入ろうとドアを開けてみると、嫌な臭いが充満している。

アルマはベッドの横に立ったまま呆然ぼうぜんとしていた。

僕はドアを開けたまま、部屋の窓を開けて行く。
空気の入れ替えが終わるまでは、アルマを外に出そうと思い、誘導したのだった。

「じいちゃん・・・死んだの?」

つぶらな瞳でジッと見つめてくる。
僕は何て言っていいか分からず『ああ』と返事しか出来ない。


「ボクは、死んだじいちゃんを置いて、出かけちゃったの?
・・・酷いなボクは・・・」

虚ろな瞳で、淡々と話すアルマに、僕は『そんな事はない。君は知らなかったんだ』と擁護ようごする言葉を述べた。

「ああ・・・。
だからアディは、ボクに絵本を見せたんだね。アディは気付いていた?」

「・・・ああ。黙っていて悪かった。だが、アルマの話だけでは、確信が持てなかったんだ。
僕も、お爺さんが生きていて欲しいと思い、ここへ来ているんだよ」

「うん。アディが謝る事じゃないよ」

そう言い残し、アルマは静かに家へと戻って行った。

僕はそのまま待つ事にした。

窓から、アルマの声が風に乗って聞こえてくる。
お爺さんに、何かを語りかけているのだろう。

それから、待つ事、数十分。アルマが出て来たのだ。

「アディごめんね。じいちゃんと、お話しして来た。
このままだと、じいちゃんが可哀想だから、お墓を作ろうと思うんだ」

先程よりは、いくらか表情が戻っているアルマに、少し安堵した僕は『手伝うよ』と一言、告げたのだ。

リュックを下ろし荷物を出す。そして、準備していた折り畳みのシャベルを出した。

「万が一の事を想定して、準備をして来たんだ。嫌な気持ちにさせていたら、申し訳ない」
「ううん。アディには、お世話になりっぱなしだね。これで早く、じいちゃんを土へかえしてあげられる・・・」

そう言って二人で黙々と土を掘る。

掘り終わった穴にシーツで包んだお爺さんを寝かせたのだ。

「アディこのお肉、じいちゃんと一緒に埋めてもいい」
「ああ。いいよ」

そして、肉を乗せて埋めていく。

埋め終わり、アルマが木の棒を探しに行った。
僕は花を摘みに行く事にする。

戻るとアルマが棒を立てていたので、僕は棒の前に花を置いた。
黄色とピンク色の野草だ。

そうして、アルマは埋めた土をジッと見ていた。

11歳の少年が、泣く事も取り乱す事もなく、淡々とする姿に胸が痛くなる。

だから、声を掛けたのだ。

「アルマ、お爺さんが亡くなったんだ。泣いても良いんだよ」

「・・・うん。でもボクは、じいちゃんに約束したんだ。
じいちゃんが、ボクを育てて、良かったと思ってもらえる様な、立派な大人になるって。
・・・だから、ボクは・・・泣いては、いけないんだ」

お墓を見ながら喉を詰まらせて話してくるアルマに、僕は再度、話し掛けたのだ。

「・・・アルマ。立派な大人だって、悲しい時は泣くんだ。
それに、アルマは、アルマのままで良いんだよ」

「・・・本当?」

「ああ。それに、此処には僕しかいない。
・・・おいで」

そう伝え、両手を広げる。

「・・・うん、ゔん。ゔ~。」

声を押し殺しながら、アルマが抱きついて来た。

体が大きくたって、心は11歳なのだ。
改めてその事を実感する。

「グスっ。アディ、ありがとう。大好きだよ」

そう伝えてくれたアルマに、僕は静かに問いかけた。

「アルマ、そのまま聞いて欲しいんだが、良ければ公爵邸に来ないか?
もし、行く宛があればいいのがだが、どうだろうか・・・」

「ありがとう。
・・・少し時間をもらっても良いかな」

「もちろんだよ。アルマはこの後どうする?」
「この山にいようと思う」
「そうか。では、昨日泊まった宿に、3日間滞在するので、僕と一緒に戻るのなら、会いに来て欲しい」

そう伝えると、アルマは僕から離れていき『うん。分かった。我儘言ってごめんね』と返事をしてくれたのだった。

僕達は、そう約束をして別れたのだ。

ふもとに戻る頃には、すでに夕暮れ時だった。

サミュエルに事情を話し、昨日泊まった宿へと向かう。
そうして、食事を終え寝支度をしたのだ。

そして、ベッドの中でアルマの事を考えた。

彼は、もう僕の中で、とても大きな存在となっている。

話しをしてみると、彼は知らない事が多いだけで、教えればちゃんと理解をしていた。
なんだか、弟ができた様で、この5日間は、とても楽しかったのだ。

だから、アルマが一緒に戻ると言ってくれたら、と思ってしまう。
・・・もちろん、強要はできないが・・・。

・・・僕に、会いに来てくれるだろうか。

そんな事を考えながら眠りに着いたのだった。

【次の日の朝】

朝食を終えて、外出の準備をしていたら、宿の支配人がやって来たのだ。

「クリーヴランド様、朝早くに失礼致します。アルマ・ニコネス様がお見えです」

会いに来てくれたと言う事は、一緒に公爵邸へ帰ってくれるのだろう。
僕は支配人に『直ぐにここへ通してくれ』と伝えたのだ。

まさか、こんなに早く来てくれるとは、考えてもいなかった。

その時、ドアのノック音が響く。

「アディ、おはよう」

そこには、いつもの元気なアルマが、顔を覗かせていたのだ。

「ああ。おはよう!随分早かったが、ちゃんと考えたのかい?」

「うん。ちゃんと、じいちゃんにお別れして来たよ。それでね、じいちゃんも、ボクがアディと一緒に行く事を喜んでくれると思うんだ。だから、ボクも一緒に、連れて行ってくれる?」

「ああ。もちろんだよ。アルマと一緒に戻れて嬉しいよ」

僕は嬉しくなり、満面の笑みで答えたのだ。

「ありがとうアディ。それと、サミュエルさんに話があるんだ」

そう言ったアルマが、サミュエルに向き直り、再度、口を開いたのだった。

「サミュエルさん、ボクを弟子にしてください!
ボクはアディの力になりたいんだ。サミュエルさんみたいな、立派な従者になりたい!」

僕は思わず、目が点になってしまった。そして、そんな僕を余所目に、サミュエルが話し始めたのだ。

「そうですか。では、アディエル様、と呼ぶところから始めましょうか」

そう笑顔で告げるサミュエルに、僕は物申したのだ。

「・・・サミュエル?別にアディで良いんだけど・・・」

すると、サミュエルはこちらに向き直り、口を開く。

「いいえ。私の弟子でしとして迎え入れるのです。何処に出しても恥ずかしくない従者にして見せます。
それに、私も、もう歳でございます。
いつまで、アディエル様のおそばにおられるのか、不安だった事は確かです。
それと、アルマはとても、有望な若者です。
手塩にかけて、育てて行く所存ですので、ご安心ください」

「・・・アルマは、それでいいのかい?」

「うん。あっ、はい!
ボクが、ボクのままでいられるのは、アディエル様のおかげです。
ボクは、アディエル様を支えられる、立派な従者になります!」

弟の様だと思っていたのに、従者とは・・・。
方向転換が激し過ぎて、気持ちが追い付かない。
もちろん、アルマが一緒に戻ってくれるのは、とても嬉しい。でも、つたい敬語で話すアルマに、少し、寂しさを感じてしまったのだった。

「では、アディエル様。これから公爵邸へと戻る準備をさせて頂いてもよろしいでしょうか」

「ああ。よろしく頼むよ」

その後、馬車へと乗るが、アルマはサミュエルから指導を受けているので、邪魔する事はせず、その様子を見ていた。
とても熱心に話を聞いている。

僕は、少年が青年へと変わる、第一歩を踏み出したのを、垣間かいま見た気がした。
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