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巣ごもりオメガと運命の騎妃
61.百年後の約束
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「……じゃあ、もう体は大丈夫なの?」
「ああ。一応、次の発情期がいつ来るかによるけど……ほかは特に異常はないらしい」
「そう、ならよかった」
ドマルサーニから戻り、一ヶ月ほど経ったある日、ミシュアルはラナと一緒に中庭の四阿にいた。
いつの間にか季節が移り、日陰では少し寒さがある。ゴブレットに注がれたあたたかな茶を飲んでため息をつくと、向かいに座ったラナがお疲れさまね、と笑った。
普段は間をあけずに遊びに来る彼女が言うほど、このひと月は忙しかった。
いつもより少し長引いた発情期が終わってすぐ、ミシュアルは一度王宮を出た。実家に帰宅の挨拶をしに行ったのだ。
ミシュアルがさらわれた顛末については、すでに父であるファルークに知らされており、父を通して家族には話が行っていた。おかげで実家には結婚して別で暮らしている兄姉たちやその配偶者、子どもまでもが集まっており、ミシュアルは皆に囲まれて一晩を明かした。
翌日には王宮に戻ったが、それからはイズディハールや大臣たちとの会談があった。ミシュアルの報告は主にドマルサーニで得た見聞についてだったが、イズディハールからは更にそれを深めたものが提案された。
「ドマルサーニでは、オメガの妃たっての希望により、騎妃という称号が出来た。これはオメガとしてだけでなく、本人の思い描く自身の理想の姿で妃として立ちたいという決意の表れでもある。この取り組みを、私は賞賛する。そして、我が国でもオメガにとって住みよい国になる一歩として、妃となるものの希望を聞き、そのうえで新たな称号と役職を与えたいと思う」
イズディハールの言葉に、大臣たちは顔を仰向けてぽかんとしている。すぐにどういうことだ、称号とは、と口々に囁きはじめ、それに応えてドマルサーニの騎妃について知っているものが小さな声で説明していた。
さざめきはすぐに消える。静かになると、またイズディハールは一同を改めて見渡した。
「それから、これは前述に関係することでもあるが……法を改めたいと思う。法は古くからある。しかしそれが現在に生きるアルファ、ベータ、オメガの性徴に即したものか――いま一度考える必要があるはずだ。そしてその改革の大きな目標として、私はオメガの入隊を目指したい」
会議に使われる広間で大きな円卓を囲んだ大臣たちは、朗々と響く王の声に少しのざわめきを響かせた。
驚きや困惑を含むさざめきのなかで、まだ婚約者という立場であるため、二歩ほど後ろに下がった位置にいたミシュアルは、イズディハールの背を見つめて、ぐっとこぶしを握った。
ざわめきの中に、賛同はまだ聞こえない。しかし、ミシュアルの願いを叶えるため、ナハルベルカに生きるオメガたちの道を開くため、ここから変わっていくことをイズディハールは宣言してくれたのだ。
(イズディハール様……)
目頭が熱い。ぎゅっとこめかみのあたりが引き絞られるような感じがする。
ここが二人きりの寝室なら、きっと泣いていただろう。けれどここは大広間で、皆がミシュアルを見ている。
この国を統べる王に添うものとして、変革を望む一人として見ている。
こぶしを握りしめて、ミシュアルは前を向いた。イズディハールの肩が少し上下する。浅い呼吸のあと、大広間に問いが響いた。
「私はこれを宣言だけで終わらせるつもりはないが、変革として終えるためには皆の協力が必要だ。手を貸してくれるな?」
「もちろんです、我が王」
大臣たちが深々と頭を下げる。ミシュアルもイズディハールからは見えていないことを承知の上で頭を下げながら、今日の光景を忘れずにいようと思った。
その翌日から、ミシュアルには会談の申し入れが届くようになった。改革のための参考人として意見を求めたいというものばかりで、ミシュアルとしても疎かにできない申し入ればかりだ。毎日さまざまな省庁を渡り歩き、意見の交換をはかり、時には会議に参加したりイズディハールとも意見のすり合わせを何度も行った。
そうしているうちにドマルサーニから戻ってひと月が経ち、ようやくラナと会うことができたのが今日のことだった。
一通りドマルサーニで起きた出来事や近況を話すと、ラナはミシュアルの体を気遣った後、でも、と顔を曇らせた。
「ミシュアルがそうならあちらの騎妃さまも大変かもしれないわね。あなたよりずっと小柄なんでしょ?」
王宮を頻繁に出入りするラナも、サリムにはまだ会ったことがないらしい。あなたが倒れるほどの薬なら、とまだ見ぬ異国の妃に心を砕く従姉に、ミシュアルもゴブレットの水面に視線を落とした。
イズディハールがドマルサーニへの手紙を書き始めたのは、ミシュアルの発情期が終わってからだった。
「お前の発情期が早まったことを書いてもいいだろうか。サリム殿の症状の改善に役立つかもしれない」
そう相談されて、ミシュアルは一も二もなくうなずいた。
そうしてナハルベルカへの到着の報告とドマルサーニでの歓待への感謝、シラージュ帝逝去への改めての弔意、カシュカの摂取による発情期の異変がしたためられた手紙は、ドマルサーニへ運ばれていった。
あれから三週間以上が経つが、返事はまだ来ていない。
そもそも往復するのに二週間近くかかる距離だ。国家間の書簡でもあるため、ハイダルの手に渡り、読まれるまでにも時間がかかる。
「でも……サリム殿は強い方だし、何かあれば早馬で報せが来るはずだ。それがないのは、きっと元気にしているからだと思う」
もどかしい気持ちがあるのは否めないが、仕方のないことでもある。自分に言い聞かせるように、ミシュアルは曖昧に笑った。
そんな従弟を見てか、ラナはそれからすぐに、また来るからと帰ってしまった。香水商が家に来るからと言ってはいたが、気を落とすミシュアルを気遣ったのだろう。
変なところで優しいなと思いつつひとりになったミシュアルは四阿に敷かれた絨毯の上でしばらくぼうっとしていたが、何度か寝返りを打った後、がばりと起き上がった。
(手紙を書こう)
急ぎの連絡がないことこそ無事の証だとラナには言ったが、やはり心配だ。
ミシュアル自身の副作用は発情期が早めに来たことくらいだったが、サリムにはまた違った作用が出ているかもしれない。そう思うといても立ってもいられなくなって、早速手紙を、と立ち上がりかけた矢先だった。
陛下のお戻りですと、室内にある扉の向こうから声が上がった。
「ああ、いい。そのままで」
あわてて姿勢を正そうとしたが、イズディハールは手のひらを掲げ、そのまま中庭へやってきた。
「ラナはもう帰ったのか」
「はい、香水商が家に来るとかで」
「また買うのか。全部使いきるのに何年かかるだろうな」
絨毯の上に座り込んだままのミシュアルの隣にあぐらをかいて座ると、イズディハールはふと手を伸ばしてきた。指先が触れたのは、ミシュアルの頬だ。
「どうした、なにか考え事か」
「ええと……」
ラナにも気を遣われたようだし、自覚はなかったが、もしかしたら自分は感情が顔に出やすいたちなのかもしれない。
気を付けなければと思いながらも、サリムのことが気にかかるのはどうしようもない。素直にそのことを告げると、イズディハールはそのことかとうなずいた。
「それならタイミングがよかった。ちょうどドマルサーニからの書簡が届いた。サリム殿からの手紙もある」
イズディハールが胸元から巻紙を取り出す。それは赤い糸を織り込んだ紐で閉じられていた。
「一緒に見てもいいか?」
「はい」
むしろ、一緒に読んで欲しい。きっと体調についてや副作用のことなども書かれているだろう。悪いことが書いていなければいいが、もし何かあったらと気が気ではない。
うなずくと肩に頭が預けられる。その重みにどこかほっとしながら封を開くと、中には綺麗な文字が並んでいた。
『ミシュアル・アブズマール様
先日はドマルサーニにお越しくださり、ありがとうございました。お見送りできなかったことは残念でしたが、ミシュアル様と過ごした日々は今でも良い思い出として心に残っています。
その後、体調にお変わりはありませんか?
私は予定していた発情期が来なかったため、お医者様に診ていただいたところ、子を授かっていました。近頃あった不調も、それによるものだったようです。いまは体調も安定して、ハイダル様と一緒に名前の候補を考え始めています。
それから、こちらもまだ公表はしていませんが、ハイダル様が即位なさる際に召し上げていただくことになりました。私などで務まるかという懸念はありますが、幸いハイダル様だけでなく、ディーマ様も傍にいてくださります。これからはたくさん話をして、歩み寄っていけると思います。
最後になりますが、ミシュアル様をお連れしたい場所がメラにはまだいくつもあります。話したいこともあります。手紙では書ききれないほど、たくさん。だから、ぜひまたドマルサーニへいらしてください。私もまたいつかナハルベルカへ行くことができる日を夢見ています。
それでは、再会の日を願って。
あなたを遠くから想う友 サリム・ランダ・ドマルサーニ』
「……」
それほど長くはない手紙を、ミシュアルは三回読み直した。それから一度イズディハールと目を合わせ、もう一度読んだ。
「……っふ」
突然目の前がにじんで、鼻の奥がつんと痛くなる。喉が震えて呼吸が押し出され、たまらなくなってミシュアルは顔を俯けた。イズディハールが体を起こして頭を抱き寄せたので、遠慮なくその胸に顔を押し付けた。
さまざまな感情が沸き上がる。そのどれもが喜びに近しいもので、ミシュアルは泣きながら笑っていた。
ドマルサーニにいた二週間ほどの間、ミシュアルは思いがけず友好国の皇帝一族にまつわる因縁や、現在にまで引き継がれてしまった悲しみを見ることになった。友人になったサリムのどこかすべてを諦めたような瞳に、何度ももどかしい気持ちを味わった。
それを通して、このまま自分はイズディハールの妃になっていいのか考えた。そして、道を見つけることができた。
けれど、サリムはどうだろうと思い続けていたのだ。
体調の心配はもちろんあったが、本当に心に残っていたのは、周囲のためにすべてを受け入れ諦めることで自分を崩していくサリムの、細い背中だった。
「よっ……よかった、サリム殿、本当に……」
しがらみはまだあるだろうが、別れ際のディーマも落ち着いていた。そして、文面でもサリム自身からディーマについて触れている。ハイダルとも、運命のつがいだということを差し引いても想いあっているようにミシュアルには見えていた。
シラージュ帝の崩御や誘拐事件は思いがけないことだったが、そのことがきっかけで、ミシュアルの知らないところでも彼らの関係性は大きく変わったのだろう。それこそ、未来の話ができるようになるほど。
きっともうなにも心配することはない。サリムは大丈夫だ。
ミシュアルははあと熱いため息をついた。泣いたのに、心が晴れやかで浮き足立っている。今すぐにでも馬を駆ってドマルサーニへ行きたかった。
「イズディハール様」
「うん?」
「次はいつドマルサーニに行けますか? 生まれたら、手紙が来たら会いに行ってもいいですか? ああ、でも、あんまり行き来するのも大変ですよね」
頭の中にポンポンと言葉が出てきて、それがそのまま口から出てしまう。あまりの落ち着かなさに自分で笑ってしまいながら、ミシュアルはぐすっと鼻をすすりあげた。
「……手紙、書きます」
頻繁に行けるほど近い距離ではないが、手紙なら届けてもらえる。ぽつりと呟くと、抱かれたままの頭が撫でられた。
「そうだな。それに、口実はこれからいくらでもある。それに、私たちからも朗報は届けられる。そうだろう?」
「は……はい」
ドマルサーニはこれから新皇帝と皇妃の即位、新たな命の誕生を迎える。ナハルベルカもまた、現王であるイズディハールの結婚を控えている。その先に、子を授かる未来だってあるのだ。
そこに思い至って一瞬口ごもったミシュアルの恥じらいに、イズディハールは気づいたようだった。何か言いたげににやりと笑うと、頭を撫でた指先で耳たぶをくすぐってきた。
「あっ……ちょっ、だ、だめですよ、まだ昼です」
「夜ならいいのか?」
「夜でも外はだめです」
あわてて体を起こし、それとなく周囲に視線を走らせる。幸い、見えるところに衛兵はいなかった。
湿り気の残る目元を擦り、手紙を丁寧に巻き直す。またあとで読み直そうと脇にそっと置いたミシュアルは、改めて呼吸を整えた。
嬉しい報せは受け取った。けれど、イズディハールが持ってきたのはそれだけではない。
「ドマルサーニからの書簡の内容は……俺が聞いても大丈夫ですか」
声のトーンを落としたミシュアルに、イズディハールも姿勢を正すとかいつまんで話をしてくれた。
「まず、あの捕らえた売人たちだが……やはり、ナハラの手の者だった。それも、あの組織の中でも幹部の一人だ」
ナハラの手といえば、サマネヤッド同盟内の会議でも話が上がった人身売買組織だ。各国に出没し、行方不明者は大勢いる。
その手口は主に誘拐だが、現行犯で捕らえられたものはほとんどおらず、場数を踏んできただけあって犯行は鮮やかで、行方不明になってはじめて気づくことが多い。
それほどの熟練した手さばきで犯行を繰り返す集団にしては、ミシュアルたちをさらった四人は雑だった。
「幹部? それにしては……」
「今回はなにもかもが中途半端というか、場当たり的な動きが多かったようだ。あいつらは焦っていたらしい。サマネヤッド同盟の会議で、人身売買は撤廃するという動きが強まったことを知ったから」
「……知った?」
どういうことだと視線をやると、イズディハールは周囲を見渡し、見える範囲には衛兵もいないのを確認したあと、ミシュアルだけに聞こえるほどの小さな声で言った。
「裏で情報が流されていた。どうやらロカムが関わっているようだ。……会議の情報が漏れていた以上、誰が漏らしたかは検討がつくが」
「ロカム……あっ」
思い出したのは、ミシュアルやサリムも参加したサマネヤッド同盟の会議だ。
あの時、ロカムを統治するタルハ大公は冷汗をかき、失言をしてまでオメガの人身売買について語り、緩和して欲しいとさえ言っていた。
(まさか、国ぐるみでオメガを?)
そう考えるだけでも恐ろしいのに、サリムの言葉を思い出すと、背すじに寒気すら走る。
クク山脈でミシュアルを脱出させた時、サリムは言っていたのだ。ロカムについたら、そこで身分を明かすと。
(もしロカムに到着していたら、サリム殿は……)
無事でいられなかった可能性は高い。
最悪を想像してしまったミシュアルは、すっかり萎縮して黙り込んでしまった。
撲滅を目指すはずの組織が、まさか国の助力を得ていたとは思いもよらなかった。それも、ロカムは同盟を結んだ国だ。手ひどい裏切りは驚きと同時に恐怖をもたらした。
実家の離れで過ごしていたころなら、話を聞いても怖いことがあるものだとしか思わなかっただろう。しかしいまのミシュアルは、国政に携わらざるを得ない立場に立とうとしている。イズディハールの隣に立つ以上、こんな思いをすることはこれからも何度もあるはずだ。
落ち着かなければと深呼吸をして、ミシュアルは続きを促した。
「処罰は……どうなりますか」
「ナハラの手の者たちへは人身売買と略取、不敬罪と国家反逆罪が少なくとも適用される。鞭打ち刑と……いずれかの極刑が科されるだろう。しかし、その前にナハルベルカへの移送を要求している。我が国でも、相応の罰を受けてもらう」
「相応の罰?」
「鞭打ちを十回だ」
鞭打ち刑は放火や殺人、人身売買や水辺に毒を撒くなどの重罪に科される刑罰だ。その苛烈さから一日にまとめて回数をこなすと死ぬ可能性もあるため、何日かに分けて行われることも多い。
イズディハールの声は淡々としているが、与える罰の重さを考えると、まだあの事件については怒りを覚えているのは確かだった。
「刑と罪状は公表する。……とは言っても、被害者が誰かはあえて公表しない。ただ、我が国のオメガは法によって守られるべき存在であることを、内外に広めるためのものだ。ナハルベルカの宝は民だ。害なすものは、決して許さない」
イズディハールの言葉に、ミシュアルは安堵した。
自分がさらわれたのだと周囲に知られることはどうでもよかったが、王の私情が含まれていると思われるようなことは避けたかった。しかし、イズディハールの言葉には民を守る王としての責任がうかがえる。そのことが、王のつがいとして、ナハルベルカの民として誇らしかった。
決して口先だけではない力強い言葉に、ほうとため息が漏れる。いつの間にか、さっきまで感じていた焦燥感は消えていた。
情報が入ってこなかっただけで、物事は大きく動き出そうとしている。それはいつか良い未来をもたらしてくれるだろう。そう信じられるだけの言葉を、ミシュアルはたったいま聞いたのだから。
(百年後を知りたいな)
唐突に、ミシュアルはそんなことを考えた。
百年ほど前のナハルベルカでは、オメガは売買されたり誘拐されるのが当たり前だった。しかし現在はそれが重罪になり、オメガは守るべき存在になっている。そしていまも、オメガに対する考え方は国を挙げて変化している。
このまま百年経ったとき、この国はどうなっているのだろう。これからも様々なことがあるだろうが、それでも希望を抱かずにはいられない。そしてそう思えたことを、伝えたいと思った。
「イズディハール様」
中庭の樹に向けられてはいるが、おそらく他のことを考えているであろうイズディハールの横顔に声をかける。すぐに蒼い瞳がミシュアルを映した。
「俺、長生きがしたいです」
「長生き?」
「あっ、いえ、あの、長生きって言うのは……」
感極まりすぎて、言葉が足りなかった。
焦るミシュアルあわてて言葉を足していくのを、イズディハールは笑いながら見守ってくれる。そして言葉の意味をしっかり伝えたつがいに、王は一つの約束をした。
年老いた二人が最後に見る国が、いまよりも笑顔であふれていること。それはきっと果たされると、ミシュアルは心の底から思った。
「ああ。一応、次の発情期がいつ来るかによるけど……ほかは特に異常はないらしい」
「そう、ならよかった」
ドマルサーニから戻り、一ヶ月ほど経ったある日、ミシュアルはラナと一緒に中庭の四阿にいた。
いつの間にか季節が移り、日陰では少し寒さがある。ゴブレットに注がれたあたたかな茶を飲んでため息をつくと、向かいに座ったラナがお疲れさまね、と笑った。
普段は間をあけずに遊びに来る彼女が言うほど、このひと月は忙しかった。
いつもより少し長引いた発情期が終わってすぐ、ミシュアルは一度王宮を出た。実家に帰宅の挨拶をしに行ったのだ。
ミシュアルがさらわれた顛末については、すでに父であるファルークに知らされており、父を通して家族には話が行っていた。おかげで実家には結婚して別で暮らしている兄姉たちやその配偶者、子どもまでもが集まっており、ミシュアルは皆に囲まれて一晩を明かした。
翌日には王宮に戻ったが、それからはイズディハールや大臣たちとの会談があった。ミシュアルの報告は主にドマルサーニで得た見聞についてだったが、イズディハールからは更にそれを深めたものが提案された。
「ドマルサーニでは、オメガの妃たっての希望により、騎妃という称号が出来た。これはオメガとしてだけでなく、本人の思い描く自身の理想の姿で妃として立ちたいという決意の表れでもある。この取り組みを、私は賞賛する。そして、我が国でもオメガにとって住みよい国になる一歩として、妃となるものの希望を聞き、そのうえで新たな称号と役職を与えたいと思う」
イズディハールの言葉に、大臣たちは顔を仰向けてぽかんとしている。すぐにどういうことだ、称号とは、と口々に囁きはじめ、それに応えてドマルサーニの騎妃について知っているものが小さな声で説明していた。
さざめきはすぐに消える。静かになると、またイズディハールは一同を改めて見渡した。
「それから、これは前述に関係することでもあるが……法を改めたいと思う。法は古くからある。しかしそれが現在に生きるアルファ、ベータ、オメガの性徴に即したものか――いま一度考える必要があるはずだ。そしてその改革の大きな目標として、私はオメガの入隊を目指したい」
会議に使われる広間で大きな円卓を囲んだ大臣たちは、朗々と響く王の声に少しのざわめきを響かせた。
驚きや困惑を含むさざめきのなかで、まだ婚約者という立場であるため、二歩ほど後ろに下がった位置にいたミシュアルは、イズディハールの背を見つめて、ぐっとこぶしを握った。
ざわめきの中に、賛同はまだ聞こえない。しかし、ミシュアルの願いを叶えるため、ナハルベルカに生きるオメガたちの道を開くため、ここから変わっていくことをイズディハールは宣言してくれたのだ。
(イズディハール様……)
目頭が熱い。ぎゅっとこめかみのあたりが引き絞られるような感じがする。
ここが二人きりの寝室なら、きっと泣いていただろう。けれどここは大広間で、皆がミシュアルを見ている。
この国を統べる王に添うものとして、変革を望む一人として見ている。
こぶしを握りしめて、ミシュアルは前を向いた。イズディハールの肩が少し上下する。浅い呼吸のあと、大広間に問いが響いた。
「私はこれを宣言だけで終わらせるつもりはないが、変革として終えるためには皆の協力が必要だ。手を貸してくれるな?」
「もちろんです、我が王」
大臣たちが深々と頭を下げる。ミシュアルもイズディハールからは見えていないことを承知の上で頭を下げながら、今日の光景を忘れずにいようと思った。
その翌日から、ミシュアルには会談の申し入れが届くようになった。改革のための参考人として意見を求めたいというものばかりで、ミシュアルとしても疎かにできない申し入ればかりだ。毎日さまざまな省庁を渡り歩き、意見の交換をはかり、時には会議に参加したりイズディハールとも意見のすり合わせを何度も行った。
そうしているうちにドマルサーニから戻ってひと月が経ち、ようやくラナと会うことができたのが今日のことだった。
一通りドマルサーニで起きた出来事や近況を話すと、ラナはミシュアルの体を気遣った後、でも、と顔を曇らせた。
「ミシュアルがそうならあちらの騎妃さまも大変かもしれないわね。あなたよりずっと小柄なんでしょ?」
王宮を頻繁に出入りするラナも、サリムにはまだ会ったことがないらしい。あなたが倒れるほどの薬なら、とまだ見ぬ異国の妃に心を砕く従姉に、ミシュアルもゴブレットの水面に視線を落とした。
イズディハールがドマルサーニへの手紙を書き始めたのは、ミシュアルの発情期が終わってからだった。
「お前の発情期が早まったことを書いてもいいだろうか。サリム殿の症状の改善に役立つかもしれない」
そう相談されて、ミシュアルは一も二もなくうなずいた。
そうしてナハルベルカへの到着の報告とドマルサーニでの歓待への感謝、シラージュ帝逝去への改めての弔意、カシュカの摂取による発情期の異変がしたためられた手紙は、ドマルサーニへ運ばれていった。
あれから三週間以上が経つが、返事はまだ来ていない。
そもそも往復するのに二週間近くかかる距離だ。国家間の書簡でもあるため、ハイダルの手に渡り、読まれるまでにも時間がかかる。
「でも……サリム殿は強い方だし、何かあれば早馬で報せが来るはずだ。それがないのは、きっと元気にしているからだと思う」
もどかしい気持ちがあるのは否めないが、仕方のないことでもある。自分に言い聞かせるように、ミシュアルは曖昧に笑った。
そんな従弟を見てか、ラナはそれからすぐに、また来るからと帰ってしまった。香水商が家に来るからと言ってはいたが、気を落とすミシュアルを気遣ったのだろう。
変なところで優しいなと思いつつひとりになったミシュアルは四阿に敷かれた絨毯の上でしばらくぼうっとしていたが、何度か寝返りを打った後、がばりと起き上がった。
(手紙を書こう)
急ぎの連絡がないことこそ無事の証だとラナには言ったが、やはり心配だ。
ミシュアル自身の副作用は発情期が早めに来たことくらいだったが、サリムにはまた違った作用が出ているかもしれない。そう思うといても立ってもいられなくなって、早速手紙を、と立ち上がりかけた矢先だった。
陛下のお戻りですと、室内にある扉の向こうから声が上がった。
「ああ、いい。そのままで」
あわてて姿勢を正そうとしたが、イズディハールは手のひらを掲げ、そのまま中庭へやってきた。
「ラナはもう帰ったのか」
「はい、香水商が家に来るとかで」
「また買うのか。全部使いきるのに何年かかるだろうな」
絨毯の上に座り込んだままのミシュアルの隣にあぐらをかいて座ると、イズディハールはふと手を伸ばしてきた。指先が触れたのは、ミシュアルの頬だ。
「どうした、なにか考え事か」
「ええと……」
ラナにも気を遣われたようだし、自覚はなかったが、もしかしたら自分は感情が顔に出やすいたちなのかもしれない。
気を付けなければと思いながらも、サリムのことが気にかかるのはどうしようもない。素直にそのことを告げると、イズディハールはそのことかとうなずいた。
「それならタイミングがよかった。ちょうどドマルサーニからの書簡が届いた。サリム殿からの手紙もある」
イズディハールが胸元から巻紙を取り出す。それは赤い糸を織り込んだ紐で閉じられていた。
「一緒に見てもいいか?」
「はい」
むしろ、一緒に読んで欲しい。きっと体調についてや副作用のことなども書かれているだろう。悪いことが書いていなければいいが、もし何かあったらと気が気ではない。
うなずくと肩に頭が預けられる。その重みにどこかほっとしながら封を開くと、中には綺麗な文字が並んでいた。
『ミシュアル・アブズマール様
先日はドマルサーニにお越しくださり、ありがとうございました。お見送りできなかったことは残念でしたが、ミシュアル様と過ごした日々は今でも良い思い出として心に残っています。
その後、体調にお変わりはありませんか?
私は予定していた発情期が来なかったため、お医者様に診ていただいたところ、子を授かっていました。近頃あった不調も、それによるものだったようです。いまは体調も安定して、ハイダル様と一緒に名前の候補を考え始めています。
それから、こちらもまだ公表はしていませんが、ハイダル様が即位なさる際に召し上げていただくことになりました。私などで務まるかという懸念はありますが、幸いハイダル様だけでなく、ディーマ様も傍にいてくださります。これからはたくさん話をして、歩み寄っていけると思います。
最後になりますが、ミシュアル様をお連れしたい場所がメラにはまだいくつもあります。話したいこともあります。手紙では書ききれないほど、たくさん。だから、ぜひまたドマルサーニへいらしてください。私もまたいつかナハルベルカへ行くことができる日を夢見ています。
それでは、再会の日を願って。
あなたを遠くから想う友 サリム・ランダ・ドマルサーニ』
「……」
それほど長くはない手紙を、ミシュアルは三回読み直した。それから一度イズディハールと目を合わせ、もう一度読んだ。
「……っふ」
突然目の前がにじんで、鼻の奥がつんと痛くなる。喉が震えて呼吸が押し出され、たまらなくなってミシュアルは顔を俯けた。イズディハールが体を起こして頭を抱き寄せたので、遠慮なくその胸に顔を押し付けた。
さまざまな感情が沸き上がる。そのどれもが喜びに近しいもので、ミシュアルは泣きながら笑っていた。
ドマルサーニにいた二週間ほどの間、ミシュアルは思いがけず友好国の皇帝一族にまつわる因縁や、現在にまで引き継がれてしまった悲しみを見ることになった。友人になったサリムのどこかすべてを諦めたような瞳に、何度ももどかしい気持ちを味わった。
それを通して、このまま自分はイズディハールの妃になっていいのか考えた。そして、道を見つけることができた。
けれど、サリムはどうだろうと思い続けていたのだ。
体調の心配はもちろんあったが、本当に心に残っていたのは、周囲のためにすべてを受け入れ諦めることで自分を崩していくサリムの、細い背中だった。
「よっ……よかった、サリム殿、本当に……」
しがらみはまだあるだろうが、別れ際のディーマも落ち着いていた。そして、文面でもサリム自身からディーマについて触れている。ハイダルとも、運命のつがいだということを差し引いても想いあっているようにミシュアルには見えていた。
シラージュ帝の崩御や誘拐事件は思いがけないことだったが、そのことがきっかけで、ミシュアルの知らないところでも彼らの関係性は大きく変わったのだろう。それこそ、未来の話ができるようになるほど。
きっともうなにも心配することはない。サリムは大丈夫だ。
ミシュアルははあと熱いため息をついた。泣いたのに、心が晴れやかで浮き足立っている。今すぐにでも馬を駆ってドマルサーニへ行きたかった。
「イズディハール様」
「うん?」
「次はいつドマルサーニに行けますか? 生まれたら、手紙が来たら会いに行ってもいいですか? ああ、でも、あんまり行き来するのも大変ですよね」
頭の中にポンポンと言葉が出てきて、それがそのまま口から出てしまう。あまりの落ち着かなさに自分で笑ってしまいながら、ミシュアルはぐすっと鼻をすすりあげた。
「……手紙、書きます」
頻繁に行けるほど近い距離ではないが、手紙なら届けてもらえる。ぽつりと呟くと、抱かれたままの頭が撫でられた。
「そうだな。それに、口実はこれからいくらでもある。それに、私たちからも朗報は届けられる。そうだろう?」
「は……はい」
ドマルサーニはこれから新皇帝と皇妃の即位、新たな命の誕生を迎える。ナハルベルカもまた、現王であるイズディハールの結婚を控えている。その先に、子を授かる未来だってあるのだ。
そこに思い至って一瞬口ごもったミシュアルの恥じらいに、イズディハールは気づいたようだった。何か言いたげににやりと笑うと、頭を撫でた指先で耳たぶをくすぐってきた。
「あっ……ちょっ、だ、だめですよ、まだ昼です」
「夜ならいいのか?」
「夜でも外はだめです」
あわてて体を起こし、それとなく周囲に視線を走らせる。幸い、見えるところに衛兵はいなかった。
湿り気の残る目元を擦り、手紙を丁寧に巻き直す。またあとで読み直そうと脇にそっと置いたミシュアルは、改めて呼吸を整えた。
嬉しい報せは受け取った。けれど、イズディハールが持ってきたのはそれだけではない。
「ドマルサーニからの書簡の内容は……俺が聞いても大丈夫ですか」
声のトーンを落としたミシュアルに、イズディハールも姿勢を正すとかいつまんで話をしてくれた。
「まず、あの捕らえた売人たちだが……やはり、ナハラの手の者だった。それも、あの組織の中でも幹部の一人だ」
ナハラの手といえば、サマネヤッド同盟内の会議でも話が上がった人身売買組織だ。各国に出没し、行方不明者は大勢いる。
その手口は主に誘拐だが、現行犯で捕らえられたものはほとんどおらず、場数を踏んできただけあって犯行は鮮やかで、行方不明になってはじめて気づくことが多い。
それほどの熟練した手さばきで犯行を繰り返す集団にしては、ミシュアルたちをさらった四人は雑だった。
「幹部? それにしては……」
「今回はなにもかもが中途半端というか、場当たり的な動きが多かったようだ。あいつらは焦っていたらしい。サマネヤッド同盟の会議で、人身売買は撤廃するという動きが強まったことを知ったから」
「……知った?」
どういうことだと視線をやると、イズディハールは周囲を見渡し、見える範囲には衛兵もいないのを確認したあと、ミシュアルだけに聞こえるほどの小さな声で言った。
「裏で情報が流されていた。どうやらロカムが関わっているようだ。……会議の情報が漏れていた以上、誰が漏らしたかは検討がつくが」
「ロカム……あっ」
思い出したのは、ミシュアルやサリムも参加したサマネヤッド同盟の会議だ。
あの時、ロカムを統治するタルハ大公は冷汗をかき、失言をしてまでオメガの人身売買について語り、緩和して欲しいとさえ言っていた。
(まさか、国ぐるみでオメガを?)
そう考えるだけでも恐ろしいのに、サリムの言葉を思い出すと、背すじに寒気すら走る。
クク山脈でミシュアルを脱出させた時、サリムは言っていたのだ。ロカムについたら、そこで身分を明かすと。
(もしロカムに到着していたら、サリム殿は……)
無事でいられなかった可能性は高い。
最悪を想像してしまったミシュアルは、すっかり萎縮して黙り込んでしまった。
撲滅を目指すはずの組織が、まさか国の助力を得ていたとは思いもよらなかった。それも、ロカムは同盟を結んだ国だ。手ひどい裏切りは驚きと同時に恐怖をもたらした。
実家の離れで過ごしていたころなら、話を聞いても怖いことがあるものだとしか思わなかっただろう。しかしいまのミシュアルは、国政に携わらざるを得ない立場に立とうとしている。イズディハールの隣に立つ以上、こんな思いをすることはこれからも何度もあるはずだ。
落ち着かなければと深呼吸をして、ミシュアルは続きを促した。
「処罰は……どうなりますか」
「ナハラの手の者たちへは人身売買と略取、不敬罪と国家反逆罪が少なくとも適用される。鞭打ち刑と……いずれかの極刑が科されるだろう。しかし、その前にナハルベルカへの移送を要求している。我が国でも、相応の罰を受けてもらう」
「相応の罰?」
「鞭打ちを十回だ」
鞭打ち刑は放火や殺人、人身売買や水辺に毒を撒くなどの重罪に科される刑罰だ。その苛烈さから一日にまとめて回数をこなすと死ぬ可能性もあるため、何日かに分けて行われることも多い。
イズディハールの声は淡々としているが、与える罰の重さを考えると、まだあの事件については怒りを覚えているのは確かだった。
「刑と罪状は公表する。……とは言っても、被害者が誰かはあえて公表しない。ただ、我が国のオメガは法によって守られるべき存在であることを、内外に広めるためのものだ。ナハルベルカの宝は民だ。害なすものは、決して許さない」
イズディハールの言葉に、ミシュアルは安堵した。
自分がさらわれたのだと周囲に知られることはどうでもよかったが、王の私情が含まれていると思われるようなことは避けたかった。しかし、イズディハールの言葉には民を守る王としての責任がうかがえる。そのことが、王のつがいとして、ナハルベルカの民として誇らしかった。
決して口先だけではない力強い言葉に、ほうとため息が漏れる。いつの間にか、さっきまで感じていた焦燥感は消えていた。
情報が入ってこなかっただけで、物事は大きく動き出そうとしている。それはいつか良い未来をもたらしてくれるだろう。そう信じられるだけの言葉を、ミシュアルはたったいま聞いたのだから。
(百年後を知りたいな)
唐突に、ミシュアルはそんなことを考えた。
百年ほど前のナハルベルカでは、オメガは売買されたり誘拐されるのが当たり前だった。しかし現在はそれが重罪になり、オメガは守るべき存在になっている。そしていまも、オメガに対する考え方は国を挙げて変化している。
このまま百年経ったとき、この国はどうなっているのだろう。これからも様々なことがあるだろうが、それでも希望を抱かずにはいられない。そしてそう思えたことを、伝えたいと思った。
「イズディハール様」
中庭の樹に向けられてはいるが、おそらく他のことを考えているであろうイズディハールの横顔に声をかける。すぐに蒼い瞳がミシュアルを映した。
「俺、長生きがしたいです」
「長生き?」
「あっ、いえ、あの、長生きって言うのは……」
感極まりすぎて、言葉が足りなかった。
焦るミシュアルあわてて言葉を足していくのを、イズディハールは笑いながら見守ってくれる。そして言葉の意味をしっかり伝えたつがいに、王は一つの約束をした。
年老いた二人が最後に見る国が、いまよりも笑顔であふれていること。それはきっと果たされると、ミシュアルは心の底から思った。
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