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巣ごもりオメガと運命の騎妃
42.サリム-3
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「ハイダル、あなたは今日、何をしたかわかっていますか」
言葉はハイダルに向いているが、ディーマの視線はサリムに向いている。視線を逸らすのも不敬、かといって凝視することも出来ず、サリムはただただ姿勢を正して隣のハイダルが反応するのを待った。
ハイダルはすぐには答えなかったが、やがて重く口を開いた。
「わかっています。俺が決めました」
「なぜ私たちに相談もなく?」
「それは……」
二人が何の話をしているのか、サリムにはまったくわからない。
静かながらも張り詰めた空気の中でひたすら緊張に身を固くしていると、ディーマの声が鋭く飛んだ。
「いいこと、ハイダル。運命のつがいはそれとして、結婚は別のもの。あなたは次期皇帝、相応の相手というものがいるのです。私から話をしますから、あなたからも破談を取りやめる旨の手紙を……」
(結婚……破談?)
何もわからないまま二人の間で縮こまっていたサリムにも、ようやく話が見えてくる。
どうやらハイダルには結婚の話があったが、ディーマに相談せずにそれを破棄とした。そのことをディーマは怒り、更にはサリム――運命のつがいでは、結婚相手にならないと言っている。そこまで理解して、サリムはさっと頭が冷えるのを感じた。
(ハイダル様の相手にふさわしくない――……)
巡香会で見初められてから今日まで、不安はあったが夢のような日々だった。
だから忘れていたのだ。
自分とハイダルは運命のつがい。互いに想いを寄せ合って手を取り合ったわけではない。
それに、サリムには実家はもとより後ろ盾も何もない。礼儀作法だって勉学だって、始めたばかりだ。どこまで自分が育つことができるかはわからないが、それでも現状、胸を張ってハイダルの隣にいてふさわしいとはとても言えない。
そんな彼にいたらしい許婚は、きっと家柄も素養も、すべてがハイダルと釣り合う相手だったのだろう。そうでなければ、ディーマがこれほど怒るはずもない。
(自分がいるから……)
優しいハイダルのことだ。サリムのことを考えて、許婚を手放したのだろう。昨日までなら、その想いを嬉しく思ったかもしれない。
けれど、ディーマが訪ねてきたことで実情を知ってしまった。
ディーマに疎まれながら皇宮で生活することはもちろん、そのうちハイダルも気付くかもしれないのだ。サリムが持っているのは、運命のつがいという不確かなものだけだということに。
そのことに気付いた時、手を離されたらきっとつらい。今ですら目の奥が熱くなってくるのを感じる。
どうすればいいのかと途方に暮れたサリムだったが、突然扉が叩かれ、周囲の空気が一変した。
「失礼いたします。陛下より、妃殿下、皇太子殿下は即刻青の間に来るようにと……」
入ってきたのは、皇帝であるシラージュの側近だった。重々しい口調で告げた彼は、静かな眼差しでディーマとハイダルを見た。
言外に早く移動をとでも言うような視線に、一瞬の沈黙が降りる。しかしすぐにディーマは立ち上がり、さっさと出て行ってしまった。
ハイダルも続こうとしたが、さっと振り返るとサリムの手を取った。
「今日はもうここに来れないと思う。また明日来る」
「はい……」
呆然と送り出したものの、翌日、ハイダルは来なかった。代わりに、思いもよらない人物がサリムを訪ねてきた。
「陛下……!」
昨日のことを悶々と考えこみながら一日を過ごし、そろそろハイダルが来るころだろうと思ったサリムの離宮へやって来たのは、シラージュだった。
彼とは今までにも数度顔を合わせている。運命のつがいとして迎えられた日以外は特に理由はなく、呼ばれて謁見に行くと、元気で過ごしているかとだけ聞かれた。ディーマにはおそらく嫌われているが、シラージュは優しく声をかけ、まるで孫にするようにサリムの様子を気にかけてくれていた。
しかし、彼が訪ねてくるのは初めてだ。思わぬ来訪にあわてるサリムと付き人たちを穏やかになだめ、二人きりに、と言うとシラージュはいつもはハイダルの座っている椅子に腰を下ろした。
「座りなさい」
どちらが部屋の主かわからない状態でサリムは言われたとおりにシラージュの目の前の席に腰を落ち着かせた。
「昨日のことだが……」
すぐに切り出してきたシラージュの話は、そう長くはなかった。
昨夜、シラージュがディーマとハイダルを呼びつけたのは、ハイダルが許婚との結婚を破談にしたことについてだった。
サリムの離れに訪れたディーマは破談についてひどく怒っていたが、意外にもシラージュは声を荒げる様子もなかった。
「ハイダルの気持ちもわかる。だが、今回は手順を誤った。私とディーマに相談をしたうえで、破談を伝えるべきだったのだ。……たとえ何度反対にあおうとも、そうすべきだった」
まるで自分の方が何度も意見を却下され続けたかのような暗い顔をしたシラージュは、その大きな手でサリムの肩を軽く叩いた。
「今はとにかく、ディーマの機嫌を損ねてはいけない。ハイダルの失敗の責をそなたにも負わせることになるが……今は耐えてくれ。決して、悪いようにはしない。ただ、ハイダルはしばらくここへは立ち入らせない。これはしかるべき手順を取らなかったハイダルへの罰でもある。発情期のうち三日のみ、こちらへ通わせることを許す。よいな?」
「……はい」
先走ったハイダルが悪いことは理解できたし、ディーマの怒りはもっともだとも思った。そのうえでシラージュに言われてしまっては、うなずくしかなく、本当にハイダルはその日から姿をあらわさなかった。
会えない間、サリムは悶々と考え続けた。
生まれは今更変えられない。変えられることがあるとすれば、これからの未来だ。
ハイダルの隣に居続けるために、自分が出来ることがあるはずだ。十八になって正式につがうまでのんびりと過ごしてはいられないのだと――今のままではいけないのだという思いが強くなった。
シラージュの思惑はわからないが、ディーマがサリムを正妃には迎えたいとは思っていないのはわかる。そしてハイダルは運命のつがいである自分を妃にと考えてくれているようだが、決める権利を彼は持たない。
(破棄したとは言っていたけど、ディーマ様は怒っていらっしゃったし、きっと関係は戻っている。ハイダル様は、いつかその方を娶られるだろう)
ならば、妃でなくなっても傍にいられる道を自ら作らなければ。
そう考えたサリムの脳裏をふっとよぎったのは、皇宮で見かける騎士たちだった。
彼らは皇宮の内外にいて、その中でも特に選び抜かれた数名がハイダルの側近として常に付き従っている。それこそサリムと比べれば、よほど彼らと一緒にいる時間の方が長かった。
(騎士になれば、たとえ妃として認められなくても、ハイダル様の傍にいてもおかしくはない……)
今まで剣など持ったことのない自分が、騎士になれるほどの技量が持っているかなどわからない。それでも、その時のサリムはそれ以外の道が思い浮かばなかった。
それからのサリムは、もてあます時間全てを勉学と剣術、礼儀作法に費やした。まだ妃でもなければつがいでもない身だ。公的な行事や宴席に出されることもないので、時間だけはたっぷりあった。
自らに課したスケジュールを淡々とこなしながら、三ヶ月に一度の発情期の日を待つ。それでも発情期に入ってもずっとハイダルがいてくれるわけでもなければ、体を重ねること、つがうことはまだ許されていない。強めの抑制剤を飲んでぼんやりとした頭で、ハイダルと三日を過ごした。
その三日は、今までの二回とは違い、ひどいものだった。
互いに抑制剤を飲んでいることは変わらないはずなのに、久しぶりに会ったせいかサリムの体はひどく疼いて泣くほどで、ハイダルも匂いに負けまいとして自分の腕を噛み、負傷までした。
それでもサリムのうなじに歯形がつけられなかったのは、外そうとすればサリムの肌が傷つくほどぴったりの大きさで作られた鉄の首輪のおかげであり、体を重ねずに済んだのは朦朧としながらも自らに自制を強いたハイダルの精神力のたまものだった。
そうして過ごした三日目、泣きとおしたサリムは気絶するように寝入った。起きたのは翌日の昼で、もうすでにハイダルはおらず、彼の血とサリムの涙に汚れた寝具はすべて綺麗になっていた。
(話がしたかったのに)
一人の寝台で、ぽつりとサリムは思った。
妃でも、つがいでもない。それでも、ハイダルの傍にいたいと思った。だから、そのためのことを話したかった。それなのに体は本能に翻弄されて、意識までも侵された。また三ヶ月待たなければならない。
くじけそうで、頭からシーツをかぶったサリムはまるまる一日、寝台から出なかった。勉強も剣術も礼儀もほったらかして、疼きと焦りと悲しみに彩られた発情期の中でも自分を抱きしめ続けていた腕を思い出して泣いた。
そしてその日から、一日も休まずに研鑽に明け暮れた。
泣こうが喚こうが、いきなり明日が三ヶ月後になったりはしない。それに、今のサリムが騎士になりたいなどと言ったところで、誰も納得はしないだろう。剣筋はまだ甘くふらついているし、勉強もまだまだ覚えなければいけないことが山ほどある。そんな自分ではいけないと思ったのだ。
(納得してもらえるようにならなければ)
それからも発情期のたびにハイダルは訪れた。抑制剤を飲んでもやはり三ヶ月間会えなかった反動なのか、一緒にいることを許された三日間は荒れたものになる。それでも抑制剤だけで過ごすことは考えられず、その三日間だけ、サリムは荒々しい腕の中で安心と離別の悲しみを抱えて泣いた。
そうして季節は移ろい、年が過ぎる。シラージュから呼び出しがあったのは、春が終わりかけた頃のことだった。
言葉はハイダルに向いているが、ディーマの視線はサリムに向いている。視線を逸らすのも不敬、かといって凝視することも出来ず、サリムはただただ姿勢を正して隣のハイダルが反応するのを待った。
ハイダルはすぐには答えなかったが、やがて重く口を開いた。
「わかっています。俺が決めました」
「なぜ私たちに相談もなく?」
「それは……」
二人が何の話をしているのか、サリムにはまったくわからない。
静かながらも張り詰めた空気の中でひたすら緊張に身を固くしていると、ディーマの声が鋭く飛んだ。
「いいこと、ハイダル。運命のつがいはそれとして、結婚は別のもの。あなたは次期皇帝、相応の相手というものがいるのです。私から話をしますから、あなたからも破談を取りやめる旨の手紙を……」
(結婚……破談?)
何もわからないまま二人の間で縮こまっていたサリムにも、ようやく話が見えてくる。
どうやらハイダルには結婚の話があったが、ディーマに相談せずにそれを破棄とした。そのことをディーマは怒り、更にはサリム――運命のつがいでは、結婚相手にならないと言っている。そこまで理解して、サリムはさっと頭が冷えるのを感じた。
(ハイダル様の相手にふさわしくない――……)
巡香会で見初められてから今日まで、不安はあったが夢のような日々だった。
だから忘れていたのだ。
自分とハイダルは運命のつがい。互いに想いを寄せ合って手を取り合ったわけではない。
それに、サリムには実家はもとより後ろ盾も何もない。礼儀作法だって勉学だって、始めたばかりだ。どこまで自分が育つことができるかはわからないが、それでも現状、胸を張ってハイダルの隣にいてふさわしいとはとても言えない。
そんな彼にいたらしい許婚は、きっと家柄も素養も、すべてがハイダルと釣り合う相手だったのだろう。そうでなければ、ディーマがこれほど怒るはずもない。
(自分がいるから……)
優しいハイダルのことだ。サリムのことを考えて、許婚を手放したのだろう。昨日までなら、その想いを嬉しく思ったかもしれない。
けれど、ディーマが訪ねてきたことで実情を知ってしまった。
ディーマに疎まれながら皇宮で生活することはもちろん、そのうちハイダルも気付くかもしれないのだ。サリムが持っているのは、運命のつがいという不確かなものだけだということに。
そのことに気付いた時、手を離されたらきっとつらい。今ですら目の奥が熱くなってくるのを感じる。
どうすればいいのかと途方に暮れたサリムだったが、突然扉が叩かれ、周囲の空気が一変した。
「失礼いたします。陛下より、妃殿下、皇太子殿下は即刻青の間に来るようにと……」
入ってきたのは、皇帝であるシラージュの側近だった。重々しい口調で告げた彼は、静かな眼差しでディーマとハイダルを見た。
言外に早く移動をとでも言うような視線に、一瞬の沈黙が降りる。しかしすぐにディーマは立ち上がり、さっさと出て行ってしまった。
ハイダルも続こうとしたが、さっと振り返るとサリムの手を取った。
「今日はもうここに来れないと思う。また明日来る」
「はい……」
呆然と送り出したものの、翌日、ハイダルは来なかった。代わりに、思いもよらない人物がサリムを訪ねてきた。
「陛下……!」
昨日のことを悶々と考えこみながら一日を過ごし、そろそろハイダルが来るころだろうと思ったサリムの離宮へやって来たのは、シラージュだった。
彼とは今までにも数度顔を合わせている。運命のつがいとして迎えられた日以外は特に理由はなく、呼ばれて謁見に行くと、元気で過ごしているかとだけ聞かれた。ディーマにはおそらく嫌われているが、シラージュは優しく声をかけ、まるで孫にするようにサリムの様子を気にかけてくれていた。
しかし、彼が訪ねてくるのは初めてだ。思わぬ来訪にあわてるサリムと付き人たちを穏やかになだめ、二人きりに、と言うとシラージュはいつもはハイダルの座っている椅子に腰を下ろした。
「座りなさい」
どちらが部屋の主かわからない状態でサリムは言われたとおりにシラージュの目の前の席に腰を落ち着かせた。
「昨日のことだが……」
すぐに切り出してきたシラージュの話は、そう長くはなかった。
昨夜、シラージュがディーマとハイダルを呼びつけたのは、ハイダルが許婚との結婚を破談にしたことについてだった。
サリムの離れに訪れたディーマは破談についてひどく怒っていたが、意外にもシラージュは声を荒げる様子もなかった。
「ハイダルの気持ちもわかる。だが、今回は手順を誤った。私とディーマに相談をしたうえで、破談を伝えるべきだったのだ。……たとえ何度反対にあおうとも、そうすべきだった」
まるで自分の方が何度も意見を却下され続けたかのような暗い顔をしたシラージュは、その大きな手でサリムの肩を軽く叩いた。
「今はとにかく、ディーマの機嫌を損ねてはいけない。ハイダルの失敗の責をそなたにも負わせることになるが……今は耐えてくれ。決して、悪いようにはしない。ただ、ハイダルはしばらくここへは立ち入らせない。これはしかるべき手順を取らなかったハイダルへの罰でもある。発情期のうち三日のみ、こちらへ通わせることを許す。よいな?」
「……はい」
先走ったハイダルが悪いことは理解できたし、ディーマの怒りはもっともだとも思った。そのうえでシラージュに言われてしまっては、うなずくしかなく、本当にハイダルはその日から姿をあらわさなかった。
会えない間、サリムは悶々と考え続けた。
生まれは今更変えられない。変えられることがあるとすれば、これからの未来だ。
ハイダルの隣に居続けるために、自分が出来ることがあるはずだ。十八になって正式につがうまでのんびりと過ごしてはいられないのだと――今のままではいけないのだという思いが強くなった。
シラージュの思惑はわからないが、ディーマがサリムを正妃には迎えたいとは思っていないのはわかる。そしてハイダルは運命のつがいである自分を妃にと考えてくれているようだが、決める権利を彼は持たない。
(破棄したとは言っていたけど、ディーマ様は怒っていらっしゃったし、きっと関係は戻っている。ハイダル様は、いつかその方を娶られるだろう)
ならば、妃でなくなっても傍にいられる道を自ら作らなければ。
そう考えたサリムの脳裏をふっとよぎったのは、皇宮で見かける騎士たちだった。
彼らは皇宮の内外にいて、その中でも特に選び抜かれた数名がハイダルの側近として常に付き従っている。それこそサリムと比べれば、よほど彼らと一緒にいる時間の方が長かった。
(騎士になれば、たとえ妃として認められなくても、ハイダル様の傍にいてもおかしくはない……)
今まで剣など持ったことのない自分が、騎士になれるほどの技量が持っているかなどわからない。それでも、その時のサリムはそれ以外の道が思い浮かばなかった。
それからのサリムは、もてあます時間全てを勉学と剣術、礼儀作法に費やした。まだ妃でもなければつがいでもない身だ。公的な行事や宴席に出されることもないので、時間だけはたっぷりあった。
自らに課したスケジュールを淡々とこなしながら、三ヶ月に一度の発情期の日を待つ。それでも発情期に入ってもずっとハイダルがいてくれるわけでもなければ、体を重ねること、つがうことはまだ許されていない。強めの抑制剤を飲んでぼんやりとした頭で、ハイダルと三日を過ごした。
その三日は、今までの二回とは違い、ひどいものだった。
互いに抑制剤を飲んでいることは変わらないはずなのに、久しぶりに会ったせいかサリムの体はひどく疼いて泣くほどで、ハイダルも匂いに負けまいとして自分の腕を噛み、負傷までした。
それでもサリムのうなじに歯形がつけられなかったのは、外そうとすればサリムの肌が傷つくほどぴったりの大きさで作られた鉄の首輪のおかげであり、体を重ねずに済んだのは朦朧としながらも自らに自制を強いたハイダルの精神力のたまものだった。
そうして過ごした三日目、泣きとおしたサリムは気絶するように寝入った。起きたのは翌日の昼で、もうすでにハイダルはおらず、彼の血とサリムの涙に汚れた寝具はすべて綺麗になっていた。
(話がしたかったのに)
一人の寝台で、ぽつりとサリムは思った。
妃でも、つがいでもない。それでも、ハイダルの傍にいたいと思った。だから、そのためのことを話したかった。それなのに体は本能に翻弄されて、意識までも侵された。また三ヶ月待たなければならない。
くじけそうで、頭からシーツをかぶったサリムはまるまる一日、寝台から出なかった。勉強も剣術も礼儀もほったらかして、疼きと焦りと悲しみに彩られた発情期の中でも自分を抱きしめ続けていた腕を思い出して泣いた。
そしてその日から、一日も休まずに研鑽に明け暮れた。
泣こうが喚こうが、いきなり明日が三ヶ月後になったりはしない。それに、今のサリムが騎士になりたいなどと言ったところで、誰も納得はしないだろう。剣筋はまだ甘くふらついているし、勉強もまだまだ覚えなければいけないことが山ほどある。そんな自分ではいけないと思ったのだ。
(納得してもらえるようにならなければ)
それからも発情期のたびにハイダルは訪れた。抑制剤を飲んでもやはり三ヶ月間会えなかった反動なのか、一緒にいることを許された三日間は荒れたものになる。それでも抑制剤だけで過ごすことは考えられず、その三日間だけ、サリムは荒々しい腕の中で安心と離別の悲しみを抱えて泣いた。
そうして季節は移ろい、年が過ぎる。シラージュから呼び出しがあったのは、春が終わりかけた頃のことだった。
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