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灰降る島
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「へぇ~この舟で行くんだ」
「おうよ!今回はそこそこ人数がいるからな、大型の舟を二艘用意してやった。有り難く思えよ」
「何なんだあのガキ、生意気だぞ」
「ん?何か言ったか?」
「な…何でもありません。もう、止めなよアシュロット」
案内人であるコルトの態度にイライラを募らせるアシュロットであったが、目的地であるグリーンアイランドへ行くためには彼の案内が必要不可欠。
そして、そのことを十二分に理解しているからこそコルトは強気な姿勢でいられるのであった。
プエルト村から舟を出しグリーンアイランドまで行くためには当然海を渡らなければならない。
まぁ~単純に考えると、海を渡るとなれば誰かしら村の漁師に頼めば済む話である。
しかし、今回はそういうわけにはいかない。
グリーンアイランド周辺はプエルト村近くの比較的穏やかな海域とは違い何本もの海流が複雑に絡み合っているため、島までの流れを正確に読み切らなければ辿り着くことが出来ないのだという。
そして、プエルト村の村長であるメルゲン曰く、グリーンアイランド周辺の海流を読むことが出来るのは現在村の中でコルトただ一人だけなのだ。
そういったこともあり海流を読むことに関して絶対的な自信を持っているコルトは、冒険者たちに対して自慢気であり少々いき過ぎた言動をしてしまうのであった。
「さぁ~乗った!乗った!オイラが先導するからしっかりついて来いよ」
今回の移動は二艘ある舟のうちの一艘にコルトが乗って先導し、もう一艘には別の漁師が乗りそれについて行くとのことであり、冒険者たちもそれに合わせて二組に分かれそれぞれ舟に乗り込むのだった。
こうしてコルトに率いられグリーンアイランド目指して舟を走らせる冒険者一行。
プエルト村を出発した当初は波も穏やかで何ひとつ問題は無かったのだが、村長から聞いていた通りグリーンアイランドの姿をその目で捉える頃には海が激しく暴れ出していた。
グワンッ ───── グワンッ ───── 。
「結構揺れるわね」
「なんか酔って気持ち悪くなりそうっすね」
「そうかのう?これしきの揺れなど赤子をあやす揺り籠みたいなもんじゃろ」
大きく揺れる舟の上でもいつもと変わらぬ会話をするスズネたち。
その様子を見たコルトは少し驚いたような顔をして話し掛ける。
「おめぇらなかなかやるな。これだけの揺れにビクともしねぇ~とは見所あるぞ」
「まぁ~ね!冒険者たる者、この程度のことで騒いでられないわよ」
コルトの言葉に対して笑みを浮かべながら余裕綽々な態度を見せるミリアであったのだが、それを受けてコルトが後方の舟を指差す。
「それなら後方の舟を見てみろ」
コルトの指示に従い後ろからついて来ている舟へと視線を向けるスズネたち。
「うっ・・・オェェェェェ ─────── 」
「クッ・・・」
後方の舟では数名の冒険者が気持ち悪そうにぐったりとしており、アシュロットに至っては堪らず嘔吐を繰り返していた。
「あっちゃ~、アイツ完全に舟酔いしてるわね」
「フンッ、調子に乗っておったわりに大したことのないやつじゃのう」
「まったくっすよ」
「だから言ったでしょ。アイツ自身は大したことないって」
まさに因果応報とでもいうべきか。
出発前の自信に満ち溢れていた姿は見る影もなく、揺れる舟の上で悶え苦しむアシュロットなのであった。
「まぁ~本当に危険なのはこっからだけどな。そんでもってこっからの波を読めるのはオイラだけだ。お前らにオイラの凄さを見せてやるよ!!」
そう言ってこれまで以上に自慢気な態度を取るコルトであったのだが・・・。
残念なことにコルトと同等かそれ以上に自然の流れを読み取れる人物がその場にいた。
正確には読み取るというより『視える』というべきなのかもしれない。
ザバーーーーーン。
ザバーーーーーン。
「え~と、次は ─────── 」
「も…もう少し左です」
─────── !?
「なんだおめぇ、素人が口出すんじゃねぇ!」
「で…でも・・・あっ!?次、右から大きな波が来ます。注意してください」
そして、セスリーの言葉通り右側から大きな波が押し寄せ舟が大きく揺られる。
「すご~い!セスリーなんで分かるの?」
「えっと…それは ─────── 」
次々と海流を読み当てるセスりーに対して興奮気味に質問するスズネ。
それに対して急に説明を求められ困惑した様子を見せるセルリー。
そして、そんな二人のやり取りを見ていたクロノがセスリーに変わって説明を始めたのだった。
「別に何も不思議なことじゃない。お前らも知っている通りセスリーは二つの魔眼を有している。そのうちの一つ『神覚の魔眼』の力をもってすれば、どれだけ海が荒れようがその流れを視切ることなど造作もないことだ」
セスリーが持つ魔眼の一つ『神覚の魔眼』。
その力をもってすれば、たとえその対象が風であれ水であれ自然界における流れを視ることが出来るのだ。
そして、その力によってセスりーはグリーンアイランド周辺の複雑な海流すらも難なく突破して見せたのだった。
「マジでヤバ過ぎだわ…。セスリーが仲間で良かった~」
「い…いえ、凄いのは私じゃなくて魔眼ですから」
「そんなことはないっす。その魔眼もセスリーの身体の一部なんすから、その力もセスリーの力っすよ」
「なんと!?魔眼の持ち主であったか。わしも長いこと冒険者をやっておるが、実際に目にしたのは初めであるぞ」
「さすがは魔王の配下。二つも魔眼を所持しているなんて…これはかなりの強敵よ、ナンシー」
「魔王の配下ですもの、そのくらいの実力がないと認めてすらもらえないのよ。これは恐るべき強敵よ、バンシー」
「も…もう、恥ずかしいです~」
ミリアたちに加え“フェアリー”の面々からも称賛を受け恐縮しっぱなしのセスリーなのであったが、当然これを快く思わない者がいた。
「なっ…魔眼なんてズルいぞ!オイラは…オイラは…」
「本当、コルトは凄いよね!何の力も借りずにこんなに荒れた海を越えられるなんて凄過ぎるよ」
「お…おう。あ…当たり前だろ。オイラは魔眼なんて無くてもこの目と感覚でどんな海でも越えられるんだからな。それにしてもオメェなかなか見所があるな、オイラの子分にしてやるよ」
「フフフッ、ありがとね。私の名前はスズネ、これからよろしくね親分」
「おう、もう少しでグリーンアイランドだ。オイラに任せとけ!!」
みんなが寄ってたかってセスリーを褒めちぎるがあまり悔しがるコルトであったのだが、スズネから褒められ機嫌を戻し再び舟を走らせるのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
グリーンアイランド到着。
「ハァ~着いたーーー」
「ここまで連れて来てくれてありがとね、親分」
「おう。島で困ったことがあったらオイラに何でも言えよスズネ」
「うん、その時はよろしくね」
こうして無事にグリーンアイランドへと到着した冒険者一行。
島に上陸りしてまず驚いたのは島一帯を覆う灰。
今踏み締めている大地も、枯れ果ててしまっている木々も、所々に転がっている岩石も、その全てが灰色一色に染め上げられていたのだ。
ギルドより事前に伝えられた情報により知ってはいたものの、実際に現地に赴きその光景を目の当たりにすると言葉を失ってしまう。
しかし、今回の目的は観光ではない。
このまま黙ってこの景色を眺めているわけにはいかないのだ。
「それではさっそく調査を始めましょう」
冒険者を代表して“モノリス”のファイングが号令を掛ける。
「まずは島を覆う灰の原因を探ることから始めつつ、凶暴化しているという魔獣に関してはその都度対処していくとしましょう」
「このまま全員で行動するんですか?」
「いや、今回は初顔合わせが多いので個々で動いた方がやり易いでしょう。各パーティに通信用の魔具をお渡ししますので、何かありましたらこれで連絡を取り合いましょう」
ファイングが荷物の中からトランシーバーのような魔具を取り出し各パーティの代表者に渡していく。
初めての合同クエスト参加となるスズネたちとしては少々心細い感じもあったが、他のパーティも初めからそのつもりだったらしく即座にファイングの提案に同意したのだった。
「それでは、皆さんご武運を」
「ちょっと待て!!」
ファイングが調査開始を言い渡したその時、コルトが突然待ったをかける。
「何でしょうか?あなたの役目は終わったはずですが」
「この島について調べるんだろ?それなら島の住民に聞くのが一番だ。オイラが紹介してやってもいいぜ」
「こんな島に人が住んでいるんですか?」
「ああ。こんな灰だらけの島だけど、爺さんが一人住んでるんだ」
「う~ん…そうですか。有り難い申し出ですが、島の情報はギルドから得ていますので我々“モノリス”は結構です」
「えっ!?なんでだよ」
「ワタクシも必要ありません」
「僕たち“フェアリー”も自分たちで調べます」
「我ら“土ノ民”も不要」
「そ…そうか…分かったよ」
「それでは改めて皆さん調査を開始してください」
ザッ ──────── 。
ザッ ──────── 。
ザッ ──────── 。
ザッ ──────── 。
子供ながらに何とか役に立ちたいと思ったコルトがグリーンアイランド唯一の住民を紹介しようと提案したのだが、冒険者たちは皆口を揃えて“不要”と判断しそれぞれ探索を開始したのだった。
そして残されたコルトは寂しそうに肩を落とす。
「親分!私たちにその人を紹介してくれる?」
「えっ!?」
「右も左も分からない島だもんね。現地の人の話は貴重よ」
「どんな些細な情報でも今のウチらには重要っす」
「わ…私もそう思います」
「僕たちは他の方々と違って経験も浅いですからね。確かな情報は多いに越したことはないと思います」
いくら事前にギルドから情報を得ているとはいえ、未知の島で何が起きるか分からない。
少しずつ実績を積んできたとはいえ自分たちはまだまだCランク。
その上今回は初めての合同クエストであり、いつ何時どういった問題が発生してもおかしくはない。
そうした結論に至ったスズネたちは、現地に住む唯一の人物の紹介をコルトにお願いすることにしたのだった。
そして、そんなスズネたちの言葉を聞いて俯いていたコルトの顔がグングンと迫り上がる。
「しょ…しょうがねぇ~なぁ~。子分のお願いとあっちゃ~親分として聞いてやらねぇわけにはいかねぇからな」
沈んでいた表情がみるみるうちに笑顔へと変わる。
自信に満ちたコルトがかえってきた。
「よし!それじゃ案内してやる。しっかりオイラについて来いよ」
こうしてスズネたちはコルトに案内され、島の麓にある一軒の小さな小屋へとやって来た。
「おーーーい、灰じぃーーーーー」
小屋の前に到着するとコルトは大きな声でその人物を呼ぶ。
するとゆっくりと小屋の扉が開き、中から一人の老人が姿を現した。
「なんじゃコルトか。いったい今日は何の用だ?」
長く伸びきった髪。
目蓋を覆い隠すような眉。
顎から伸びた長い髭。
その全てが真っ白な老人。
それはまるで仙人のような姿であった。
「おうよ!今回はそこそこ人数がいるからな、大型の舟を二艘用意してやった。有り難く思えよ」
「何なんだあのガキ、生意気だぞ」
「ん?何か言ったか?」
「な…何でもありません。もう、止めなよアシュロット」
案内人であるコルトの態度にイライラを募らせるアシュロットであったが、目的地であるグリーンアイランドへ行くためには彼の案内が必要不可欠。
そして、そのことを十二分に理解しているからこそコルトは強気な姿勢でいられるのであった。
プエルト村から舟を出しグリーンアイランドまで行くためには当然海を渡らなければならない。
まぁ~単純に考えると、海を渡るとなれば誰かしら村の漁師に頼めば済む話である。
しかし、今回はそういうわけにはいかない。
グリーンアイランド周辺はプエルト村近くの比較的穏やかな海域とは違い何本もの海流が複雑に絡み合っているため、島までの流れを正確に読み切らなければ辿り着くことが出来ないのだという。
そして、プエルト村の村長であるメルゲン曰く、グリーンアイランド周辺の海流を読むことが出来るのは現在村の中でコルトただ一人だけなのだ。
そういったこともあり海流を読むことに関して絶対的な自信を持っているコルトは、冒険者たちに対して自慢気であり少々いき過ぎた言動をしてしまうのであった。
「さぁ~乗った!乗った!オイラが先導するからしっかりついて来いよ」
今回の移動は二艘ある舟のうちの一艘にコルトが乗って先導し、もう一艘には別の漁師が乗りそれについて行くとのことであり、冒険者たちもそれに合わせて二組に分かれそれぞれ舟に乗り込むのだった。
こうしてコルトに率いられグリーンアイランド目指して舟を走らせる冒険者一行。
プエルト村を出発した当初は波も穏やかで何ひとつ問題は無かったのだが、村長から聞いていた通りグリーンアイランドの姿をその目で捉える頃には海が激しく暴れ出していた。
グワンッ ───── グワンッ ───── 。
「結構揺れるわね」
「なんか酔って気持ち悪くなりそうっすね」
「そうかのう?これしきの揺れなど赤子をあやす揺り籠みたいなもんじゃろ」
大きく揺れる舟の上でもいつもと変わらぬ会話をするスズネたち。
その様子を見たコルトは少し驚いたような顔をして話し掛ける。
「おめぇらなかなかやるな。これだけの揺れにビクともしねぇ~とは見所あるぞ」
「まぁ~ね!冒険者たる者、この程度のことで騒いでられないわよ」
コルトの言葉に対して笑みを浮かべながら余裕綽々な態度を見せるミリアであったのだが、それを受けてコルトが後方の舟を指差す。
「それなら後方の舟を見てみろ」
コルトの指示に従い後ろからついて来ている舟へと視線を向けるスズネたち。
「うっ・・・オェェェェェ ─────── 」
「クッ・・・」
後方の舟では数名の冒険者が気持ち悪そうにぐったりとしており、アシュロットに至っては堪らず嘔吐を繰り返していた。
「あっちゃ~、アイツ完全に舟酔いしてるわね」
「フンッ、調子に乗っておったわりに大したことのないやつじゃのう」
「まったくっすよ」
「だから言ったでしょ。アイツ自身は大したことないって」
まさに因果応報とでもいうべきか。
出発前の自信に満ち溢れていた姿は見る影もなく、揺れる舟の上で悶え苦しむアシュロットなのであった。
「まぁ~本当に危険なのはこっからだけどな。そんでもってこっからの波を読めるのはオイラだけだ。お前らにオイラの凄さを見せてやるよ!!」
そう言ってこれまで以上に自慢気な態度を取るコルトであったのだが・・・。
残念なことにコルトと同等かそれ以上に自然の流れを読み取れる人物がその場にいた。
正確には読み取るというより『視える』というべきなのかもしれない。
ザバーーーーーン。
ザバーーーーーン。
「え~と、次は ─────── 」
「も…もう少し左です」
─────── !?
「なんだおめぇ、素人が口出すんじゃねぇ!」
「で…でも・・・あっ!?次、右から大きな波が来ます。注意してください」
そして、セスリーの言葉通り右側から大きな波が押し寄せ舟が大きく揺られる。
「すご~い!セスリーなんで分かるの?」
「えっと…それは ─────── 」
次々と海流を読み当てるセスりーに対して興奮気味に質問するスズネ。
それに対して急に説明を求められ困惑した様子を見せるセルリー。
そして、そんな二人のやり取りを見ていたクロノがセスリーに変わって説明を始めたのだった。
「別に何も不思議なことじゃない。お前らも知っている通りセスリーは二つの魔眼を有している。そのうちの一つ『神覚の魔眼』の力をもってすれば、どれだけ海が荒れようがその流れを視切ることなど造作もないことだ」
セスリーが持つ魔眼の一つ『神覚の魔眼』。
その力をもってすれば、たとえその対象が風であれ水であれ自然界における流れを視ることが出来るのだ。
そして、その力によってセスりーはグリーンアイランド周辺の複雑な海流すらも難なく突破して見せたのだった。
「マジでヤバ過ぎだわ…。セスリーが仲間で良かった~」
「い…いえ、凄いのは私じゃなくて魔眼ですから」
「そんなことはないっす。その魔眼もセスリーの身体の一部なんすから、その力もセスリーの力っすよ」
「なんと!?魔眼の持ち主であったか。わしも長いこと冒険者をやっておるが、実際に目にしたのは初めであるぞ」
「さすがは魔王の配下。二つも魔眼を所持しているなんて…これはかなりの強敵よ、ナンシー」
「魔王の配下ですもの、そのくらいの実力がないと認めてすらもらえないのよ。これは恐るべき強敵よ、バンシー」
「も…もう、恥ずかしいです~」
ミリアたちに加え“フェアリー”の面々からも称賛を受け恐縮しっぱなしのセスリーなのであったが、当然これを快く思わない者がいた。
「なっ…魔眼なんてズルいぞ!オイラは…オイラは…」
「本当、コルトは凄いよね!何の力も借りずにこんなに荒れた海を越えられるなんて凄過ぎるよ」
「お…おう。あ…当たり前だろ。オイラは魔眼なんて無くてもこの目と感覚でどんな海でも越えられるんだからな。それにしてもオメェなかなか見所があるな、オイラの子分にしてやるよ」
「フフフッ、ありがとね。私の名前はスズネ、これからよろしくね親分」
「おう、もう少しでグリーンアイランドだ。オイラに任せとけ!!」
みんなが寄ってたかってセスリーを褒めちぎるがあまり悔しがるコルトであったのだが、スズネから褒められ機嫌を戻し再び舟を走らせるのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
グリーンアイランド到着。
「ハァ~着いたーーー」
「ここまで連れて来てくれてありがとね、親分」
「おう。島で困ったことがあったらオイラに何でも言えよスズネ」
「うん、その時はよろしくね」
こうして無事にグリーンアイランドへと到着した冒険者一行。
島に上陸りしてまず驚いたのは島一帯を覆う灰。
今踏み締めている大地も、枯れ果ててしまっている木々も、所々に転がっている岩石も、その全てが灰色一色に染め上げられていたのだ。
ギルドより事前に伝えられた情報により知ってはいたものの、実際に現地に赴きその光景を目の当たりにすると言葉を失ってしまう。
しかし、今回の目的は観光ではない。
このまま黙ってこの景色を眺めているわけにはいかないのだ。
「それではさっそく調査を始めましょう」
冒険者を代表して“モノリス”のファイングが号令を掛ける。
「まずは島を覆う灰の原因を探ることから始めつつ、凶暴化しているという魔獣に関してはその都度対処していくとしましょう」
「このまま全員で行動するんですか?」
「いや、今回は初顔合わせが多いので個々で動いた方がやり易いでしょう。各パーティに通信用の魔具をお渡ししますので、何かありましたらこれで連絡を取り合いましょう」
ファイングが荷物の中からトランシーバーのような魔具を取り出し各パーティの代表者に渡していく。
初めての合同クエスト参加となるスズネたちとしては少々心細い感じもあったが、他のパーティも初めからそのつもりだったらしく即座にファイングの提案に同意したのだった。
「それでは、皆さんご武運を」
「ちょっと待て!!」
ファイングが調査開始を言い渡したその時、コルトが突然待ったをかける。
「何でしょうか?あなたの役目は終わったはずですが」
「この島について調べるんだろ?それなら島の住民に聞くのが一番だ。オイラが紹介してやってもいいぜ」
「こんな島に人が住んでいるんですか?」
「ああ。こんな灰だらけの島だけど、爺さんが一人住んでるんだ」
「う~ん…そうですか。有り難い申し出ですが、島の情報はギルドから得ていますので我々“モノリス”は結構です」
「えっ!?なんでだよ」
「ワタクシも必要ありません」
「僕たち“フェアリー”も自分たちで調べます」
「我ら“土ノ民”も不要」
「そ…そうか…分かったよ」
「それでは改めて皆さん調査を開始してください」
ザッ ──────── 。
ザッ ──────── 。
ザッ ──────── 。
ザッ ──────── 。
子供ながらに何とか役に立ちたいと思ったコルトがグリーンアイランド唯一の住民を紹介しようと提案したのだが、冒険者たちは皆口を揃えて“不要”と判断しそれぞれ探索を開始したのだった。
そして残されたコルトは寂しそうに肩を落とす。
「親分!私たちにその人を紹介してくれる?」
「えっ!?」
「右も左も分からない島だもんね。現地の人の話は貴重よ」
「どんな些細な情報でも今のウチらには重要っす」
「わ…私もそう思います」
「僕たちは他の方々と違って経験も浅いですからね。確かな情報は多いに越したことはないと思います」
いくら事前にギルドから情報を得ているとはいえ、未知の島で何が起きるか分からない。
少しずつ実績を積んできたとはいえ自分たちはまだまだCランク。
その上今回は初めての合同クエストであり、いつ何時どういった問題が発生してもおかしくはない。
そうした結論に至ったスズネたちは、現地に住む唯一の人物の紹介をコルトにお願いすることにしたのだった。
そして、そんなスズネたちの言葉を聞いて俯いていたコルトの顔がグングンと迫り上がる。
「しょ…しょうがねぇ~なぁ~。子分のお願いとあっちゃ~親分として聞いてやらねぇわけにはいかねぇからな」
沈んでいた表情がみるみるうちに笑顔へと変わる。
自信に満ちたコルトがかえってきた。
「よし!それじゃ案内してやる。しっかりオイラについて来いよ」
こうしてスズネたちはコルトに案内され、島の麓にある一軒の小さな小屋へとやって来た。
「おーーーい、灰じぃーーーーー」
小屋の前に到着するとコルトは大きな声でその人物を呼ぶ。
するとゆっくりと小屋の扉が開き、中から一人の老人が姿を現した。
「なんじゃコルトか。いったい今日は何の用だ?」
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