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タッタッタッタッタッ ──────── 。
外の喧騒を後にして王城内へと侵入したゼリックたち。
獣王レオニスがいる玉座の間を目指して階段を駆け上がる。
「そろそろだ。みんな心してくれ」
そして、いよいよ玉座の間まであと少しというところで新たな戦士たちが彼らの道を阻む。
「ゼリック、前方に見える広間に誰かいるッキよ」
「ああ、恐らく獣王直属の近衛隊だろう」
玉座の間まで続く通路の間にある大広間。
そこで待ち構えるは強国で名を馳せる獣王国ビステリアの中でも選りすぐりの精鋭たちで組織された近衛隊。
そして、それを率いるのはもちろん近衛隊長であるパンサー。
さらにそこには精鋭たちと共に国内屈指の実力者であるバットの姿まであったのだった。
「武術大会で戦ったあの若者がここまで来たか」
「お久しぶりです、パンサーさん。申し訳ないのですが、今は昔話をしている暇はありませんので道を開けてもらえませんか?」
「フンッ、我らが王の首を狙おうとする不届き者を通すわけにはいかんな。ここを通りたければ我ら近衛隊を倒していけ!」
パンサーからの当然ともいえる返答に笑みを浮かべるゼリック。
大いなる目的のためとはいえ、これは王権を奪うための戦い。
ましてや相手は王直属の部隊であり、主君のためであれば命すらも厭わない者たちである。
そう易々と道を開けるわけなどない。
もちろんゼリック自身もそんなことは重々承知した上での問答だったわけだが、この無意味なやり取りを前にやる気満々の男が割って入る。
「コイツが戦士長ザックスに次ぐ実力者と云われてるパンサーッキね。御託はいいからさっさとやるッキよ。お前の相手はオイラがしてやるッキ!」
「ハハッ…この俺もナメられたものだな。部下の相手をさせられるなんてな!!」
「いやいや、部下ではないですよ。彼らは俺の大切な仲間たちです。それに ──── ナメているのはパンサーさんの方かもしれませんよ」
「それは楽しみだな。各員、隊列を組め!ここで奴らを始末するぞ!!」
「「「「「 ハッ!!! 」」」」」
改めて隊列を組み直す近衛隊。
通路を覆う形ではなく、横に広がるように隊列を組む。
そして、通路へと続く位置には隊長であるパンサーが仁王立ちしている。
それは自身が負けるはずなどないという意思表示であり、通れるものなら通ってみろという挑発の意味でもあった。
「ゼリック様、ここは私どもにお任せください」
「そうよ~。こんな~ところで~時間を~無駄にしては~ダメよ~」
「ここは俺たちに任せて先を急げ」
「さっさと行くッキ。オイラたちは敵を殲滅するッキよーーー!」
サルザールの号令と共にメリー・ドルグ・スネルが敵に向かって走り出す。
「「「「「 ウオォォォォォ 」」」」」
キーーーン! ─── キーーーン! ─── キーーーン!─── 。
事前の打ち合わせ通り、パンサーの相手をサルザールが、バットの相手をメリーが、そして他の近衛隊の戦士たちをドルグとスネルが相手をする。
双方入り乱れた状態の中、ゼリックとタイガードは静かにその時を待つ。
ガガッ ─── ガガガガガッ ───── 。
ガキーーーン! ─── ドゴッ!! ─── バキバキバキッ!!! ─── 。
そして、いよいよその時が来る。
「どうしたッキ?近衛隊長っていうのはその程度ッキか?」
ボゴッ!!
「グフッ…」
──────── ドゴーーーーーン!!
サルザールが繰り出した強烈な蹴りがパンサーの左脇腹を襲う。
その一撃をもろに喰らったパンサーは瞬く間に部屋の隅まで吹き飛ばされたのだった。
「道は開けたッキ!さっさと行くッキ!!」
「助かったよサルザール。みんなもあとは任せた!!行くぞ、タイガード」
「オウ!!」
再び駆け出しゼリックとタイガード。
この先にあるのは獣王の待つ玉座の間のみ。
そして ──────── 。
大きな扉の前に立つ二人。
いよいよ辿り着いた決戦の場。
ググッ ───── ギギッ…ギギーーーッ。
ゆっくりと開けられた扉。
そして、視線の先には玉座に座る王とその傍に立つ最強の男。
これまでとは違い玉座の間には二人の姿しかなく何処かに伏兵が潜んでいる気配もない。
「フゥー・・・。お待たせ致しました、レオニス様」
玉座へ向かって歩きだすゼリック。
にこやかな表情をしてはいるもののそこに隙など存在しない。
そして、彼らが獣王レオニスの眼前にまで来たその時、王の剣であるこの男が一歩前に出る。
「逆賊が!それ以上我らが王に近づくな」
「父上…」
「祖国に仇なす者を息子にした覚えはない。死してその罪を償え」
腰に差した剣を抜き剣先をゼリックへと突き出す。
ここまで来てしまっては元の親子の関係に戻ることなど出来はしない。
「ガルルルル…。お前に相手は俺様だ!獣王国最強の戦士ザックス。貴様を殺し、この俺様が最強となる」
「お前ごときが?その程度の力量で私の相手になると思うな!!」
─────────────────────────
いよいよ始まった頂上決戦。
すぐさま激しい戦闘となったザックスとタイガードの戦いとは対照的にレオニスとゼリックは互いにまだ武器すら手にしていなかった。
「もうこの辺りで終わりにしてはどうだ?反逆の罪は償わねばならぬが、全員命まで取りはせぬ」
「アハハハハ。レオニス様、俺はお喋りをするためにここへ来たわけではないのです。あなたの首を落としに来たのです」
「もう…戻れぬのか…」
「その程度の覚悟であるならば、そもそもこんな戦いを始めていませんよ。はっきり言います。今のあなたでは俺の相手にはなりません。大人しく死んでください」
「ハハハハハ…。王の責務とはそれほど軽いものではないのだ。どうして私が長らくこの国の王であれたのか・・・その理由を武をもって教えてやろう!」
玉座から立ち上がり剣を抜いたレオニス。
その迫力は“百獣の王”と謳われた男のそれであった。
目の前に立つ王からの威圧を受けてもなおゼリックの表情は変わることなく、むしろやれやれと少し困ったように首を左右に振るのだった。
そこから壮絶な戦いが始まる ───── のだと思われた。
がしかし、そうはならなかった。
その圧倒的かつ一方的な武を前にレオニスは片膝を着き大きく肩で息をする。
「獣王様!」
「お前に相手は俺様だって言ってんだろうが!」
ガキーーーン!!
追い詰められた主君の姿を前にすぐさま助けに向かおうとするザックスであったのだが、相対いている男がそうさせてくれない。
そして、いよいよクライマックスかと思われたタイミングで彼らが玉座の間へと到着する。
「お~やってるッキね~」
「クワックワックワッ。なんだい、まだ獣王の首を落としてないのかい?」
各自任された持ち場での戦闘を終え、この戦の最後を見守るためにやって来たのだ。
「なっ・・・!?」
その光景を目の当たりにし絶句するレオニス。
それもそのはず ──── 彼らがここに来ているということは、相対した戦士たちが戦いに敗れたことを意味している。
それもただの戦士ではない。
今の獣王国の根幹を支える強戦士たちが…である。
「みんな終わったのかい?」
「もちろんよ~。あまり~歯応えが~なかったわ~」
「ゼリック様、敵主力の排除及びその他の戦士たちの拘束完了致しました。拘束した戦士たちは城外にてドランが見張っております」
「みんなご苦労様。それじゃ、こちらも終わらせるとしよう。大丈夫そうかい?タイガード」
ギーーーン! ─── ギャーーーン! ─── ギーーーン!─── 。
「うるせぇ…今それどころじゃねぇんだよ…」
未だなお壮絶な打ち合いを続けている二人。
パワーで勝るタイガードであったが、それ以外の部分と総合力で上回るザックスに苦戦を強いられていた。
「だからアイツに任せるのは反対だったッキ。口先だけの野郎には荷が重かったッキよ」
「グッ…うるせぇーぞ…サル野郎…」
サルザールの嫌味が耳に届き必死に反論しようとするが、刃を交える相手の力量の前にそれも難しいようだ。
「獣王様…少々お待ちを。此奴を討った後、そこにいる者どもをすぐに一掃します故…暫しのご辛抱を ───── グフッ!?」
口から滴れ落ちる血。
貫かれた左胸。
じわりじわりと熱くなる傷口からは血が溢れ出し衣服を赤く染めていく。
「グッ…貴様…何処から…」
突如として背後に現れた男。
激痛に顔を歪めたザックスの視線の先には、自身を突き刺した針剣を手にしたマウルスの姿があった。
「おい!テメェー!!」
ヒュンッ ───── ゴトッ・・・。
無惨に斬り落とされた首。
獣王国最強と謳われた男の最期はいとも容易く、そして一瞬の内に迎えることとなった。
思うところがないわけではない。
しかし、それ以上に重要なことがある。
ゼリックは父であるザックスの最期を目の当たりにしても表情を崩すことはなく、すぐさま視線を獣王レオニスへと戻した。
そして、それと同時に玉座の間にひときわ大きな声が響き渡る。
声の主はもちろん ──────── 。
「おいコラ!マウルス!!俺様の獲物を横取りしてんじゃねーぞ!!」
「はぁ~…君がチンタラしてるのが悪いんだろ…。騒がし過ぎて起きちゃったじゃないか…」
「そんなこと知らねーよ。せっかく良いところだったのによ・・・どうしてくれるんだ!!」
「うるさい…。ギャーギャーと喚くな…。君の楽しみなんてどうでもいいんだよ…。目的を見失って暴走するようなら ───── 殺すよ?」
ズズッ・・・。
寝起きのせいなのか、言い訳を並べる仲間への苛立ちなのか、感情を隠そうともしないマウルス。
その重く冷たい殺意を前にタイガードはたじろぐことしか出来なかった。
「おいおい、喧嘩はよしてくれよ。そろそろこの戦いもフィナーレだ」
タッタッタッタッタッ ──────── 。
首筋に当てられた剣先。
跪くレオニスは命乞いをすることも弱音を吐くこともせず、ただその時が来るのを静かに待っている。
タッタッタッタッタッ ──────── 。
そして、いよいよその首を斬り落とさんとゼリックが剣を振り上げたその時、彼女が玉座の間へと飛び込んできたのだった。
「兄様!!」
息を切らし肩で息をするユニは、眼前に広がる光景に言葉を失ってしまう。
幼少の頃より何かと自分のことを気に掛けてくれたザックスの亡骸と、今にも命を奪われそうになっている父親の姿、そしてそれを実行しようとしているのは・・・他でもない最愛の人。
その受け入れ難い状況に一瞬気を失いそうになるが、気を保ち直して踏み留まる。
「兄様…もう止めましょう。勝敗は決しています。これ以上は何の意味もありません」
「「「「「・・・・・」」」」」
愛する人からの悲痛な願い。
仲間たちは口を挟むことなくその状況を見守る。
そして ──────── 。
「ユニ…。何の意味もない…なんてことはないんだよ。ここで現王を討つことで新たな時代を宣言することとなる。ここから獣王国は新たな一歩を踏み出すんだよ」
ザッ ──────── 。
その場に跪いたユニ。
そして両手を床に着けて頭を下げる。
「兄様、どうか命だけは…お父様の命だけは救ってもらえないでしょうか」
頭を下げたまま身動き一つせず、ジッと懇願を続ける。
その姿を見てさすがの仲間たちも一抹の不安を覚えたのだが、ゼリックの行動は一貫していた。
「すまないユニ。許せ」
「兄様!!」
────────── ザンッ!!!!!
外の喧騒を後にして王城内へと侵入したゼリックたち。
獣王レオニスがいる玉座の間を目指して階段を駆け上がる。
「そろそろだ。みんな心してくれ」
そして、いよいよ玉座の間まであと少しというところで新たな戦士たちが彼らの道を阻む。
「ゼリック、前方に見える広間に誰かいるッキよ」
「ああ、恐らく獣王直属の近衛隊だろう」
玉座の間まで続く通路の間にある大広間。
そこで待ち構えるは強国で名を馳せる獣王国ビステリアの中でも選りすぐりの精鋭たちで組織された近衛隊。
そして、それを率いるのはもちろん近衛隊長であるパンサー。
さらにそこには精鋭たちと共に国内屈指の実力者であるバットの姿まであったのだった。
「武術大会で戦ったあの若者がここまで来たか」
「お久しぶりです、パンサーさん。申し訳ないのですが、今は昔話をしている暇はありませんので道を開けてもらえませんか?」
「フンッ、我らが王の首を狙おうとする不届き者を通すわけにはいかんな。ここを通りたければ我ら近衛隊を倒していけ!」
パンサーからの当然ともいえる返答に笑みを浮かべるゼリック。
大いなる目的のためとはいえ、これは王権を奪うための戦い。
ましてや相手は王直属の部隊であり、主君のためであれば命すらも厭わない者たちである。
そう易々と道を開けるわけなどない。
もちろんゼリック自身もそんなことは重々承知した上での問答だったわけだが、この無意味なやり取りを前にやる気満々の男が割って入る。
「コイツが戦士長ザックスに次ぐ実力者と云われてるパンサーッキね。御託はいいからさっさとやるッキよ。お前の相手はオイラがしてやるッキ!」
「ハハッ…この俺もナメられたものだな。部下の相手をさせられるなんてな!!」
「いやいや、部下ではないですよ。彼らは俺の大切な仲間たちです。それに ──── ナメているのはパンサーさんの方かもしれませんよ」
「それは楽しみだな。各員、隊列を組め!ここで奴らを始末するぞ!!」
「「「「「 ハッ!!! 」」」」」
改めて隊列を組み直す近衛隊。
通路を覆う形ではなく、横に広がるように隊列を組む。
そして、通路へと続く位置には隊長であるパンサーが仁王立ちしている。
それは自身が負けるはずなどないという意思表示であり、通れるものなら通ってみろという挑発の意味でもあった。
「ゼリック様、ここは私どもにお任せください」
「そうよ~。こんな~ところで~時間を~無駄にしては~ダメよ~」
「ここは俺たちに任せて先を急げ」
「さっさと行くッキ。オイラたちは敵を殲滅するッキよーーー!」
サルザールの号令と共にメリー・ドルグ・スネルが敵に向かって走り出す。
「「「「「 ウオォォォォォ 」」」」」
キーーーン! ─── キーーーン! ─── キーーーン!─── 。
事前の打ち合わせ通り、パンサーの相手をサルザールが、バットの相手をメリーが、そして他の近衛隊の戦士たちをドルグとスネルが相手をする。
双方入り乱れた状態の中、ゼリックとタイガードは静かにその時を待つ。
ガガッ ─── ガガガガガッ ───── 。
ガキーーーン! ─── ドゴッ!! ─── バキバキバキッ!!! ─── 。
そして、いよいよその時が来る。
「どうしたッキ?近衛隊長っていうのはその程度ッキか?」
ボゴッ!!
「グフッ…」
──────── ドゴーーーーーン!!
サルザールが繰り出した強烈な蹴りがパンサーの左脇腹を襲う。
その一撃をもろに喰らったパンサーは瞬く間に部屋の隅まで吹き飛ばされたのだった。
「道は開けたッキ!さっさと行くッキ!!」
「助かったよサルザール。みんなもあとは任せた!!行くぞ、タイガード」
「オウ!!」
再び駆け出しゼリックとタイガード。
この先にあるのは獣王の待つ玉座の間のみ。
そして ──────── 。
大きな扉の前に立つ二人。
いよいよ辿り着いた決戦の場。
ググッ ───── ギギッ…ギギーーーッ。
ゆっくりと開けられた扉。
そして、視線の先には玉座に座る王とその傍に立つ最強の男。
これまでとは違い玉座の間には二人の姿しかなく何処かに伏兵が潜んでいる気配もない。
「フゥー・・・。お待たせ致しました、レオニス様」
玉座へ向かって歩きだすゼリック。
にこやかな表情をしてはいるもののそこに隙など存在しない。
そして、彼らが獣王レオニスの眼前にまで来たその時、王の剣であるこの男が一歩前に出る。
「逆賊が!それ以上我らが王に近づくな」
「父上…」
「祖国に仇なす者を息子にした覚えはない。死してその罪を償え」
腰に差した剣を抜き剣先をゼリックへと突き出す。
ここまで来てしまっては元の親子の関係に戻ることなど出来はしない。
「ガルルルル…。お前に相手は俺様だ!獣王国最強の戦士ザックス。貴様を殺し、この俺様が最強となる」
「お前ごときが?その程度の力量で私の相手になると思うな!!」
─────────────────────────
いよいよ始まった頂上決戦。
すぐさま激しい戦闘となったザックスとタイガードの戦いとは対照的にレオニスとゼリックは互いにまだ武器すら手にしていなかった。
「もうこの辺りで終わりにしてはどうだ?反逆の罪は償わねばならぬが、全員命まで取りはせぬ」
「アハハハハ。レオニス様、俺はお喋りをするためにここへ来たわけではないのです。あなたの首を落としに来たのです」
「もう…戻れぬのか…」
「その程度の覚悟であるならば、そもそもこんな戦いを始めていませんよ。はっきり言います。今のあなたでは俺の相手にはなりません。大人しく死んでください」
「ハハハハハ…。王の責務とはそれほど軽いものではないのだ。どうして私が長らくこの国の王であれたのか・・・その理由を武をもって教えてやろう!」
玉座から立ち上がり剣を抜いたレオニス。
その迫力は“百獣の王”と謳われた男のそれであった。
目の前に立つ王からの威圧を受けてもなおゼリックの表情は変わることなく、むしろやれやれと少し困ったように首を左右に振るのだった。
そこから壮絶な戦いが始まる ───── のだと思われた。
がしかし、そうはならなかった。
その圧倒的かつ一方的な武を前にレオニスは片膝を着き大きく肩で息をする。
「獣王様!」
「お前に相手は俺様だって言ってんだろうが!」
ガキーーーン!!
追い詰められた主君の姿を前にすぐさま助けに向かおうとするザックスであったのだが、相対いている男がそうさせてくれない。
そして、いよいよクライマックスかと思われたタイミングで彼らが玉座の間へと到着する。
「お~やってるッキね~」
「クワックワックワッ。なんだい、まだ獣王の首を落としてないのかい?」
各自任された持ち場での戦闘を終え、この戦の最後を見守るためにやって来たのだ。
「なっ・・・!?」
その光景を目の当たりにし絶句するレオニス。
それもそのはず ──── 彼らがここに来ているということは、相対した戦士たちが戦いに敗れたことを意味している。
それもただの戦士ではない。
今の獣王国の根幹を支える強戦士たちが…である。
「みんな終わったのかい?」
「もちろんよ~。あまり~歯応えが~なかったわ~」
「ゼリック様、敵主力の排除及びその他の戦士たちの拘束完了致しました。拘束した戦士たちは城外にてドランが見張っております」
「みんなご苦労様。それじゃ、こちらも終わらせるとしよう。大丈夫そうかい?タイガード」
ギーーーン! ─── ギャーーーン! ─── ギーーーン!─── 。
「うるせぇ…今それどころじゃねぇんだよ…」
未だなお壮絶な打ち合いを続けている二人。
パワーで勝るタイガードであったが、それ以外の部分と総合力で上回るザックスに苦戦を強いられていた。
「だからアイツに任せるのは反対だったッキ。口先だけの野郎には荷が重かったッキよ」
「グッ…うるせぇーぞ…サル野郎…」
サルザールの嫌味が耳に届き必死に反論しようとするが、刃を交える相手の力量の前にそれも難しいようだ。
「獣王様…少々お待ちを。此奴を討った後、そこにいる者どもをすぐに一掃します故…暫しのご辛抱を ───── グフッ!?」
口から滴れ落ちる血。
貫かれた左胸。
じわりじわりと熱くなる傷口からは血が溢れ出し衣服を赤く染めていく。
「グッ…貴様…何処から…」
突如として背後に現れた男。
激痛に顔を歪めたザックスの視線の先には、自身を突き刺した針剣を手にしたマウルスの姿があった。
「おい!テメェー!!」
ヒュンッ ───── ゴトッ・・・。
無惨に斬り落とされた首。
獣王国最強と謳われた男の最期はいとも容易く、そして一瞬の内に迎えることとなった。
思うところがないわけではない。
しかし、それ以上に重要なことがある。
ゼリックは父であるザックスの最期を目の当たりにしても表情を崩すことはなく、すぐさま視線を獣王レオニスへと戻した。
そして、それと同時に玉座の間にひときわ大きな声が響き渡る。
声の主はもちろん ──────── 。
「おいコラ!マウルス!!俺様の獲物を横取りしてんじゃねーぞ!!」
「はぁ~…君がチンタラしてるのが悪いんだろ…。騒がし過ぎて起きちゃったじゃないか…」
「そんなこと知らねーよ。せっかく良いところだったのによ・・・どうしてくれるんだ!!」
「うるさい…。ギャーギャーと喚くな…。君の楽しみなんてどうでもいいんだよ…。目的を見失って暴走するようなら ───── 殺すよ?」
ズズッ・・・。
寝起きのせいなのか、言い訳を並べる仲間への苛立ちなのか、感情を隠そうともしないマウルス。
その重く冷たい殺意を前にタイガードはたじろぐことしか出来なかった。
「おいおい、喧嘩はよしてくれよ。そろそろこの戦いもフィナーレだ」
タッタッタッタッタッ ──────── 。
首筋に当てられた剣先。
跪くレオニスは命乞いをすることも弱音を吐くこともせず、ただその時が来るのを静かに待っている。
タッタッタッタッタッ ──────── 。
そして、いよいよその首を斬り落とさんとゼリックが剣を振り上げたその時、彼女が玉座の間へと飛び込んできたのだった。
「兄様!!」
息を切らし肩で息をするユニは、眼前に広がる光景に言葉を失ってしまう。
幼少の頃より何かと自分のことを気に掛けてくれたザックスの亡骸と、今にも命を奪われそうになっている父親の姿、そしてそれを実行しようとしているのは・・・他でもない最愛の人。
その受け入れ難い状況に一瞬気を失いそうになるが、気を保ち直して踏み留まる。
「兄様…もう止めましょう。勝敗は決しています。これ以上は何の意味もありません」
「「「「「・・・・・」」」」」
愛する人からの悲痛な願い。
仲間たちは口を挟むことなくその状況を見守る。
そして ──────── 。
「ユニ…。何の意味もない…なんてことはないんだよ。ここで現王を討つことで新たな時代を宣言することとなる。ここから獣王国は新たな一歩を踏み出すんだよ」
ザッ ──────── 。
その場に跪いたユニ。
そして両手を床に着けて頭を下げる。
「兄様、どうか命だけは…お父様の命だけは救ってもらえないでしょうか」
頭を下げたまま身動き一つせず、ジッと懇願を続ける。
その姿を見てさすがの仲間たちも一抹の不安を覚えたのだが、ゼリックの行動は一貫していた。
「すまないユニ。許せ」
「兄様!!」
────────── ザンッ!!!!!
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