【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第8章 砂漠の英雄

第11話 最初の事件?

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 ふひい……砂風呂は最高だねえ。身体の芯からポカポカ温まるし、魔力が溢れてくるようだよ。
 まったく、ベレニスとヴィレッタめ。

「はあ? 砂風呂? 土や葉っぱならともかく、そんなドワーフみたいなことしたくないわよ」

「わたくしもちょっと、生身の身体を砂まみれにするのは……」
 
 なんて言って普通のお風呂に行きおって。せっかく来た土地の名物を堪能しないのは損だぞ?
 地熱を利用する大量の発汗でデトックス効果! 美肌になるっていうし、やるっきゃないでしょ。
 フィーリアも顔をテカーってしてるし、クリスとレオノールなんて砂と一体化してるぐらい気に入ってるぞ。
 ……ん? 一体化?

「ちょっと、レオノール! クリス! 顔にも砂かけてない⁉」

「モガモガ……助けてください姉様……両手両足が動きません!」

「大丈夫だって~。いざとなれば私が竜に変身するから~」

 くぐもった2人の声が聞こえるけど……どこだよ?

「てか、クリス絶対変身しないでよ! 部屋が潰れてぺしゃんこになるわ!」

「ええ~? じゃあどうやって脱出するのさ~」

 知らんがな。それよりも2人とも、どうやって顔まで埋めたんだよ。最初に手足胴体埋めたよね?

「口の中に熱い砂がががが。さよなら……姉様」

「すぴーすぴー……(無呼吸)」

 なんかヤバい方向にいってね?
 砂風呂で冒険終了って、それでいいのか2人とも!

「フィーリア! 2人がどこかわかる⁉」

「さあ? でも大丈夫っすよ~。歴史上、運営されている砂風呂で死んだ人はいないっす。……多分」

 それって非公式はあるってことだよね?

「あと数分で係の人が来るっす。それまで砂を飲み込まないで耐えるっすよ! レオノールさん! クリスさん!」

 フィーリアの声に返答がない。これはマズい!

「『わが魔力よ! 風を起こし、すべての砂を巻き上げよ!』」

「わわ! すべてにする必要ないっすよ!」

 私の身体が光り輝き、慌てるフィーリアを他所に魔力を解き放つ。
 私たちの身体にあった砂が一粒残らず上空へ舞い上がった。

「ぷはあ……死ぬかと思いました。首を鍛える特訓と思って、後頭部で砂を抉ったら沈んだのは想定外でした」

「あれ~? さっき亡くなったはずの母さんが見えたんだけど? レオノールの真似してたら不思議な体験したよ~」

 うーん。やっておいてなんだが、ゼエゼエしているレオノールとポカンとしているクリス、それに絶句しているフィーリアと、この状況を作った私、全員全裸なのが地味にシュールだよ。
 ちゅうか、どんな首力で砂に挑んでるんだよ。

「こ、これは⁉ お、お、お客様! な、な、何が⁉」

 時間が来たのか、係の女の人が仰天の声を出す。

「あっ、すいません! 今、戻します!」

 私は頭を下げて、魔力の集中を解く。
 すると当然なんだけど、私たちの頭の上に大量の砂が落ちてきたのでした。

「……ローゼさん」

 ジト目で見ないでフィーリア。この状況作ったのはレオノールとクリス! 怒るのはそっちにして! 2人は今の砂の雨に目をやられて悶絶してるけど。

「凄い! 魔女の方ですか⁉ こんな威力の魔法を扱う方、初めて見ました!」

 すると係の女の人に、私はヒシっと両手を掴まれてしまった。

「あっ、えっと……」

「砂なら気にしないでください! ちゃんと元に戻ってるので、主人と女将さんには黙っておきます!」
 
 おお! 尊敬の目で見られるのは嬉しくなるよ。年齢は20代前半かな? ブラウン色の長い髪が艶々してる。
 穏やかそうな美人さんが私のしたことではしゃいでくれるなんて、魔女で良かった~。

「まあ、風魔法ならベレニスのほうが得意ですが……」

「ローゼさん、まずは砂を落としたいっす。えっと……」

 えへへとニヤけている私の腰に、フィーリアが肘を小突きつつ女の人を見る。

「あっ! 申し遅れました。私はこの宿に勤めているエリと申します」

 律儀にペコリとしてくるエリさんに、私とフィーリアも思わずペコリとしてしまう。
 後ろでレオノールとクリスが、まだジタバタしている音を聞きながら。

 ***

 砂を落として宿のロビーに戻り、通常の風呂でさっぱりしているヴィレッタとベレニスと合流すると?

「遅かったですね。ローゼ、何かしましたか?」

「どうせローゼが何か騒ぎ起こしたんでしょ? レオノールとクリス、目が真っ赤じゃない」

 おいこら2人とも、なぜに私が原因のように言うんだよ。

「いえいえ、砂風呂に沈んだ自分とクリスさんを姉様が助けてくれたのです! 砂を風魔法で巻き上げ、竜巻のように上空へ! さすが姉様です! 2人にも見せたかったです。流星のごとく降り注がれる砂の嵐を! ……砂でなければ死んでました……」

「砂って凶器なんだね~。初めて知ったよ~。ローゼに助けられて……トドメ刺されるとこだったよ~」

 レオノールもクリスも反省して凹んでるんだよね?
 私に一言多いのはなんでだ?

「なにそれ? 砂風呂ってそんな危ないの⁉ ……予想通りだったわ」

「レオノール、クリス、ルールは守ったのですか? 危険な行為をしたのではありませんか」

 驚くベレニスとヴィレッタに、ざっくりと2人が首を鍛えて砂に沈んでいった説明する私だったけど?

「それっすけどローゼさん。ありえないっす。自分もローゼさんの魔法直前で試したっすが、首が沈むのは不可能っす」

「フィーリア、どういうこと?」

「この世には比重というものがあるっす。わかりやすく言うと、物質の密度っすね。人は水と同じ1。これを基準にしてあらゆる物に比重を付けてるっす。砂風呂の比重はおよそ1.8。人が沈むなんて、魔法でも使わない限りあり得ないんすよ」

「んな⁉ 聞き捨てなりませんフィーリアちゃん! 私だからできたんです! 脳筋姫の異名を舐めないでください! 力なら並の冒険者よりあるつもりです!」

 おいおいレオノール、その異名陰口だぞ? まさか喜んでるのか⁉

「じゃあ、ちょっと腕相撲で勝負してみるっすか?」

「望むところです!」

 ドーン、ドーン、ドーン。
 三連続フィーリアWIN!

「くっ……フィーリアちゃんに……負けた⁉」

 いや、フィーリアは見た目で忘れがちだけどドワーフだからね。人とドワーフじゃ初期スペックが違いすぎるわ。

「レオノールさん、ショック受ける必要ないっすよ。単純な戦闘力でいえば、剣士のレオノールさんが上なんすから」

「じゃあ、次は私とだね~」

「クリスさんとは遠慮しとくっす。赤竜はどうでもいい立証なんで」

 クリス、落ち込むな~。あとでリョウに相手させるから。

「要は嵌められた可能性あるってこと?」

「魔力の痕跡探りたかったんすが、ローゼさんが砂を全部ローゼさんの魔力に上書きしちゃったっすからね。物的証拠は何もないっす」

「「「「「ジー」」」」」

 ……みんな、私をジト目で見ないで。

「ちょっと待ってって!」

 忙しそうに働いているエリさん見つけて聞いていく。

「私たちの前に怪しい人って見なかったですか? 特に砂風呂利用者で」

 私の質問と、後ろについてきた仲間たち見て、一瞬キョトンとするエリさんだけど「う~ん、そういえば……砂風呂だけって人がいましたね」と答えてくれる。

「どんな人でしたか?」

「そうですね~。オレンジ色の髪の可愛い子でしたよ? そうそう、シスター服着てました」

 オレンジ色の髪? シスター服? 嫌でも脳裏に浮かぶ。私を何度も窮地に追い詰めた……魔女ジーニアを。

「台帳見せてもらっていいっすか?」

「ごめんなさい。宿泊客以外は記入しないシステムですので」

 フィーリアの質問に答えたエリさんだけど、そこで他の従業員に「エリ、サボるな」と怒られて、私たちにペコリと頭を下げて去っていってしまった。

「ねえ、ローゼ。今の特徴って、あいつじゃないの? あの女の人、嘘言ってなかったわよ」

 ベレニスも同じ相手を連想したのか、不快そうに口にする。

「まだ断定するのは早いっす。その髪色とシスター服の人が犯人ともいえない状況っすからね。大体、砂風呂の文字見て入りたいなんて衝動的なローゼさんの行動、ピンポイントで予測できるはずないっす」

 たしかに。砂風呂に入る予定なんてなかったし、ヴィレッタとベレニスは付き合ってくれなかったし。
 それでいて私とフィーリアに作動させなかったのもおかしな話だ。
 ジーニアと因縁があるのはこの4人。あいつの性格的に、お楽しみを残すタイプでもない。機会があれば真っ先に潰すタイプだ。
 ということは……ランダムに被害者出そうとしてた?
 それとも、この街にいるというヴィルマという魔女の仕業?

「ベレニスさんとヴィレッタさん! おふたりは風呂場で変わったことありましたか?」

 レオノールの問いに、2人は首を横に振る。 

「特に変わったことはありませんでした。とてもいいお湯でした」

「うん、いつものように泳いだら、ヴィレッタに怒られた普段通りだったわよ」

 ベレニスの耳が凹んでる。結構思いっきり説教されたっぽい。うん、いつも通りの姿だ。
 ……それ、普通は変わったことだよね?

「思い込みは危険を高めるだけです。ですが、レオノールとクリスが危険な目に遭ったのも事実です」

 うん。ヴィレッタの言う通り。
 ここは慎重に動くべきだ。

「ともかく、誰かが悪意を持って動いている可能性が高い。狙いが私たちか無差別かは不明だけど、まだ確認できていない魔女ヴィルマの存在もある。みんな気をつけて行動して。異変を察知したら全員共有するように」

 私の発言に、みんな力強く頷いてくれたのだった。
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