【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第8章 砂漠の英雄

第27話 マーイン領の魔女の正体

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「リョウはクレバスと。クリスがシオンさんと」

「ああ」「うん!」

 クレバスもまた、リョウを好敵手として直進し互いの剣の刃が交わる。
 シオン相手は、リョウ以外で実力を感じ取っているクリスしかいない。
 レオノールでも対応できるだろうけど、彼女には他にやってもらいたいことがある。

「レオノールとベレニスで他の衛兵たちをお願い。……死なせないように」

「了解です!」「ふん! めんどくさいけど私だからできるんだからね!」

 30名近くの衛兵との乱戦で相手を死なせないで対処できるのは、手加減できないクリスよりレオノールとベレニスが適任だ。
 レオノールの二対の剣と、風を纏ったベレニスの疾風のレイピアが縦横無尽に駆け巡る。

「ヴィレッタは回復と、いつでも結界を張れる準備を。フィーリアとヘクターさんは、私と一緒に魔女の奇襲に警戒。気をつけて。奴は手段を選ばない」

「お任せください」「はいっす」「ああ、魔女を捕らえなければ終わらねえ」

 躊躇なく、気配も察知させずに執務室を瞬時に爆発させた存在だ。今もどこかで私たちを見てるはず。

 剣戟の音が何処かしこから響く。

「フッ……各地で戦果を挙げるリョウ・アルバースと剣を交える日が来るとはなあ! 分かるぜ! 俺も無念と憎悪でひたすら剣を振るったんだ! てめえも無念と憎悪で磨いた剣だってなあ」

「否定はしない。だからこそ、俺はあんたを止める!」
 
 リョウとクレバスはリョウが押しているが、クレバスの不気味な執念と街全体を背負う剣の重さが早期決着はないと告げている。

「……つっ! とんでもない力だね、クリスさん。一撃交わるだけで腕が痺れるよ」

「シオンさんも素早いね。こっちの攻撃中々当たらないよ。防ぐのが精一杯」

 クリスとシオンさんはシオンがやや優勢。でも、クリスの体力なら防戦で消耗させることができる。

「うおおおおおおりゃああああ!」

「はああああああああああああ!」

 レオノールとベレニスは心配なさそうだ。多人数を引きつけ、攻撃を躱し、的確に倒していく。ただ、峰打ちにしているため致命的なダメージを与えられず、時間はかかりそうだ。

 さて……私ならどうする? 私がこの街の魔女なら、次の一手をどう打つ? 確実に私たちを仕留める一手を、私ならどうする?
 この地を連中が決戦の地にした理由……。盛り土……。地中には不都合な真実の死者……。

「! ヴィレッタ! 浄化魔法の準備を! フィーリアとヘクターさんは魔石で結界を張り、ヴィレッタを護って!」

 地鳴りもないし盛り土に変化もない。けれど蠢く魔の気配が地中から溢れている。

 漆黒の闇色の光に誘われるように、盛り土から音もなく現れる骸骨兵。
 ビンゴだ。死兵を使うのも邪教の手口。
 
 ……死体のまま埋められただけの存在が正体を如実に知らせてくれる。
 貴族服と黒鎧姿で乱戦に加わろうとする骸骨兵は、間違いなくクレバスとシオンの蜂起の犠牲になったテオ・マーインの一族と兵士たち。

「『世に存在してはならない魂に安らぎを与えたまえ』」

 ヴィレッタの浄化魔法が神聖な光で骸骨兵を包む。
 刹那、ヴィレッタを狙い、魔力弾が上空から放たれた!

「そこだ!」

 フィーリアとヘクターさんの魔石で防ぎ、すかさず私も攻撃を受けた軌道に向かって魔力弾を放つ。

「ちっ!」

 私の魔力弾を、そいつは飛翔魔法で宙に身体を浮かせながら防御魔法で防いだ。

「ようやくご対面ね。マーイン領の魔女!」

 黒フード姿で顔をすっぽり覆っている相手に、私は向き合う。

「この場所を指定したのは、禁呪で死者を蘇らせ、ヴィレッタが対処する隙に始末し、私たちの動揺を誘おうとした。ってとこかな? 御生憎様、そういう手は私たちは経験済み。……名乗りなさい。そして、投降しなさい」

 再び、魔力弾を練り出す魔女。
 マズい、無差別に撃つつもりだ!

「受けて立つ! 全部、地上に届かせない! ヴィレッタはそのまま骸骨兵の浄化を! フィーリアとヘクターさんは私の援護を!」

 私も魔力弾を練り、相手の放つ攻撃にぶつけて相殺させていく。
 生成スピードは負けていない。フィーリアとヘクターさんのどこに落ちるのかの予測と魔石による軌道修正もある。
 戦況は膠着状態に見えて私たちが有利。このまま、押し切る!

「ジーニアの名を騙り、私たちを撹乱して街から追い出そうとした手段は見事だったかな。考えてみれば実際に見た証言も、演出でやっていれば嘘じゃなくなる。特にシスター服なんてわかりやすい衣装、ベレニスをも騙すのに最適な外見」

「ちょっとローゼ! 私だけじゃないでしょ信じたの!」

 乱戦中のベレニスから文句が飛ぶが、そっちはそっちで集中していてよ。終わったらデザート奢ってあげるから。

「私たちにジーニアの存在を教えたのは3人。宿屋従業員のエリさんと、酒場の女将のマリーナさん。それとシオンさん。その中で、一番直接的に私たちに悪意をぶつけることができるのは誰か? シオンさんに言わせることができるのは誰か? マリーナさんは私たちに話す前に義弟に話している。……おそらくジーニアの見た目に変装して酒場に行ったんじゃないかな? ……ですよね? マーイン領の魔女……エリさん」

 空中からの魔力弾が止む。
 黒フードの中から覗かれる、鋭利な刃物のような瞳が私へと突き刺してくる。
 宿屋で笑顔振りまいて私たちを接客してくれたエリさんの面影は、もうなかった。

「いつ、気づいた?」

「気づいたというか、違和感は砂風呂の時から。淀みなくジーニアの情報を私たちに告げた時に、私たちの知っているジーニアと矛盾していたのもそう。……決定的だったのは、シオンさんの情報を私たちに伝えた時。クレバスとシオンの会話を盗み聞きって、私たちに信用させ、この地に誘い込む格好の罠ですよね? 正直、あの2人が他人の前で、そんな重要な話をするとは思えない」

 私の回答に、リョウと剣を交えるクレバスと、クリスと剣を交えるシオンさんが、フッと笑みを溢した。

「テオ・マーイン一族を皆殺しにし、魔女ヴィルマが作成した呪いの誓約書を赤子の手で維持し続け、クレバスとシオンさん、それと街の人々全員の運命を狂わせた邪教『真実の眼』の魔女はエリさん。あなたです」

「……やれやれ、噂ではもっと未熟だと聞いていたが、こうもあっさり見破られるとはな」

 ストンと、地に足をつけ、フードを取る邪教の魔女。
 私たちの知っているエリさんの顔が、そこにはあった。

「投降してください。呪いの誓約書も解呪します。保管場所を教えてください」

 周囲の剣戟はまだ続いている。
 ヴィレッタとフィーリア、ヘクターさんも、浄化が追いついていない骸骨兵に対応中だ。
 ……え? ヴィレッタの神聖魔法で浄化しきれてない?

 ――刹那。

「キャハ♥」

 耳障りな、あいつの声が私の脳髄を揺らした。
 
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