【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第1章 復讐の魔女

第4話 雑談

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 カルデ村の人たちに見送られ、私は歩き始めた。
 その隣を歩くのは黒髪黒瞳の傭兵、リョウ・アルバース。

 ビオレールまでは徒歩で2日はかかる距離だ。
 カルデ村から東へ進む道は平原で見通しは良く、街道にはそれなりに人通りがある。

 4月の日差しは暖かく、ポカポカとした陽気が旅路を行く私たちを包む。

 私はそんな日差しに目を細めつつ、とりあえず世間話でもとリョウに色々話しかけていた。

「あのビオレール領の貴族だけど、ちゃんと盗賊を護送してるのか不安ね。まあでも自分の手柄のようにきっと領主に報告するんだろうなあ」

 私は続けて、ビオレールの領主や歴史について話し始めた。

「ビオレールの領主はハインツ・ビオレール伯爵だっけ? 国境付近の領主にして大領の伯爵家だけど、配下の教育がなってないかな。そういえばアルバースがどうのこうのって言ってたけど歴史も知らないみたいね。アルバースってアラン傭兵団で名字がない人に与えられるらしいけど、七英雄アランの名字がアルバースなんだし、アラン傭兵団はアランの理念を引き継ぐ感じで活動してるんでしょ? そんな偉大な名を鼻で笑うなんて、あの貴族は無知ね。気にする必要全然ないと思う」

 そんな私の長話にリョウは気を悪くした様子もなく、ただ私の話を聞いてくれている。

 ただリョウも歴史には疎いらしく、アラン・アルバースという千年前の七英雄の1人についても特に知識はないみたい。

 ……おいおい、自分の所属してる傭兵団でしょ。

 というか百年前に発行されて、大ヒットした七英雄物語を読んでないって嘘でしょ?

 本が庶民にも手に入りやすくなって、演劇とかにもなっているのに。

 仕方ないから説明しますか。

 七英雄。
 それは大昔にこの大陸を救った7人の英雄。

 1人目の英雄の名は剣士レイン。
 平凡な村に生まれた彼は、その類い希なる剣術の才能を開花させて、多くの人々を救うために旅立った。
 10年の旅路を経て仲間と力を合わせ魔王を討つ、七英雄のリーダーにして勇者と呼ばれし者。

 2人目の英雄の名は魔女アニス。
 魔王軍に最初に滅ぼされたディンレル王国の王女。
 誰もが驚く美しい容貌と、絶大なる魔力を併せ持つ魔女。

 3人目の英雄の名は聖女フォレスタ。
 大地の声を代弁する力を持ち、その美貌と叡智で大陸に光をもたらした、精霊の寵愛を受けたエルフの女王。

 4人目の英雄の名は名匠シュタイン。
 卓越した鍛冶技術で大陸一の武具を生み出し、魔王軍に対峙する武具を作り、自らも前線で戦うドワーフの王。

 5人目の英雄の名は神官ザックス。
 智略と戦略で大陸に平和をもたらした軍略家であり、レインたちを勝利へと導いた、信仰心厚き女神の代弁者。

 6人目の英雄の名は猛将ドラルゴ。
 その巨体と強靭な鱗に覆われた肉体で、魔王軍を震え上がらせた赤竜の王。

 7人目の英雄の名は傭兵アラン。
 生まれた村で唯一生き残った幼き彼をアニスが育て上げ、最終決戦時は弱冠15歳だったという早熟の天才戦士。

 この7人の英雄は共に魔王を打ち倒し、大陸に平和をもたらした後、世界の安寧のために各地の脅威と闘った。

 そんなざっくりと簡潔な説明をした私。

 だけどリョウはへえとだけ呟く。

 マジで言ってるのかこの人? ムムッ、しゃあない、話題を変えるか。

「それにしても村を救ったお礼で若い娘を差し出すなんて、ちょっとムカッとしたけど……そうせざるを得ないのが今の現状なのかな。……今までもそういった話ってやっぱりあったの?」

「まあ、あったな」

「ふう~ん」

 私の態度にリョウは困った顔をしつつ口を開く。

「お、俺は断ってるぞ。団長からも言われてるしな」

 ほほう? まあ人類史で女で失敗した事例は多いし、アラン傭兵団ではハニートラップも警戒して、団員に釘を刺してるんだろうな。

 うんうん、ちゃんとした傭兵団みたいでいいと思うよ。
 ……いや、いいとは思っているんだけどさ。
 なんかモヤモヤするぞ? うーん?

 その後、なんだかんだで2時間ほど歩いて街道を行くと小さな川が見えてきた。
 橋が架かっており、水汲みや洗濯などには困らなそうな場所だった。

「アラン傭兵団の団長って、現代の七剣神の1人と言われているグレン・アルバースだよね。どんな人?」

 休憩がてら川辺で水を汲み、それを飲んでリョウに尋ねた。

「そうだな。団長はまあ平たく言うと強いな。俺より遥かにな」

 へえ~。リョウがそこまで言うなんて相当強いんだね。
 しかし人柄とか今どこで何してるかを言わないのは、私のことを傭兵団を探るスパイとか疑っているのかなあ。

 リョウも自分について、あまり語らないし。
 まあでも、私も自分のことをベラベラと喋るタイプでもないからお互い様かな。

 そんなことを考えつつ、水筒に水を補給しているとリョウがふと呟く。

「ローゼは俺の剣が気になっているようだが、何かあるのか?」

 おおっと、なかなか鋭いところがあるんだな。
 まあ隠すことじゃないし正直に話しますかね。

「……漆黒の剣よね。私の両親は漆黒の剣を持った黒髪の魔女に殺されたの。だからちょっと気になってね」

 変に空気が重くならないように、ちょっとだけ軽い口調で呟く。

「復讐者か。ローゼの旅の目的は?」

 復讐者……まあそうなんだろうな。
 両親を殺した存在を突き止めて、追い詰めて、なぜ両親を殺したのか理由を聞き、倒す。
 ……それが私の目的だ。

「まあ、ね。リョウを旅に誘ったのも同じ黒髪で漆黒の剣を持っているからだし。それにリョウは剣の腕も立つし」

 私の言葉を聞いたリョウが苦笑する。
 そして彼は、自分の腰に下げた漆黒の剣を鞘ごと私に差し出す。
 私はそれを恐る恐る受け取り、その重みに少し驚く。
 ズシリとした重さだ。

「ビオレールで剣を新調してからになるが、その剣はローゼにやるよ。旅の同行を断った詫びだ」

 なんとね、気前いいというか、なんというか……

「いいよそれは。重いし。てか結構名のある剣なんでしょ? それよりどこで手に入れたの?」

「ここの隣国のダーランドで内戦があっただろ? そこで敵の将が使ってたのを頂戴した。ダーランドの偉いさんや団長に献上しようとはしたんだが、褒賞でちょうどいいって言われてな」

 うーむ、というかその内戦に傭兵としてリョウも参戦してたわけね。
 ダーランドの内戦ねえ。

 スノッサの森の奥深くにディルと2人暮らししていて、誰とも会わずに修行の日々だった私。
 だけど情勢についてはディルがちょくちょく書籍を購入し、私も読み耽っていたから大抵の出来事は知っている。

 麻薬が絡んだ内戦……確かその戦争では傭兵団が活躍してたって読んだっけ。

 リョウもその傭兵団の1人ってことなのかな?

 今から約半年前に終結した、大陸でも衝撃を持って各地に伝播したダーランドの内戦。

「じゃあ剣の出自についてはリョウは知らないみたいね。……一応聞いておくけど、漆黒の剣を持つ黒髪の魔女に心当たりあるかな? 年齢は多分今は30前後だと思うんだけど」

 私の質問を聞いたリョウは首を横に振る。

「こんな剣を所持している女性で、ましてや魔女だ。噂になってもおかしくないが聞いたことがないな」

「……そっか、残念」

「役に立てなくてすまんが、ビオレールの冒険者ギルドなら情報も集まるだろう。そこでその魔女の情報を集めればいいさ」

 リョウの言葉に私は頷く。
 うん、まずは冒険者登録して旅をするのが最優先だな。

「……それじゃ休憩終わりっと。リョウはビオレールへ行ったらどうするの? 何か目的があるなら手伝ってもいいよ」

 休憩を終えた私は立ち上がり、軽く伸びをする。
 リョウは何か答えようとしてくれたみたいだけど、目線を街道の方へ向ける。

「馬車が来る。乗せてもらえるか交渉しよう」

 やがてのんびりした馬蹄の響きが聞こえてくる。
 幌付き馬車で、御者のおじさんがパイプを燻らせているのも見えた。

「あんたたち、旅の冒険者か? 盗賊……にはお嬢ちゃんは見えなさそうだな」

 御者のおじさんは待ち構えた私たちに結構驚いていた。
 リョウはともかく私はそんな盗賊に見えないよね?
 幌の中から男女が飛び出してくる。
 どうやら護衛の人のようだ。

「その鎧、アランの傭兵か。ここを徒歩で歩いてるって、馬にでも逃げられたか?」

「あらあら、美少女の護衛だなんて羨ましい仕事してるわね」

 美少女を護衛? はて? 私たちは護衛任務なんかしてないぞ。

 向こうの護衛者っぽい人たちは20代半ばぐらいの剣士風の金髪の男と、黒のローブに身を包んだ魔女っぽい亜麻色の髪の女の人。

「アランの傭兵のリョウ・アルバースです。ビオレールに行かれるのであれば乗せてもらえますか?」

「アランの傭兵ねえ……」

 御者のおじさんは護衛の人の方に顔を向ける。

「悪意はなさそうですし問題はないと思いますわ。ビオレールまでならよろしいのではなくて?」

 亜麻色の髪の魔女が私たちの方へ視線を向けつつ言って、その意見に金髪の護衛も頷く。

「まあ、それならいいが雇うことはできないし駄賃はもらうぞ。2人分で小銀貨4枚だな」

 まあ妥当かな? 高い気もするけど。
 ……てか私は無一文だった。

「ああ、わかった」

 リョウが懐から小銀貨を4枚取り出して渡す。
 なんか申し訳ない。
 ビオレールで冒険者として稼いだら、小銀貨2枚をリョウに返さなきゃなあ。

 お金を受け取ると御者のおじさんは、私たちに馬車に乗るよう促したのだった。
 
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