【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
22 / 314
第1章 復讐の魔女

第20話 狂気に満ちた少女

しおりを挟む
「まだ教会内への立ち入りは禁止のはずだが?」

 私たちに気づき、厳しい顔を向ける司祭。
 その顔には驚きの表情が浮かび上がる。
 私たちにではない。

 先程殺されたはずの兵が、無傷でリョウに抱えられているからだ。

「……何故そいつを貴様らが! ……まさか。いや、そんな馬鹿なことが……」

 司祭は最初こそ驚きの表情だったが、すぐにある考えに辿り着いたようで表情を歪める。

「魔女が! 幻影魔法でも使ったのか! おのれっ! いつから忍び込んでおった!」

 司祭の大声で、シスターたちが駆けつけ、長槍を手にして私たちを囲む。
 そこにはジーニアと呼ばれた少女も、漆黒の剣を手にし、ニヤニヤして立っていた。

「……結構最初から。あの奥の部屋の魔法陣、南の山にあった邪神崇拝の教会にあったものと同じですね。まさか同じ物があるなんて……」

 私は少し呆れたような声でそう話す。

「領主が確認しているのも見た。あれは人の血肉で魔法陣を描き、災いを呼び寄せるらしいな。……まさかそんな代物を呼び寄せようとする領主や司祭がいるとは」

 そう話すリョウは、すでに剣を抜いていた。
 その刃の輝きを見て、司祭が後ずさる。

「もう遠慮なくやっちゃっていいんでしょ、ローゼ? てか傭兵もよく我慢したわね。さ、チェックメイトよ。兵士や領主もこの場にはいないから、もう暴れても問題ないわよね」

 ベレニスもレイピアを抜く。

「ジーニア! このたわけが! 斬り殺したのが幻影だと気づかなかったのか! いや! それ以前にこいつらを中に侵入させてどうする! この役立たずめ!」

 司祭は罵倒するが、ジーニアはニヤニヤしたまんまだ。

 ……やっぱり。

「気づいてたのよね。……単刀直入に聞くけど何者? その漆黒の剣も気になるから、由来を教えてくれると嬉しいかな?」

「な、何だと⁉ 気づいて見逃していただと⁉ ええい! お前ら何をしている。早くそいつ等を始末せよ!」

 司祭の叫びに、ジーニア以外のシスターたちが一斉に動くが、リョウとベレニスの剣技の敵ではなく、あっという間に峰打ちで倒れていった。

「キャハ♥ 強いつよーい、司祭様逃げてぇ♥ お城から衛兵呼んだほうが良くなぁい? 出ないとこの人たちに殺されちゃうぞぉ♥」

 ジーニアは司祭を見下しながら、心底楽しそうに喋る。
 その目は狂気に満ちていた。

 私はそんなジーニアに問いかける。

「もう一度聞くけど、あなたは何者?」

 私がそう聞くと、ジーニアはコテンと首を傾げ、にんまりすると嬉しそうに笑う。

 司祭は逃げようとするが、入口側にいるのは私たちだ。

「こんなところで死んでたまるか! 儂がどれだけハインツに投資したと思っているんだ! ええい! 邪魔だ! こっちにはフェロニア以上の神がついておるのだ!」

 なんて言っている司祭だが、ベレニスの風魔法であっさり壁に飛ばされ、気絶した。

 司祭もシスターも、俗な考えの小物だったっぽいかな……大物は……

「助けないんだ。……不気味ね。てっきり護衛なのかと思ったんだけど」

 私はジーニアに警戒しながら言う。

「護衛は正解。まあ、南の山のロック鳥のような存在って思ってくれていいよぉ♥」

「つまり、魔法陣を守るのが任務?」

「ヒャハ♥ 質問ばっかりでつまんなぁい。ねえ女の子2人はどいててくれなぁい? 一目惚れなんだよねえ……そこのお兄さん。ねぇ? 同じような剣を持ってるし一対一で戦わなぁい?」

 ジーニアはリョウに剣先を向ける。

「うわっ……傭兵に一目惚れって、頭おかしいんじゃないのこの女」

 って! ベレニス! そこまでドン引きするな!
 というか一目惚れの意味合いが違うと思うぞ。

「リョウ……」

「わかってる。こいつは強い。だが指名されたなら仕方ないだろう。ローゼ、ベレニス、ここは任せてくれ」

 私は不安そうな声を出すが、リョウは応えるように頷いてくれた。
 剣戟は瞬く間に始まり、互いの剣が火花を散らす。
 壮絶な撃ち合いが延々と続くかのような錯覚を覚えながら、私は2人の戦いを見ていた。

 ⁉……違和感はこれか‼

「ローゼ、今のうちに魔法陣を壊すわよ。傭兵なら大丈夫でしょ? 剣の重さもスピードも傭兵が勝ってるし、体力も傭兵が上ね」

「……ベレニス動かないほうがいいかも。やられた。足元見て」

「はあ⁉ なにこれ?」

 一対一でリョウに戦いを挑んだ時から数秒、私とベレニスの意識がリョウに向かったのは確かだ。
 だがその隙に魔法が放たれていたようだ。

 足元には魔法陣。
 邪神崇拝の本で読んだことがある紋様が見える。

「これは恐らく生贄の魔法陣ね。それも出ようとした瞬間に発動し、中にいる者を魔法陣の贄とする類い。……ロック鳥がいた教会より、より精密かも」

 私の推測に、ベレニスは絶句する。

「ホント何なのあの女? 漆黒の剣を持ってて魔女? ローゼの両親を殺したっていうのと同じ⁉」

 私たちの異変に気づいたのか、リョウの剣がブレる。
 瞬時にジーニアの剣が、リョウの右肩から血飛沫をあげる。

「リョウ!」

「かすり傷だ!」

 態勢を立て直し、私たちの側まで来るリョウ。

「人質とは卑怯だな」

「人質ぃ? ヒャハ♥ 別にあたしはお仕事しながらあんたと戦ってたってだけぇ。で、どうするぅ? その魔法陣はあたしを倒さないと消えないよぉ?」

 青い修道服に身を纏う少女の狂気の瞳。

「ローゼ、ベレニス。待ってろ。すぐにあいつを倒す!」

「待って! 一つだけ答えてジーニア、仕事って言ったけどそれって他の場所でもやってたりする? ……例えば10年前から……王殺しとか」

 リョウを制止し私はジーニアに聞く。
 その質問が意外だったのか、それとも私の声が震えていたからだろうか。

 ジーニアはキョトンとした顔をした後に、お腹を抱えて笑いだした。
 まるで嘲るような笑い声だ。

 リョウも警戒を解かずに剣を向ける。

「スゴイ♥ ねえどうしてそう思ったのぉ? 魔女の……えっと名前何だっけ?」

「ローゼ。ローゼ・スノッサよ」

「聞いたことない名前。でも覚えておいてあげるぅ♥ だってあたしの知る限り、10年前からって単語を出したのはローゼが初めてぇ。しかも歴史に残らない、とある王の死! こつこつやってる上もビックリする発言♥ ねぇ? 仲間にならなぁい? ローゼならすぐに幹部待遇で迎えられると思うけどぉ」

「……碌でもないとこっぽいからお断り。全部話してもらう。……10年前に私の両親を殺した理由も何もかも全てを」

「あん? 両親? なに言ってるのあんた」

 真顔になるジーニアだが、やがて目の色が変わる。

『我が魔力を糧にし、消滅させよ!』

 魔法陣を打ち破る解除の魔法を、私が口にしたからだ。

「……あんた? なにもん?」

 リョウの剣とベレニスの風魔法、そして私の炎魔法が同時にジーニアへ放たれる。
 そして剣が交わる剣戟音一つを残し、ジーニアは消えた。

 転移魔法、か。
 ……全く自分もだけど、魔女ってのはホントに厄介すぎる。

 でも今はそれより……
 私はすぐさまリョウに駆けより傷の具合を見る。
 右肩がざっくりと切られ、おびただしい血が流れている。

 自分の服が血で汚れることも構わず、私は傷口に手を当てて回復魔法を使用する。

「回復魔法は得意じゃないけど……」

「教会の連中って神聖魔法を使えるのも多いんでしょ? 司祭やシスターたち起こしてやらせる?」

 ベレニスの提案に私は首を振る。
 リョウは軽く笑う。
 私の回復魔法で血は止まっているが、痛みはまだあるのだろう。
 その笑みは引き攣っているようだし、冷や汗も流れている。
 そして私の肩を叩くとゆっくりと立ち上がった。

「オルタナ殿に報告だな。ギルドマスターにも報告したほうがいいだろう。城の連中に察知されないうちにやったほうがいい」

「まあ、まずは魔法陣の破壊ね。てかローゼ! 魔法陣を破れるならさっさとしてよ。焦ったじゃないの!」

「う~ん。咄嗟に上手くできたというか、私もここまで上手くいくとは思ってなくて」

「何それ? ローゼってホント面白いわね」

 ベレニスは呆れた目で私を見た。
 私は何故か少し照れた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...