【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第1章 復讐の魔女

第19話 領主の企み

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 祭壇の奥にある部屋にて、ハインツは不快そうに報告を聞いた。

「アンナが夫のクロードと共に逃亡しただと? いつと申した。もう一度言え」

「はっ! 2日前に商人の護衛を終えて戻ってくるはずが、その商人の馬車と戻らず、金を奪い、どこかへ逃げたと申しておりましたが……」

 ハインツは報告に来た兵士に舌打ちする。

「おかしいですな。魔力の流れはビオレールへ戻ってきてるのですが……」

 司祭の老人が小首を傾げる。

「そ、それが、その旅の者の中に魔女がおりまして……例のカルデ村の盗賊を退治した魔女だと……ロック鳥を討伐した冒険者もその魔女だと……」

 兵士の報告に、ハインツは表情を険しくする。

「よもやロック鳥を倒されるとは想定外ですなあ。ですが、あそこはすでに役目を終えた場所。ハインツ様、いかがなさいますか?」

 司祭の老人がハインツに尋ねる。

「その魔女を連れて来い。アンナの代わりにしてやる」

「そ、それが……今朝方ギルドでアンナが消えたと知り、私ともう1人で代替え品として魔力持ちの占い師とエルフ。……それと例の魔女を連行しようとしたところ、オルタナ・アーノルドに邪魔をされまして……」

「オルタナ? ああ、王国の駐留軍の奴か。それで? きちんと始末したであろうな?」

「む、無理でございます。あの者に勝てる人材は領内におりませぬ」

「チッ。使えん奴等め! なれば、領主の名において命じる。即時に拘束し、処刑せよ。いくら強かろうが、たかが兵だ。逆らうなら、周りにいる人間全て斬り殺すとでも言っておけ」

「お、恐れながら……そ、そういうのが通じないのがオルタナという人物なのです。ここは慣例に則り、王国軍に苦情を伝え、円満に王都か他領に異動してもらうがよろしいかと」

 兵の言葉に、ハインツはこめかみに青筋を浮かべながら怒りを露にする。

「オルタナ・アーノルド。あのアデル・アーノルドの子供ですな。ハインツ様、民からすれば、領主の兵士が無辜の民を強引に連れて行こうとした場面に、偶然通りかかったオルタナが民を助けたと思っておられるでしょう。これでオルタナを罰せば、領主の地位すら危うくなる騒乱が起きるかと。ここは兵に罪を被ってもらい、処断するのが吉」

 司祭の言葉に、報告しに来た兵が仰天し、逃げだすが……

 バタンと開くドア。
 兵がぶつかり尻餅をつく。
 現れたのは青い修道服を身に纏う人物。
 ややタレ目だが、清楚という言葉に似つかわしい慎ましさを持つ少女だ。
 ……いや、だった少女だ。

「往生際が悪いのですねぇ。ハインツ様ぁ、この兵が私に危害を加えようとしてましたよぉ。これはどうされますかぁ?」

 少女はニコニコと笑いながら報告する。
 その笑顔は無邪気だが、どこか狂気を孕んだ笑みだった。

「好きにせよ」

「はぁい♥ 好きにしまぁす」

「ひい……助け……」

 その兵は情けない声を上げながら、少女の持つ漆黒の剣に首を刎ねられた。

「もう1人いるようですけどぉ、そっちも私がやりますかぁ?」

「いや、よい。領民に知らせ、公開処刑にするのも悪くなかろう」

 ハインツは冷笑を浮かべ、司祭に顔を向ける。

「細工は上々。後は魔力持ちを連れて贄にするだけですな。なあに、心配いりません。先程エルフが教会を訪問しておりましたが、その隣にいた少女が魔女でしょう。あの様子だとまた教会に来ますぞ。その時が楽しみですなあ」

 司祭は顔を歪ませながら、これから起きる出来事を想像して涎を垂らすのだった。

「ほう、エルフか。耳が長いが、美貌に優れた人種と聞く。魔女だけで事足りるなら、飼いたいものだ」

「めちゃくちゃ可愛かったですけどぉ♥、私より小さくて胸もなかったですよぉ? 領主様ってそっちの趣味ですかぁ♥」

「これジーニア! 口を慎め! ハインツ様に何たる口を!」

 ジーニアと呼ばれた少女は、その清楚な修道服姿に似つかわしくない不敵な笑みを浮かべ、司祭の叱責に舌を出した。
 彼女の目には、人を玩具として扱うような冷たい光が宿っていた。

「私は雇われもんだしぃ、あんたらの部下じゃない。こんな修道服のコスプレまでされてさぁ」

「ならオルタナを殺せるか?」

「キヒ♥ そうねえ、白金貨百枚なら受けても良いわよぉ」

 そう話す少女に、司祭は苦虫を噛んだような表情をし、ハインツは鼻で笑い少女の条件を却下する。

「ざんね~ん。ね、領主様がエルフをぉ、司祭様が魔女を貰うんでしょぉ? なら私も1人貰っちゃお♥」

「もう1人? ギルドにいたという占い師の魔女か?」

「違う違う、男がいたじゃない。魔女とエルフと一緒に教会に来た。……うふっ♥、同じような剣を持ってたし気が合うと思うのよねぇ♥」

 ジーニアの口から出たのは、新しい玩具の名前。
 ハインツは不敵な笑みで少女の願いを聞き届けた。

「ところでハインツ様、トール・カークスは?」

「城で女を抱いている。全く、50過ぎているというのに元気なことだ。いっそのこと、トールに残った占い師の女とやらを与え、宰相への手土産にさせるか」

 そう話すハインツの顔には、下劣な笑みが張り付いている。

(もうすぐだ。儀式を終えたら万全を期して挙兵しよう。ロック鳥以上の魔獣を大勢従えて、新たなる王国を築くのだ。フフフ、アーッハッハッハ)

 作業を確認して教会を後にするハインツ。

 ジーニアも部屋を去り、別室で待機していた兵が驚きつつ、始末された同僚の兵の死体を処理する。

 そして司祭は1人、神に祈りを捧げていた……
 そんな司祭の背後に三つの足音。

 そう……私たちだ。
 
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