【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第1章 復讐の魔女

第23話 疑わしきは魔女

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 前日の夜、領主の寝室。
 領主ハインツは女を抱いていたが、クソっと悪態をついて、女を下がらせた。

(司祭やシスターまで捕まるなんて、おのれ魔女のローゼとやらめ! 魔法陣を封じやがって!)

 ハインツの野望はビオレールから大陸へ覇を狙うことだ。
 そこに思わぬ妨害が現れた。
 老婆の魔女の指示が、ふざけたものであることに憤慨していた。

(派遣したのが、ジーニアという小娘とロック鳥だけとは!)

 老婆の魔女。
 それはハインツに近づき、魔獣を呼び寄せて使役する術を教えた人物。
 ロック鳥を古びた教会に置き、魔法陣を護るように仕向けたのも彼女の指示であった。

 だが魔女の少女・傭兵の少年・エルフの少女に魔法陣の存在を暴かれ、窮地に陥った。

(まあ良い。司祭もシスターも使い捨ての駒よ! 俺が知らぬ存ぜぬを貫けば何とかなる!)

 ハインツはベッドから起き上がり、不敵に笑う。

 ここ領主の寝室は、警備の衛兵に常に護られているだけではない。
 一度ここに入った者以外は侵入不可の、特殊な魔導具が仕掛けられている。
 この寝室に攻め入るなんて、誰もできないのだ。

(それにしても、トール・カークスめ。俺が教会に行った日、女を抱いていると思っていたが、証言から何か俺の城で探しているようだな)

 探されて困る物は山ほどある。
 特に邪教に関連する魔法陣は危険だ。
 すでに王国騎士の何人かは、トールに指示されて動いているようだと、情報も耳にしている。

(……宰相に告げ口しておくか。トールは伯爵領を乗っ取り、謀叛を企んでいたと。それで失脚してくれれば、俺にとって都合の良い展開だ)

 忌々しい魔女ローゼとやらの存在も脳裏に浮かぶ。

(クソッ! 恥をかかせよって。必ず魔獣召喚の魔法陣を新たに構築させ、アンナと同じようにしてやる!)

 悪態をついた後、彼はベッドに入り、就寝した。

 ***

 ハインツの首にナイフが突き刺さった。
 最期に目にするは、暗闇の寝室に光る三日月の口。

「っ…………コヒュッ!」

 ハインツの喉にナイフを突き刺した影は、そのまま転移魔法で去っていった。

 ***

 領主のハインツ伯爵が殺されたという報せは、瞬く間にビオレール中に広がった。

「え~、ビオレール領に住まう領民に告ぐ」

 戦時でもない現状で起きた異常事態。
 ビオレール城の城壁から、集まった民衆に演説する人物を見てリョウの顔色が変わり、殺意を隠そうと必死になる姿で悟る。
 あの白髪混じりの中年男が、宰相の側近である元パルケニア王国貴族、トール・カークスなのだと。

「すでに噂が広まっているようなので簡潔に話す。領主ハインツ・ビオレールは何者かに殺された。伯爵の家族は無事である。だが世継ぎは幼年である為、政務を行うのは難しい」

 そこで間を置くトール。

「よって伯爵の側近の貴族や騎士、王国から派遣されている騎士たちと協議の結果、暫くの間、私がビオレール領主代行として務めることとなる。陛下と宰相閣下が、より相応しき代行者を送ってくださるまでであるがな」

 ざわつく民衆。
 当然だろう、演説の内容は領主の地位を奪う乗っ取りではないかと。

「ああ、心配しなくてよい。このトール・カークスが皆の不安を取り除き、必ずや良き領政を約束しよう。時節が来ればハインツ伯爵の長男リヒター殿が領主となる。それも約束しよう」

 民衆のざわつきが強まった。
 いきなり現れた悪評高き人物が領政を担うのだ。
 不安でしかない。

 演説するトールの左横は、銀製の鎧や兜を纏った騎士たちに、貴族と思われる面々の青褪めた顔。

 あ、カルデ村で盗賊を渡した時のムカつく貴族もいた。

 右横には黒鎧の面々。王国軍の騎士たち。
 オルタナさんも端っこの方にいるのが見えた。

 ……こっち側は平然としている……か。

「殺したのは誰で、どうやって殺されたんだ!」

 民衆の中から声が上がる。

「寝室で絶命していたゆえ、寝込みを襲われたと思われる。犯人は未だ不明だ。このトールが必ずやその罪に相応しい報いを与える」

 民衆はまたまたざわめく。

「そんなの、魔法を使える奴が伯爵を殺したに決まってるじゃないか!」

 民衆の1人が叫び、それに呼応する『そうだ』という合唱。

「マズい流れかも。まるで過去の歴史であった魔女狩りの発端にそっくり」

 私の呟きにベレニスも警戒感を強める。
 現状このビオレールの街で、人を殺せるほど強い魔力を持ってる人物は、私とベレニスとディアナさんぐらいだ。

 真っ先に魔女狩りの対象にされてもおかしくない。

「教会での騒動で行方をくらました、ジーニアという者も魔女だったんだろ? そいつが犯人じゃねえのか?」

 またも民衆から飛ぶ声。
 その声にトールは首を横に振り否定する。

「今は憶測は控えるべきであろう。だが情報提供は大歓迎だ。教会での騒動に関わりがあるかないかに関わらずな」

 民衆のざわめきが、さらに一層強くなった。

 この演説が切っ掛けとなり、ビオレール領では不穏な空気が漂い始めるのだった。

 その日の夜、私はディアナさんから2人きりで話をしたいと告げられ、郊外にある彼女が泊まる宿へと足を運んだ。

「大変なことになったわね。ベレニスちゃんは暴れてない? 大丈夫かしら?」

「あ~大丈夫です。ご飯食べてお風呂入って、宿のベッドですぐに爆睡しましたんで。リョウが隣の部屋にいますし、何かあっても対処はしてくれると思います。……それでディアナさん。私と2人っきりで話したいことってなんですか?」

「今後についての相談よ。ローゼちゃんも魔女狩りのことは知ってるでしょ? もし起こったら、どうする?」

 ディアナさんは真剣な表情で聞いてきて、私はそれに対してうーんと唸る。

「まあ……逃げて旅をするかもですね。前にディアナさんに占ってもらった、私の両親を殺したノエルという魔女。……死んでいたとしても、どういう人物だったかを辿るのも悪くないかなって」

「クスッ。ローゼちゃんらしい答えね。その旅には傭兵君もベレニスちゃんも、当然ついてきてくれると思っている。違うかしら?」

「それは……」

 甘い考えをしているって思われているのかな?
 確かに、リョウとベレニスを頼りにしたい気持ちもある。
 俯いて考えてしまう私に、ディアナさんは微笑んだ。

「ローゼちゃん。別の選択肢を取らないかしら?」

「えっと……何か良い方法があるんですか?」

 さすがは運命の女神に愛されし占い師。
 頼りになるなぁと期待の眼差しを向ける私。

 そして……

 バアァァァァン‼

 突然、部屋の窓が勢いよく開け放たれた。

 そこにいたのはジーニア。
 修道服姿で漆黒の剣を片手に、狂気の笑みを浮かべて立っていた。
 
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