【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第2章 英雄の最期

第29話 再び盗賊のアジトへ

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 ルシエンは炎に包まれ崩れ落ちる。

 ……衝撃的な光景だった。

 彼女の身体はすぐに焼き尽くされ、消し炭になってしまった。

 一瞬の出来事に対処すらできず、私たちはただ立ち尽くして彼女の死を見届けるしかなかった。

 まさか彼女が死を選ぶとは思わなかった。
 しかも自らの身体を炎で焼き尽くすなんて……

 ルシエンと同じ邪教の魔女のジーニアが、我が身可愛さであっさり退散したビオレールでの過去が、この結末を想定していなかったとは言える。
 でも、それは言い訳に過ぎない。

「こういうこともある。儂らドワーフとしては、隠れ里を知った人物を殺す手間が省けたがな」

「父ちゃん! そういう言い方は……」

 フィーリアは父親のクルトさんに文句を言いたげに振り向くが、途中でやめたようだ。
 ベレニスも悔しそうに唇を噛んでいた。

「戦場なんだ。敵に悔いても仕方がない」

「リョウ……」

「ホント、傭兵って無神経なのね」

 リョウの発言に、ベレニスは苛立つように口にした。

「ただ、まだ全ては終わっていない。ナフト殿と合流し、残る盗賊どもをザガンの街まで送り届けなければならん。俺1人でやるから、みんなは休んでいてくれ」

「ううん。私も行く。依頼なんだしちゃんとやらないとね」

「ホント傭兵ってアホね。はは~ん。もしかして報酬を独り占めするつもり? そうはいかないんだからね!」

「しゃあないっす。また自分が道案内するっすよ」

「ローゼは魔力が切れているんだろ? 無理するな」

「あはは、大丈夫だって。心配してくれているのは嬉しいけど、今は……その、みんなと一緒にいたいから。それにいざとなったらこの杖で叩くから!」

「傭兵を⁉」

「違う! 襲ってくる敵を!」

 そう言って私は、杖を振る姿をベレニスに見せる。

「ならやっぱり傭兵にするのよね! その時は私も手伝うわ♪」

 俺は襲わないのに、という顔をリョウはしているが、私たちの同行は認めたようだ。

「小僧よ、こっちの盗賊の死体の始末は我らドワーフがやっておく。気にせず行って来るがよい。フィーリアをよろしく頼むぞ」

 クルトさんたちドワーフに、この場を任せて私たちは歩きだした。

 少しふらつくけど、まあ大丈夫かな?
 後方でフィーリアとベレニスの言い争いが聞こえたが気にしない。

「リョウは今こう考えているんじゃない? 『……ルシエンはノイズを様をつけて呼んだ。ならばノイズは邪教に関係していたのか? 今後は邪教を探るのを重点にするべきだな。邪教か、ビオレールの教会のように内側で巣食っているのだろうか。外から見ただけではわからないのが難点だな』って」

「まあ、な。よくわかるな」

 歩き出した山道での私の問いかけに、リョウは驚いたように私を見る。

「そりゃあ、結構長い間、一緒に旅してきたからね」

「だから傭兵は駄目なのよね。真っ先にローゼについて心配して、優しい言葉をかけないからモテないのよ」

 ベレニスが横から割り込んできて、リョウを睨む。

「そっすよ、リョウ様。ローゼさんは魔王の器っす。リョウ様に何かあれば魔王になる可能性が大なんすから、気を使ってあげないと」

 フィーリアもベレニスに同調してリョウを責める。

「ならないとローゼが宣言したんだ。なら、ローゼのことは信じてもいいだろう」

 う~ん……嬉しいような、残念なようなリョウの答え。

「うわっ……傭兵って女心がわかってないのね。……ドン引き」

「そっすよ。特にローゼさんはリョウ様一筋なんだから」

「ちょっ⁉ フィーリア!」

「きしし。ローゼさん……顔、赤いっすよ」

 フィーリアの指摘に、私は顔が熱くなるのを感じ手で仰ぐ。
 その様子を見たベレニスが笑いだして、リョウは不思議そうに私を見る。
 うぅ……私が何でこんな目に。

「ともかく、ローゼさんはリョウ様が生きて隣にいれば大丈夫だと思うっすから、リョウ様は離れちゃ駄目っすよ」

「てか、どうなの? ぶっちゃけローゼが魔王って、ピンと来ないのよね~」

「ベレニスさんの疑問も当然すね。ローゼさんは魔王の器の1人ってのが正しいっす。魔王は七英雄の魔女アニス様の姉、アリスが世界で唯一降臨した魔王っす。けど、シュタイン様の遺した手記では、本来魔王になるはずだったのはアニスだったそうっすからね」

「ほえっ⁉ そうなの⁉」

 フィーリアが、私の憧れの七英雄の魔女アニスの名前を出した。
 しかも魔王になるはずだったのはアニスだって……衝撃的な内容に思わず大声を出してしまう。

 リョウも驚いてフィーリアを見る。
 ベレニスだけは当然とばかりに頷いている。

「ベレニスも知ってたの?」

「フフン♪ 私が知っているわけないでしょ?」

 ベレニス、胸を張って自慢することじゃないよね。

「コホン。と、ともかくシュタイン様の手記によると、アニスはずっと引きずっていたっす。姉の魔王アリスを倒してからもずっと。そもそも魔王の器というのは、膨大な魔力の持ち主であり、世界を混沌にしたい渇望と、魔界から呼び寄せし魔族をも包んでしまう、慈愛の心を持っている人のことを指すっす」

「慈愛?」

「秩序も混沌も、等しく包み込む心を持っているってことっすね。そうでなくては魔族も好き勝手暴れて、収拾がつかなくなるっすから」

 フィーリアの説明に、私は少しだけだけど納得できた気がした。

「ローゼって、敵や悪党が死ぬのも嫌がっているわよね。ドワーフたちが、盗賊を皆殺しにしているのも嫌がっていたしね」

「それは……死んで終わりってのが嫌なだけで、敵や悪党に情をかけるつもりはないんだけど」

 ベレニスの言葉に私は反論する。

「ローゼはそれで良いさ。俺はローゼが間違った道に進むとも思えんしな」

 リョウが私を見て、真顔で言ってくる。
 私は思わず赤くなる顔を隠してしまう。
 それ嬉しいけど……恥ずかしい言葉だぞ。

 そんな私の様子を見て、ベレニスとフィーリアがニヤニヤしているし。

「まあ、リョウ様次第なんすけどわかってないようなんで、この話は置いておいて。……もう一つローゼさんのことを訊いておくっすね」

「何? フィーリア?」

「ルシエンはローゼさんを、ローゼマリー王女様と呼んでいましたが事実っすか? 10年前に、両親である王と王妃と一緒に病死したっていうお姫様……」

「ああ~うん。今更隠しても仕方がないかな? そうです。私がローゼマリー王女です。今はただの魔女ローゼだけどね」

 私は正直にフィーリアに答える。
 なぜ生きているのか。なぜ病死になったのか。
 真実は両親が邪教の魔女に殺されたこと。
 その魔女も使い捨てですでに死んでいること。
 私を育てた魔女ディルについてと、ビオレールでの魔女騒動の真実まで。

 渓谷や山道を歩きながらする話でもないけど、ざっくばらんに、目的地の盗賊の隠れ家だった洞窟が見えるまで。

「ローゼさんって脳天気な恋愛脳かと思ってたっすけど、ははあ……う~む。そういう事情だったっすか」

「って! フィーリアは私をそんなふうに見ていたの⁉」

 フィーリアが衝撃を受けているけど、私も衝撃だよ。

「話は後だ、ナフト殿と合流するぞ」

 リョウの一言で、私たちはナフトさんの待つ洞窟に向かう。

「魔女ディル魔女ディル魔女ディル。……う~ん、どっかで聞いたような気がするんすよねぇ」

 フィーリアのそんな独り言が、洞窟の入口で木霊した。
 
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