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第3章 公爵令嬢の選択
第2話 洗濯のプロ
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「いいっすか? 3人共もう自分との契約は満了したっすから、今後は宿代、食事代はそれぞれが持つんすよ? それから、4人がそれぞれ毎日やる家事や雑務の分担っすけど、今のところ必要な項目は洗濯と掃除と買い出しっすかね」
昼食を食べながらフィーリアに説明され、私たち3人は頷いた。
ここは王都ベルンの城門から入ってすぐにあった酒場で、お腹を鳴らしていた私たちは、王都に到着して真っ先に入ったのであった。
門兵には、商人に傭兵に冒険者の魔女とエルフ? の4人組と奇異な目で見られたけど、つつがなく街へ入ることができたのである。
私の名前はローゼ。金髪ショートヘアに碧眼で、ここベルガー王国ではありふれた容姿。
容姿スタイルは結構自信がある、魔女で冒険者なのだ。
魔女名はローゼ・スノッサで、魔力量も誰にも負けない自信がある。
フィーリアの手には、週間で曜日毎に当番を決めるグラフが書かれている紙があった。
彼女の名はフィーリア・メルトダ。
緑髪に短いツインテールで茶色の瞳が愛くるしい、ぷにぷにほっぺが魅力の11歳。
遥か北の街ビオレールから、王都ベルンまでの護衛を私たちに依頼し、その後正式に私たちの仲間に加わった、話術が得意なドワーフの商人の女の子だ。
「✕が休みで、◯がその日にしなきゃならないってこと?」
「そうっす。ですので、今日の当番から決めるっすよ」
「うへえ。洗濯なんてお仕事の人に頼めば良いじゃない」
「駄目っすよ、ベレニスさん。お金がかかるんすから、自分たちでできることは自分たちでしないとっすよ」
フィーリアの説明に、ベレニスは✕当たれ必ず当てる、今日は宿のベッドで旅の疲れを取るんだ、とブツブツ呟きだした。
ベレニスはエルフと一目でわかる長い耳をピクピクさせている。
細長い手足と白銀の長い髪、緑眼の瞳が特徴の、黙っていれば超絶美少女の女の子だ。
「う~ん、今日は洗濯に当たる人が運がないかな? ドワーフの里から王都までの旅路で一週間あったしね」
宿は長期宿泊にして、掃除は自分たちで行う条件にすれば安くなる、というフィーリアの意見だとしても、初日なら特にすることもない。
買い出しがあるのは、料理も自分たちで作るのをいずれ加えるつもりなのかな?
私は料理は得意だし、フィーリアも卒なくこなしそうだけど、リョウとベレニスって料理できるのかな?
ともあれ今は調理器具を持っていないし、これも今は気にする必要はなさそう。
となると洗濯が一番のハズレだ。
いや、断っておくけど、私は洗濯も得意だし苦にはしないよ?
ただ場の空気的に、今日は洗濯を引いたら敗北感を味わうのは必定。
ここは全力で勝ちにいかなければなるまい!
「くじ引きがあるわよ。これで決めましょ」
ベレニスの手には、いつの間にか四つの棒が握られている。
「いやいやベレニスさん。ここはジャンケンが無難っすよ。不正要素一切なしのほうが後腐れないっすからね」
「なによ、フィーリア! 私が不正してるとでも言いたいわけ!」
「じゃあ、その手のひらを開けてくれるっすかね?」
「……しょうがないわねえ。今日はジャンケンでいいわ!」
って、おいベレニス。それイカサマを認めたってことになるぞ!
「女神様お願いします。どうか私に祝福を! 今日はゴロゴロしたい、ゴロゴロしたい、ゴロゴロしたい、ゴロゴロしたい」
女神に祈る不信心なはずのベレニス。
私もちょっとドキドキしているけど、フィーリアは落ち着いていた。
そんな中で、リョウは特に何も考えてなさそうに佇んでいる。
この人はリョウ・アルバース。
パーティーメンバー唯一の男性で、アラン傭兵団という大陸屈指の傭兵団に所属する凄腕の剣士だ。
黒髪黒瞳で目つきが悪く、人付き合いは得意としていない。
なのでみんなから軽んじられているけど、戦いでは頼りにされている存在ではあるのだ。
そして始まるジャンケン勝負。
女子3人の視線から火花が散る。
「「それじゃあせーの! 最初はグー! ジャンケンポン!」」
「っしゃああああああああああああ」
雄叫びを上げたのはベレニス。彼女の1人勝ちだった。
「フフン♪ 今日は私はベッドで休んでいるから、みんなよろしくね♪」
おにょれなんという強運! ベレニス恐るべし。
「あちゃあ、ベレニスさんはパーを出すと思ったんすが読みが外れたっす。じゃあ次っすよ」
次のジャンケンは私が勝ち、買い出しを選択した。
特に買う物は決まっていないが、10年振りの王都の様子をじっくり眺めたいと思ったから。
「っく! ではリョウ様、次のジャンケンの勝者は掃除、敗者が洗濯っす」
「ああ、それでいいぞ」
そして最後のジャンケンはフィーリアが勝ち、今日の役割分担が決まった。
リョウは、暫し己が出したチョキの形を眺めて固まっていた。
でも、別に洗濯が苦ではないようで、宿に着いて私たちの洗濯物を受け取ると、洗濯できる場所を宿の主人に尋ね、桶を借りて宿の裏庭へと向かっていった。
「ローゼさん。1人で王都を歩いて大丈夫っすか? 自分も一緒に行くっすか?」
「大丈夫だって。私は死んだことになっているし、誰も気にしないって。フィーリアも休んでていいよ。明日みんなで冒険者ギルドや教会に行くことにしよっか。私は今日はちょっとお散歩して、どんなお店があるか見るだけにするからさ」
そうして私はリョウが洗濯している間、王都の散策に出かけることにした。
胸の中で、な~んか忘れている引っかかりを考えながら。
***
「あれ? ローゼは?」
「出かけたっすよ? ベレニスさん、即眠ったっすねえ。夜眠れないって言っても知らないっすよ」
「フィーリアは相変わらず、日記だか手記だか書いているのね。面白いの?」
「ベレニスさんも書いたらどうっすか?」
「いやよ、めんどくさい。ん~、ちょっとうたた寝したら下着が汗でベトベト。気持ち悪いから取り替えよ、フィーリア、荷物取って~」
「自分で取ってくださいっす。というか下着も洗濯に出したんじゃないっすか?……あっ!」
「あっ!」
フィーリアが“しまった“と思い出し、ベレニスもまた失敗してしまったと気づく。
「傭兵め! 女の子の下着を洗濯と称して持っていくとは! 恐るべしむっつりね‼」
「いや、自分たちが渡したんすけどね」
「とにかく! 行くわよフィーリア! 傭兵のことだから、私たちの下着でナニかしているかもよ‼」
2人は慌てて部屋を飛び出していった。
一方その頃、リョウはと言うと……
宿の裏手で、手慣れた手つきで洗濯作業をこなしていた。
丁寧かつスピーディーに。
その腕前を見たら、誰もがこう思うだろう。
……こいつは洗濯のプロだ、と。
当然だ。
リョウは12歳から16歳まで、アラン傭兵団の本隊で見習い団員として、毎日大量の洗濯物を扱ってきたのだから。
「この布衣は汚れの酷い箇所を洗う前に、揉み洗いしておかないとな。こっちの布衣には、アップリケというんだっけかが付いているな。取れないように慎重かつ丁寧にせねばなるまい」
リョウは小さな桶に水を溜めると、洗濯板でごしごしと布衣の汚れを落としていく。
そして一つ一つ確認しながら、丁寧に洗い直していくのであった。
そうして暫く作業している時だった。
自分を見つめる視線に気づき振り返ると、そこには仲間であるはずのフィーリアとベレニスが、ドン引きした様子で立っていた。
手には下着が握られていることから、何をしていたのかは一目瞭然で、ドン引きされる行為はしていないはずなのだが?
「何か用か?」
リョウは作業を進めながら尋ねた。
「うわあ……キモ、キモ、キモ、キモ」
「え?」
「リョウ様、それって……」
「布の下着だな。フィーリアのか? 洗っちゃまずかったのか?」
「キモ、キモ、キモ、キモ、キモ」
「それ、捨てておいてくださいっす。汚れたんで、もう履けないっすので」
「何故だ? 綺麗にしたぞ?」
リョウは理由がわからず、2人の下着を手にして見せていった。
「いや、見せられても困るんすけど」
フィーリアは困った顔でそう囁く。
ベレニスも心底嫌そうな表情を浮かべ、リョウが履いていた下着が自分の下着と重なって置かれているのを見て、驚愕し、また呟くのであった。
「キモッ」
「リョウ様ってデリカシーないっすよね」
去り際にフィーリアが呟くのをリョウも耳にした。
裏手から宿へと戻る2人の姿。
閉まった扉がまた開き、顔だけ出したベレニス。
そして、またリョウを見て呟く。
「キモッ」
ちょっと涙目になるリョウだったが、洗濯を続けていく。
……何だよ。……ただの布じゃないか。
と、洗濯物を干しながら、ため息を吐きつつ。
昼食を食べながらフィーリアに説明され、私たち3人は頷いた。
ここは王都ベルンの城門から入ってすぐにあった酒場で、お腹を鳴らしていた私たちは、王都に到着して真っ先に入ったのであった。
門兵には、商人に傭兵に冒険者の魔女とエルフ? の4人組と奇異な目で見られたけど、つつがなく街へ入ることができたのである。
私の名前はローゼ。金髪ショートヘアに碧眼で、ここベルガー王国ではありふれた容姿。
容姿スタイルは結構自信がある、魔女で冒険者なのだ。
魔女名はローゼ・スノッサで、魔力量も誰にも負けない自信がある。
フィーリアの手には、週間で曜日毎に当番を決めるグラフが書かれている紙があった。
彼女の名はフィーリア・メルトダ。
緑髪に短いツインテールで茶色の瞳が愛くるしい、ぷにぷにほっぺが魅力の11歳。
遥か北の街ビオレールから、王都ベルンまでの護衛を私たちに依頼し、その後正式に私たちの仲間に加わった、話術が得意なドワーフの商人の女の子だ。
「✕が休みで、◯がその日にしなきゃならないってこと?」
「そうっす。ですので、今日の当番から決めるっすよ」
「うへえ。洗濯なんてお仕事の人に頼めば良いじゃない」
「駄目っすよ、ベレニスさん。お金がかかるんすから、自分たちでできることは自分たちでしないとっすよ」
フィーリアの説明に、ベレニスは✕当たれ必ず当てる、今日は宿のベッドで旅の疲れを取るんだ、とブツブツ呟きだした。
ベレニスはエルフと一目でわかる長い耳をピクピクさせている。
細長い手足と白銀の長い髪、緑眼の瞳が特徴の、黙っていれば超絶美少女の女の子だ。
「う~ん、今日は洗濯に当たる人が運がないかな? ドワーフの里から王都までの旅路で一週間あったしね」
宿は長期宿泊にして、掃除は自分たちで行う条件にすれば安くなる、というフィーリアの意見だとしても、初日なら特にすることもない。
買い出しがあるのは、料理も自分たちで作るのをいずれ加えるつもりなのかな?
私は料理は得意だし、フィーリアも卒なくこなしそうだけど、リョウとベレニスって料理できるのかな?
ともあれ今は調理器具を持っていないし、これも今は気にする必要はなさそう。
となると洗濯が一番のハズレだ。
いや、断っておくけど、私は洗濯も得意だし苦にはしないよ?
ただ場の空気的に、今日は洗濯を引いたら敗北感を味わうのは必定。
ここは全力で勝ちにいかなければなるまい!
「くじ引きがあるわよ。これで決めましょ」
ベレニスの手には、いつの間にか四つの棒が握られている。
「いやいやベレニスさん。ここはジャンケンが無難っすよ。不正要素一切なしのほうが後腐れないっすからね」
「なによ、フィーリア! 私が不正してるとでも言いたいわけ!」
「じゃあ、その手のひらを開けてくれるっすかね?」
「……しょうがないわねえ。今日はジャンケンでいいわ!」
って、おいベレニス。それイカサマを認めたってことになるぞ!
「女神様お願いします。どうか私に祝福を! 今日はゴロゴロしたい、ゴロゴロしたい、ゴロゴロしたい、ゴロゴロしたい」
女神に祈る不信心なはずのベレニス。
私もちょっとドキドキしているけど、フィーリアは落ち着いていた。
そんな中で、リョウは特に何も考えてなさそうに佇んでいる。
この人はリョウ・アルバース。
パーティーメンバー唯一の男性で、アラン傭兵団という大陸屈指の傭兵団に所属する凄腕の剣士だ。
黒髪黒瞳で目つきが悪く、人付き合いは得意としていない。
なのでみんなから軽んじられているけど、戦いでは頼りにされている存在ではあるのだ。
そして始まるジャンケン勝負。
女子3人の視線から火花が散る。
「「それじゃあせーの! 最初はグー! ジャンケンポン!」」
「っしゃああああああああああああ」
雄叫びを上げたのはベレニス。彼女の1人勝ちだった。
「フフン♪ 今日は私はベッドで休んでいるから、みんなよろしくね♪」
おにょれなんという強運! ベレニス恐るべし。
「あちゃあ、ベレニスさんはパーを出すと思ったんすが読みが外れたっす。じゃあ次っすよ」
次のジャンケンは私が勝ち、買い出しを選択した。
特に買う物は決まっていないが、10年振りの王都の様子をじっくり眺めたいと思ったから。
「っく! ではリョウ様、次のジャンケンの勝者は掃除、敗者が洗濯っす」
「ああ、それでいいぞ」
そして最後のジャンケンはフィーリアが勝ち、今日の役割分担が決まった。
リョウは、暫し己が出したチョキの形を眺めて固まっていた。
でも、別に洗濯が苦ではないようで、宿に着いて私たちの洗濯物を受け取ると、洗濯できる場所を宿の主人に尋ね、桶を借りて宿の裏庭へと向かっていった。
「ローゼさん。1人で王都を歩いて大丈夫っすか? 自分も一緒に行くっすか?」
「大丈夫だって。私は死んだことになっているし、誰も気にしないって。フィーリアも休んでていいよ。明日みんなで冒険者ギルドや教会に行くことにしよっか。私は今日はちょっとお散歩して、どんなお店があるか見るだけにするからさ」
そうして私はリョウが洗濯している間、王都の散策に出かけることにした。
胸の中で、な~んか忘れている引っかかりを考えながら。
***
「あれ? ローゼは?」
「出かけたっすよ? ベレニスさん、即眠ったっすねえ。夜眠れないって言っても知らないっすよ」
「フィーリアは相変わらず、日記だか手記だか書いているのね。面白いの?」
「ベレニスさんも書いたらどうっすか?」
「いやよ、めんどくさい。ん~、ちょっとうたた寝したら下着が汗でベトベト。気持ち悪いから取り替えよ、フィーリア、荷物取って~」
「自分で取ってくださいっす。というか下着も洗濯に出したんじゃないっすか?……あっ!」
「あっ!」
フィーリアが“しまった“と思い出し、ベレニスもまた失敗してしまったと気づく。
「傭兵め! 女の子の下着を洗濯と称して持っていくとは! 恐るべしむっつりね‼」
「いや、自分たちが渡したんすけどね」
「とにかく! 行くわよフィーリア! 傭兵のことだから、私たちの下着でナニかしているかもよ‼」
2人は慌てて部屋を飛び出していった。
一方その頃、リョウはと言うと……
宿の裏手で、手慣れた手つきで洗濯作業をこなしていた。
丁寧かつスピーディーに。
その腕前を見たら、誰もがこう思うだろう。
……こいつは洗濯のプロだ、と。
当然だ。
リョウは12歳から16歳まで、アラン傭兵団の本隊で見習い団員として、毎日大量の洗濯物を扱ってきたのだから。
「この布衣は汚れの酷い箇所を洗う前に、揉み洗いしておかないとな。こっちの布衣には、アップリケというんだっけかが付いているな。取れないように慎重かつ丁寧にせねばなるまい」
リョウは小さな桶に水を溜めると、洗濯板でごしごしと布衣の汚れを落としていく。
そして一つ一つ確認しながら、丁寧に洗い直していくのであった。
そうして暫く作業している時だった。
自分を見つめる視線に気づき振り返ると、そこには仲間であるはずのフィーリアとベレニスが、ドン引きした様子で立っていた。
手には下着が握られていることから、何をしていたのかは一目瞭然で、ドン引きされる行為はしていないはずなのだが?
「何か用か?」
リョウは作業を進めながら尋ねた。
「うわあ……キモ、キモ、キモ、キモ」
「え?」
「リョウ様、それって……」
「布の下着だな。フィーリアのか? 洗っちゃまずかったのか?」
「キモ、キモ、キモ、キモ、キモ」
「それ、捨てておいてくださいっす。汚れたんで、もう履けないっすので」
「何故だ? 綺麗にしたぞ?」
リョウは理由がわからず、2人の下着を手にして見せていった。
「いや、見せられても困るんすけど」
フィーリアは困った顔でそう囁く。
ベレニスも心底嫌そうな表情を浮かべ、リョウが履いていた下着が自分の下着と重なって置かれているのを見て、驚愕し、また呟くのであった。
「キモッ」
「リョウ様ってデリカシーないっすよね」
去り際にフィーリアが呟くのをリョウも耳にした。
裏手から宿へと戻る2人の姿。
閉まった扉がまた開き、顔だけ出したベレニス。
そして、またリョウを見て呟く。
「キモッ」
ちょっと涙目になるリョウだったが、洗濯を続けていく。
……何だよ。……ただの布じゃないか。
と、洗濯物を干しながら、ため息を吐きつつ。
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