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第4章 竜は泉で静かに踊る
第34話 戦いのあとで
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「コホン。ローゼ、衆目がありますので、程々に」
ヴィレッタが咳払いをして、私はハッと我に返り、リョウから離れて赤面してしまう。
周りを見渡すと、みんなが生温かい眼差しで私たちを見ているじゃないか!
全身に熱がこもったような感覚が走る。
耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかる。
心臓が胸の中で暴れまわる音が、周りのざわめきさえかき消すほど大きく聞こえた。
あ~もう! 恥ずかしいよぉ!
『リョウに抱きつけばいいの?』
竜姿のままのクリスは口から炎を吐くかのように、その言葉を勢いよく吐き出した。
その迫力にリョウは顔面蒼白になり、周囲からは笑いが漏れる。
クリス自身は自分の発言に全く悪気はない様子で、首を傾げてリョウの様子を興味深そうに眺めていた。
「ノイズめ。もう少し喋ってから死んでほしかったが、やむなしか。……リョウ殿、此度の戦果は貴殿のおかげだ。誠に感謝する」
ノイズの消えた死体の場所を凝視していたラインハルト王が、私たちへと向かってきて一礼してくる。
「いえ、俺だけではありません。陛下やみんなのおかげです」
リョウが応答するや、待っていたとばかりに、レオノールが父である王の背中に飛びついた。
「父上! どうして森に? 知っておられるはずですよ。人がとこしえの森に入ったら二度と出られないと。私はベレニスさんやフィーリアちゃんと一緒だったから大丈夫ですけど、父上は、もし私たちに会えなかったらどうするおつもりだったのですか? 母上が泣きますよ」
「その前に言うべき言葉があるだろう、レオノールよ」
「? ……ああ! 紹介しますね、父上! ローゼ姉様に、師匠のリョウ様に、ヴィレッタさんに、ベレニスさんに、フィーリアちゃんに、クリスさんです! 私の仲間たちです!」
いや、レオノール。多分、ラインハルト王は家出をして勝手にとこしえの森に入って来たのを「ごめんなさい」と言え、と言っているんだと思うぞ。
「……全く反省はしておらんようだな。リオーネに戻ったら学生寮に入れるからそのつもりでいるんだぞ」
「はへ? 意味がわからないのですが? 私はこれから世界を救うべく、姉様たちと旅をするつもりであります!」
「一国の王女が何を申しておる! 少しは自重せよ!」
レオノールの言葉に、ラインハルト王は口元を引き結び、娘の行動を戒める。
しかし、その奥底には、娘を心配している深い愛情が窺えた。
レオノールもまた、父への尊敬の念を持ちながら、自身の信念を主張していくのであった。
「そんな~。姉様~、この父上を説得してくだされ~」
ちょっ⁉ 私を頼ってどうする⁉
魔女で冒険者の私に、一国の王を説得なんかできるかあああああ。
「あっ、えっと……お初にお目にかかります。魔女のローゼ・スノッサです」
「固くならんでよい。俺は貴女の父君であるカエサル王と母君であるローラ様には世話になった身だ。うむ……ローラ様にそっくりよ」
「あはは、やっぱり知っていたんですね。えっと、できれば内密にお願いします」
「内密か……よかろう。ただ我が妻であり、そなたの母の妹であるマーガレットに会ってもらえぬだろうか?」
「それは喜んでお引き受けします」
「ハッハッハ、俺も命を救われた身よ。そなたたちを王都で盛大に饗さねばな」
おお、王宮でパーティーか!
ベレニスがガッツポーズしているし、クリスもフィーリアから説明されてよだれを垂らしている。
いや……大丈夫か? 頼むから騒ぎを起こさないでくれよ。
「人の王よ。援軍感謝する。よければ、そなたの部下たちをここまでお連れしようか?」
クーリンディアさんがエルフを代表して提案してくるが、ん? 部下たち?
「ふむ。修行させておくのもよいかと考えていたが、不測の事態があるやも知れぬ。お願いしましょう」
おいおい、この王様は部下をとこしえの森に放置してきたのか。
馬で全力疾走して来たそうだが、この人は自分の性能を考慮すべきだろうに。
部下の人たちが可哀想だぞ。
「ああ、それと我らの宴にも参加してくれ。リョウは良き戦士だが酒が飲めぬはつまらぬ。あんたはイケる口かい?」
ザイルーガが、口元に手で輪っかを作ってクイッとさせて訊く。
「ああ、イケる口だ」
「ふむ、場所は我らがエルフの里が近い。今宵は無礼講といこうではないか」
クーリンディアさんの言葉に歓声が上がった。
「ところでラインハルト陛下。本当にどう帰るおつもりだったのでしょう? 陛下程の御方が無策で入ってくるとは思えません」
「それと、ノイズの襲来を予測していたんすかね? それとも別の目的で森に入ったんすか?」
ヴィレッタとフィーリアの質問に王は静かに首を振る。
「フィーリア殿、久しいな。相変わらず鋭い観察眼だな。ヴィレッタ嬢も父のフリッツ殿に似て聡明よ。……本来の目的は赤竜であったが、まさかリョウ殿たちがすでに解決していたとはな。しかも仲間にしているとは恐れ入ったぞ」
『なんか用だったの?』
クリスが長い首を覗かせてくる。
「いや、よいよい。過ぎた事よ。さて立ちながらの長話もなんだ。エルフの里で宴でもしながら話すとしよう」
ラインハルト王の言葉で、私たちはエルフの里へと帰ったのだった。
***
「ノイズ様、起きて」
「ノイズ様、死なれても困る」
「「また赤子になるのは嫌なはず」」
エルフにリザードマン、人間たちが立ち去ったあと、邪教の双子の魔女リリとロロはノイズが消滅した地面に話しかけた。
すると、ノイズの身体が再生される。
いや、元々消滅などしていない。
リリとロロの魔法によって、身体を粒子にされていただけだ。
地面から砂時計を逆さまにしたかのように、無数の光の粒子がゆっくりと集まり、ノイズの姿を再び形作った。
「……たしかに、また赤子は勘弁だ」
復活したノイズは低く嗤った。
「嬉しそう」
「楽しそう」
「「負けたくせに」」
双子の魔女の声に、ノイズの低い嗤い声は続く。
「意趣返しぐらいさせろよ。連中だって蘇りなんて反則をしたんだからよお。……ローゼとかいったか、クックック……ババアどもが欲しがる理由がなんとなくわかったぜ。さあて、帰るとしますかね。リョウよお……また殺し合おうぜ? 今度は一対一でな」
とこしえの森からノイズたちは消えた。
森の木々は、ただ、風に揺れていた。
ヴィレッタが咳払いをして、私はハッと我に返り、リョウから離れて赤面してしまう。
周りを見渡すと、みんなが生温かい眼差しで私たちを見ているじゃないか!
全身に熱がこもったような感覚が走る。
耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかる。
心臓が胸の中で暴れまわる音が、周りのざわめきさえかき消すほど大きく聞こえた。
あ~もう! 恥ずかしいよぉ!
『リョウに抱きつけばいいの?』
竜姿のままのクリスは口から炎を吐くかのように、その言葉を勢いよく吐き出した。
その迫力にリョウは顔面蒼白になり、周囲からは笑いが漏れる。
クリス自身は自分の発言に全く悪気はない様子で、首を傾げてリョウの様子を興味深そうに眺めていた。
「ノイズめ。もう少し喋ってから死んでほしかったが、やむなしか。……リョウ殿、此度の戦果は貴殿のおかげだ。誠に感謝する」
ノイズの消えた死体の場所を凝視していたラインハルト王が、私たちへと向かってきて一礼してくる。
「いえ、俺だけではありません。陛下やみんなのおかげです」
リョウが応答するや、待っていたとばかりに、レオノールが父である王の背中に飛びついた。
「父上! どうして森に? 知っておられるはずですよ。人がとこしえの森に入ったら二度と出られないと。私はベレニスさんやフィーリアちゃんと一緒だったから大丈夫ですけど、父上は、もし私たちに会えなかったらどうするおつもりだったのですか? 母上が泣きますよ」
「その前に言うべき言葉があるだろう、レオノールよ」
「? ……ああ! 紹介しますね、父上! ローゼ姉様に、師匠のリョウ様に、ヴィレッタさんに、ベレニスさんに、フィーリアちゃんに、クリスさんです! 私の仲間たちです!」
いや、レオノール。多分、ラインハルト王は家出をして勝手にとこしえの森に入って来たのを「ごめんなさい」と言え、と言っているんだと思うぞ。
「……全く反省はしておらんようだな。リオーネに戻ったら学生寮に入れるからそのつもりでいるんだぞ」
「はへ? 意味がわからないのですが? 私はこれから世界を救うべく、姉様たちと旅をするつもりであります!」
「一国の王女が何を申しておる! 少しは自重せよ!」
レオノールの言葉に、ラインハルト王は口元を引き結び、娘の行動を戒める。
しかし、その奥底には、娘を心配している深い愛情が窺えた。
レオノールもまた、父への尊敬の念を持ちながら、自身の信念を主張していくのであった。
「そんな~。姉様~、この父上を説得してくだされ~」
ちょっ⁉ 私を頼ってどうする⁉
魔女で冒険者の私に、一国の王を説得なんかできるかあああああ。
「あっ、えっと……お初にお目にかかります。魔女のローゼ・スノッサです」
「固くならんでよい。俺は貴女の父君であるカエサル王と母君であるローラ様には世話になった身だ。うむ……ローラ様にそっくりよ」
「あはは、やっぱり知っていたんですね。えっと、できれば内密にお願いします」
「内密か……よかろう。ただ我が妻であり、そなたの母の妹であるマーガレットに会ってもらえぬだろうか?」
「それは喜んでお引き受けします」
「ハッハッハ、俺も命を救われた身よ。そなたたちを王都で盛大に饗さねばな」
おお、王宮でパーティーか!
ベレニスがガッツポーズしているし、クリスもフィーリアから説明されてよだれを垂らしている。
いや……大丈夫か? 頼むから騒ぎを起こさないでくれよ。
「人の王よ。援軍感謝する。よければ、そなたの部下たちをここまでお連れしようか?」
クーリンディアさんがエルフを代表して提案してくるが、ん? 部下たち?
「ふむ。修行させておくのもよいかと考えていたが、不測の事態があるやも知れぬ。お願いしましょう」
おいおい、この王様は部下をとこしえの森に放置してきたのか。
馬で全力疾走して来たそうだが、この人は自分の性能を考慮すべきだろうに。
部下の人たちが可哀想だぞ。
「ああ、それと我らの宴にも参加してくれ。リョウは良き戦士だが酒が飲めぬはつまらぬ。あんたはイケる口かい?」
ザイルーガが、口元に手で輪っかを作ってクイッとさせて訊く。
「ああ、イケる口だ」
「ふむ、場所は我らがエルフの里が近い。今宵は無礼講といこうではないか」
クーリンディアさんの言葉に歓声が上がった。
「ところでラインハルト陛下。本当にどう帰るおつもりだったのでしょう? 陛下程の御方が無策で入ってくるとは思えません」
「それと、ノイズの襲来を予測していたんすかね? それとも別の目的で森に入ったんすか?」
ヴィレッタとフィーリアの質問に王は静かに首を振る。
「フィーリア殿、久しいな。相変わらず鋭い観察眼だな。ヴィレッタ嬢も父のフリッツ殿に似て聡明よ。……本来の目的は赤竜であったが、まさかリョウ殿たちがすでに解決していたとはな。しかも仲間にしているとは恐れ入ったぞ」
『なんか用だったの?』
クリスが長い首を覗かせてくる。
「いや、よいよい。過ぎた事よ。さて立ちながらの長話もなんだ。エルフの里で宴でもしながら話すとしよう」
ラインハルト王の言葉で、私たちはエルフの里へと帰ったのだった。
***
「ノイズ様、起きて」
「ノイズ様、死なれても困る」
「「また赤子になるのは嫌なはず」」
エルフにリザードマン、人間たちが立ち去ったあと、邪教の双子の魔女リリとロロはノイズが消滅した地面に話しかけた。
すると、ノイズの身体が再生される。
いや、元々消滅などしていない。
リリとロロの魔法によって、身体を粒子にされていただけだ。
地面から砂時計を逆さまにしたかのように、無数の光の粒子がゆっくりと集まり、ノイズの姿を再び形作った。
「……たしかに、また赤子は勘弁だ」
復活したノイズは低く嗤った。
「嬉しそう」
「楽しそう」
「「負けたくせに」」
双子の魔女の声に、ノイズの低い嗤い声は続く。
「意趣返しぐらいさせろよ。連中だって蘇りなんて反則をしたんだからよお。……ローゼとかいったか、クックック……ババアどもが欲しがる理由がなんとなくわかったぜ。さあて、帰るとしますかね。リョウよお……また殺し合おうぜ? 今度は一対一でな」
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