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第4章 竜は泉で静かに踊る
第35話 酒宴の主演
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エルフの里に響き渡る歓声と笑い声。
長テーブルには様々な料理が並び、香り高い酒が酌み交わされていた。
クリスも人の姿に戻って料理に舌鼓を打つ中で、レオノールが父の機嫌を取ろうと必死に働きかけている姿が印象的だ。
しかし、ザイルーガと飲み対決して負かすラインハルト王、どんな酒豪だよ!
レオノールはザイルーガが勝てば、自分を自由にしろと約束をこぎつけていたが、まさかの敗北にムキーとして泥酔したザイルーガを叩いている。
クリスはベレニスと一緒に、運ばれてくる料理を次から次へと平らげている。
フィーリアは食レポみたいに何か言っては、エルフやリザードマンたちを感心させていた。
私はというと、ヴィレッタと一緒にララノアさんたちエルフやリザードマンの女性陣と談笑しながら食事を楽しんでいる。
リョウは一芸を要求されて剣舞を披露しているが、上手いのかはわからない。
ただエルフやリザードマンのおっさんたちには好評のようで、本人もやりきった顔をしているからよしとしよう。
合流してきたラインハルト王が連れてきた兵たちは、みんな最初は呆然としたが、仕える陛下の楽しめという命に従い宴会に加わっていた。
エルフたちの音楽に合わせて踊る者、おっさんたちと飲み比べする者、リザードマンの子供たちと鬼ごっこを始める者など様々だ。
そんな光景を微笑ましく見ていたら、突如夜空の星々や月の光が遮られる。
全員が驚愕し、ひっくり返る者や慌てふためく者、リョウのように武器を構える者がいる中で、驚かないのが2人だけ。
「ほう……随分早かったな」
「ん~? この匂いどこかで?」
ラインハルト王がニヤリと笑い、クリスが小首を傾げた。
夜空を覆う赤い鱗の輝きは、月光さえも凌駕するほどの存在感があった。
その巨体が徐々に縮小し、老人の姿に変貌したのである。
ただ尋常じゃない威圧感があるのは、正体が赤竜ってだけではなさそうだ。
「げっ! 糞ジジイじゃないですか! なんと! 人ではなかったのですか⁉」
素っ頓狂な声を上げるレオノールに、父である王は愉快そうに笑った。
「誰が糞ジジイじゃ、クソバカ脳筋姫よ! もうちょっと頭で考えて行動せぬか!」
「誰がクソバカですか! 人を導く宰相がなんと酷い言葉遣い!」
赤竜だった老人の言葉にレオノールは叫び返す。
「お前こそ一国の姫が糞とか申すでないわ!」
ああ、なるほど……この老人がラインハルト王の懐刀と呼ばれているファインダ王国宰相ダリム・クリムトか。
ファインダの王となったラインハルトが、山中に潜む賢人を一ヶ月かけて、死闘の果てに口説き落としたという、わけのわからない逸話の持ち主。
ダリム宰相の登場により、宴会の雰囲気は一変した。
最初は緊張が走ったものの、次第にその存在が宴に新たな活気をもたらすのであった。
「師父よ。わざわざ来てくれてすまぬな」
「ふん! まあよいわ、全員無事なようじゃの。して、ラインハルトよ。それに宴の参加者諸君よ。少し時間を頂戴するぞい」
老人とは思えぬ張りのある大声に誰もが息を呑む。
そして老人はクリスへと近づいた。
「ん~?」
「あ~。こほん。……クリスよ。儂がパパじゃ。迎えに来たぞい」
クリスはキョトン顔から一転、フッと笑みを浮かべるとダリムの顔へと近づき、鼻へと頭突きを食らわせたのだった。
「ぐおおおおおお。せめておでこにせい! 鼻は反則じゃあああああ」
おいおい。爆笑しているのがラインハルト王だけなんだけど、なんて空気にしてくれているんだよ!
「わっはっはっは。クリス殿。そなたの父は、ずっとそなたが産まれ存在していたのも知らなかったのだ。許してやってくれぬか?」
「ん~~。感覚で血が繋がっているのはわかるよ~。でもレオノールみたいに、旅を許可されないのは困るから倒しておくね~」
そう発想するのかい!
はあ、クリス。多分それは絶対ないから安心していいと思うぞ。
「産まれているのすら知らなかったとは、どういうことでしょうか? ダリム宰相といえば、レアード王国との国境にあるワヴュール山にて隠棲していたとお聞きします。クリスの母親ドラルゴ様と本当に夫婦なら、産まれた子供を知らないなんてありえません」
ヴィレッタが不思議そうにダリムへと問いかけた。
「ふむ、話せば長くなるが、500年程前に喧嘩別れをしてな……儂は街で人の姿で暮らしたかったんじゃが、妻は森でいいじゃないと申してのう」
「500年っすか⁉ クリスさんの年齢は20歳前ぐらいっす。計算が合わないっす!」
「ほう? ドワーフの小娘か。その質問は簡単じゃ。我ら赤竜は、命尽きる前に元々受胎していた赤子を産み落とし育てるという性質があってな。それ故に、受胎してから誕生までは歳を重ねんのだ」
なんじゃそりゃ⁉ もう赤竜の生態は理解不能だな。
その秘密を知って、フィーリアはスッキリした顔をしているが……納得するのかい。
「父上がとこしえの森に入った理由はこれですね。はあ~、ダリムがいたからですか。なんか釈然としませんが納得しました。しかし、赤竜は七英雄ドラルゴだけが生き残りと聞いていましたが?」
「それも簡単じゃ。儂は生きていた。それだけよ」
そこもう少し詳しく聞きたいが、納得しましたというレオノールの一言で、ラインハルト王も宰相ダリム・クリムトもこの話は終わりという雰囲気を出している。
いやいや、まだ肝心なことを言っていないぞ。
「それで陛下が急ぎクリスを探しに森に来たのは、もしや赤竜がノイズに敗北し、人の住まう街を攻撃する可能性があると危惧したからでしょうか?」
私の質問に宴の参加者からどよめきが起こる。
ダリム宰相も、ラインハルト王も静かに頷いた。
「俺は師父と実際に戦ったことがあるゆえ、赤竜が敗北した相手に従う逸話を知っていた。ノイズが『真実の眼』の魔女どもに従っており、消滅のペンダントも所持しているのもな」
「『真実の眼』の魔女……そこのところ詳しく教えてください」
せっつく私に、ダリム宰相が豪快に笑い出した。
「カッカッカ、ローゼマリーよ、一晩二晩で語り尽くせるものではないわ。今宵は宴ぞ。どれ、儂にも酒を注ぐがよい。我が妻ドラルゴの死にも弔いをしてくれい」
ちょっ⁉ この糞ジジイ、何故に私の本名を堂々と大声で言いやがるんだ⁉
ダリムの糞ジジイの言葉と同時に、ラインハルト王は立ち上がった。
「宴の場を提供してくれたエルフ族よ! 酒を提供してくれたリザードマン族よ! 赤竜もドワーフも人も関係ない! 今日は飲み明かして騒ごうぞ!」
王が高らかに宣言すると歓声が上がる。
って! そんなことより私の本名がエルフやリザードマンはともかく、王の兵たちにバレちゃったじゃないか!
リョウは……あ~、もうなんか眠そうな顔しているし。
こうして宴は夜遅くまで続いた。
なにはともあれ、エルフ、リザードマン、ドワーフ、人間、そして赤竜が、互いの違いを超えて語り合う姿に、私は新しい時代の幕開けを感じたのであった。
長テーブルには様々な料理が並び、香り高い酒が酌み交わされていた。
クリスも人の姿に戻って料理に舌鼓を打つ中で、レオノールが父の機嫌を取ろうと必死に働きかけている姿が印象的だ。
しかし、ザイルーガと飲み対決して負かすラインハルト王、どんな酒豪だよ!
レオノールはザイルーガが勝てば、自分を自由にしろと約束をこぎつけていたが、まさかの敗北にムキーとして泥酔したザイルーガを叩いている。
クリスはベレニスと一緒に、運ばれてくる料理を次から次へと平らげている。
フィーリアは食レポみたいに何か言っては、エルフやリザードマンたちを感心させていた。
私はというと、ヴィレッタと一緒にララノアさんたちエルフやリザードマンの女性陣と談笑しながら食事を楽しんでいる。
リョウは一芸を要求されて剣舞を披露しているが、上手いのかはわからない。
ただエルフやリザードマンのおっさんたちには好評のようで、本人もやりきった顔をしているからよしとしよう。
合流してきたラインハルト王が連れてきた兵たちは、みんな最初は呆然としたが、仕える陛下の楽しめという命に従い宴会に加わっていた。
エルフたちの音楽に合わせて踊る者、おっさんたちと飲み比べする者、リザードマンの子供たちと鬼ごっこを始める者など様々だ。
そんな光景を微笑ましく見ていたら、突如夜空の星々や月の光が遮られる。
全員が驚愕し、ひっくり返る者や慌てふためく者、リョウのように武器を構える者がいる中で、驚かないのが2人だけ。
「ほう……随分早かったな」
「ん~? この匂いどこかで?」
ラインハルト王がニヤリと笑い、クリスが小首を傾げた。
夜空を覆う赤い鱗の輝きは、月光さえも凌駕するほどの存在感があった。
その巨体が徐々に縮小し、老人の姿に変貌したのである。
ただ尋常じゃない威圧感があるのは、正体が赤竜ってだけではなさそうだ。
「げっ! 糞ジジイじゃないですか! なんと! 人ではなかったのですか⁉」
素っ頓狂な声を上げるレオノールに、父である王は愉快そうに笑った。
「誰が糞ジジイじゃ、クソバカ脳筋姫よ! もうちょっと頭で考えて行動せぬか!」
「誰がクソバカですか! 人を導く宰相がなんと酷い言葉遣い!」
赤竜だった老人の言葉にレオノールは叫び返す。
「お前こそ一国の姫が糞とか申すでないわ!」
ああ、なるほど……この老人がラインハルト王の懐刀と呼ばれているファインダ王国宰相ダリム・クリムトか。
ファインダの王となったラインハルトが、山中に潜む賢人を一ヶ月かけて、死闘の果てに口説き落としたという、わけのわからない逸話の持ち主。
ダリム宰相の登場により、宴会の雰囲気は一変した。
最初は緊張が走ったものの、次第にその存在が宴に新たな活気をもたらすのであった。
「師父よ。わざわざ来てくれてすまぬな」
「ふん! まあよいわ、全員無事なようじゃの。して、ラインハルトよ。それに宴の参加者諸君よ。少し時間を頂戴するぞい」
老人とは思えぬ張りのある大声に誰もが息を呑む。
そして老人はクリスへと近づいた。
「ん~?」
「あ~。こほん。……クリスよ。儂がパパじゃ。迎えに来たぞい」
クリスはキョトン顔から一転、フッと笑みを浮かべるとダリムの顔へと近づき、鼻へと頭突きを食らわせたのだった。
「ぐおおおおおお。せめておでこにせい! 鼻は反則じゃあああああ」
おいおい。爆笑しているのがラインハルト王だけなんだけど、なんて空気にしてくれているんだよ!
「わっはっはっは。クリス殿。そなたの父は、ずっとそなたが産まれ存在していたのも知らなかったのだ。許してやってくれぬか?」
「ん~~。感覚で血が繋がっているのはわかるよ~。でもレオノールみたいに、旅を許可されないのは困るから倒しておくね~」
そう発想するのかい!
はあ、クリス。多分それは絶対ないから安心していいと思うぞ。
「産まれているのすら知らなかったとは、どういうことでしょうか? ダリム宰相といえば、レアード王国との国境にあるワヴュール山にて隠棲していたとお聞きします。クリスの母親ドラルゴ様と本当に夫婦なら、産まれた子供を知らないなんてありえません」
ヴィレッタが不思議そうにダリムへと問いかけた。
「ふむ、話せば長くなるが、500年程前に喧嘩別れをしてな……儂は街で人の姿で暮らしたかったんじゃが、妻は森でいいじゃないと申してのう」
「500年っすか⁉ クリスさんの年齢は20歳前ぐらいっす。計算が合わないっす!」
「ほう? ドワーフの小娘か。その質問は簡単じゃ。我ら赤竜は、命尽きる前に元々受胎していた赤子を産み落とし育てるという性質があってな。それ故に、受胎してから誕生までは歳を重ねんのだ」
なんじゃそりゃ⁉ もう赤竜の生態は理解不能だな。
その秘密を知って、フィーリアはスッキリした顔をしているが……納得するのかい。
「父上がとこしえの森に入った理由はこれですね。はあ~、ダリムがいたからですか。なんか釈然としませんが納得しました。しかし、赤竜は七英雄ドラルゴだけが生き残りと聞いていましたが?」
「それも簡単じゃ。儂は生きていた。それだけよ」
そこもう少し詳しく聞きたいが、納得しましたというレオノールの一言で、ラインハルト王も宰相ダリム・クリムトもこの話は終わりという雰囲気を出している。
いやいや、まだ肝心なことを言っていないぞ。
「それで陛下が急ぎクリスを探しに森に来たのは、もしや赤竜がノイズに敗北し、人の住まう街を攻撃する可能性があると危惧したからでしょうか?」
私の質問に宴の参加者からどよめきが起こる。
ダリム宰相も、ラインハルト王も静かに頷いた。
「俺は師父と実際に戦ったことがあるゆえ、赤竜が敗北した相手に従う逸話を知っていた。ノイズが『真実の眼』の魔女どもに従っており、消滅のペンダントも所持しているのもな」
「『真実の眼』の魔女……そこのところ詳しく教えてください」
せっつく私に、ダリム宰相が豪快に笑い出した。
「カッカッカ、ローゼマリーよ、一晩二晩で語り尽くせるものではないわ。今宵は宴ぞ。どれ、儂にも酒を注ぐがよい。我が妻ドラルゴの死にも弔いをしてくれい」
ちょっ⁉ この糞ジジイ、何故に私の本名を堂々と大声で言いやがるんだ⁉
ダリムの糞ジジイの言葉と同時に、ラインハルト王は立ち上がった。
「宴の場を提供してくれたエルフ族よ! 酒を提供してくれたリザードマン族よ! 赤竜もドワーフも人も関係ない! 今日は飲み明かして騒ごうぞ!」
王が高らかに宣言すると歓声が上がる。
って! そんなことより私の本名がエルフやリザードマンはともかく、王の兵たちにバレちゃったじゃないか!
リョウは……あ~、もうなんか眠そうな顔しているし。
こうして宴は夜遅くまで続いた。
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