【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第5章 籠の中の鳥

第4話 女子寮の2大派閥

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 寮を脱走したいレオノールだが、それは無理であった。

 寮の出入口は2つあるが、警備の人が常駐して見張っているからだ。
 だからレオノールが脱出するには、窓から飛び降りるしかない。

 女子寮の最上階である5階の部屋。鉄格子を破壊して、窓から飛び降りても怪我をしない高さだが、音を出さないのは至難の業だ。
 そう思ってレオノールはため息を吐いた。

(はあ~、何かいい方法、ないかなあ)

 夕食の時間になったので、レオノールは食堂へと向かった。

 王立学校の食堂だから、豪華な料理が並んでいる。
 ちなみに、メニューは決まっていて全員が同じ料理だ。

 今日の夕飯は白パンに豆のスープ、ローストビーフと野菜炒め。

 この寮の管理人であるモリーナが前に立ち、食前のお祈りを始めた。

 食堂は厳粛な雰囲気に包まれていた。
 寮生たちは派閥ごとに分かれて着席している。

(やっぱり食堂でも、ソフィア派とベーベル派で分かれて座っているようですね! さて、私は中央が空いているからと座ってしまいましたが……誰も同じテーブルに来ません! ……寂しい‼ でも、どっちかに寄るわけにもいきませんので我慢我慢。……そういえば先程の子はどこかな~? あれ? ソフィア派かと思っていましたがいませんね。ということはベーベル派内の揉め事? ……いない⁉ どっちにもいない? これはどういうことでしょうか?)

 そんなレオノールの混乱を余所に、女神フェロニアへの祈りは終わり、食事がスタートする。

(うう……学校生活で一番テンションが上がる時間なのに、同じテーブルに誰もいません……)

 しょんぼりしながら、レオノールは食べ始めるのであった。

 そんなレオノールの姿を見てか、金髪縦ロールヘアのソフィア・ハイドリッヒと、栗色ウェーブヘアのベーベル・ライモントが、同時に横に移動して話しかけてきた。

「レオノール姫殿下。お味はどうですか?」

「レオノール姫殿下。よろしければ、こちらのお肉をお切りいたしましょうか?」

 2人はバチバチと視線から火花を散らしながら、レオノールの様子を窺っている。

「あ~、自分のことは自分でやるので大丈夫ですよ! それより楽しく食べましょう。ほら、パンに豆を乗せればサンドイッチにもなりますよ! 私は白パンが好きなのでこうしますけど、ローストビーフや野菜炒めを乗せても美味しいですよ」

 この2人が一族の運命を背負い、王女であるレオノールに取り入ろうとしているのは誰の目にも明らかだった。

 だが、レオノールにそんな打算が通じるわけがない。

 だって同じテーブルに座ってくれたんですもん!
 仲良くなるチャンスです! とウキウキしているのだった。

「寮ではこのあと、就寝まで自由時間があるのですよね? 2人は、いつもどんなふうに過ごしているのですか?」

「王国の未来のために勉学に励んでおります」

 と、ソフィアが言い胸に手を当てる。

「わたくしは、読書に励んでおります」

 と、ベーベルが言って、2人は視線からまた火花を散らす。

(い、居心地が悪い。困ったぞ! はっ! こういう時、父上は趣味から共通の話題を広げ仲良くなっています。ならば!)

 レオノールは気合を入れて口を開く。

「お2人は、大陸七剣神では誰が好きですか? 私はやっぱり父上なのですが、イリスさんも捨てがたいなあ。グレン団長も目力が凄かったです! あっ! それからノイズ・グレゴリオが死んで一枠空いたじゃないですか? 巷の有識者は誰を追加すると思います? 私は師匠……リョウ・アルバースをご存知ですよね? この前、父上を救った感謝でパーティーがありましたよね? その一行、おっと私もパーティーメンバーなのですが、唯一の男性のアラン傭兵団の人物です。目つきが悪いのが特徴ですね。私は、そのリョウ師匠を推したいのですが、お2人はどう思います?」

 ソフィアもベーベルも困惑した。
 なぜなら、剣の世界の話などまるでわからないからだ。

 ただこの国の王も七剣神の1人に数えられ、ここファインダ王立学校女子寮出身のイリス・アーシャも、七剣神の1人と知っているくらいだ。

 あとは王女が師匠と呼んでいるリョウとかいう人物。
 2人も、王が主催したパーティーに出席していたので知ってはいる。

 ダンスをして盛大にすっ転んでいたのをクスクスと笑ったものだ。

「えっと、わたくしもリョウ様が相応しいと思いますわ。何せ陛下をお救いなさったのですから」

「そ、そうですわね。レオノール姫殿下がそう仰るのなら、わたくしもそう思いますわ」

「う~ん。固いですよ、お2人とも! ここはもっと気楽に、自分の激推しの剣士について熱く語ってくだされ! 例えばベルガー王国の麒麟児、オルタナ・アーノルドさん。ダーランド王国の第九王子、ヒーゴス・ダーランド。さらにはパルケニア王国出身の冒険者、ハトリ・コーデリアなどもいいですよね! ね!」

 2人にとっては、オルタナやヒーゴスすらわからない。
 それでも、レオノールは尚も熱く語り続ける。

「ていうか強さと実績で決まってしまうと、うちの宰相の、ダリムの糞ジジイがなっちゃいそうですよねえ。剣士って歳でもないし、アレは候補から除外してほしいです。てゆーかテレサ叔母様や、同じアラン傭兵団のアレクシアさんも捨てがたい。あ~悩みます。師匠を激推しと言いながら、テレサ叔母様がなれば、我が血筋で2人目の七剣神、爆誕! いずれは私も七剣神に! なんて考えちゃいます」

 ソフィアとベーベルは、レオノールの活発な話に困惑しながらも、姫殿下に近づくチャンスと捉えていた。
 だが剣の世界の話はまるでわからない。
 自分たちの家門の威信を背負いつつ、どのように接するべきか、ぎこちない様子が伺えた。

 レオノールは、はっ! とした。
 つい熱く語りすぎて、2人のことを置いてきぼりにしてしまっているのに気づいたからだ。

 ぽか~んとする2人は空になった食器を手にして立ち上がると、それではごきげんよう姫殿下、と一礼し去って行った。

(あ~、やっちゃった!)

 これはもう大反省である。
 いくら何でも、趣味の話が過ぎるよね!
 こんなんで仲良くなれるわけないよねえ。

 落ち込むレオノールだったが、2人は取り巻きたちに、今話題の剣士の情報と、七剣神について詳しく調べるようにと指示を出していたのであった。

 派閥のボスが去ると食堂は閑散として、レオノールは寂しさを感じつつ、食事を終えて自室へと戻った。
 
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