【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第5章 籠の中の鳥

第12話 魔除けのぬいぐるみ

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 王立学校での日々は、想像以上に平穏だった。
 ヴィレッタの真面目に聞き入る姿、そして私たちの周りに集まる好奇心旺盛な生徒たち。

 下級生であるレオノールはというと、授業中は大人しいとの評判が耳に届いてくる。

 1週間が経過する中で、寮生たちの様子にも変化がでてきた。
 最初は緊張気味だった彼女たちも、徐々に私たちに打ち解け始めている。
 特にルリアは初めのうちこそ控えめだったが、最近ではレオノールと一緒に私たちの部屋へ頻繁に出入りするようになり、私たちとの距離も縮まってきている。

 毎晩、部屋の中はひっそりとした静寂に包まれ、何かが起こるのではないかと私たちは緊張していた。
 結局何も起こらないまま緊張感も徐々に和らぎ、期待と不安が入り混じった複雑な日々が続いている。

「ソフィアさんもベーベルさんも、その周りの寮生たちも特に目立つ魔力の持ち主はいないかな? 他の学生たちの中にもいないと思う」

「ローゼとわたくしが入寮して以降、一度も女子寮で不可思議な現象が起きないというのも不自然な気がします。……まるで警戒されているかのようです」

「このお茶菓子、美味しいです! さすがフィーリアちゃん。差し入れをしてくれてありがたいです。今度会ったら御礼をしなくては!」

 部屋には夕暮れの柔らかな光が差し込み、テーブルの上に置かれた紅茶の湯気が立ち上っている。

 レオノールは紅茶を飲みながら満足げに目を細め、ヴィレッタは優雅にカップを持ち上げる様子が印象的だ。
 ルリアさんは終始控えめな態度を崩さず、時折恥ずかしそうに目を伏せている。

「警戒上等ね。こうなると暴走じゃなく、わざとって線の方が高くなったかな? つまり魔女の実験ね。私たちに気づいて様子を窺っているのかも」

「今までは怪我人も出ず、イタズラで済まされる範囲内です。邪教の魔女ではなく、個人の実験でしたら説得で解決したいのですが……」

「おお! 姉様! ヴィレッタさん! ルリアさん! これは今、巷で話題のホレイショカフェで出されている茶葉です! この香しい匂い、口に含むと広がる優しい甘み! 美味しいです!」

 ホレイショカフェは最近オープンした、王都リオーネで話題のお店だ。
 私もオープン初日に行ったが、パフェもおいしかったな~。また行きたいな~。

「今までの被害者は、ソフィア派もベーベル派も同じ人数ね。どっちかがやらせている可能性も低いと思う」

「その2人も困惑している様子ですね。本人たちは被害に遭っていないので、モリーナ寮長の意見に従い、騒ぎ立てはしていないのでしょう」

 う~んと唸る、私とヴィレッタ。

「私が思うにですね、この茶葉はベルガー王国産ですね。ベルガー王国の王族や貴族御用達の高級品です」

 紅茶を一口啜ったレオノールが満足げに呟いた。

「って! 何に満足しているんだ、レオノール! あんたも真面目に考えるの! ごめんね~ルリアさん、これとクラスは同じだけど、このアホの世話は大変でしょ?」

「な⁉ アホとはなんですか姉様! 私はきちんと真面目に、授業中は目を開いていますよ! 質問を当てられそうになったら、全力で目を逸らすために!」

 両手で目を見開くレオノールだが、その発言はヤバいって。

「教師の方も大変そうですね。……レオノール、次の期末テストで赤点を取らぬよう、わたくしがみっちり勉強を教えますので、頑張ってくださいませ」

 ほら、ヴィレッタの目が光っちゃったぞ。
 レオノールは震えた。

 ま、冗談はここまでにしますか。

「あ、あのう……少し気になることが……」

 おっ! 控え目なルリアさんが、勇気を出して発言してくれた!

「気になること? さすがルリアさん、遠慮なく言ってね」

 私の声に、顔を真っ赤にして、もじもじするルリアさん。
 可愛いなあ、私の周りに今までいなかったタイプだよ。

「その……ローゼ様が手にしていて、部屋中にある魔除けのぬいぐるみってなんでしょうか?」

 ブフッと、いつも冷静沈着で礼儀正しいヴィレッタが吹いた。

 壁にはリョウのぬいぐるみが無数に並んでいるだけだよ?

「え? 魔除け?」

「あはは、ルリアさん。これは師匠……私たちの仲間である、リョウ様をモチーフにしたぬいぐるみなのです。目つきがそっくりで少し怖いですが、これでも本人よりはマシですね」

 レオノールが説明するが、なんか酷くない?

「あっ、すいませんでした! ……よ、よく見たら……か、可愛いですね」

「ルリアさん、無理しなくてもいいんですよ? わたくしもローゼに、そんなに同じのを持ってどうするんですか? と言いましたから」

 うん、昨日の晩も説教されたよ……

「で、でもヴィレッタ、せっかくフィーリアがくれたんだし。貰ったからには大事にしないと」

「カフェのおまけの在庫処分でしょう。フィーリアが、リョウ様の人気がなくて嘆いていましたので」

 ヴィレッタ? 冷静に言わないでくれ。

「そういえば、師匠以外のはどうなったのでしょう? 私のも在庫処分されているかと思うと、ちょっと悲しいですね」

「リョウ様のは、当たっても要らないと返されたケースが多々あったそうです。わたくしたちのぬいぐるみが返品されたケースはないそうです」

 王都中に私たちのぬいぐるみがあるって……えへへ、なんか恥ずかしいな。
 でも、私のぬいぐるみの横にリョウのぬいぐるみがあって完成だと思うんだけどなあ。

「私のクラスメイトたちも、何人か行って貰ったようです。……皆様のぬいぐるみなら、私も欲しかったです」

 ルリアさん、嬉しいことを言ってくれるねえ。
 ぐぬぬ、ここはしょうがない、リョウのしかないが、いっぱいあるし、涙をこらえて1つプレゼントしますか。

「えっと……すみません。要らないです」

 …………?

「と、ところでフィーリアちゃんも、第2弾はもう少し師匠のぬいぐるみを親しみやすくしたいって言っていましたね! 出来上がりが楽しみです!」

 暫しの沈黙の後、レオノールが元気いっぱいに叫ぶ。

 ま、まあ女の子がメイン層のカフェでのおまけだし、かわいい系が人気になるのは仕方ないよね!
 リョウは戦いの舞台が悪かったってことで。

 ん? 話が脱線しているけど、なんだっけ?

「残り1週間で冬季休暇が始まってしまいます。それまでに、怪奇現象を起こしていた魔女の正体を暴きたいですね」

 ヴィレッタがこの場を締めくくり、本日はお開きとなった。

 こんな感じで、私たちは寮生活を過ごしているのだが、まさかリョウと1週間も会わなくなるなんてね。

 フィーリアからリョウのぬいぐるみをプレゼントされていなかったら、危なかったぞ私。
 でも本物を見たいな~、なんてため息が漏れる。

「師匠はモテませんので、姉様が不安になる必要はありませんが、お気持ちもわかります。どうにか冬季試験前にケリを付けて、女子寮から脱出しましょう!」

「いや、レオノールは脱出不可だからね! って、リョウについての一言は余計!」

 レオノール? リョウを師匠って呼ぶ割には扱いが軽くなっているよね?

「リョウ様はフィーリアにベレニス、それにクリスと一緒です。ですので、リョウ様とお近づきになりたい少女が寄ることはないでしょう。……そもそもいませんが」

 ヴィレッタも、リョウに対してはいつも辛辣である。

「それでは失礼します。紅茶とお茶菓子、ごちそうさまでした」

 ルリアさんが頭を下げて自室へ戻っていった。

 残された私たちは、再びお茶菓子をつまんだのだった。

 冬季休暇まで残り1週間か。
 休暇を前に解決できなければ、この謎は長引くかもしれない。
 休暇になればリョウや仲間たちに会える期待と、事件解決への焦りが入り混じった複雑な感情が私の中に渦巻いていった。
 
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