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第5章 籠の中の鳥
第11話 みんなレオノール姫に振り回される
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夕食前に全寮生に紹介され、拍手で受け入れられるが、特に質問攻めにされるイベントは起きない。
それもそのはず、食前のモリーナ寮長の女神フェロニアへの祈りの言葉により、厳粛な空気が流れるのだ。
さらに派閥に分かれて座るため、どっちの派閥でもない私たちに近づく寮生はいない。
ただ、お喋り禁止というわけではなく、談笑の声は耳に届く。
レオノールは、両派閥のボスであるソフィアとベーベルをポカンとさせて、話しまくっている。
2人の令嬢も可哀想に。
その後、お風呂も済まして自室に戻ったが、寮生の中に魔女のいる気配は微塵も感じなかった。
「女子寮に住む学生の数は、わたくしたちを除き53名、ルリアさんのような地方貴族の御令嬢がほとんどです。ですが中央貴族の御令嬢もいます。後々の人脈作りのためでしょうね」
ヴィレッタの説明によると、女子寮は男子禁制で、学生の父親や兄弟、婚約者であっても男性は絶対に入れない。
その点も踏まえて、寮に入れる親もいるようだ。
「人が多くいれば派閥も生まれます。この女子寮も例外ではなく、2人の侯爵家御令嬢が派閥を作っております」
「ソフィア・ハイドリッヒとベーベル・ライモントね。食堂でレオノールに話しかけていたけど、魔女の自覚はなさそうかな? どこにでもいる、単なる御令嬢ってイメージだったなあ」
ソフィアは、金髪の縦ロールがゴージャスな美少女。
ベーベルは、栗色ウェーブヘアの端正な顔の美少女。
「家の期待もございますし、時期王妃となるレオノールが女子寮に入ってきたのです。彼女たちが張り切るのは当然でしょう」
ヴィレッタの説明に異論はない。
私も何も起きなければ、王女としてベルンの王立学校に通って、ヴィレッタとシャルロッテに頼りまくりながら、権力争いに気を使う学生生活を送っていただろうし。
もしかしたら、うざったくなって留学したいと願ったかも。
ヴィレッタもシャルロッテも、渋々付いてくるのが容易に想像できるよ。
ただ、レオノールには、そういった貴族の感覚が通用しないんだよね。
ちょっとだけ、ソフィアとベーベルに同情しちゃうよ。
「はあ~。レオノールさあ、もうちょっとマニアックな話じゃなくって、普通の女子の話をしてあげなよ」
私は、私のベッドで寛いでいるレオノールに目を向けた。
「姉様、剣士の話でマニアックではありませんよ?」
心外そうにきょとんとするなよ。
「わたくしも、彼女たち同様理解できませんでした。レオノール、大陸七剣神と候補たちを熱く語るのは構いませんが、会話する相手が全てを知っている前提で話す癖は、改めなければなりません」
ヴィレッタの苦言に正座して聞くレオノール。
おいこら、私に対してもそうしろよ。
「2人が、剣士について勉強してくれたのが嬉しくて、ついつい喋りが止まらなくなりました。いや~、ソフィアもベーベルも、私が七剣神に相応しいって言ってくれて嬉しかったです! ですが、テレサ叔母様も師匠もなっていないのに私がなるのはおかしいですからね、なので色々な剣士の話をしちゃいました」
私もよくわからなかったが、名の通っている剣士って多いんだなあって印象を持ったよ。
オルタナさんも七剣神じゃないし、世の中には化け物が多くいるんだなあ。
「ルリアさんから聞いた話ですと、異常は深夜に起こるのが常だとか。仮眠を取り、異常に備えるべきでしょう」
ヴィレッタの言葉に『は~い』と返事して、私はレオノールと同じベッドに入って布団をかけた。
⁉
「って! レオノールは王女様専用の立派な部屋が与えられているでしょ!」
「姉様! ですが私の部屋は相部屋じゃないのです! 寂しいのです! ですので姉様! 一緒に寝てください!」
はわわっ! とレオノールが涙目で訴えてくる。
ううむ、可愛いなこいつ。
ところでヴィレッタ? 何事もなかったかのようにランプを消して寝ないでくれ~。
このアホに寮生の規則を守らせるように説教してくれ~。
ため息を吐きながら、ヴィレッタからレオノールに目線を移すと、すでに爆睡していた。
なんという早寝⁉
まあいいや。一応王女だし、何かあったら大変だし、ここにいてくれたほうが安心かも。
ベッド狭いけど……
どうか寮長の見回りで、レオノール姫殿下が脱走なさったと騒ぎになりませんように……むにゃむにゃ……
***
冬の日の昇りは遅い。
空が明るくなりつつあり、東の空から徐々に赤みを帯びている中で、私は目を覚ました。
部屋の中は寒々しく、冬のさわやかな空気が窓から吹き込んでいる。
呼吸する度に白い息が立ち上る。
寮での朝は、まだ暖かい掛け布団から抜け出すのが辛い時間帯だ。
結局、朝まで眠っちゃったか。
でも、何かが起きた魔力の気配はないようだ。
レオノールを起こさないように、ゆっくりとベッドから出て窓から外の景色を眺める。
怪奇現象は毎日起こるわけではなく、数日置きにランダムな間隔で起こるらしい。
そうだ、リョウはもう起きて庭で鍛錬しているかな?
なんて思って、窓の下を覗いてみた。
雑草と一緒に冬に咲く雪割草が咲いていた。
あ、ここ女子寮だった。リョウとは別行動だったんだっけ。
そういえばスノッサの森から旅立ってから8ヶ月、リョウの顔を見ない日は1日もなかったなと、ふと思った。
今頃何をしているんだろう? ……まあ鍛錬だろうけど。
マーガレット叔母様から、ちゃんと事情を聞いたかな?
ベレニスやクリスはちゃんとしているかな?
ま、しっかり者のフィーリアがいるから心配はしていないけどね。
リョウと出会って、みんなとも出会い、こうして母の故郷のファインダ王国まで一緒に旅をした。
そして今、私はリョウたちと離れ、王都リオーネの女子寮で怪奇現象の調査をしているのだ。
両頬を叩いて意識をしっかりさせる。
……あれ? 私、もしかして寂しいのかな?
いやいや、ヴィレッタがいるし、レオノールだっているし。ルリアさんという可愛い娘とも知り合えたんだよ?
はあ~、お祖母ちゃんと2人で過ごした魔女の修行時代では、こんな気分にはならなかったんだけどなあ。
「そういえば、お祖母ちゃんは元気かな?」
「ディルという魔女ですか?」
ふと洩らした言葉に、反応が返ってくる。
振り向くと、ヴィレッタが起きていた。
「うん、両親が殺された日、母からディルを頼れって言葉と同時に、スノッサの森に転移魔法で飛ばされて出会った魔女のババア……もといお祖母ちゃん」
「ディアナさんから少しお聞きしましたが、とんでもない魔力を持ったお方とか。ただ、名が轟いている方ではありませんね」
ディアナさんというのは、私が旅に出て、最初に辿り着いた街で出会った占い師の魔女だ。
私が両親を殺した魔女ノエルの行方を追っていたのと同じように、ディアナさんはディルに復讐するために私へ近づき一騒動あった経緯がある。
その後、ベルガー王国の王都で再会し、ノエルという人物について、色々と教えてもらった。
私は、魔女ノエルが両親を殺したことを許すつもりはない。
ただ、面と向かって会ってみたかったとは思っている。
「ローラ様と魔女ディル……どのような関係だったのでしょう。ローゼを託すほどです。並々ならぬ信頼関係でしょうが……」
それは私も気になっている。
「マーガレット叔母様も、ディルという名に心当たりはなかったから、ベルガー王国に嫁いでからの知り合いなのかも。叔母様も調べてくれているし、私も女子寮の件を解決したら調べてくれている人を手伝おうかな? ……ま、今はそれよりも、今日から学校だね。楽しみ」
「ローゼ、お仕事ですので勉学も良いですが、魔力の持ち主や、不穏な噂の有無のチェックも忘れないでくださいませ」
はーい、と返事をして、ベッドで寝ているレオノールを叩き起こす。
「う~ん、まだ早いですよ姉様~」
「何言っているの。寮の何処かで異変が起きていないかチェックするから。それから学校へ行く準備をするよ」
目をこすりながら「わかりました~」と返事をするレオノール。
うむ、素直でよろしい。
早朝の女子寮は静寂に包まれ、廊下には薄暗い影が落ちていた。
窓から差し込む朝日が、徐々に寮内を明るく照らし始める。
まだ私たち以外は寝ているようだ。
足音を立てないようにゆっくりと歩く。
異常な気配はやっぱりないかな?
そう思いつつ暫く歩いていると、曲がり角の向こう側からランプの光が近づいてくる。
異質な感じはしないが、念のために警戒する。
壁に影が大きく映る光景は、結構ドキドキものだ。
そしてランプの光と共に現れたのは、モリーナ寮長。
おはようございますと挨拶して、ホッとため息を吐く私たちであった。
「おはようございます。御三方、朝食までまだ1時間程あります。お部屋に戻りお休みください」
「目の下のクマがすごいですが、もしかして一晩中見回りをしていたんですか?」
モリーナ寮長の目の下には疲れの色が見えたが、その姿勢は凛として揺るがない。
ランプの光に照らされた彼女の表情には、寮生たちへの深い愛情が垣間見えた。
「寮長の仕事の一環です。ローゼ様はお気になさらず。さあレオノール姫殿下にヴィレッタ様も、早くお部屋に戻られますように」
そう言うと、ランプをもう一度掲げて辺りを照らしながらモリーナさんは歩いていった。
「真面目な方ですね。口では怪奇現象を多感な少女の勘違いと仰っていましたが、内心では心配なのでしょう」
「ま、異変はないみたいだし戻ろっか。寒いし今日の夜にも差し支えるし」
「あはは、姉様、大丈夫ですよ。授業中に寝ればいいのです」
いやレオノール、その発言は王女としてどうなのよ。
「それはわたくしが許しませんので、起きていてくださいね、レオノール」
ヴィレッタの笑顔だけど笑顔じゃない顔にレオノールは青ざめた。
「次は朝食時で、様子のおかしい寮生がいないかチェックね。レオノール、私とヴィレッタよりレオノールのほうが誰が誰ってわかっているんだから、よろしくね」
「わ、わかりました、姉様!」
そして私たちは、その後、王立学校で学生として過ごす日々を送る。
結論から言おう。
この時すでに、私たちは謎の魔女の手に落ちていたのだった。
それもそのはず、食前のモリーナ寮長の女神フェロニアへの祈りの言葉により、厳粛な空気が流れるのだ。
さらに派閥に分かれて座るため、どっちの派閥でもない私たちに近づく寮生はいない。
ただ、お喋り禁止というわけではなく、談笑の声は耳に届く。
レオノールは、両派閥のボスであるソフィアとベーベルをポカンとさせて、話しまくっている。
2人の令嬢も可哀想に。
その後、お風呂も済まして自室に戻ったが、寮生の中に魔女のいる気配は微塵も感じなかった。
「女子寮に住む学生の数は、わたくしたちを除き53名、ルリアさんのような地方貴族の御令嬢がほとんどです。ですが中央貴族の御令嬢もいます。後々の人脈作りのためでしょうね」
ヴィレッタの説明によると、女子寮は男子禁制で、学生の父親や兄弟、婚約者であっても男性は絶対に入れない。
その点も踏まえて、寮に入れる親もいるようだ。
「人が多くいれば派閥も生まれます。この女子寮も例外ではなく、2人の侯爵家御令嬢が派閥を作っております」
「ソフィア・ハイドリッヒとベーベル・ライモントね。食堂でレオノールに話しかけていたけど、魔女の自覚はなさそうかな? どこにでもいる、単なる御令嬢ってイメージだったなあ」
ソフィアは、金髪の縦ロールがゴージャスな美少女。
ベーベルは、栗色ウェーブヘアの端正な顔の美少女。
「家の期待もございますし、時期王妃となるレオノールが女子寮に入ってきたのです。彼女たちが張り切るのは当然でしょう」
ヴィレッタの説明に異論はない。
私も何も起きなければ、王女としてベルンの王立学校に通って、ヴィレッタとシャルロッテに頼りまくりながら、権力争いに気を使う学生生活を送っていただろうし。
もしかしたら、うざったくなって留学したいと願ったかも。
ヴィレッタもシャルロッテも、渋々付いてくるのが容易に想像できるよ。
ただ、レオノールには、そういった貴族の感覚が通用しないんだよね。
ちょっとだけ、ソフィアとベーベルに同情しちゃうよ。
「はあ~。レオノールさあ、もうちょっとマニアックな話じゃなくって、普通の女子の話をしてあげなよ」
私は、私のベッドで寛いでいるレオノールに目を向けた。
「姉様、剣士の話でマニアックではありませんよ?」
心外そうにきょとんとするなよ。
「わたくしも、彼女たち同様理解できませんでした。レオノール、大陸七剣神と候補たちを熱く語るのは構いませんが、会話する相手が全てを知っている前提で話す癖は、改めなければなりません」
ヴィレッタの苦言に正座して聞くレオノール。
おいこら、私に対してもそうしろよ。
「2人が、剣士について勉強してくれたのが嬉しくて、ついつい喋りが止まらなくなりました。いや~、ソフィアもベーベルも、私が七剣神に相応しいって言ってくれて嬉しかったです! ですが、テレサ叔母様も師匠もなっていないのに私がなるのはおかしいですからね、なので色々な剣士の話をしちゃいました」
私もよくわからなかったが、名の通っている剣士って多いんだなあって印象を持ったよ。
オルタナさんも七剣神じゃないし、世の中には化け物が多くいるんだなあ。
「ルリアさんから聞いた話ですと、異常は深夜に起こるのが常だとか。仮眠を取り、異常に備えるべきでしょう」
ヴィレッタの言葉に『は~い』と返事して、私はレオノールと同じベッドに入って布団をかけた。
⁉
「って! レオノールは王女様専用の立派な部屋が与えられているでしょ!」
「姉様! ですが私の部屋は相部屋じゃないのです! 寂しいのです! ですので姉様! 一緒に寝てください!」
はわわっ! とレオノールが涙目で訴えてくる。
ううむ、可愛いなこいつ。
ところでヴィレッタ? 何事もなかったかのようにランプを消して寝ないでくれ~。
このアホに寮生の規則を守らせるように説教してくれ~。
ため息を吐きながら、ヴィレッタからレオノールに目線を移すと、すでに爆睡していた。
なんという早寝⁉
まあいいや。一応王女だし、何かあったら大変だし、ここにいてくれたほうが安心かも。
ベッド狭いけど……
どうか寮長の見回りで、レオノール姫殿下が脱走なさったと騒ぎになりませんように……むにゃむにゃ……
***
冬の日の昇りは遅い。
空が明るくなりつつあり、東の空から徐々に赤みを帯びている中で、私は目を覚ました。
部屋の中は寒々しく、冬のさわやかな空気が窓から吹き込んでいる。
呼吸する度に白い息が立ち上る。
寮での朝は、まだ暖かい掛け布団から抜け出すのが辛い時間帯だ。
結局、朝まで眠っちゃったか。
でも、何かが起きた魔力の気配はないようだ。
レオノールを起こさないように、ゆっくりとベッドから出て窓から外の景色を眺める。
怪奇現象は毎日起こるわけではなく、数日置きにランダムな間隔で起こるらしい。
そうだ、リョウはもう起きて庭で鍛錬しているかな?
なんて思って、窓の下を覗いてみた。
雑草と一緒に冬に咲く雪割草が咲いていた。
あ、ここ女子寮だった。リョウとは別行動だったんだっけ。
そういえばスノッサの森から旅立ってから8ヶ月、リョウの顔を見ない日は1日もなかったなと、ふと思った。
今頃何をしているんだろう? ……まあ鍛錬だろうけど。
マーガレット叔母様から、ちゃんと事情を聞いたかな?
ベレニスやクリスはちゃんとしているかな?
ま、しっかり者のフィーリアがいるから心配はしていないけどね。
リョウと出会って、みんなとも出会い、こうして母の故郷のファインダ王国まで一緒に旅をした。
そして今、私はリョウたちと離れ、王都リオーネの女子寮で怪奇現象の調査をしているのだ。
両頬を叩いて意識をしっかりさせる。
……あれ? 私、もしかして寂しいのかな?
いやいや、ヴィレッタがいるし、レオノールだっているし。ルリアさんという可愛い娘とも知り合えたんだよ?
はあ~、お祖母ちゃんと2人で過ごした魔女の修行時代では、こんな気分にはならなかったんだけどなあ。
「そういえば、お祖母ちゃんは元気かな?」
「ディルという魔女ですか?」
ふと洩らした言葉に、反応が返ってくる。
振り向くと、ヴィレッタが起きていた。
「うん、両親が殺された日、母からディルを頼れって言葉と同時に、スノッサの森に転移魔法で飛ばされて出会った魔女のババア……もといお祖母ちゃん」
「ディアナさんから少しお聞きしましたが、とんでもない魔力を持ったお方とか。ただ、名が轟いている方ではありませんね」
ディアナさんというのは、私が旅に出て、最初に辿り着いた街で出会った占い師の魔女だ。
私が両親を殺した魔女ノエルの行方を追っていたのと同じように、ディアナさんはディルに復讐するために私へ近づき一騒動あった経緯がある。
その後、ベルガー王国の王都で再会し、ノエルという人物について、色々と教えてもらった。
私は、魔女ノエルが両親を殺したことを許すつもりはない。
ただ、面と向かって会ってみたかったとは思っている。
「ローラ様と魔女ディル……どのような関係だったのでしょう。ローゼを託すほどです。並々ならぬ信頼関係でしょうが……」
それは私も気になっている。
「マーガレット叔母様も、ディルという名に心当たりはなかったから、ベルガー王国に嫁いでからの知り合いなのかも。叔母様も調べてくれているし、私も女子寮の件を解決したら調べてくれている人を手伝おうかな? ……ま、今はそれよりも、今日から学校だね。楽しみ」
「ローゼ、お仕事ですので勉学も良いですが、魔力の持ち主や、不穏な噂の有無のチェックも忘れないでくださいませ」
はーい、と返事をして、ベッドで寝ているレオノールを叩き起こす。
「う~ん、まだ早いですよ姉様~」
「何言っているの。寮の何処かで異変が起きていないかチェックするから。それから学校へ行く準備をするよ」
目をこすりながら「わかりました~」と返事をするレオノール。
うむ、素直でよろしい。
早朝の女子寮は静寂に包まれ、廊下には薄暗い影が落ちていた。
窓から差し込む朝日が、徐々に寮内を明るく照らし始める。
まだ私たち以外は寝ているようだ。
足音を立てないようにゆっくりと歩く。
異常な気配はやっぱりないかな?
そう思いつつ暫く歩いていると、曲がり角の向こう側からランプの光が近づいてくる。
異質な感じはしないが、念のために警戒する。
壁に影が大きく映る光景は、結構ドキドキものだ。
そしてランプの光と共に現れたのは、モリーナ寮長。
おはようございますと挨拶して、ホッとため息を吐く私たちであった。
「おはようございます。御三方、朝食までまだ1時間程あります。お部屋に戻りお休みください」
「目の下のクマがすごいですが、もしかして一晩中見回りをしていたんですか?」
モリーナ寮長の目の下には疲れの色が見えたが、その姿勢は凛として揺るがない。
ランプの光に照らされた彼女の表情には、寮生たちへの深い愛情が垣間見えた。
「寮長の仕事の一環です。ローゼ様はお気になさらず。さあレオノール姫殿下にヴィレッタ様も、早くお部屋に戻られますように」
そう言うと、ランプをもう一度掲げて辺りを照らしながらモリーナさんは歩いていった。
「真面目な方ですね。口では怪奇現象を多感な少女の勘違いと仰っていましたが、内心では心配なのでしょう」
「ま、異変はないみたいだし戻ろっか。寒いし今日の夜にも差し支えるし」
「あはは、姉様、大丈夫ですよ。授業中に寝ればいいのです」
いやレオノール、その発言は王女としてどうなのよ。
「それはわたくしが許しませんので、起きていてくださいね、レオノール」
ヴィレッタの笑顔だけど笑顔じゃない顔にレオノールは青ざめた。
「次は朝食時で、様子のおかしい寮生がいないかチェックね。レオノール、私とヴィレッタよりレオノールのほうが誰が誰ってわかっているんだから、よろしくね」
「わ、わかりました、姉様!」
そして私たちは、その後、王立学校で学生として過ごす日々を送る。
結論から言おう。
この時すでに、私たちは謎の魔女の手に落ちていたのだった。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
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