【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第5章 籠の中の鳥

第10話 歴史上の人物⁉

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 夕食前の自由時間。
 私たちの部屋に入ってきて、ひとしきり喋ると『そうです! 少しお待ちくだされ!』と言ってレオノールは出ていき、数分後に戻って来る。
 困惑している、薄桃色髪の女生徒を引き連れて。

「姉様! ヴィレッタさん! こちらのルリアさんは色々ご存知でして、ぜひ、お話を伺ってください。ルリアさん申し訳ないのですが、私に話した内容を今一度お願いします!」

 そして部屋に入ってきては、ルリアと呼んだ女生徒に話をせがむレオノール。

 ああもう、おとなしそうな娘じゃないの。
 レオノールめ、もう少し彼女の心情を察してやれよ。

「この脳筋姫がごめんね。私は魔女のローゼ。こっちがヴィレッタ。よかったら座って休んでいくだけでもいいからね」

 初対面の私たちに、緊張気味のルリアさんへ優しく微笑む。

「そうです! 姉様の言う通り! 緊張しなくて大丈夫ですよ。姉様もヴィレッタさんもお優しい方ですから! ただ、怒ると怖いので気をつけてください。私もしょっちゅう怒られましたので!」

 おいこらレオノール。
 自国の姫を怒る他国の者たち、って紹介は『なんだこいつらは』って思われるだろうが。

「ルリア・ニーマイヤーです。ローゼ様とヴィレッタ様の噂は耳にしております。歴史上の人物に会えた気分で光栄でございます」

 歴史上の人物⁉
 いやあ、そう言われるって、嬉しいより身体中がムズムズするなあ。

「ルリアさん、固くならないでくださいまし。わたくしたちは若輩の身。まだまだ学ぶべきことが多くございます。敬称も不要でございます。どうぞヴィレッタとお呼びください」

「そうです! ぜひ私のこともレオノールと呼び捨てにしてください!」

 ヴィレッタの礼儀正しい挨拶で流れ始めた穏やかな空気が、レオノールのパワフルな声によって掻き消された。

 って、あんたはファインダ王国の姫殿下で、ルリアさんはこの国の貴族の娘でしょうが!
 呼び捨てなんてできるわけないって考えないのか、この脳筋従姉妹が~。

「いえ、姫殿下が姉様と呼ばれる御方でございます。ヴィレッタ様も隣国ベルガーの重要人物です。呼び捨てなど畏れ多いです」

 ルリアさんは緊張のあまり、スカートの端を無意識に指で弄んでいた。

 私とヴィレッタは別に構わないのだがなあ。
 というか、レオノールが私に姉様呼びしているのが、ルリアさんが一番緊張しちゃっているポイントだろ?

「あはは、ルリアさん緊張しなくて大丈夫ですよ! 姉様もヴィレッタさんも善人ですので御安心を! でも、そう言われても不安には思いますよね? ですので姉様! ここはルリアさんに面白い話でもして、緊張をほぐしてあげてください!」

 レオノールが興奮気味に話すたびに、灰色の髪が揺れ動く。
 その目は好奇心と期待に輝いているのだが、少しは落ち着け。

「って! なんでいきなりそんな無茶振りをするんだレオノール! ごめんね~、ルリアさん。これ、アホだから苦労しているでしょ?」

「いえいえ、そんな滅相もございません」

「緊張するお気持ちは理解できますが、この寮ではルリアさんが先輩なのです。……そうですね。先にルリアさんから何か質問をしてもらい、わたくしたちが答えるのはいかがでしょう? ルリアさんの緊張もほぐれますでしょう」

 ヴィレッタの提案に、ナイス! と心の中で思いながらルリアさんを見つめる。
 無論、優しい笑顔を振り撒いて。

「えっと……ではお聞きします」

「うんうん、何でも聞いて」

「噂では、女好きのアランの傭兵に騙されて旅をしているということですが、本当……なのですか?」

 ほえっ?

「ヴィレッタ様はベルガー王に嫁ぐ予定でしたのに、公爵令嬢の身分を捨てさせられ、アランの傭兵に連れ去られたとお聞きしていますが……」

 わ~お、とんでもない噂が広まっているなあ。

「ち、違うよ~。リョウは真面目で紳士というか、朴念仁というか。……ま、まあ誰とも男女の仲にはなっていないってとこかな?」

「世評で、リョウ様にそのような噂が流れているのは存じています。本人は少しショックを受けているみたいですが、噂を否定して立ち回るなんて器用なことができる人でもありません。わたくしに関しては、わたくしの意思でローゼの旅に同行しております」

 私が慌てふためく中で、ヴィレッタが冷静に告げたおかげでルリアさんは信じてくれたみたい。

 ていうか、リョウへの風評被害をなんとかしなくっちゃなあ。

「安心しました。レオノール姫殿下が師匠と呼ぶ男です。もしそのような最低の男でしたら、道連れにしてでも討ち果たす覚悟をしておりました」

 ……これ、レオノールが得意の人誑しで魅了した相手全員が、リョウに悪意を持っているんじゃ?
 なんて感想を抱いてしまう、ルリアの返答だった。

 レオノールは鈍感で気づいてもいないし!

「ですが姉様もヴィレッタさんも、率先して噂を否定しませんよね? まあ実際に関わると、師匠は皆様を大切なお仲間と思っているとわかります。これは早急に、世間一般でもそう思われるように噂を掻き消すべきですね! 父上と母上に、師匠は清廉潔白な男だと布告してもらいましょう!」

 レオノールの提案に、私たち3人の頭が⁉ となったのは言うまでもない。

「早速、手紙をしたためてきます!」

「って! 国家事業で、そんな変なことをしでかすなあああああ。民衆が余計にどういう意味だ? わざわざ布告する意味があるのかと思うだろうがああああああ」

 あ~もう! もう少しは考えて喋れや、この脳筋バカ従姉妹が~。

「コホン、レオノール、本題は怪奇現象です。それを忘れていませんか?」

 ヴィレッタが、ちょっと怒り気味に口にすると、レオノールは震え上がった。

「す、すみませんヴィレッタさん! すっかり忘れていました! ですが説教は、またの機会でお願いします!」

 ……うん。レオノールの中で、私たちの力関係のトップがヴィレッタになっているようだね。
 マーガレット叔母様と共に、王立学校の女子寮に入る重要性を、ヴィレッタが長々と話していたもんなあ。

 うんうん。……って! 姉様と呼ぶ私の言うことも聞いてほしいんだけど⁉

「えっと、それでは話を戻します! ルリアさん、よろしくお願いします!」

「は、はい、怪奇現象についてですね」

 レオノールに促されて語りだすルリアは、肩の力が抜けたようだった。
 会話が進むにつれ、ルリアの表情が徐々に和らいでいくのが見て取れた。
 最初の緊張が解けて、少しずつ本来の自分を見せ始める。

 初対面の自分たちに緊張を強いながらも、私とヴィレッタの落ち着いた態度に徐々に安心感を得ているようだった。

 私たちの無駄話も役に立ったのかな?

 夕暮れ時の柔らかな光が窓から差し込み、部屋全体に温かな雰囲気が包む。
 ルリアさんの緊張がほぐれ、自然な笑顔が浮かぶ。

 私たち4人の少女が集まる様子は、まるで放課後のお茶会のように優雅で華やかな光景かもと、内心でクスりと微笑んだ。
 
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