【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第5章 籠の中の鳥

第13話 悪夢の始まり

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 ファインダ王国王都リオーネの王立学校女子寮。
 深夜の空に、2つの影が浮かび、寮を見下ろしていた。

 1つは黒のゴスロリ服に金髪ツインテール、右眼に眼帯をしているリリ。

 1つは白のゴスロリ服に銀髪ツインテール、左眼に眼帯をしているロロ。

 10代半ばの双子の邪教の魔女だ。

「引っかかった」

 リリは無表情で呟く。

「単純だった」

 ロロも無表情で呟く。

「ローゼマリー王女と聖女ヴィレッタ」
「おまけにレオノール王女」

「「全員、籠の中の鳥」」

 双子は無表情で頷き合う。

「「女子寮は彼女に任せて、私たちはリョウ・アルバースを始末する」」

 闇夜から2つの影が消えた。

 ***

 女子寮の朝は早い。
 冬は明るくなるのが遅いから、私は起きるのが少しだけ遅くなる。

 これは昔っからそうで、なかなか治らない癖みたいなものだ。

 王女の身分というのは結構大変で、朝早くから行事に駆り出されるなんて日常茶飯事だった。

 そのため、私は2人の側仕えに、時間になっても起きなければどんな手段を使っても起こすように頼んでいる。

 その2人の側仕えは、今は他国の王立学校の女子寮で相部屋なので、誰にも憚る必要なく私を叩き起こすのであった。

「ローゼ姫様、起きてくださいませ。もうそろそろ起きないと、寝癖を直す時間がなくなってしまいます」

 私の側仕えの1人、レスティア公爵家の令嬢ヴィレッタが、私を揺さぶってくる。

「大丈夫だって~。私、ショートヘアだし」

「何を寝ぼけているのですか? ローゼ姫様はロングヘアではありませんか」

 ん? そうだっけ?

「ローゼ姫様、ショートヘアになったらレオノール様みたいになりそうですね。一度見てみたいものです」

 私のもう1人の側仕え、ルインズベリー公爵家の令嬢シャルロッテが、私のショートヘア姿を想像したのかクスクス笑う。

 窓から差し込む朝日が、私たちの顔を柔らかく照らす。
 カーテンの隙間から見える外の景色は、まだ薄暗く、霧がかかっているようだった。

「おはよ~、ん? どうしたのヴィレッタ、その袋なに?」

 ヴィレッタの手元にはゴミを回収する紙袋があり、その中に小さなぬいぐるみっぽいのが大量にあった。

「おはようございます。こちらですが、目覚めたら部屋に大量にあったのです。誰かのイタズラでしょう。お気になさらないでくださいまし。ローゼ姫様は見てはいけません。シャルロッテは見た瞬間に、悲鳴を上げそうになったぐらい、恐ろしいぬいぐるみなのです」

 ヴィレッタは眉間にしわを寄せ、真剣な表情で紙袋を持っている。
 シャルロッテは軽く肩を震わせながら、時折チラチラとぬいぐるみを見ていた。

 私たちの中で、一番勇気と正義感に溢れるシャルロッテが悲鳴を上げそうになったぬいぐるみ?
 ほほう、興味あるぞ。

「こんなことをするのはレオノール様ぐらいでしょう。やられました。今日の放課後に、剣の鍛錬で懲らしめるつもりです」

 シャルロッテが悔しがっているが、レオノールがイタズラねえ。
 あまりピンとこないかな?

「キャッ、ローゼ姫様のベッドにも、そのぬいぐるみが⁉」

 ん? あ、これか。
 ベッドの隅の隙間からぬいぐるみが忍び寄るように現れた。
 その様子はまるで、寮の住人たちを狙っているかのような違和感を感じる。

 ヴィレッタの悲鳴で気づき、私は手のひらに乗せた。

 そのぬいぐるみは、少年をモチーフにしたと思われる代物だった。
 黄土色の皮鎧を着た剣士のようだ。
 お世辞にも可愛いと言えない目つきの悪さで、女子ウケは絶対にない出来栄えであった。

「ローゼ姫様、は、早くこの紙袋に捨ててくださいまし!」

 目を思いっきり瞑って、ヴィレッタが震える両手で紙袋を私の前に持ってくる。

 おお~、同じのがいっぱいある!

「ぬいぐるみといえば、可愛いのがお約束です。なのに誰が、いったいなんの目的で、このような不気味なのを作成したのでしょうか」

 シャルロッテも、口に手を当てながら青ざめているが、そこまで酷いかな?

「う~ん……ていっ!」

 私はヴィレッタから紙袋を奪った。

「ロ、ローゼ姫様⁉」

「ローゼ姫様、いえローゼマリー姫殿下、貴女はベルガー王国の第一王女にして、王位継承権第一位です。そのような悪しきぬいぐるみを捨てる行為を、御身自ら行わず、私やヴィレッタを頼ってください」

 驚くヴィレッタに、恭しく苦言を呈してくるシャルロッテ。

「なんか気になるから、捨てずに持っているよ。さてと、身支度しなくっちゃね♪」

 そんな私の発言に、2人はため息をついた。

「ローゼ姫様……また、おかしなことを……」

「仕方がないですね。ヴィレッタ、こうなったローゼ姫様の説得は不可能です。諦めて言う通りにしましょう」

 そんなワガママお姫様みたいに言わないでよ~。

「シャルロッテは昔から、ローゼ姫様に甘すぎるのです。わたくしたちはベルガー王国を背負って、ここファインダ王国の王立学校に留学しているのです。王女たる者が、その様な悪夢を見そうな代物を所持しているなんて知れ渡ったら、評判を落としてしまいます!」

 大げさだなあ。
 ヴィレッタは昔っから、私に厳しくて過保護なんだから~。

「わかっているって、ヴィレッタ。大丈夫、他の人には見られないようにするからさ♪」

 そう言った私に、2人は呆れ顔になるのであった。

 ドタドタと、廊下から聞こえてきて扉が勢いよく開く。

「おはようございます! 姉様! ヴィレッタさん! シャルロッテさん!」

 登場したのはファインダ王国の第一王女、レオノールだ。
 金色のロングヘアと碧眼の私に対し、彼女は灰色のショートヘアにヘーゼル色の瞳を持ち、私にそっくりな一つ歳下の従姉妹である。

「おはよ、レオノール、それにルリアさんもおはよ」

 にっこり王女スマイルをする私。
 レオノールの背後で、モジモジしながら頭を下げるルリアさん、今日も可愛いなあ。

「レオノール様! 貴女もファインダ王国の未来を背負うお立場なのです! そのように勝手に部屋へ入るなんて、不躾な行為をしてはなりません!」

 ヴィレッタの苦言に、はわわと慌てるレオノール。
 こっちも相変わらず可愛い。

「ところでレオノール様、このようなイタズラは許されません! いったい、どういうおつもりでしたのですか」

 ゴゴゴ、と怒りのオーラを出し、いやいやながらぬいぐるみを手にして見せるシャルロッテに、レオノールの身体の震えが強まっていった。

「私はイタズラなどしません! なんですか? これ? よくわかりませんが、女子ウケは酷そうです! ですがなんとなく、姉様は気に入りそうです!」

 おにょれレオノール、どういう意味じゃ。

「レオノールの仕業じゃないってのは私も信じているよ。だからシャルロッテにヴィレッタ、この話題はこれで終わりにしよ。それで? レオノール、何か用なの?」

「そうでした! 今夜社交パーティーが開かれてしまうのです! 私は出たくありません! ですが母上に出ろと強制されているのです! お願いします! 姉様たちも出てください!」

 ペコリと頭を下げるレオノールに、私たちは顔を見合わせるのであった。
 
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