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第6章 雪原は鮮血に染まる
第4話 謎の銀髪美女
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ファインダ王国王都リオーネ。
新年の祝祭ムードも終わり、街の中は平穏な日常の風景で溢れている。
街角では子供たちが元気に走り回り、市場では商人たちの活気溢れる声が響いている。
そんな中、1人の銀髪美女が王都リオーネの中心部を歩いていた。
彼女の流れるような銀髪は腰まで伸びており、上品な光沢を放っている。
彼女の瞳は何を見ても驚かないような、静かで深い知性を感じさせた。
服装は深い紺色のロングコートで、体に沿うようなシルエットだ。
コートの下からは落ち着いた色のワンピースの裾が僅かに覗き、上品な旅人の装いを完成させていた。
腰には革製の細身のベルトが巻かれ、そこに小さなナイフが収まっているのが見える。
「お姉さん、旅人かい? リオーネに来たならホレイショカフェに行かなきゃ損だよ」
美女が振り返ると、そこにはカジュアルな服装をした若者が立っていた。
「せっかくだし、行ってみるかねえ」
今話題で、平民のみならず貴族や旅人も訪れる大繁盛店だと勧められ、美女は足を伸ばした。
銀髪が風に揺れ、腰に吊るした小さなナイフが微かに光る。
ホレイショカフェは先月オープンしたばかりで、外装はシンプルながら洗練された、白を基調とした建物だった。
大きなガラス窓からは暖かな陽光が差し込み、店内は明るく清潔な雰囲気に包まれている。
「へえ、良い店だねえ。……ん?」
窓に貼られた『ここでしか手に入らない!魔除けのぬいぐるみ販売中!』という、やや手作り感の漂うポップが目に入った。
その横に飾られた、少々異様な雰囲気のぬいぐるみにも気づき、しばらく小首を傾げた。
「いらっしゃいませ、相席でよろしいですか?」
店員からの笑顔の誘いに、美女も笑顔で了承すると、すでに少年が座っているテーブルに案内された。
(おや? 黄土色の鎧に黒髪かね? となると、この少年……ふ~ん? ま、いいさね。それより何を食べるかねえ)
メニュー表を眺めながら、美女は静かに微笑んだ。
その仕草に、店内にいる店員や客たちが魅了された。
彼女の微笑みは春の陽光のように柔らかく、どこか底知れぬ深みも感じさせた。
メニュー表によると、今はカフェオープンフェア第2弾をやっているようで、食後に6体のぬいぐるみのうち、どれかがもらえるようだ。
英雄パフェが一番美味しそうだと思い注文し、味に満足したが、同席している少年が暗い顔をしているのが気になった。
ブラックコーヒーを頼んでいるようだが、一向に口に運ぼうとしない。
「お待たせしましたリョウ様、私のところもイチゴと梨とリンゴはご用意できますが、他は……」
店主らしき金髪美人が、申し訳なさそうに少年に頭を下げた。
「いえ、ミレーヌ嬢、その3つでしたら果物屋で手に入れていますので大丈夫です。お手数おかけしました」
「残るはブラックベリー、マンゴー、オレンジ色の葡萄ですよね? マンゴーでしたら、どこかの飲食店にあるかもしれませんが……他の二つは厳しいかもしれません。特にオレンジ色の葡萄は聞いたこともありません」
どうやら果物を集めているようだ。
オレンジ色の葡萄という、街中では聞かない言葉に美女は興味を惹かれた。
「ブラックベリーは夏の果実さね。冬の今は手に入らないさねえ。でも、ジャムにして保管してる人はいるはずだねえ」
銀髪の女性は、つい口を挟んでしまう。
「あ……えっと、旅人ですか? せっかくの食事を邪魔してしまい申し訳ない。ジャムですか……かたじけない。探してみます」
リョウと呼ばれた少年の律儀な反応に感心しつつ、さらに助言を与えたくなった銀髪の女性は続けた。
「オレンジ色の葡萄はサンストーン・グレイプさね。伝説の果実で、そう簡単に手に入らないねえ」
リョウの方へと視線を向け、穏やかな微笑みを浮かべると、優雅にスプーンでパフェを一口すくい上げ、少し目を細めてその味をゆっくりと堪能した。
「なんと……」
リョウが顔を下に向けて絶句していると、ミレーヌも思い出したように口を開いた。
「あっ、その名前でしたら、フィーリアから聞いたことがあるかもしれません。果実自体が内部から光を放つように輝いていて、貴重な魔石の素材だという話です」
「魔石か……魔導具店に行ってみるか。ミレーヌ嬢、それに旅の方、ご教示ありがとうございました。旅の方、俺はリョウ・アルバースというアラン傭兵団所属の傭兵です。よろしければ、お名前を伺ってもよろしいでしょうか? 博識ですし、名のある方とお見受けします」
わざわざ立ち上がって頭を下げたリョウに、銀髪の美女は苦笑した。
自分の正体を知らぬとはいえ、その律儀さに好感が持てる。
……大昔、王女に仕えた頃、王女の愛した青年に似ていると、彼女は在りし日を思い出した。
それに、立ち上がったリョウの腰にある漆黒の剣。
間違いなく、ドワーフの王から贈られ、青年に譲り渡した品だ。
まだ存在していることにも驚くが、奇妙な縁をリョウに感じた。
「名乗るほどの名はないが、名乗られたら名乗らないわけにはいかないねえ。……クレアさ。それより色々な果物を集めているみたいだけど、どうしたんさね?」
クレアの質問に、リョウは素直に事情を説明した。
冒険仲間が風邪で寝込み、それぞれが食べたい果物を購入している最中だということ。しかし、果物屋では半分しか手に入らず、困ってホレイショカフェを訪れ、店主のミレーヌに相談していたことも。
聞き終わったクレアは、リョウの用意した見舞い品の質の低さに気づいて嘆息した。
「風邪の見舞い品で格差がついてしまってるねえ。イチゴと梨は安上がりで済ましすぎだねえ。それにレスティア領産のリンゴに近い味を所望しているなら、君が購入したリンゴは品種が違うさね。イチゴと梨とリンゴも、高級なのを買うべきだねえ」
「なんと……」
その言葉に、リョウの顔から血の気が引くのがわかった。
見舞い品を選ぶ上で、どれだけ配慮が足りなかったかを今さらながら思い知ったのだ。
風邪をひいた仲間たちの笑顔を思い浮かべては、見舞い品にどれだけの真摯さが必要かを再確認した。
リョウは一呼吸置き、頭を下げた。
クレアはリョウの真剣な態度を見て、彼の誠実さと仲間への深い愛情を感じ取った。
サンストーン・グレイプの入手方法についても助言し、彼を支援しようと決めた。
「ブラックベリーのジャム、南部諸国産のマンゴーはともかく、君は魔石の知識はあるのかね?」
「いえ、皆目……」
「私の旅は特に時間制限ないさね。せっかくの縁、付き合うさね。魔導具店も寄るつもりだったからねえ」
クレアの言葉に、リョウは驚きを隠せなかった。
彼女の微笑みには、何か深い知識や謎が隠されているような気がした。
彼女の視線はリョウから離れず、その奥に計り知れない何かが蠢くようにも感じられた。
「えっと……ありがたいですが、会ったばかりの女性の方にご迷惑をおかけするわけには……」
リョウの脳裏に、風邪から全快した仲間たちがこのことを知れば、揶揄われるか説教されるか、もしくは魔法を連発されて命を落とす可能性がよぎった。
「このリョウ様は、仲間が全員女性なのです」
ミレーヌがクレアの耳に、ゴニョゴニョと内情を告げた。
「嫉妬されるのかね?」
「そんなところです。嫉妬するのは約1名だけですけど」
ゴニョゴニョと話し合うクレアとミレーヌの様子に、リョウは会話が気になったが、気にしないふりをしてコーヒーを口にした。
「ふむ? じゃあ、こうするさね。傭兵である君に私の護衛を依頼したい。これでいいさね?」
「そ、それなら……大丈夫です。……多分」
リョウとクレアの交渉が成立し、パフェも食べ終わった。
「おまけのぬいぐるみ、可愛いねえ」
金髪碧眼の少女がモチーフのようだ。白銀の杖を持つ姿から魔女だと想像できる。
「こちらもどうですか? 今リオーネで大人気の魔除けのぬいぐるみです。リョウ様がモチーフなんですよ」
ミレーヌからそう言われ、クレアは(不思議なものが流行っているんだねえ)と思いつつ、一体購入した。
新年の祝祭ムードも終わり、街の中は平穏な日常の風景で溢れている。
街角では子供たちが元気に走り回り、市場では商人たちの活気溢れる声が響いている。
そんな中、1人の銀髪美女が王都リオーネの中心部を歩いていた。
彼女の流れるような銀髪は腰まで伸びており、上品な光沢を放っている。
彼女の瞳は何を見ても驚かないような、静かで深い知性を感じさせた。
服装は深い紺色のロングコートで、体に沿うようなシルエットだ。
コートの下からは落ち着いた色のワンピースの裾が僅かに覗き、上品な旅人の装いを完成させていた。
腰には革製の細身のベルトが巻かれ、そこに小さなナイフが収まっているのが見える。
「お姉さん、旅人かい? リオーネに来たならホレイショカフェに行かなきゃ損だよ」
美女が振り返ると、そこにはカジュアルな服装をした若者が立っていた。
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今話題で、平民のみならず貴族や旅人も訪れる大繁盛店だと勧められ、美女は足を伸ばした。
銀髪が風に揺れ、腰に吊るした小さなナイフが微かに光る。
ホレイショカフェは先月オープンしたばかりで、外装はシンプルながら洗練された、白を基調とした建物だった。
大きなガラス窓からは暖かな陽光が差し込み、店内は明るく清潔な雰囲気に包まれている。
「へえ、良い店だねえ。……ん?」
窓に貼られた『ここでしか手に入らない!魔除けのぬいぐるみ販売中!』という、やや手作り感の漂うポップが目に入った。
その横に飾られた、少々異様な雰囲気のぬいぐるみにも気づき、しばらく小首を傾げた。
「いらっしゃいませ、相席でよろしいですか?」
店員からの笑顔の誘いに、美女も笑顔で了承すると、すでに少年が座っているテーブルに案内された。
(おや? 黄土色の鎧に黒髪かね? となると、この少年……ふ~ん? ま、いいさね。それより何を食べるかねえ)
メニュー表を眺めながら、美女は静かに微笑んだ。
その仕草に、店内にいる店員や客たちが魅了された。
彼女の微笑みは春の陽光のように柔らかく、どこか底知れぬ深みも感じさせた。
メニュー表によると、今はカフェオープンフェア第2弾をやっているようで、食後に6体のぬいぐるみのうち、どれかがもらえるようだ。
英雄パフェが一番美味しそうだと思い注文し、味に満足したが、同席している少年が暗い顔をしているのが気になった。
ブラックコーヒーを頼んでいるようだが、一向に口に運ぼうとしない。
「お待たせしましたリョウ様、私のところもイチゴと梨とリンゴはご用意できますが、他は……」
店主らしき金髪美人が、申し訳なさそうに少年に頭を下げた。
「いえ、ミレーヌ嬢、その3つでしたら果物屋で手に入れていますので大丈夫です。お手数おかけしました」
「残るはブラックベリー、マンゴー、オレンジ色の葡萄ですよね? マンゴーでしたら、どこかの飲食店にあるかもしれませんが……他の二つは厳しいかもしれません。特にオレンジ色の葡萄は聞いたこともありません」
どうやら果物を集めているようだ。
オレンジ色の葡萄という、街中では聞かない言葉に美女は興味を惹かれた。
「ブラックベリーは夏の果実さね。冬の今は手に入らないさねえ。でも、ジャムにして保管してる人はいるはずだねえ」
銀髪の女性は、つい口を挟んでしまう。
「あ……えっと、旅人ですか? せっかくの食事を邪魔してしまい申し訳ない。ジャムですか……かたじけない。探してみます」
リョウと呼ばれた少年の律儀な反応に感心しつつ、さらに助言を与えたくなった銀髪の女性は続けた。
「オレンジ色の葡萄はサンストーン・グレイプさね。伝説の果実で、そう簡単に手に入らないねえ」
リョウの方へと視線を向け、穏やかな微笑みを浮かべると、優雅にスプーンでパフェを一口すくい上げ、少し目を細めてその味をゆっくりと堪能した。
「なんと……」
リョウが顔を下に向けて絶句していると、ミレーヌも思い出したように口を開いた。
「あっ、その名前でしたら、フィーリアから聞いたことがあるかもしれません。果実自体が内部から光を放つように輝いていて、貴重な魔石の素材だという話です」
「魔石か……魔導具店に行ってみるか。ミレーヌ嬢、それに旅の方、ご教示ありがとうございました。旅の方、俺はリョウ・アルバースというアラン傭兵団所属の傭兵です。よろしければ、お名前を伺ってもよろしいでしょうか? 博識ですし、名のある方とお見受けします」
わざわざ立ち上がって頭を下げたリョウに、銀髪の美女は苦笑した。
自分の正体を知らぬとはいえ、その律儀さに好感が持てる。
……大昔、王女に仕えた頃、王女の愛した青年に似ていると、彼女は在りし日を思い出した。
それに、立ち上がったリョウの腰にある漆黒の剣。
間違いなく、ドワーフの王から贈られ、青年に譲り渡した品だ。
まだ存在していることにも驚くが、奇妙な縁をリョウに感じた。
「名乗るほどの名はないが、名乗られたら名乗らないわけにはいかないねえ。……クレアさ。それより色々な果物を集めているみたいだけど、どうしたんさね?」
クレアの質問に、リョウは素直に事情を説明した。
冒険仲間が風邪で寝込み、それぞれが食べたい果物を購入している最中だということ。しかし、果物屋では半分しか手に入らず、困ってホレイショカフェを訪れ、店主のミレーヌに相談していたことも。
聞き終わったクレアは、リョウの用意した見舞い品の質の低さに気づいて嘆息した。
「風邪の見舞い品で格差がついてしまってるねえ。イチゴと梨は安上がりで済ましすぎだねえ。それにレスティア領産のリンゴに近い味を所望しているなら、君が購入したリンゴは品種が違うさね。イチゴと梨とリンゴも、高級なのを買うべきだねえ」
「なんと……」
その言葉に、リョウの顔から血の気が引くのがわかった。
見舞い品を選ぶ上で、どれだけ配慮が足りなかったかを今さらながら思い知ったのだ。
風邪をひいた仲間たちの笑顔を思い浮かべては、見舞い品にどれだけの真摯さが必要かを再確認した。
リョウは一呼吸置き、頭を下げた。
クレアはリョウの真剣な態度を見て、彼の誠実さと仲間への深い愛情を感じ取った。
サンストーン・グレイプの入手方法についても助言し、彼を支援しようと決めた。
「ブラックベリーのジャム、南部諸国産のマンゴーはともかく、君は魔石の知識はあるのかね?」
「いえ、皆目……」
「私の旅は特に時間制限ないさね。せっかくの縁、付き合うさね。魔導具店も寄るつもりだったからねえ」
クレアの言葉に、リョウは驚きを隠せなかった。
彼女の微笑みには、何か深い知識や謎が隠されているような気がした。
彼女の視線はリョウから離れず、その奥に計り知れない何かが蠢くようにも感じられた。
「えっと……ありがたいですが、会ったばかりの女性の方にご迷惑をおかけするわけには……」
リョウの脳裏に、風邪から全快した仲間たちがこのことを知れば、揶揄われるか説教されるか、もしくは魔法を連発されて命を落とす可能性がよぎった。
「このリョウ様は、仲間が全員女性なのです」
ミレーヌがクレアの耳に、ゴニョゴニョと内情を告げた。
「嫉妬されるのかね?」
「そんなところです。嫉妬するのは約1名だけですけど」
ゴニョゴニョと話し合うクレアとミレーヌの様子に、リョウは会話が気になったが、気にしないふりをしてコーヒーを口にした。
「ふむ? じゃあ、こうするさね。傭兵である君に私の護衛を依頼したい。これでいいさね?」
「そ、それなら……大丈夫です。……多分」
リョウとクレアの交渉が成立し、パフェも食べ終わった。
「おまけのぬいぐるみ、可愛いねえ」
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