婚約破棄は夜会でお願いします

編端みどり

文字の大きさ
9 / 28

第九話

しおりを挟む
「シルヴィア、僕はサブリナを愛しているんだ」

「シルヴィア様、ごめんなさい。わたくしアルベルト様が好きなんです」

「……そうですか。おふたりはもうキスもした仲だそうですわね」

「ああ! その通り! 今証拠を見せてやる!」

アルベルトと、サブリナ様が熱い口付けを交わしておられます。

当然、周りは静まりかえっておりますわ。

「愛し合うおふたりを引き裂く事は出来ませんわ。アルベルト様、婚約を破棄致しましょう。こちら、婚約破棄の書類です。こんな事になる予感がして、ご用意しておきましたの。父とわたくしのサインは済んでいます。婚約破棄はアルベルト様のサインだけで成立しますから、ご記入下さい」

婚約破棄を申し立てられたら、基本的に受けるしかありませんから本人のサインだけで良いのです。慰謝料も、貰う側ですからね。本来ならば。

書類には、婚約時の契約に違反した者が慰謝料を支払う。いなければ、破棄を申し立てたわたくしが規定の慰謝料を払うと書かれています。

「きっちりと、わたくしから婚約破棄を申し立てたと記載があります。サブリナ様もご確認下さいませ」

「ふふっ、ええ、確かにシルヴィア様からアルベルト様に婚約破棄を申し立てるとあるわね。規定の通り慰謝料を払うとも書かれているわ。アルベルト、早く記入しましょう」

「ああ! もちろんだ!」

そうそう、さっさとサインしてね。

「それから、おふたりはもうキスもされておりますし、すぐ婚姻した方がよろしいですわ。こちら、婚姻の書類も取り寄せておきましたの」

「まあ! なんて気が利くの!」

だって、この後散々叱られておふたりが婚姻しなかったら困りますもの。まぁ、今婚姻しなければおふたりとも他にお相手は見つからないでしょうけどね。サクッと婚姻の書類にも記入して頂きました。

提出は……どうしましょうかしら。早く出したいわね。パーティーを抜けようかしら。

「待て! アルベルト! 早まるな!!!」

「父上! もうシルヴィアとの婚約破棄の書面に僕のサインをしました! シルヴィアからの破棄なので我が家にお金が入りますよ!」

「違う! そんな訳あるか!」

あらあら、アルベルトのお父様が、こちらへ走って来ようとしています。もう全てサインは済んでいますわ。ああでも、証人はどうしましょう。わたくしと、お父様にしようかしら?

「シルヴィア嬢、そちらの書類には証人が要るだろう? 私がなってやろう」

「王太子殿下?!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~

暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」 高らかに宣言された婚約破棄の言葉。 ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。 でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか? 2021/7/18 HOTランキング1位 ありがとうございます。 2021/7/20 総合ランキング1位 ありがとうございます

【完結・全10話】偽物の愛だったようですね。そうですか、婚約者様?婚約破棄ですね、勝手になさい。

BBやっこ
恋愛
アンネ、君と別れたい。そういっぱしに別れ話を持ち出した私の婚約者、7歳。 ひとつ年上の私が我慢することも多かった。それも、両親同士が仲良かったためで。 けして、この子が好きとかでは断じて無い。だって、この子バカな男になる気がする。その片鱗がもう出ている。なんでコレが婚約者なのか両親に問いただしたいことが何回あったか。 まあ、両親の友達の子だからで続いた関係が、やっと終わるらしい。

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

処理中です...