32 / 57
番外編
番外編5
しおりを挟む
「失礼しましたわ。エレーヌ様。ご挨拶は済みましたので戻りましたわ」
あらあら、そんな嫌そうなお顔をなさらないで。
「ごめんなさい、フレッド。すぐご挨拶は終わったわ」
そう言って、フレッドの腕に抱きつく。フレッドはびっくりして固まってるし、エレーヌ様はますます不機嫌なお顔をされている。
こんな顔するって事は、フレッドに色目を使う気はあるみたいね。
人の夫に色目を使うなんて、下品だわ。どうしてこんな女に、遠慮していたのかしら。今までの悪い癖が出ていたわね。
譲れば、面倒にならない。そんな事ないわ。絶対にフレッドは渡さない。わたくしに足りなかったのは、フレッドの妻である覚悟ね。
「シャーリー、どうしたんだ?」
「夫婦ですもの。これくらい普通ですわ。フレッドはお嫌?」
「……そんなにくっついてはフレッド様もご迷惑ですわよ」
エレーヌ様には聞いてないわ。
「いや、いつもシャーリーは夜会では照れてくっついてくれないからな。嬉しいよ」
あぁ! フレッドが優しくわたくしの頭を撫でて下さいましたわ!
な、なんてかっこいいの! エレーヌ様までお顔が赤いじゃないの!
「フレッド、そのお顔は反則ですわ……」
「ん? 何がだ?」
「も、もう良いですわ! わたくしもご挨拶があるので失礼致しますわ!」
あら? エレーヌ様が退散なさいましたわ。
「やるわね、シャーリー」
「エリザベス! ごきげんよう。お誕生日おめでとう」
「エリザベス様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう、今大人気の辺境伯夫妻に祝って頂けて嬉しいわ」
「……だいにんき?」
「ええ、おふたりは結婚されてから大人気よ。フレッド様はシャーリーをとても大事にしてるでしょう?」
「当然です」
「今までフレッド様を怖いと見向きもしなかった令嬢達が、シャーリーをエスコートする姿を見て素敵だと騒いでいるのを知らないの?」
「……知らなかったわ」
「シャーリー、貴方も男性に人気なのよ? フレッド様が目を光らせてるから近寄ってこないだけで」
「やはりな。貴重な情報ありがとうございますエリザベス様」
「どういたしまして。シャーリーは社交は苦手だものね。でも、情報は武器よ。例えば、とある伯爵家はお金がなくなってきていて、モテモテだった令嬢は華やかな暮らしが忘れられずに、お金のある辺境伯の愛人を狙ってる。もしくは、妻を蹴り落とそうとしている……とかね」
エリザベスが、小声で教えてくれたわ。そう、エレーヌ様にはそんな事情があるのね。フレッドは、愛人を持たないし、妻の座を明け渡すなんてありえないわ。苦手だからと避けていてはダメね。他に優先して勉強する事があると思っていたけれど、逃げていただけかもしれないわ。
「エリザベス、わたくし社交をもっと勉強するわ」
「さすがシャーリーね。今度のお茶会で少し教えてあげるわ。先生もいらっしゃるのでしょう?」
「ええ! この間打ち合わせた通り、先生にお会いしたからお誘いしておいたわ」
「先ほどお会いして聞いたわ。招待状を送るから、ゆっくり話しましょうね。フレッド様もいらっしゃいますか?」
「参加者はどなたがいらっしゃるのですか?」
「わたくしとシャーリーと、先生だけよ」
「なら、私は送り迎えだけやりましょう。シャーリーも、たまにはゆっくり懐かしい話をしておいで」
「あら、珍しいですわね」
「男が居れば、必ず参加しますけれど私が居ない方がゆっくり話せるでしょう?」
フレッド……、うれしいけれどちょっと寂しいわ。
「そのかわり、帰って来た日はゆっくり2人で話そうな?」
見透かしたように小声で言うのは反則よ。フレッド。
あらあら、そんな嫌そうなお顔をなさらないで。
「ごめんなさい、フレッド。すぐご挨拶は終わったわ」
そう言って、フレッドの腕に抱きつく。フレッドはびっくりして固まってるし、エレーヌ様はますます不機嫌なお顔をされている。
こんな顔するって事は、フレッドに色目を使う気はあるみたいね。
人の夫に色目を使うなんて、下品だわ。どうしてこんな女に、遠慮していたのかしら。今までの悪い癖が出ていたわね。
譲れば、面倒にならない。そんな事ないわ。絶対にフレッドは渡さない。わたくしに足りなかったのは、フレッドの妻である覚悟ね。
「シャーリー、どうしたんだ?」
「夫婦ですもの。これくらい普通ですわ。フレッドはお嫌?」
「……そんなにくっついてはフレッド様もご迷惑ですわよ」
エレーヌ様には聞いてないわ。
「いや、いつもシャーリーは夜会では照れてくっついてくれないからな。嬉しいよ」
あぁ! フレッドが優しくわたくしの頭を撫でて下さいましたわ!
な、なんてかっこいいの! エレーヌ様までお顔が赤いじゃないの!
「フレッド、そのお顔は反則ですわ……」
「ん? 何がだ?」
「も、もう良いですわ! わたくしもご挨拶があるので失礼致しますわ!」
あら? エレーヌ様が退散なさいましたわ。
「やるわね、シャーリー」
「エリザベス! ごきげんよう。お誕生日おめでとう」
「エリザベス様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう、今大人気の辺境伯夫妻に祝って頂けて嬉しいわ」
「……だいにんき?」
「ええ、おふたりは結婚されてから大人気よ。フレッド様はシャーリーをとても大事にしてるでしょう?」
「当然です」
「今までフレッド様を怖いと見向きもしなかった令嬢達が、シャーリーをエスコートする姿を見て素敵だと騒いでいるのを知らないの?」
「……知らなかったわ」
「シャーリー、貴方も男性に人気なのよ? フレッド様が目を光らせてるから近寄ってこないだけで」
「やはりな。貴重な情報ありがとうございますエリザベス様」
「どういたしまして。シャーリーは社交は苦手だものね。でも、情報は武器よ。例えば、とある伯爵家はお金がなくなってきていて、モテモテだった令嬢は華やかな暮らしが忘れられずに、お金のある辺境伯の愛人を狙ってる。もしくは、妻を蹴り落とそうとしている……とかね」
エリザベスが、小声で教えてくれたわ。そう、エレーヌ様にはそんな事情があるのね。フレッドは、愛人を持たないし、妻の座を明け渡すなんてありえないわ。苦手だからと避けていてはダメね。他に優先して勉強する事があると思っていたけれど、逃げていただけかもしれないわ。
「エリザベス、わたくし社交をもっと勉強するわ」
「さすがシャーリーね。今度のお茶会で少し教えてあげるわ。先生もいらっしゃるのでしょう?」
「ええ! この間打ち合わせた通り、先生にお会いしたからお誘いしておいたわ」
「先ほどお会いして聞いたわ。招待状を送るから、ゆっくり話しましょうね。フレッド様もいらっしゃいますか?」
「参加者はどなたがいらっしゃるのですか?」
「わたくしとシャーリーと、先生だけよ」
「なら、私は送り迎えだけやりましょう。シャーリーも、たまにはゆっくり懐かしい話をしておいで」
「あら、珍しいですわね」
「男が居れば、必ず参加しますけれど私が居ない方がゆっくり話せるでしょう?」
フレッド……、うれしいけれどちょっと寂しいわ。
「そのかわり、帰って来た日はゆっくり2人で話そうな?」
見透かしたように小声で言うのは反則よ。フレッド。
88
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。
ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」
ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。
「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」
一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。
だって。
──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。
[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです
しーしび
恋愛
「結婚しよう」
アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。
しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。
それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる