6 / 8
風
しおりを挟む
『今どこだ?』
スポドリがあるっつったらこの講義棟の1階にある自販機か?
その対面にある長椅子で休んでるか、空調の効いてる所に移動してるか…。
一階を目指して階段を下りながら頭を悩ませていると、メッセージに既読が付いた。
『まだ1階のベンチで涼んでる
動く気が起きない…』
『ポラリは飲んだのか?』
『1本目が無くなりそう
一応2本目も買ってある
授業終わるのちょっと早くね?』
『5分早く終わったんだよ
そっち行くからその場で待っててくれ』
打ち終わって送信した頃には1階に到着してたんで、そこから仁の姿を探す。
ベンチ自体は所々に置かれているのだが、自販機の近くで仁が選びやすい場所となればかなり決まってくる。
風通しの良い、人の死角になるような…。
曲がり角の影になるベンチで、手すりにもたれ掛かってペットボトルを頬に当てている仁を見つけた瞬間、心の中で『ビンゴ』と呟いた。
胡乱な目が俺を認めた瞬間に輝く。
可愛いんだが、そんな事に体力を使うなとも言いたくなるな。
体を起こそうとする仁の元へ最小歩数で近付くと、無言で額に手の平を当てる。
「うし、しっかり冷やせてんな。俺も一本ぐらい買うべきか…」
直前までペットボトルを当てていたのであろう、ヒンヤリとした感触が伝わり、一先ずは安堵の溜め息をつく。
首元は結露の水滴と、クーラーの効き切らないエントランスに居る故の汗とでしっとりとしていた。
奥歯を強く噛み合わせて湧き出た感情を抑え、もう片方の手に持っていた仁のリュックを隣に置いてやる。
「武蔵」
腰を曲げて顔が近くなったところへ、仁が掠れた声で囁いてきた。
片眉を上げて仁へ目線を向けるのを、仁の頭が首元へ寄ってきて妨げられる。
つむじが俺の首筋に埋められるのがコマ送りのように見えた。
2秒ほどモゾモゾしたと思ったら、つむじが少しだけ後ろに傾けられてすぐに首筋に小さく硬いものが当たる。
何度か確かめるように噛み噛みとされて、そんでやっと甘噛みしてんのかと思い至った。
ちうと小さく吸い付いてから上げられた仁の顔は、半目で気だるげな癖に口元はふふんと自慢げにしていて、理性と本能が殴り合いを始めるには十分なパンチ力があった。
まあナニをするにもまずは体調を整えてから、だ。さっさと帰してコンビニ弁当でも食って寝てもらうか。
…覚えてろよ。『朦朧としてて記憶にない』っては言わせねえぞ。
「武蔵、今日はオレ、バイトだから無理だよ。ライオンみたいな顔してるとこ悪いけども」
「次のコマで帰んだからバイトまで4時間とちょっとはあるぜ。バイトが終わった後でもいい。んな負荷の掛かることはしねぇ。安心しろ」
「信用できない!オレが出勤するまで図書館でレポートを命ずる!」
「拒否だ。爆速で帰宅する」
「病人は安静にしなきゃいけないのに…」
何やかんや言って逃げようとしてるが、それで逃げ切れたことがあったか?
仁の体を人目から隠すように覆い被さり、上から啄むように唇を奪う。
勢い付いて舌を捩じ込もうとしたところで、両頬を手の平で突っぱねられた。
「……昼飯奢れ」
「『バカ』って言ったら更にキスされることは学んだんだな」
ニヤニヤ笑って指摘すると仁の目尻が吊り上がったんで、渋々体を離した。
「コンビニの飯で良いか?」
「食堂ののり弁当買って」
「わーった」
頭をぐしゃぐしゃと撫でたいが、昼休みに入って周りには人が増えてきている。
自粛しようとくるりと背を向け二、三歩歩いたところで、左腕に強く抱きつかれた。
「オレも連れてくこと!」
左側に目線を落として、冗談抜きに息が止まった。
心臓が弾け飛ぶたぁ正にこのこと。
腕に抱きついて上目遣いなんざ、ドラマで見たってグッと来たことは無ぇってのに。
仁の薄い胸板と不貞腐れた表情がどうにも可愛い。
しかも飛び付いてきたのは置いてかれるのが寂しかったからだろ?
今すぐ家に帰って愛でたい…。
仁は片手に持っていたリュックを背中に背負い直し、歩き始めた。
『ポラリ買うのは仁を見送ってからだな』
心の中で一言呟いて、彼の隣に並ぶため大きく踏み出した。
スポドリがあるっつったらこの講義棟の1階にある自販機か?
その対面にある長椅子で休んでるか、空調の効いてる所に移動してるか…。
一階を目指して階段を下りながら頭を悩ませていると、メッセージに既読が付いた。
『まだ1階のベンチで涼んでる
動く気が起きない…』
『ポラリは飲んだのか?』
『1本目が無くなりそう
一応2本目も買ってある
授業終わるのちょっと早くね?』
『5分早く終わったんだよ
そっち行くからその場で待っててくれ』
打ち終わって送信した頃には1階に到着してたんで、そこから仁の姿を探す。
ベンチ自体は所々に置かれているのだが、自販機の近くで仁が選びやすい場所となればかなり決まってくる。
風通しの良い、人の死角になるような…。
曲がり角の影になるベンチで、手すりにもたれ掛かってペットボトルを頬に当てている仁を見つけた瞬間、心の中で『ビンゴ』と呟いた。
胡乱な目が俺を認めた瞬間に輝く。
可愛いんだが、そんな事に体力を使うなとも言いたくなるな。
体を起こそうとする仁の元へ最小歩数で近付くと、無言で額に手の平を当てる。
「うし、しっかり冷やせてんな。俺も一本ぐらい買うべきか…」
直前までペットボトルを当てていたのであろう、ヒンヤリとした感触が伝わり、一先ずは安堵の溜め息をつく。
首元は結露の水滴と、クーラーの効き切らないエントランスに居る故の汗とでしっとりとしていた。
奥歯を強く噛み合わせて湧き出た感情を抑え、もう片方の手に持っていた仁のリュックを隣に置いてやる。
「武蔵」
腰を曲げて顔が近くなったところへ、仁が掠れた声で囁いてきた。
片眉を上げて仁へ目線を向けるのを、仁の頭が首元へ寄ってきて妨げられる。
つむじが俺の首筋に埋められるのがコマ送りのように見えた。
2秒ほどモゾモゾしたと思ったら、つむじが少しだけ後ろに傾けられてすぐに首筋に小さく硬いものが当たる。
何度か確かめるように噛み噛みとされて、そんでやっと甘噛みしてんのかと思い至った。
ちうと小さく吸い付いてから上げられた仁の顔は、半目で気だるげな癖に口元はふふんと自慢げにしていて、理性と本能が殴り合いを始めるには十分なパンチ力があった。
まあナニをするにもまずは体調を整えてから、だ。さっさと帰してコンビニ弁当でも食って寝てもらうか。
…覚えてろよ。『朦朧としてて記憶にない』っては言わせねえぞ。
「武蔵、今日はオレ、バイトだから無理だよ。ライオンみたいな顔してるとこ悪いけども」
「次のコマで帰んだからバイトまで4時間とちょっとはあるぜ。バイトが終わった後でもいい。んな負荷の掛かることはしねぇ。安心しろ」
「信用できない!オレが出勤するまで図書館でレポートを命ずる!」
「拒否だ。爆速で帰宅する」
「病人は安静にしなきゃいけないのに…」
何やかんや言って逃げようとしてるが、それで逃げ切れたことがあったか?
仁の体を人目から隠すように覆い被さり、上から啄むように唇を奪う。
勢い付いて舌を捩じ込もうとしたところで、両頬を手の平で突っぱねられた。
「……昼飯奢れ」
「『バカ』って言ったら更にキスされることは学んだんだな」
ニヤニヤ笑って指摘すると仁の目尻が吊り上がったんで、渋々体を離した。
「コンビニの飯で良いか?」
「食堂ののり弁当買って」
「わーった」
頭をぐしゃぐしゃと撫でたいが、昼休みに入って周りには人が増えてきている。
自粛しようとくるりと背を向け二、三歩歩いたところで、左腕に強く抱きつかれた。
「オレも連れてくこと!」
左側に目線を落として、冗談抜きに息が止まった。
心臓が弾け飛ぶたぁ正にこのこと。
腕に抱きついて上目遣いなんざ、ドラマで見たってグッと来たことは無ぇってのに。
仁の薄い胸板と不貞腐れた表情がどうにも可愛い。
しかも飛び付いてきたのは置いてかれるのが寂しかったからだろ?
今すぐ家に帰って愛でたい…。
仁は片手に持っていたリュックを背中に背負い直し、歩き始めた。
『ポラリ買うのは仁を見送ってからだな』
心の中で一言呟いて、彼の隣に並ぶため大きく踏み出した。
23
あなたにおすすめの小説
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
来世はこの人と関りたくないと思ったのに。
ありま氷炎
BL
前世の記憶を持つ、いずる。
彼は前世で主人だった三日月と、来世で関わらない事を願った。
しかし願いは叶わず、幼馴染として生まれ変わってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる