ポメった幼馴染をモフる話

鑽孔さんこう

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『今どこだ?』

スポドリがあるっつったらこの講義棟の1階にある自販機か?
その対面にある長椅子で休んでるか、空調の効いてる所に移動してるか…。
一階を目指して階段を下りながら頭を悩ませていると、メッセージに既読が付いた。

『まだ1階のベンチで涼んでる
動く気が起きない…』
『ポラリは飲んだのか?』
『1本目が無くなりそう
一応2本目も買ってある
授業終わるのちょっと早くね?』
『5分早く終わったんだよ
そっち行くからその場で待っててくれ』

打ち終わって送信した頃には1階に到着してたんで、そこから仁の姿を探す。
ベンチ自体は所々に置かれているのだが、自販機の近くで仁が選びやすい場所となればかなり決まってくる。
風通しの良い、人の死角になるような…。
曲がり角の影になるベンチで、手すりにもたれ掛かってペットボトルを頬に当てている仁を見つけた瞬間、心の中で『ビンゴ』と呟いた。
胡乱な目が俺を認めた瞬間に輝く。
可愛いんだが、そんな事に体力を使うなとも言いたくなるな。
体を起こそうとする仁の元へ最小歩数で近付くと、無言で額に手の平を当てる。

「うし、しっかり冷やせてんな。俺も一本ぐらい買うべきか…」

直前までペットボトルを当てていたのであろう、ヒンヤリとした感触が伝わり、一先ずは安堵の溜め息をつく。
首元は結露の水滴と、クーラーの効き切らないエントランスに居る故の汗とでしっとりとしていた。
奥歯を強く噛み合わせて湧き出た感情を抑え、もう片方の手に持っていた仁のリュックを隣に置いてやる。

「武蔵」

腰を曲げて顔が近くなったところへ、仁が掠れた声で囁いてきた。
片眉を上げて仁へ目線を向けるのを、仁の頭が首元へ寄ってきて妨げられる。
つむじが俺の首筋に埋められるのがコマ送りのように見えた。
2秒ほどモゾモゾしたと思ったら、つむじが少しだけ後ろに傾けられてすぐに首筋に小さく硬いものが当たる。
何度か確かめるように噛み噛みとされて、そんでやっと甘噛みしてんのかと思い至った。
ちうと小さく吸い付いてから上げられた仁の顔は、半目で気だるげな癖に口元はふふんと自慢げにしていて、理性と本能が殴り合いを始めるには十分なパンチ力があった。
まあナニをするにもまずは体調を整えてから、だ。さっさと帰してコンビニ弁当でも食って寝てもらうか。
…覚えてろよ。『朦朧としてて記憶にない』っては言わせねえぞ。

「武蔵、今日はオレ、バイトだから無理だよ。ライオンみたいな顔してるとこ悪いけども」
「次のコマで帰んだからバイトまで4時間とちょっとはあるぜ。バイトが終わった後でもいい。んな負荷の掛かることはしねぇ。安心しろ」
「信用できない!オレが出勤するまで図書館でレポートを命ずる!」
「拒否だ。爆速で帰宅する」
「病人は安静にしなきゃいけないのに…」

何やかんや言って逃げようとしてるが、それで逃げ切れたことがあったか?
仁の体を人目から隠すように覆い被さり、上から啄むように唇を奪う。
勢い付いて舌を捩じ込もうとしたところで、両頬を手の平で突っぱねられた。

「……昼飯奢れ」
「『バカ』って言ったら更にキスされることは学んだんだな」

ニヤニヤ笑って指摘すると仁の目尻が吊り上がったんで、渋々体を離した。

「コンビニの飯で良いか?」
「食堂ののり弁当買って」
「わーった」

頭をぐしゃぐしゃと撫でたいが、昼休みに入って周りには人が増えてきている。
自粛しようとくるりと背を向け二、三歩歩いたところで、左腕に強く抱きつかれた。

「オレも連れてくこと!」

左側に目線を落として、冗談抜きに息が止まった。
心臓が弾け飛ぶたぁ正にこのこと。
腕に抱きついて上目遣いなんざ、ドラマで見たってグッと来たことは無ぇってのに。
仁の薄い胸板と不貞腐れた表情がどうにも可愛い。
しかも飛び付いてきたのは置いてかれるのが寂しかったからだろ?
今すぐ家に帰って愛でたい…。

仁は片手に持っていたリュックを背中に背負い直し、歩き始めた。
『ポラリ買うのは仁を見送ってからだな』
心の中で一言呟いて、彼の隣に並ぶため大きく踏み出した。

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