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第五話
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「結婚した?」
焦っている僕を知らずに、カルロスはクラッカーにチーズと生ハムをのせて、口に放り込んだ。
「ああ、上手くやってるんじゃないか?それ以上は良く知らないけどな」
「結婚ってなんであんな奴が公爵と結婚できるんだよ」
絶対に結婚していないと思っていた。予想に反して結婚していた上に、その相手は隣国の公爵でもと王子ときた。自分の怒りを抑え切れられず、カルロスの事を気にせずそう言ってしまった。
「何かされたのか?」
「いや違う。個人的な問題だ」
ほとんど誰にもアンナと婚約していたことは言っていなかった。どこからか人から人へ伝わるような噂は流れていたかもしれない。でも僕とアンナの婚約破棄という事はさほど大きな出来事ではない。婚約破棄なんてことは普通に起こりえることで特別話題に上がるような出来事でもない。「へえ、そうなのね」と流してしまうぐらい普通の事だ。
「そういえば、子供いるのか?」
おもわず僕は顔を顰めてしまった。人に会うたび会うたびに、子供がいるのか?子供はまだ生まれていないのか?と聞かれる。
「いや、まだ、いない」
「結婚してもう五年になるよな。もうできてても良いと思ってたんだがな」
「子供なんて、別にすぐ育てなきゃいけないわけじゃないだろう。今はキャサリンとの二人の時間を大切にしたいんだ」
言い訳をし過ぎて、人が納得しそうな説明が出てくるようになった。妻が子供を欲しがらないんだ。なんて言ってしまったら。なんてけしからん女だと、言われるだろう。
「そうなのか。家族の形は人それぞれだからな。でも、まあ、そろそろ子どもができていた方が良いと思うぞ。子供がいないと色々夫人の方は苦労するからな」
「ああ、そうだな」
その夫人の方が子供を欲しがっていないのだから。
二人でそのまま夜まで話ながら、お酒を飲んでいると、二階からキャサリンが下りてきた。黙って外へ出て行こうとしたために、廊下へ様子を見に行くといつも以上に派手な服を着ていた。
「どこへ行くんだ」
「友人のところよ」
「こんな夜にか?」
すると顔を顰めて面倒くさそうな表情をした。
「ええ、今日は泊ってくるから。それじゃあ」
そう言っていなくなってしまった。
焦っている僕を知らずに、カルロスはクラッカーにチーズと生ハムをのせて、口に放り込んだ。
「ああ、上手くやってるんじゃないか?それ以上は良く知らないけどな」
「結婚ってなんであんな奴が公爵と結婚できるんだよ」
絶対に結婚していないと思っていた。予想に反して結婚していた上に、その相手は隣国の公爵でもと王子ときた。自分の怒りを抑え切れられず、カルロスの事を気にせずそう言ってしまった。
「何かされたのか?」
「いや違う。個人的な問題だ」
ほとんど誰にもアンナと婚約していたことは言っていなかった。どこからか人から人へ伝わるような噂は流れていたかもしれない。でも僕とアンナの婚約破棄という事はさほど大きな出来事ではない。婚約破棄なんてことは普通に起こりえることで特別話題に上がるような出来事でもない。「へえ、そうなのね」と流してしまうぐらい普通の事だ。
「そういえば、子供いるのか?」
おもわず僕は顔を顰めてしまった。人に会うたび会うたびに、子供がいるのか?子供はまだ生まれていないのか?と聞かれる。
「いや、まだ、いない」
「結婚してもう五年になるよな。もうできてても良いと思ってたんだがな」
「子供なんて、別にすぐ育てなきゃいけないわけじゃないだろう。今はキャサリンとの二人の時間を大切にしたいんだ」
言い訳をし過ぎて、人が納得しそうな説明が出てくるようになった。妻が子供を欲しがらないんだ。なんて言ってしまったら。なんてけしからん女だと、言われるだろう。
「そうなのか。家族の形は人それぞれだからな。でも、まあ、そろそろ子どもができていた方が良いと思うぞ。子供がいないと色々夫人の方は苦労するからな」
「ああ、そうだな」
その夫人の方が子供を欲しがっていないのだから。
二人でそのまま夜まで話ながら、お酒を飲んでいると、二階からキャサリンが下りてきた。黙って外へ出て行こうとしたために、廊下へ様子を見に行くといつも以上に派手な服を着ていた。
「どこへ行くんだ」
「友人のところよ」
「こんな夜にか?」
すると顔を顰めて面倒くさそうな表情をした。
「ええ、今日は泊ってくるから。それじゃあ」
そう言っていなくなってしまった。
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