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第六話
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爽やかな暖かな春に近い日だった。私は王女様の身の安全のために防御魔法を二重にかけて、メイドを三人と騎士を二人引きつれて、池のある庭を散歩していた。3歳になる王女様は一人で歩いてどこにでも行ってしまうために誰も目を離せない。
「ねえねえ!お水の上歩きたい」
「はい、お待ちください」
足の裏に魔法をかけるだけで歩くことはできる。でもそれでは転んだとき水の中に落ちてしまう。もう湖の表面に薄い膜の魔法をかけて、歩けるようにしてしまおう。
父から貰った骨董品である古い仙人が持っているような魔法の杖を、水面を撫でるように魔法をかけた。
「よろしいですよ」
「きゃはは!」
ためらいもなく湖の上へ飛び込んでいく。水は波を発生させながらもトランポリンの様に上下して、王女様を揺らしている。メイドと騎士たちは心配そうにそれを見ている。
「きゃははは!!楽しい!」
土の地面と違い、上下左右に波を起こして揺れる地面に王女様は大興奮している。私に慣れてもらうまでに時間がかかったけれど、まあよかった。
「いつも、ありがとうね。アンナが来てくれてから。本当にお世話が楽になったの」
「私これぐらいしかできないから。役に立ってるならよかったです」
なんだかエリック様に婚約破棄していただいてよかった。結構エリック様の筋肉強化と防御で魔力消費していたから。父に婚約者なんだから、それぐらいサポートしてあげなさいと言われたけれど、エリック様は私が魔法を使う事を嫌がっていたから。黙って魔法をかけていた。
騎士団から抜けて騎士団団長も違う人になっていたけれど、別に私のせいじゃない。
突然王女様が池から出て私のところへ走ってきた。服を掴んで背中へ隠れている。
「どうなさったんですか?」
メイドは頭を下げて、騎士はピシっとしている。皆の視線の先には、白髪に軍服を着た珍しい人が立っていた。どこかの軍人か何かかしら。
「初めまして。セリオス王国から参りました。ジェームズ・エドワード・ウィンチェスターと申します。王女様にご挨拶ができればと思ったのですが」
「申し訳ありません。恥ずかしいみたいです」
唐突に私の服から手を離すと、王女様はメイドも騎士も置いて、王宮の方へ走って行ってしまった。メイドも騎士もそれを追いかけていく。見ず知らずの男性と二人きりになった。よく見ると、かなり整った顔立ちをしていた。鼻筋が通り、目元はすっきりと細く、唇は鋭利なナイフで切り取ったように多角的だ。線が浮かび上がって来そうなほど、はっきりとした顔立ち。
「お名前は?」
「え、あ、私は、アンナ・マリー・ハミルトンです。宮廷魔法使いをしています。ハミルトン男爵の娘です」
「ああ、君が。お父上にお会いしてきたよ。決して奢らず、見下すようなことをせず、礼儀のある方だった」
「父はそういう人です」
昔から父は聡明だった。奢り高ぶるなといつも言われて来た。何にも期待するなとも言われて来た。期待をしたら、裏切られた時感情が揺さぶられるから。揺さぶられると魔法が乱れるから。優秀な魔法使いになるなら、絶対に乱されるなと言われ続けた。
だから、私はあんなにスッキリとエリック様の婚約破棄を受け入れられたのかもしれない。
「いいお父上だ」
その声は風に流れるようにゆっくりと穏やかで、心地よい響きの声だった。普通なら言葉数が少ない同士なら、気まずくなってしまうか、相手が苛立ち始める。エリック様はいつもそうだった。私が話題を見つけられないから。でもこの人は落ち着く。
「すみません。王女様のところへ行かなければいけないので」
「引き留めて、すまなかった」
「いえ」
王宮の方へ歩いていくと、ジェームズ様はゆったりとした足取りで元来た道を戻って行った。今まであったことが無い不思議な人だった。時間がゆっくりと、穏やかに流れている気がするのに、あっという間に離れてしまった。貴族の男性と言うのはみんなエリック様の様に堂々と、上からだと思っていた。でもそんなことは無かったらしい。少しだけ男性を好きになってみてもいいかもしれない。
「ねえねえ!お水の上歩きたい」
「はい、お待ちください」
足の裏に魔法をかけるだけで歩くことはできる。でもそれでは転んだとき水の中に落ちてしまう。もう湖の表面に薄い膜の魔法をかけて、歩けるようにしてしまおう。
父から貰った骨董品である古い仙人が持っているような魔法の杖を、水面を撫でるように魔法をかけた。
「よろしいですよ」
「きゃはは!」
ためらいもなく湖の上へ飛び込んでいく。水は波を発生させながらもトランポリンの様に上下して、王女様を揺らしている。メイドと騎士たちは心配そうにそれを見ている。
「きゃははは!!楽しい!」
土の地面と違い、上下左右に波を起こして揺れる地面に王女様は大興奮している。私に慣れてもらうまでに時間がかかったけれど、まあよかった。
「いつも、ありがとうね。アンナが来てくれてから。本当にお世話が楽になったの」
「私これぐらいしかできないから。役に立ってるならよかったです」
なんだかエリック様に婚約破棄していただいてよかった。結構エリック様の筋肉強化と防御で魔力消費していたから。父に婚約者なんだから、それぐらいサポートしてあげなさいと言われたけれど、エリック様は私が魔法を使う事を嫌がっていたから。黙って魔法をかけていた。
騎士団から抜けて騎士団団長も違う人になっていたけれど、別に私のせいじゃない。
突然王女様が池から出て私のところへ走ってきた。服を掴んで背中へ隠れている。
「どうなさったんですか?」
メイドは頭を下げて、騎士はピシっとしている。皆の視線の先には、白髪に軍服を着た珍しい人が立っていた。どこかの軍人か何かかしら。
「初めまして。セリオス王国から参りました。ジェームズ・エドワード・ウィンチェスターと申します。王女様にご挨拶ができればと思ったのですが」
「申し訳ありません。恥ずかしいみたいです」
唐突に私の服から手を離すと、王女様はメイドも騎士も置いて、王宮の方へ走って行ってしまった。メイドも騎士もそれを追いかけていく。見ず知らずの男性と二人きりになった。よく見ると、かなり整った顔立ちをしていた。鼻筋が通り、目元はすっきりと細く、唇は鋭利なナイフで切り取ったように多角的だ。線が浮かび上がって来そうなほど、はっきりとした顔立ち。
「お名前は?」
「え、あ、私は、アンナ・マリー・ハミルトンです。宮廷魔法使いをしています。ハミルトン男爵の娘です」
「ああ、君が。お父上にお会いしてきたよ。決して奢らず、見下すようなことをせず、礼儀のある方だった」
「父はそういう人です」
昔から父は聡明だった。奢り高ぶるなといつも言われて来た。何にも期待するなとも言われて来た。期待をしたら、裏切られた時感情が揺さぶられるから。揺さぶられると魔法が乱れるから。優秀な魔法使いになるなら、絶対に乱されるなと言われ続けた。
だから、私はあんなにスッキリとエリック様の婚約破棄を受け入れられたのかもしれない。
「いいお父上だ」
その声は風に流れるようにゆっくりと穏やかで、心地よい響きの声だった。普通なら言葉数が少ない同士なら、気まずくなってしまうか、相手が苛立ち始める。エリック様はいつもそうだった。私が話題を見つけられないから。でもこの人は落ち着く。
「すみません。王女様のところへ行かなければいけないので」
「引き留めて、すまなかった」
「いえ」
王宮の方へ歩いていくと、ジェームズ様はゆったりとした足取りで元来た道を戻って行った。今まであったことが無い不思議な人だった。時間がゆっくりと、穏やかに流れている気がするのに、あっという間に離れてしまった。貴族の男性と言うのはみんなエリック様の様に堂々と、上からだと思っていた。でもそんなことは無かったらしい。少しだけ男性を好きになってみてもいいかもしれない。
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