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第七話
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「アンナ、結婚する気はあるか?」
ありませんなんてはっきり言ってしまったら、温厚な父でも顔を顰める。神経質な母は顔を合わせるたびに心配そうだ。結婚ってそんなに大切なことなのかしら。私と言う血液をこの世に残しておくことがそれほど大切なことなのかしら。
「あるにはあります。でも私と結婚してくださる方ってそうそういらっしゃらないわ。お父様。私が変わってるのは分かってるけど、これから自分を変える事ってできないでしょ」
「ああ、それは分かってる。アンナは、素直で、純粋で、物分かりが良い。エリックとの婚約も文句ひとつ言ったことが無かったしな。婚約破棄されたとしても」
「今更、どうしようもないです」
婚約破棄された時、父は怒らなかったし、特に何も言わなかった。ただ一言「運が悪かった」それだけ。母はしばらく私にぐちぐち文句を言っていたけれど、半年もたてば私に同情してくれた。母はそういう人だ。一時の感情に流されてしまうけれど、時がたてばその時の自分を悔やんで、申し訳なさそうにしている。
「いい話が来ている」
「いい話?」
「隣国のウィンチェスター公爵という方が、アンナと結婚させてほしいらしい」
ウィンチェスター?誰かしら。どこかで聞いたことがあるような。ないような?それぐらいあやふやな記憶。苗字というのは覚えづらい。貴族の名前ならば猶更。ファーストネームと、ミドルネームがごちゃごちゃになって、怒られたこともある。
「なぜそんな公爵なんて偉い人が私と結婚したがるのかしら」
「一度お前に会ったことがあるそうだ。そのお前のおっとりとしたその様子が気に入ったらしい。そろそろ結婚しなければいけない年齢で、特に結婚したい人もいないからと」
うっすらと思い出そうだ。
「髪は白色?瞳は、青。それで体が大きくて」
「そうだ。物腰柔らかいお方だ。エリックよりは安心して預けられる」
「別に私は構わないですよ」
そのウィンチェスター公爵と言う人が私と結婚したがったのは疑問でしかなかった。父の事を褒め称えていたし、父の娘の私ならば安心して結婚できる女だったのかもしれない。
庭に咲いていたタンポポをいじりながら、そんなことを考えていた。イケメンっていうのは、自分の顔で外見と言うものには満足しているから、相手の外見にはあまりこだわらないのかもしれない。私のような地味な女でも。でも エリック様はそれなりに顔が良かったけれど、キャサリンという美人と結婚した。
まあ、あまり関係ないか。
「あら、こんなところで何をしていらっしゃるの?」
階段に座って花を数えて居たら、後ろから女性の声が聞こえてきた。振り向くと立っていたのは、派手な姿のキャサリンだった。なぜ、ここに。
「ご挨拶をしに来たのよ。貴方がここで宮廷魔法使いとして働いているって聞いて」
「そう、なんですか。貴方はなぜここに?」
「王妃様の執り行うお茶会へ参加して、帰ってきたところよ」
侯爵夫人なら、当然のごとくお茶会ぐらい出席する。私はその間昼寝をしない王女様のお相手をしていた。だから今王女様がやっと眠って、今私は休憩時間だ。
「知ってる?お茶会ってとっても疲れるのよ。気を使わないといけないし、上下関係が厳しいし。貴方に分かる?」
「なんとなく。王妃様の話し相手は私の仕事ですから」
私の回答が間違っていたのかもしれない。キャサリンは腕を組んで、階段の上から私を見下ろした。
「なに?自慢?」
「いえ、事実を言っただけで」
「自分の方が王妃様と親しいって言っているように聞こえたわ」
目を細めて、眉をひそめた。でも、キャサリンがさっき言っていたことの方が、私には自慢に聞こえた。でもそれを言ったら殴られるかしてしまう。
「そう思ったなら、申し訳ありません」
「貴方本当に、貴族として品格が無いのね。そりゃ、エリックも愛想尽くすわ」
「彼とは仲良くやっていますか?」
話題を振ってよかったみたいだ。機嫌が戻り、先ほどの上から目線の態度になった。
「そりゃそうでしょ。貴方ならきっとうまくいかなかったでしょうね」
「それならよかったです。私も上手くいく自信が無かったので」
「貴方って本当に世間知らずね」
「よく言われます」
なぜだか分からないけれどキャサリンはどんどん機嫌が悪くなっていった。私は何も悪いことをしているつもりはないけれど。
「あ、そういえば、そろそろ子どもが生まれるの」
「お腹にいるんですか?」
「ええ、そうよ」
「おめでとうございます」
頭を下げて、仕事に戻ろうとしたが、肩を掴まれてゆく手を阻まれた。
「なぜ何も羨ましがらないの?婚約者奪われて、結婚も出来ずに宮廷に居るのに、どうしてそんなへらへらしていられるのよ!」
「別に、貴方を羨ましいと思う事なんて何もありませんが」
彼女は眉をひそめて、手を握りしめると、私の肩を離した。急いで私はその場を離れて、王宮の中へ逃げた。なぜ、私はこんなことに巻き込まれるのかしら。
ありませんなんてはっきり言ってしまったら、温厚な父でも顔を顰める。神経質な母は顔を合わせるたびに心配そうだ。結婚ってそんなに大切なことなのかしら。私と言う血液をこの世に残しておくことがそれほど大切なことなのかしら。
「あるにはあります。でも私と結婚してくださる方ってそうそういらっしゃらないわ。お父様。私が変わってるのは分かってるけど、これから自分を変える事ってできないでしょ」
「ああ、それは分かってる。アンナは、素直で、純粋で、物分かりが良い。エリックとの婚約も文句ひとつ言ったことが無かったしな。婚約破棄されたとしても」
「今更、どうしようもないです」
婚約破棄された時、父は怒らなかったし、特に何も言わなかった。ただ一言「運が悪かった」それだけ。母はしばらく私にぐちぐち文句を言っていたけれど、半年もたてば私に同情してくれた。母はそういう人だ。一時の感情に流されてしまうけれど、時がたてばその時の自分を悔やんで、申し訳なさそうにしている。
「いい話が来ている」
「いい話?」
「隣国のウィンチェスター公爵という方が、アンナと結婚させてほしいらしい」
ウィンチェスター?誰かしら。どこかで聞いたことがあるような。ないような?それぐらいあやふやな記憶。苗字というのは覚えづらい。貴族の名前ならば猶更。ファーストネームと、ミドルネームがごちゃごちゃになって、怒られたこともある。
「なぜそんな公爵なんて偉い人が私と結婚したがるのかしら」
「一度お前に会ったことがあるそうだ。そのお前のおっとりとしたその様子が気に入ったらしい。そろそろ結婚しなければいけない年齢で、特に結婚したい人もいないからと」
うっすらと思い出そうだ。
「髪は白色?瞳は、青。それで体が大きくて」
「そうだ。物腰柔らかいお方だ。エリックよりは安心して預けられる」
「別に私は構わないですよ」
そのウィンチェスター公爵と言う人が私と結婚したがったのは疑問でしかなかった。父の事を褒め称えていたし、父の娘の私ならば安心して結婚できる女だったのかもしれない。
庭に咲いていたタンポポをいじりながら、そんなことを考えていた。イケメンっていうのは、自分の顔で外見と言うものには満足しているから、相手の外見にはあまりこだわらないのかもしれない。私のような地味な女でも。でも エリック様はそれなりに顔が良かったけれど、キャサリンという美人と結婚した。
まあ、あまり関係ないか。
「あら、こんなところで何をしていらっしゃるの?」
階段に座って花を数えて居たら、後ろから女性の声が聞こえてきた。振り向くと立っていたのは、派手な姿のキャサリンだった。なぜ、ここに。
「ご挨拶をしに来たのよ。貴方がここで宮廷魔法使いとして働いているって聞いて」
「そう、なんですか。貴方はなぜここに?」
「王妃様の執り行うお茶会へ参加して、帰ってきたところよ」
侯爵夫人なら、当然のごとくお茶会ぐらい出席する。私はその間昼寝をしない王女様のお相手をしていた。だから今王女様がやっと眠って、今私は休憩時間だ。
「知ってる?お茶会ってとっても疲れるのよ。気を使わないといけないし、上下関係が厳しいし。貴方に分かる?」
「なんとなく。王妃様の話し相手は私の仕事ですから」
私の回答が間違っていたのかもしれない。キャサリンは腕を組んで、階段の上から私を見下ろした。
「なに?自慢?」
「いえ、事実を言っただけで」
「自分の方が王妃様と親しいって言っているように聞こえたわ」
目を細めて、眉をひそめた。でも、キャサリンがさっき言っていたことの方が、私には自慢に聞こえた。でもそれを言ったら殴られるかしてしまう。
「そう思ったなら、申し訳ありません」
「貴方本当に、貴族として品格が無いのね。そりゃ、エリックも愛想尽くすわ」
「彼とは仲良くやっていますか?」
話題を振ってよかったみたいだ。機嫌が戻り、先ほどの上から目線の態度になった。
「そりゃそうでしょ。貴方ならきっとうまくいかなかったでしょうね」
「それならよかったです。私も上手くいく自信が無かったので」
「貴方って本当に世間知らずね」
「よく言われます」
なぜだか分からないけれどキャサリンはどんどん機嫌が悪くなっていった。私は何も悪いことをしているつもりはないけれど。
「あ、そういえば、そろそろ子どもが生まれるの」
「お腹にいるんですか?」
「ええ、そうよ」
「おめでとうございます」
頭を下げて、仕事に戻ろうとしたが、肩を掴まれてゆく手を阻まれた。
「なぜ何も羨ましがらないの?婚約者奪われて、結婚も出来ずに宮廷に居るのに、どうしてそんなへらへらしていられるのよ!」
「別に、貴方を羨ましいと思う事なんて何もありませんが」
彼女は眉をひそめて、手を握りしめると、私の肩を離した。急いで私はその場を離れて、王宮の中へ逃げた。なぜ、私はこんなことに巻き込まれるのかしら。
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