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第八話
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とんとん拍子でジェームズ様との結婚の話が進んでいった。でもそれは当然の流れだ。貴族の結婚というのは、決まってしまえば当事者が思っている何倍も速く夫婦になってしまう。いつの間にか隣国へ旅立つ日になってしまい、両親へ別れを告げて夫となる人の場所へ向かった。長旅の末に着いたそこは、十分な領土と自然があふれた良い場所だった。
穏やかで静かで、人の気配がしない。あるのは自然の気配。
「久しぶり、来てくれて嬉しいよ」
「私もです。すみません。着くのが一日遅れてしまいました」
出迎えられたのは、広い土地をうまく利用した広々とした玄関口だった。太い柱が玄関前の屋根を支えていて、周りには花壇がある。通ってきた途中には噴水まで置かれていた。
メイドは若い子もいれば、中年の女性もいる。
「気にしないでくれ。天候がコロコロと変わってしまうから、一日二日の遅れは想定内だ。一週間も遅れてしまったら、それは心配だったけれど」
ゆっくりと、おっとりと言葉を選びながら話していた。ある人が聞いたら、それはイラつくのかもしれない。でも私はこれぐらいゆっくりして、棘のない言葉がちょうどいい。もしかしたら、遅れてきたか、もしかしたら怒られてしまうかもしれないと思っていたけれど、そんなことはなかった。
「ご心配なさっていなかったなら、良かったです。私もそれだけが心配でしたから」
「それなら心配無用だ。私は人より、マイペースで時間に余裕がある人間だと言われるから」
「奇遇ですね。私もです」
穏やかに口角を上げて、頷くと使用人たちの方を見た。
「荷物を運んであげて」
働き蟻のように使用人たちが列をなして、トランクや、箱を運び入れている。でも荷物はたくさん持ってこなかった。だからすぐに使用人たちは手を持て余していた。元々私は物が少ないし、物欲もあまりない。必要以上に物をもとめてもいいことがないことを私は知っている。高級なティアラや、宝石は貴重かもしれないけれど、なくてもないい。私は「ダイヤより水」な人間だ。
「とても荷物が少な。」
ポツリと独り言のようにジェームズ様は言った。
「両親に言われるがまま結婚した相手がいたんだ。でもその元妻は、私の三分の一の財産を盗んでどこかへ行ってしまった」
「愛していたんですか?」
「たぶん無関心だ。嫌いにもなれなかったから。だから別に憎んでもいないし、怒ってもいないんだ。なにせヘマをしない限り、お金は沸き続ける」
その青色の瞳には悲しみがぎゅっと詰まっているような気がした。大きな分厚い手で白色の髪を触った。タバコの煙を吐き出すように、静かに息を吐いた。
「寝室は別の方がいいだろうか」
「どちらでも、夫婦なら、一緒の方がいいのかもしれませんが」
「じゃあ、そうしよう」
私とジェームズ様みたいな夫婦がこの世にもう一組いるかしら。なんだか、この人とは喧嘩とは無縁の生活を送りそうね。
穏やかで静かで、人の気配がしない。あるのは自然の気配。
「久しぶり、来てくれて嬉しいよ」
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メイドは若い子もいれば、中年の女性もいる。
「気にしないでくれ。天候がコロコロと変わってしまうから、一日二日の遅れは想定内だ。一週間も遅れてしまったら、それは心配だったけれど」
ゆっくりと、おっとりと言葉を選びながら話していた。ある人が聞いたら、それはイラつくのかもしれない。でも私はこれぐらいゆっくりして、棘のない言葉がちょうどいい。もしかしたら、遅れてきたか、もしかしたら怒られてしまうかもしれないと思っていたけれど、そんなことはなかった。
「ご心配なさっていなかったなら、良かったです。私もそれだけが心配でしたから」
「それなら心配無用だ。私は人より、マイペースで時間に余裕がある人間だと言われるから」
「奇遇ですね。私もです」
穏やかに口角を上げて、頷くと使用人たちの方を見た。
「荷物を運んであげて」
働き蟻のように使用人たちが列をなして、トランクや、箱を運び入れている。でも荷物はたくさん持ってこなかった。だからすぐに使用人たちは手を持て余していた。元々私は物が少ないし、物欲もあまりない。必要以上に物をもとめてもいいことがないことを私は知っている。高級なティアラや、宝石は貴重かもしれないけれど、なくてもないい。私は「ダイヤより水」な人間だ。
「とても荷物が少な。」
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「両親に言われるがまま結婚した相手がいたんだ。でもその元妻は、私の三分の一の財産を盗んでどこかへ行ってしまった」
「愛していたんですか?」
「たぶん無関心だ。嫌いにもなれなかったから。だから別に憎んでもいないし、怒ってもいないんだ。なにせヘマをしない限り、お金は沸き続ける」
その青色の瞳には悲しみがぎゅっと詰まっているような気がした。大きな分厚い手で白色の髪を触った。タバコの煙を吐き出すように、静かに息を吐いた。
「寝室は別の方がいいだろうか」
「どちらでも、夫婦なら、一緒の方がいいのかもしれませんが」
「じゃあ、そうしよう」
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